『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2011 FINAL』
『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2011 FINAL』
w / plenty、[Champagne]、cinema staff、モーモールルギャバン
2011.1.28
@AKASAKA BLITZ
毎度このイベントに参加する度に、そのブランディングの確立としっかりとした身元保証、内容の充実と満足度、そして、その後のポピュラリティの獲得への信憑性等々を非常に痛感する。そして、そこに会社として少なからず関係性を持たせてもらっていることも非常に嬉しく思う。
今年で10周年を迎えた『スペシャ列伝』。そのスペシャル版とも言える恒例のジャパンツアーが今年も行なわれた。
今年の参加バンドは、plenty、[Champagne]、cinema staff、モーモールルギャバン。いづれも現在大注目で、今後の飛躍が目されているバンドたちだ。今回のツアーも北は北海道札幌から、南は九州福岡まで全国8箇所にて開催。このメンツながらキッズたちの懐にも優しい¥2800という良心的なチケットプライスは、そのバンドの有望性やイベントのブランド性も含め、全箇所当然のソールドアウトを記録した。そして、そのツアーファイナルとなった、この日の赤坂ブリッツも早期にソールドアウト。超満員の会場は、これから出てくる4バンドに対する期待とワクワクドキドキ感に満ちていた。
我、ラッカもこのツアー用のTシャツを作り出して早4回目。今年もバッチリのTシャツが出来たと自負している。当日も我々が会場に入った時には、2種のTシャツはそれぞれ1サイズ以外は既に完売。その1サイズも終演後には売り切れと人気を博していた。かく言う、このツアーのライヴレポートも2009年、2010年、そして、今年と3回目。我がラッカとしても非常にシンパシーを持っているイベントだったりもする。
各会場ごとに出演順を変えているのもこの列伝ツアーの特徴。ステージ下手(向かって左側)には、横に向けたドラムキット、ステージ上手(向かって右手)には、銅鑼とシンセ類が並んでいる。1番手はモーモールルギャバンのようだ。
特にSEもなく、大歓声に迎えられ登場した彼ら。ユコが大型のシンセを抱え(ショルダーではなく普通61鍵ぐらいのシンセ)ノイジーな音色を放ち、会場にカオスと緊張感を漂わせる。ドラム&ボーカルのゲイリ-による「あかさか~~!!」のシャウトから、彼のハネる16分のハイハットと4つ打ちのビート、それと、マルガリータによるファットなベースライン、そしてユコの電子音から「細胞9」にインし、妙な上昇感や高揚感が会場を包む。ユコは発狂気味にマッドサイエンティスティックな電子音を発しまくり。場内は盛り上がる者と、初見でまだ免疫不足の”なんじゃこりゃ!?”顔の人達の2層に (笑)。
続いて、「最高な赤坂の大和撫子に捧げます!」とのゲイリ-の言葉の後、「POP!烏龍ハイ!」に。先ほどの盛り上がりにキメのジャンプも加わり、場内に変な酔いが回る(笑)。鍵盤ソロもキマり、アウトロでのユコの歌声に会場中がキュンとなる。そして、ゲイリ-のドラムとレスポンスの先導により、クイーンの「We Will Rock You」調のメロディと手拍子に合わせ、「We Will We Willユキちゃ~ん」の場内大合唱の後、「ユキちゃん」に突入。この曲ではマルガリータの動きのあるグルーヴィ-なベースも見どころ。変拍子と変態性が場内を包み、彼らの愛しい者の対照とも言える「ユキちゃん」(彼らの偏愛ソングにはこのユキちゃんは大切な支柱)への求愛が会場に満ちる。そして、3月発売予定のニューアルバムの告知を挟み、「ユキちゃんの遺伝子」へ。電子音と前のめりの突っ込み感たまらないドラム、ユキちゃんの成長と、その後が妄想混じり歌われる同曲。間の発狂キーボードソロでは、ユコも片足をシンセに乗せて弾いているゾ。加え、先ほどまで”なんじゃこりゃ!?”な表情だった人達もみるみる魅了されていく。そして、ラストは”待ってました!!”の「サイケな恋人」。ユコのスイートでキュートな歌い出しが切なくセンチに場内を包むも、後半はいつものごとく急変。ゲイリ-がドラムに立ち、ボーカルを引き継ぎ、場内交えての「パンティコール」の嵐。そして、クライマックスではみなさんお待ちかねのゲイリ-のオーバーパンツが会場に投げ込まれる儀式が(笑)。以降は大興奮と異様な一体感とシンパシーが場内を支配。完全に会場全体がモーモーの世界観に侵された30分であった。
