きのこ帝国「修羅を超え、辿り着いた温かさ」

Filed under: LIVE REPORT — タグ: , — admin @ 2014.03.05

きのこ帝国「修羅を超え、辿り着いた温かさ」


初のEP「ロンググッドバイ」と共に...
今回のツアーは、初のEPとなった「ロンググッドバイ」と共に、大阪、名古屋、そして今回の渋谷クラブクアトロと、ワンマンにて3カ所を回ったものでした。当然、当日はそのEPの曲を中心に、過去の曲も交えてプレイされ、歌われました。しかも、「ロンググッドバイ」の作品のプレイには圧巻。あの各曲の世界観をそこなうことなく、見事に踏襲し、しかも、キチンと増幅させるという手腕。詳しくは下記の当日のライヴレポートを。

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スノボ姿の目玉くんも登場
今回のきのこ帝国のツアーに際し、LUCK’Aではグッズ全般の作成を、LUCKON GRAPHICSがデザインの幾つかを担当しました。
アイテムの方は…冬も関係してか? 目玉くんがスノーボードをしているイラストデザインも印象的な「新Tシャツ」。こちらはネイビー&ブラウンの2種が販売されました。そして、その目玉くんスノボが型取られた「ラバーキーホルダー」、加え、最新EP「ロンググッドバイ」のジャケットがあしらわれた「ハンドタオル」、また、同デザインの「iPhone5/5sケース」も作成され、こちらは今回のワンマンツアーのみ販売されました。

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「Tシャツ・キーホルダーに関しては、前回作ったキャラクターの“目玉くん”がご好評だったようで、第二弾を制作させていただくこととなりました。なぜ突然スノボをし出したのかという疑問をちらほらいただきましたが、謎に包まれた雰囲気も1つの魅力だと思いますので多くは語らないことにします」LUCKON GRAPHICS Koda

「今回のグッズ類を制作するにあたり、メンバーさん全員が弊社のショールームに来て下さって、ディスカッションをしながらグッズを選んでいきました。「ハンドタオル」と「iPhoneケース」は、歌詞に♪青い花柄のワンピース♪とある通り、それをモチーフにしたと思しき、セントラル67の木村豊さんデザインによるCDジャケットを踏襲しています。中でも「iPhoneケース」は、質感も踏まえてネイビーで全面的に一度マット塗装をして、更にフルカラーのインクジェット印刷を施してるんです。それから、前作から登場した「目玉くん」がメンバーからのリクエストもあり、再度登場しました。しかも、今回はスノボに乗っているという(笑)、LUCKON GRAPHICSによる思い切ったイラストとデザインです。こちらはTシャツとPVCのキーホルダーを作ったんですが、キーホルダーの方は色と色が重なり合って線が重なっているところもあり、この辺りの再現はかなり気を使いました。Tシャツのカラーはメンバーの、特に佐藤さんの希望なんです。当日ライヴで佐藤さんも着て下さっていて嬉しかったな。当日は会社からスタンド華を送ったのですが、こちらは今回のEPのジャケットに紐づけた花を意識したものを贈りました」マーチャンダイザーカトー

LUCKON GRAPHICS HP
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LUCK’A WARKS
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会場の至るところにWelcomeピクチャーが...。
今回は会場までの導線や会場内外の色々なところに、それぞれ違った可愛らしい絵たちが貼られていました。しかも、どれもメンバーの特徴やキャラクターを捉えていて面白いものばかり。エントランスの壁に、会場までの階段の壁に、そしてはたまたドリンクコーナーのカウンターにも…。私は5か所見つけましたが、あなたは何ヵ所見つけられました? そして、そんな中、何枚かをパシャり。

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集まった個々
この日の会場は渋谷クラブクアトロ。彼女たちの単独ライヴとしては最も大きなキャパシティとステージの大きさを誇る会場でした。とは言え、今回もチケットは早期にソールドアウト。私が開演ギリギリに会場に行った際には、開けたドアからオーディエンスが飛び出してくるほどの超満員具合でした。かなり周りのお客さんとも密着度が高かったにも関わらず、そこには不思議と一緒にいる感や共有している感じは受けませんでした。なんだか、そこが非常にきのこ帝国っぽいなと改めて実感しました。

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LIVE REPORT
きのこ帝国
東名阪ワンマンツアー「花束を持ってきみに会いに行こう」ファイナル
2014.2.18@渋谷CLUB QUATTRO

