凛として時雨「TOUR 2011“VIRGIN KILLER SUICIDE”」
凛として時雨
「TOUR 2011“VIRGIN KILLER SUICIDE”」
@東京国際フォーラム ホールA
2011.7.6(Wed)
「実は私は凛として時雨のライヴは、ホールで観たいと常々思っていた。当然、ライヴ・バンドなのでオール・スタンディングがベストなのは分かる。しかし、今の彼らの音響へのこだわりやライティングも含めた完璧な演出には、やはり天井の高いホールが似合うし、更によく伝わってくると思う。集団で観ていながら も、どこか一対一的に投げかけてくる彼らの音楽性をキチンと受け取るためにも、一度、天井の高い椅子ありのコンサート・ホールで観てみたいものだ。」
2年程前。『トキニ雨#12』の日比谷野音でのライヴレポートを行った際、私はこのような文章で締めている。いや、この時だけではない。ここ最近の彼らのワンマンライヴを観る 度に、”これを天井の高い椅子席のホールで、ステージと対峙して観たら、どんな感受をするのだろう?”と、何度もその場へと思いを馳せてみた。
そして、凛として時雨にとって初のホール・ツアー。その最終日となった、国際フォーラム・ホールAでの彼らのライブを観終わった私の感想は、<良い意味で意外な感受>であった。
凛として時雨とは、何かと所縁の深い、我がラッカの代表兼MD(マーチャンダイザー)kAto。これまで彼らの数多くのオフィシャルグッズの制作はもとより、ちょうどこの7/6を挟む、6/24~7/10までは、TK のPHOTO BOOK+DVD『film A moment』の発売を記念し、自らが運営するギャラリー&ショップ「Luckand(ラカンド)」にて、「film A moment TK×Luckand Limited museum shop」を開催。そこでは、TK所有のギターや衣装、また、愛用のカメラや写真集製作時のラフプリントが展示された。また、Luckandとのコラボ商品として「Tシャツ」「ブックカバー」「缶バッヂ」が限定販売された(一部ライブ会場でも販売 ※缶バッヂはLuckand限定)。
また、当日の国際フォーラムを含む、この「TOUR 2011“VIRGIN KILLER SUICIDE”」では、全ツアーグッズを製作させてもらった。その一つひとつは、メンバーとデザイナーそして我がMDによるこだわりの逸品ばかりだ。
広く、厳か感に満ちた会場に入ると、これから漂うであろう緊張感を和らげるように、TKの『film A moment』キャプチャー画面に起用されていた音楽が流れている。最近恒例のピエールによる影アナも今回はなし。みんなこれから始まるライヴへの緊張感を各々募らせている。
スタート定刻から過ぎること15分。会場の電気が一斉に落ち、幕が掛ったままのステージ背後から当たる照明が唯一の光の中、ピエールのドラムとベース&ボーカルの345の歌い出しの「illusion is mine」からライヴはスタートした。そこにTKのギターも加わり、ドリーミーで幻想的、それでいて程よい緊張感が会場を覆う。ピエールのドラムが安定感たっぷりに楽曲を支え、345からTKへとボーカルがリレーションされる際には、美しい音のレイヤーからノイジ―で重厚な音塊へと豹変していく。アウトロのTKのギターソロと共にステージ後方の白色ライトの光量も上がり、それが場内に夜明け感をもたらす。続いて、TKの歌い出しによる「I was music」へ。同時にステージを覆っていた幕が開き、ご本尊の3人が。とは言え、ライトの演出を用い表情はあえて伺わせず。TKのハイトーンボーカルが会場を切り裂き、サビでのヒステリックへの変貌や、アップテンポへのシフトアップ部では、会場全体からもコブシが上がり、椅子席ならではの自分の範囲内での呼応を見せる。
345のベースラインにピエールのドラムが絡み、TKのギターがパラレルにカラフルにフレーズを散らしていく。続いては「DISCO FLIGHT」だ。サビの4つ打ち前のピエールの”いくゾ!!”の姿勢から、会場全体もダンスの臨戦態勢に。やってきた4つ打ち部が会場に躍動感をもたらせ、全員を躍らせる。また、ここでの聴き どころは、TKの発狂ギターソロと345とTKのボーカルのリレーション、 そして、その後のTKの絶叫ポーカリゼ―ションだ。その絶叫が今日は高い天井に向け、よりエモ―ショナルに響き、アウトロのピエールのツインペダルが会場に地響きを生む。