この日の2番手はcinema staffだった。SEに乗り登場し各々一礼。デモンストレーションがてらノイジーな音を各人が会場に放つ。そのカオスを切り裂くように、ギター&ボーカルの飯田が「AMK HOLLIC」のギターリフにてライヴの幕を開ける。それを呼び声にバンドサウンドへと移行、ドラマティックで歌謡性の高い歌も加わり、同曲が輪郭を現す。このバンドの特徴である、キメの多さと変拍子やテンポの多彩さが既に1曲目から炸裂。にも関わらず、会場中もしっかりついていく。間間にはベースの三島によるドゥ-ムな咆哮が場内を煽り、中央にポジショニングをとる辻はアクションたっぷりにギターを弾きまくっている。ノンストップで「想像力」にインすると、三島のベースがグリグリと深部をえぐり、久野のドラムも前のめりに突進ビートを放つ。間には辻による発狂ギターもインサートされたりと、やたらと目まぐるしい(笑)。そして、辻のメロディアスなアルペジオから「第12感」に入る。間には3拍子のワルツを交えつつ、スイング、激エモーショナルと、こちらもまことに目まぐるしい (笑)。そして、これだけ目まぐるしく、進む度に曲が変貌しながらも、しっかりバランスが取れているのは、まぎれもなく飯田の歌によるもの。
MCタイムでは1/19発売のシングル「水平線は夜動く」を告知。そして、そのシングル収録の「daybreak syndrome」を始める。辻のギターもストリングス的な音色を楽曲に加え、ダイナミズム感溢れるワイドなナンバーに、場内全体が惹き込まれていく。と思いきや、ラストに向け、グワッと走り出していく高揚感に振り回される自分が居たり。うーん、この展開がいかにも彼ららしい(笑)。そして、更に狂暴度を上げるように、ノンストップで「優しくしないで」にイン。そのイントロにステージ前方の密度も更に上がる。静と激を使い分け、その上、16分のダンサブルな面も合わせ持った同曲。しっかりと前向きさや陽光性を擁しているのもこの曲の特徴だ。畳み掛けるように「KARAKURI in the skywalkers」に突入すると、伝わりやすく光を明確に感じる曲の出現に会場も更にパワーをもらう。ラストは「Poltergeist」。同曲に合わせ、会場全体が狂ったように躍る。三島の絶叫度も高くなり、ラストは飯田がシンバルを倒すのを合図に、みんな楽器を脱ぎ、高々と掲げ、ノイズをまき散らす。大きなインパクトを残し、ステージを去った彼ら。ステージが終わり、我に帰ったかのように起こった拍手までの時間が、この日の彼らのパフォーマンスの凄さを物語っていた。
しんしんと静かに降り続く雪のように言葉を重ね、それが聴き手の中でしっかり歌として積もらせていったplenty。前出2バンドのインパクトとは明らかに違った彼らの雰囲気は、お客さんもまるで固唾を飲んで見守っていたかのように魅入らせていた。
ギターのカッティングと共に歌い出された「理由」から始まったこの日のライヴ。これまでのノイジ―なバンドたちとは明らかに違う柔らかく優しく、ナチュラル性のあるサスティーンの効いたギターに乗せられ、頼りなげでしっかりと伝わり響く歌が印象的な江沼。ダイナミックさと繊細さを叩き分ける吉岡のドラム。白玉豊かに曲の低部をしっかりと支える新田のベースは、会場を1曲目から独特の世界観へと惹き込んでいく。力強いギターストロークから「最近どうなの?」にインすると、「最近どうなの?」との問いに、「あまり変わりがない」としか答えられない自分の胸が締めつけられる。ナイ―ブなんだけど確実に聴く者の心をグリップする歌だ。
「お客さんとしても数年前に観に来ていたこのイベントに、10周年のタイミングで出れて嬉しい」と江沼が話す。続けて、「シーンとしすぎて近くの中継カメラマンのインカムへの指示まで聞こえる」と笑う。聴き入るような緊張感に満ちた、そのシーンとした会場に「人との距離のはかりかた」が静かに放たれる。言葉にしなくちゃダメだけど、発するとどうしても相手を傷つけてしまう主人公が歌われる同曲。続く「言葉にするだけムダだろうな。だけど、言葉にしなくちゃダメだろうな」のフレーズに会場の多くが自分を投影し、自分を顧みている光景が広がる。
続いては、フィルを上手く交えた吉岡の少しハネたドラムの上、これまで以上にエモ―ショナルに響いた「拝啓。皆さま」が。間には急転。これまでのクリーンでナチュラルな響きを持っていたギターにディスト―ションが加わり、”これでもか!!”と言わんばかりに激高し、エモ―ショナルに上昇していくバースを挟み、曲にドラマ性を加える。そして、ノンストップで「枠」にインすると、新田のベースの譜割も増える。サビのストレートになるところは気持ちも良く、これまで聴き浸っていた会場も前傾姿勢に。ラストに向かうに連れ、とてつもないドライヴ感が生まれ、ラストはかなり高みとエモ―ショナルさを味あわせてくれた。