 初のEPとなった「ロンググッドバイ」と共に、大阪、名古屋と回ってきた、きのこ帝国。今回の東名阪ツアーのファイナルは、彼女たちにとって単独ライヴとしては最大規模となる渋谷クラブクアトロにて行われた。前回の代官山UNITでのワンマンライヴも早々にソールドアウトさせ、大成功に収めた彼女たちであったが、今回はその2倍のキャパシティ。とは言え、こちらも早期に完売を記録し、改めて今の4人の伸展を実感した。その上、今回は場内の密度の高さがこれまでにないほど半端ない。元来、隙間を空け、自分の空間を作り、そこで楽しむのが似合うタイプのバンドと一方的に思っているだけに、この密着感はどことなく不思議な感じがする。しかも身体はギュッと周囲のオーディエンスたちと密着しているのだが、そこに本来生まれていいはずの一体感や一緒感は今のところない。個々が一つの瓶に詰められて、運び出されるのを待っている。なんかそんな感じだ。もちろん、それは全くイヤな感じではない。

 前回の東京でのワンマンライヴに際し私は、彼女たちに<白>を感じたとレポートしたが(http://picka.lucka.jp/3319)、今回のワンマンはそれよりも更に色々な色を帯びた感受があった。しかしそれは、例えば温かい肌色だったり、アンニュイな乳白色だったり、スリリングな真紅だったり、冷んやりとした群青だったり…。どれもけっして原色的なものではなく、どちらかと言ったら<何かに近い何色>といった趣きのもの。もしくは、<何かと何かが混じり合い、混ざり合った類のもの>であった。それらは彼女たちの演奏や歌に見られる、そのままの額面通りには伝わってこない、修羅場や過去を潜り抜けて到達し、達観さが混じり表された、<きのこ帝国然とした楽曲群>と、どこか重なったものであった。

 元々「ロンググッドバイ」は、私にとってそんなニュアンスの作品であった。そこで伺える、優しさも冷たさも柔らかさも厳しさも、達観も諦念も傍観も深淵も遠望も彼岸も、歌われているものは全て、何かの修羅場を超え、現れ、見つけ、たどり着き、手に入れた歌ばかりだと感じた。それもあってのことだろう。この日のライヴは、これまで以上に彼女たちの歌に、時にハッとさせられ、気づかされ、引っ張られ、突き飛ばされたり突き放されたりと、楽曲毎に振り回されている自分と出会った。

 SEが暗転した場内に流れる。いつものmouse on the keysの「最後の晩餐」だ。元々は、ちょっとした高揚感や躍動を誘う楽曲であるはずなのに、それらとは正反対に、楽曲が進むたびに緊張感が更に高まっていく。青白くぼんやりと照らされたステージに4人がゆっくりと順番に登場する。各人がフォーメーションに着くと、ガツンとしたバンドによるデモンストレーション音が飛び出す。ステージのライトが青から赤に変わり、放たれた音壁の中から、明るいハミングが姿を現してくる。1曲目は「ロンググッドバイ」。EPの頭を飾っていた曲だ。作品同様、ボーカル&ギターの佐藤があえて低いキーで歌い出す。緩やかな上昇感を擁した同曲。それが会場に心地良さをもたらしていく。アウトロでは歌と西村”コン”による怒涛のドラミングと、佐藤、ギターのあーちゃんによるハミングが現れ、楽曲を締めくくる。