チューニングタイムを挟み、ステージも客席も真っ暗な中、ステージ後方にVJが流れ、それが会場に光や色を与える。続いての「Re:automation」 では、照明はほとんどなし。かわりにVJの映像が曲に演出を加えていく。一瞬一瞬違った場面へと惹き込むように、まことにVJと歌とプレイとがシンクロ。三位一体で突き進んで行く。これに限らず、今回は光の当て方や光量、そして、その色使いまでもが芸術的。それがキチンと向き合って体感出来るのは、椅子席ならではの特需だ。そして、345のベースラインから原曲よりかなりの変化を見せた 「a 7days wonder」に。この曲では、楽曲を支えるようにバックからの白・緑・青の照明が効果的に起用され、地響きのようなピエールのツインペダルとTKのギターがカウンター的に幻想さへと惹き込む。うーん、ツンデレ(笑)。とてつもない緊張感の果ての柔らかさや優しさとでも称そうか。アウトロで再び表れたピエールのツインペダルが会場に高揚感を与える。
チューニング中にひんやりとした程良い緊張感が漂っているのも、この日の特徴。みんな次の曲を身構えて待っている。そんな中、「this is is this?」のTKによる長めのイントロと、歌い出しが始まる。赤いビロードのカーテンに光が当たり、妖艶さを見せれば、その奥の青のビロードを映すVJが、緊張感とひんやり感を生む。フロアタムを効かせた重いドラミングが生命力と土着性を楽曲に加え、ギターソロでは、TKも長いライトハンド奏法で楽曲に色を加える。また、その直後にスパークしたギターソロには会場も大熱狂だ。
ミディアムでどっしりしたドラミングに惹き込まれながら「Sadistic Summer」にインすると、345とTKのボーカルがシンクロしつつ、一部ズラし、2声を楽しませてくれる。この曲での見せ場はやはりピエールの1打毎のスティック回し。サビのラストのツインボーカルが高い天井に響き渡っていく。次のギターイントロに会場が熱狂する。続いては、「想像のSecurity」だ。これでもかと言わんばかりのツインボーカルの応酬と、タイトな部分ではとことんタイト、手数多い所ではとことん魅せるドラミングが会場を魅了していく。そして、深いディレイのかけられた歌い出しと、オリジナルより長くなったイントロのバンドアンサンブルにゾクッとさせられ た、久々に聴くことのできた「鮮やかな殺人」では、オリジナルよりも目まぐるしく、それでいて深みを帯びたスタイルへの変貌に、今の彼らのこの曲に対するスタンスを感じた。
チューニング中は、ペグに触れる音やエフェクターを切り替える音まで聞こえる(笑)。ライヴに戻ろう。深淵なギターイントロとTKの優しげな歌い出しと、ピエールのタイトなドラミングから「seacret cm」に入ると、再び流れるVJの映像が照明の代わりを果たす。楽曲に溢れる光年性や時空を越えた永遠性が場内に満ち、不思議な安堵感が場内を包む。
ここでTKがギターを持ち替え、座り、アコギ・タッチのアレンジにて「Tremolo+A」が伝えられる。ギターを技巧的に駆使しつつも、原曲より優しく伝え、また違った表情を与えてくれた同曲。楽曲に漂う、”僕のことを分かってくれ””伝わってくれ”感がヒシヒシと伝わってくる。
「順延になったこの日のために何か出来ないかと思って…」と、ここで珍しくライヴ中盤にも関わらずTKが口を開く。続いて、ガットギターを用いた、「シークレットG」も、いつも違った響き方、ややもすれば通例とは正反対の世界観を醸し出す。同曲では、345も椅子に腰かけベースをプレイ。中盤からはピエールのドラミングも加わり、スパニッシュ性とブレイブ感が楽曲に加わっていく。
ここで恒例のピエール・コーナー。このコーナーを楽しみにしていた、特に男性ファンから、ドラムセットに立ちあがったピエールに声援が飛ぶ。色とりどりのライトに彩られ、彼のドラムソロが場内にスパークする。魅入る会場。高揚感と凄さに絶句していると、間にはマイクを掴み、客席を煽る。と思いきや、突然中断。 特製のエレキギターとアンプにより、某国民アイドルの代表曲のさわりを弾き歌う。