SEと派手な照明に乗って[Champagne]の4人が現れると、ステージはいっぺんに華やかな雰囲気に変わる。ボーカル&ギターの川上の「最高の夜にしましょう!」の一言から「For Freedom」にインすると、川上のミュートカッティングと歌い出しに合わせ、会場からもクラップが起こる。ダンサブルさと疾走感、センチメンタルな歌が絶妙に絡み合い、1曲目から彼ららしい世界観へと会場を惹き込む。続いて、庄村の放つスタックスビートに白井の放つギターリフが絡みつき、磯部のベースがドライヴ感を加え、ファンキーなカッティングがフロアの腰を揺らす「Yeah Yeah Yeah」に突入。彼ら特有のキャッチーなフレーズに合わせ会場も大合唱だ。続いて、これまた腰にくる新曲「Rocknrolla!」では、Arctic Monkeys的要素も交えながらも一体感を生むキャッチーさとファンキーさで会場を魅了。ファンキーでダンサブル、それでいて後半は怒涛性のあるナンバーに会場も大盛り上がりだ。
「爽やかな歌をプレゼントします」とは川上。「Don’t Fuck With Yoohei Kawakami」の爽やかなイントロに会場がうっとりするもつかの間、本編に入ると急変し、ハネるダンサブルさと一丸性のあるコーラスが場内を包む。白井のギターソロもワウを効かせ、胸をザワザワさせる。何が爽やかな歌だよ、まったく(笑)。そして、本編最後は「素敵な街に素敵な歌をプレゼントします」と最新曲「city」が。サビの部分でのストレートさに場内も一斉にライドオン。フロアの数か所でクラウドサーフも起こる。
ここからはアンコール。ドリーミーでキラキラとしたギターとダンサブルさ、サビでの伸びやかさと解放感がたまらない「You’re So Sweet & I Love You」がここで飛び出す。「Only oneなんてクソくらえ、No.1が最高だ!!」のフレーズが会場に轟き渡り、フロアの多くがこのフレーズに心酔する。後半はフロア頭上のミラーボールも回り出し、ロマンティックにドラマティックな雰囲気に会場全体が包まれる。
ダブルアンコールでは4バンドが再びステージに現れ、oasisの「Don’t Look Back in Anger」のセッションが始まる。陽が力強く昇っているかのような同曲は、実にこのラストの大団円にぴったり。3本のギターと1本のアコギ、3本のベースに、ドラムにボンゴという楽器陣と、川上をメインボーカルに、ボーカル各人もコーラスを加える贅沢さに会場もご満悦。サビではステージもフロアも大合唱を見せ、最後はステージもフロアも不思議な一体感に満ち、出演全4バンドにて饗宴の幕を下ろした。
[Champagne]の川上がMCで言っていた「列伝のツアーは今日で終わるけど、バンドの歴史はこれからも続いていく」の言葉。この日の4バンドは、ここよりまた新たなる歴史を築いていく。そう、この日の1500人、いや、この列伝ツアーに参加し、また、後日この模様をスペースシャワーTVで観るであろう人も含め、この4バンドの前途の光輝を確信させた、この日。また今年もこのイベントを通してその現場に立ち会えたことを心から幸せに思った。
Report : 池田スカオ和宏
モーモールルギャバン
【MEMBER】
Dr.&Vo. : ゲイリー・ビッチェ
Key.&Vo. : ユコ・カティ
B. : T-マルガリータ
【SET LIST】
1.細胞9
2.POP!烏龍ハイ!
3.ユキちゃん
4.ユキちゃんの遺伝子
5.サイケな恋人
【ARIST HOME PAGE】
http://sound.jp/mo-lulu/home.html
cinema staff
【MEMBER】
G.&Vo.: 飯田瑞規
G. : 辻 友貴
B. : 三島想平
Dr. : 久野洋平
【SET LIST】
1.AMK HOLLIC
2.想像力
3.第12感
4.daybreak syndrome
5.優しくしないで
6.KARAKURI in the skywalkers
7.Poltergeist
【ARIST HOME PAGE】
http://www.cinemastaff.net/top.php
plenty
【MEMBER】
Vo.&G. : 江沼 郁弥
B. : 新田 紀彰
Dr. : 吉岡 紘希
【SET LIST】
1.理由
2.最近どうなの?
3.人との距離のはかりかた
4. 拝啓。皆さま
5.枠
【ARIST HOME PAGE】
http://www.plenty-web.net/
[Champagne]
【MEMBER】
Vo.&G. : 川上洋平
B. : 磯部寛之
G. : 白井眞輝
Dr. : 庄村聡泰
【SET LIST】
1.For Freedom
2.Yeah Yeah Yeah
3.Rocknrolla!
4.Don’t Fuck With Yoohei Kawakami
5.city
Encore
En-1.You’re So Sweet & I Love You
Double Encore Session
Don’t Look Back in Anger
【ARIST HOME PAGE】
http://champagne.vc/