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 「こんばんは。きのこ帝国です」とあーちゃんが短い挨拶。間髪入れず谷口滋昭のベースがダビーにライヴを引っ張っていく。続いては「畦道で」だ。ゆらゆらとたゆたうように歌う佐藤。上昇感の次は不思議な浮遊感が会場に寄与されていく。左右にゆったりと揺れるフロア。リバーブ交じりの佐藤の歌声が、かすんだ空に広がっていく言葉たちを思い起こさせる。会場中がそこに吸い込まれていくような恍惚の表情を浮かべ、楽曲に自分たちを佇ませている。
 佐藤が一拍置き、スーッと大きく息をひと吸い。「退屈しのぎ」のダイナミズム溢れる激しいイントロに入る。楽曲の所々で、あーちゃんのピックのスクラッチによる効果音的な音が混じる。ゆったりとダイナミックに広がっていく楽曲。それに伴い会場が徐々に体温を取り戻していく。そして、まるで大海へと注ぎ出すように現れた激部では、西村のドラムがストームを呼んだ。続いてライヴは赤いステージライトとのベストマッチを見せた「ユーリカ」に紡がれていく。フィードバックによる音壁と、激ドラミングが印象的であった同曲。穏やかさから始まりながらも、時折いきなり深部へと突き落とされるが如く急変する演奏ストーリーがたまらない。佐藤は時折ギターを弾かずに、まるで何かをシャットアウトするかのように両耳に手を当てて歌う。あーちゃんのディメンションの効いたギターもあってのことだろう。激しい曲なのに、そこに妙なドリーミーさを覚える。まるで4ADレーベルのような音世界だ。楽曲が進んでいくに連れ、心が激しく揺さぶられていくのが分かる。同曲が終わると我に返ったように現れる会場からの歓声と拍手。うん、これもいつものきのこ帝国の感じだ(笑)。

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 次の「夜鷹」に入ると、青いサーチラストがまるでクラウドたちを見回すように照らし、回る。柔らかいメロディに乗せられた残酷なリリックたち。躍動感があり、本来はダンサブルに響いてもおかしくない楽曲のはずなのだが、不思議な緊張感が身体にまとわりついて踊らせてくれない。
 佐藤がギターと共に歌い出す。続いては新作から「FLOWER GIRL」が放たれる。少ないコード数や音数の分、歌が物語を広げていく。♪行かないで ここにいて♪のフレーズも印象的。加え、後半にリフレインされる♪FLOWER GIRL♪のフレーズが波紋のように広がっていき、場内の隅々にまで広がっていく。と思うもつかの間。後半は圧巻を武器に会場をグイグイ惹き込んでいく。次の「Girl meets NUMBER GIRL」に入ると、会場全体の雰囲気や色、空気がパッと変わる。上昇感と解放感のある同曲の登場に、心なしかホッとする自分。佐藤の弾くギターのストロークも伸びやかに響き、あーちゃんも奔放に踊りながらギターを放つ。特に同曲ではサビのストレートさが気持ち良かった。

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 ここでようやくMC。いつも通りあーちゃんがしゃべる。ステージでは孤高に映るメンバーたちだが、この瞬間だけは、”同じ人間なんだなぁ…”と感じることつくづく。どこか安堵を覚える瞬間でもある。ここでも語られるのは、とりとめのない話。だけど、これまで放たれ続けてきた緊張感から解放されたこともあってだろう。その一言一言に妙な親近感を覚える。

 ライヴに戻る。♪記憶は 思い通り 風化する♪のフレーズも印象的な「風化する教室」に入ると、会場からは楽曲に合わせクラップも飛び出し、ポップさと軽やかさが場内に呼び込まれていく。この曲では、あーちゃんのハミングも交わり、ことさら楽曲に軽快さが寄与されていく。次は「パラノイドパレード」。ハミングや、♪青い花柄のワンピース♪といった視覚に訴えるフレーズたちに関係しているのだろう。不思議な明るさと広がりのある曲だと、このライヴを通し改めて感じた。

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 あーちゃんのMCを挟みライヴは後半戦に。
 ギャラクシー500的な弛緩性とまどろみがたまらない「ミュージシャン」では、弛緩したノイズがゆっくりと上昇していき、急に沈殿に向かったり…。しかし、そこに美しささえ感じた同曲。浄化されたり、透明になっていくかのような自分と出会う。と思うも一瞬間を置き、白色のまばゆいバックライトが我々の目を射る。中から現れたのは怒涛のアウトロ。そのドラマティックさは、この日のハイライトの一つに数えられる。ノイズの壁に向かい合い、なす術もなく全身を委ねる会場。そしてそれを経、超えた向こう側で待っていたのは凪のようにことさら優しく感じた「夜が明けたら」だった。アルペジオと歌い出しから入った同曲。自分を省みさせるような歌に、会場中が自身のエゴや復讐、そして、”それでも生きていたい!!”という生への狂おしいほどの執着に気持ちを重ねていく。抜け殻から始まるも、最後には圧倒的な<生>へと行き着く、誠に実直さ溢れる歌だ。
 ちょっとした牧歌性がいきなり会場に呼び込まれる。続いては5拍子の曲「海と花束」、そして「WHIRLPOOL」が立て続けに鳴らされる。特にイントロが高らかに響き渡った瞬間に場内が色めいた「WHIRLPOOL」では、ベースの谷口のコーラスも交じり、至福のようなサウンドに乗せられた男女混成ボーカルが至福の時を連れてきた。
 本編ラストは「明日にはすべてが終わるとして」だった。ミラーボールも回る中プレイされ、歌われた同曲。ラストは、曖昧ながらも、そんなことは関係ないとばかりに次へと進みたくさせる、照らしてくれるような救われる歌で本編は締められた。