その後はお楽しみの恒例の「Say!バイブス!」のコーナーに。今回のコール&レスポンスのメニューは、Say!バイブス!~玉筋~ニューヨーク~チョコレート・ディスコ~X JAPANの流れであった(笑)。再びドラムソロに戻ると、”あれほど会場を違う雰囲気に巻き込んでおいて大丈夫か?”との心配もよそに、前コーナーの存在など忘却の彼方に追いやるほど、会場を再び巧者ドラマー、ピエール・ワールドへと惹き込む。
TK、345も再びステージに戻り、デモストレーションのTKのギターからピエールのドラミングで「JPOP Xfile」に突入。幻想的に始まりながらも、突如にヒートアップ。
最後は低音火傷をしているかのような熱さに包まれる。TKの放つギターフレーズに会場が驚喜する。続いては「Telecastic fake show」だ。曲が進みゆくに連れ、込み上げてくる高揚感と、時折りそこに織り込まれる凶暴性。ラストへ向かうとてつもないカタルシスが楽曲に孤高性を加える。 ノンストップで「nakano kill you」にインすると、元々楽曲の持つ怒涛性が、更に会場をヒートアップさせ、熱狂度を上げていく。リレー式に絡む345のボーカルも、会場の高揚感を上げていく。この曲では、もはや恒例となっているピエールによる一打一打スティックを回しながらの渾身のスネア叩きも見ものであった。続く「a symmetry」では、若干のファンキーさを持った楽曲ながら、ダンサブルさとはまた違ったビートが会場をグイグイと惹き込む。バックのビジョンにコラージュやエフェクト処理された映像が映し出され、それを背に「24REVERSE」が始まる。時雨から包容感というのも不思議な話だが、この日のライヴは、このような包容感や安堵感に包まれる瞬間が何度もあった。普段は、突っ込んできたり、放出したり、高揚させる音楽性の方が優勢だったのに対し、今回は逆に、幻想さや包容力、安堵感や白昼夢といった、いわゆる心地よさの方が勝っていた気がする。
ここで、345がMCを。恒例の物販の話を始める。お客さんも彼女の説明に、見守るように聞き入ったり、オーバーにリアクションしたりと優しい。良かったね (笑)。合わせて、ここで9/27~全国ライブハウスツアーを行うことも発表された。
そして、ラストは「mib126」。ピエール後ろの巨大なライトが彼らを神々しく照らす。TKのギターと345のベースのリレーションと、ピエールの怒涛性が、必死に自我を取り戻すように、ヒステリックに、暴力的に、もがき、葛藤しているように鳴らされる。そして、最後にステージに残ったのは、崇高でいて美しい世界。
そう、この光景を我々にたどり着かせ、3人はステージを去った。いつもの如く、アンコールなどないことは承知なのだが、ちょっとした期待と、いつまでもこの余韻に浸りたい会場は、ライヴが終わってもみんなしばらく席についたまま。暗い会場でエンディングBGMを聴いていた。そのBGMが終わり、徐々に明るくなっていく会場。その時の僕は、いつもの彼らのライヴの観後に感じていた、”ポツンと取り残された感”とは違い、”なんか良い夢を見ていた感”に浸っていた。
正直、ミッドやローといった中低音部の物足りなさ、各音の分離のクリアさや輪郭の曖昧さ、ディレイやエコーをかました際の会場での音の回り方等、ホールでのプレイへの課題は残ったものの、それをはるかに凌駕する、もはや総合芸術とも言える照明やVJを用いた演出やプレイに、トータル感に大満足度150%であったこの日。そしてライヴ中、何度となく感じられた、包容感や美しさ、優しさや柔らかさは、普段のオールスタンディングやホール以外のところでは体感できないものであったことを付け加えたい。
ホールツアーを経ながらも、次はあえて、そのカウンターの如く、9月27日からはライヴハウスツアーに挑む時雨。その際は、今回のこの曲たちもまた違った響き方をするだろう。同じ音楽を放ちながらも、ハコの大きさやシチュエーションにより、様々な表情が表れる時雨の音楽。次のツアーは密着戦。その至近距離から放たれる音楽は、果たしてどんな表情なのだろう? 今からそれがとても楽しみだ。
Report 池田スカオ和宏
【SET LIST】
M-1. illusion is mine
M-2. I was music
M-3. DISCO FLIGHT
M-4. Re:automation
M-5. a 7days wonder
M-6. this is is this?