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 アンコール。ここでもあーちゃんがMCを担当する。スタッフやメンバーの紹介。それに加え、物販の宣伝ーも。LUCKON GRAPHICSデザインによる、今回のツアーから発売された「目玉スノボー」について、メンバーも嬉しそうに言及。愛着を持ってくれているのが分かり、こちらもつられて嬉しくなる。

 そして、「新曲を」と、「東京」とタイトルされたナンバーが歌われた。コーラスの重なりも印象的だった同曲。光と生命力、なんだか”生きている!!”って感じのバイタリティが身体中を包んでいく。広がるハミングと共に、ステージの光量も上がり、遂にはそれは会場をパーッと飲み込んでいった。♪あなたを見つけた。この街の名は東京♪のフレーズも耳に残る、新しいタイプの東京ソングの出現に立ち会えた瞬間であった。
 アンコールのラストは「国道スロープ」が締めた。ストレートで疾走感溢れる同曲。サビのストレートさがたまらない。♪3年前のあの日の台詞が傷つける♪のフレーズが耳に残る中、やり切った感たっぷりの表情を残し、4人はステージを下りた。

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 思えば、「ロンググッドバイ」は、春のような作品であった。いや、このEPに限らず、全体的にきのこ帝国は春の感じがする。あの霞みかかった空気のような、初夏に向かうあの気だるさみたいな、厳しい冬を超えた後だからこそ尚更感じさせるのであろう、その<生きている>という生命感や刹那感、そして辿り着いた凪。加え、ぼんやりとした明るさや温かさを擁しているところも…。そしてそれらは、スキャットやコーラス、ハーモニーといった肉声による天然のエアリーさによって、より色づいたものになった今作を経て、私の中ではより明確なものとなった。
 間もなく春がやってくる。この「ロンググッドバイ」は、どんな景色の中で聴いたらしっくりくるだろうか?やっぱり彼女たちの歌詞の多くに出てくる海辺かな…? この日のライヴから帰る道すがら、様々なシチュエーションに、この作品と共に佇んでいる自分を思い浮かべた。

 
Report : 池田スカオ和宏


【SETLIST】

1.ロンググッドバイ
2.畦道で
3.退屈しのぎ
4.ユーリカ
5.夜鷹
6.FLOWER GIRL
7.Girl meets NUMBER GIRL
8.風化する教室
9.パラノイドパレード
10.ミュージシャン
11.夜が明けたら
12.海と花束
13.WHIRLPOOL
14.明日にはすべてが終わるとして
Encore
En-1.東京
En-2.国道スロープ


INFORMATION

【MEMBER】

picka.lucka.jp18_kinoko_artistphotoVo.&G. 佐藤
G. あーちゃん
B. 谷口滋昭
Dr. 西村”コン”


【PROFILE】

2007年結成、2008年から本格的にライブ活動を開始。ポストロック、シューゲイザーに影響を受けたサウンドで下北沢、渋谷を中心にライブ活動を展開中。
2012年5月、1stミニアルバム『渦になる』リリース。
2013年2月、1stフルアルバム『eureka』リリース。きのこ帝国 “eureka” リリース全国ツアー「すべてを夜へ」を敢行。ファイナルは、初のワンマンとして代官山ユニット(ソールドアウト)。同年5月、カナダにてライヴツアーを行う。
同年12月、初のEP「ロンググッドバイ」をリリース。
2014年2月、「ロンググッドバイ」のリリースツアーを東名阪で行う。全箇所ソールドアウトを記録する。


【NEW ITEM】

picka.lucka.jp18_kinoko_jacket1st EP
『ロンググッドバイ』
UKDZ-0150
¥1,400税抜)
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【DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT inc.】

1.ロンググッドバイ
2.海と花束
3.パラノイドパレード
4.FLOWER GIRL
5.MAKE L


【LIVE SCHEDULE】

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