M-7. Sadistic Summer
M-8. 想像のSecurity
M-9. 鮮やかな殺人
M-10. seacret cm
M-11. Tremolo+A
M-12. シークレットG
M-13. JPOP Xfile
M-14. Telecastic fake show
M-15. nakano kill you
M-16. a symmetry
M-17. 24REVERSE
M-18. mib126
【MEMBER】
VOCAL&GUITAR: TK
VOCAL&BASS: 345
DRUMS: ピエール中野
【Profile】
2002年埼玉にて結成。その後、メンバーチェンジを経て現メンバー編成となる。
2004年3月初の全国ツアーを経て、DEMO音源を2000枚以上売り上げる。
2005年11月 自身のレーベル「中野Records」を立ち上げ、待望の1st album 「#4」(ナンバーフォー)を始め、2枚のアルバム、1枚のミニアルバム、1枚のシングルをリリース。
2008年12月、1曲16分+フォトブック仕様の 2ndシングル「moment A rhythm」をSony Music Associated Recordsよりリリース。
2009年5月、3rdアルバム『just A moment』をリリース。5月には”last A moment”ツアーを、11月からは全国ZEPPツアー“Tornado Z”を敢行。各所大成功を収める。
2010年1月からは全国ライブハウスツアー”I was music”を行い、そのスーパーファイナル公演として、彼らの単独ライヴでは最大規模のライヴをあえて彼らの地元・さいたまスーパーアリーナにて4月17日に行う。同年9月22日、4thアルバム『still a Sigure virgin?』を発売。同作品はオリコン・アルバムチャート第一位を獲得。快挙を成し遂げる。10月21日より全国ツアー“VIRGIN KILLER”スタート。各所大成功を収める。
2011年4月28日からは、全国7箇所を回る初の全国ホールツアー「VIRGIN KILLER SUICIDE」を敢行。最終日は7月6日の東京国際フォーラムAでのライヴも成功に収める。
9/19には、東名阪で対バンを迎え 「時ニ雨♯13」を、9/27からは、全国ライブハウスツアー 「TOUR 2011 “αβ+1″を行う。
【Package Item】
4th FULL ALBUM
『still a Sigure virgin?』
AICL-2174
¥2,800(tax-in)
NOW ON SALE
1. I was music
2. シークレットG
3. シャンディ
4. this is is this?
5. a symmetry
6. eF
7. Can you kill a secret?
8. replica
9. illusion is mine
TK from 凛として時雨
PHOTO BOOK+DVD
『film A moment』
[完全生産限定盤(PHOTO BOOK+DVD)]
AIBL-9214
4,600円(tax in.)
NOW ON SALE
1.introduction
2.white silence
3.film A moment
Bonus Photo x BGM (approx. 13 min)
【Artist Homepage】
【Luckand Homepage】
http://www.luckand.jp/
(こちらでは、「film A moment」グッズの一部を販売しております)