SPANK PAGE ワンマンライヴ「18CANDLES 18SONGS キャンドルと声の夜 LIVE in 渋谷」

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2010.10.05

SPANK PAGE ワンマンライヴ「18CANDLES 18SONGS キャンドルと声の夜 LIVE in 渋谷」

SPANK PAGE
ワンマンライヴ
「18CANDLES 18SONGS キャンドルと声の夜 LIVE in 渋谷」
2010.9.24(Fri)
@Mt. RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

 小さい頃、小学校の理科の授業で、「炎はトップの赤い部分より、中の青い芯の方が温度が高い」と習った。それまで<赤は熱い><青は冷たい>といった杓子定規を持っていた僕は、その<青いけど、時にそれは赤よりも熱い場合がある>との事実に惹かれたものだった。
 僕にとってのSPANK PAGEのイメージは、その炎の芯。青白いんだけど、その実、非常に熱い思いや気持ちや心情を半ば願いや祈りの如く歌に秘めている類だ。特にライブに於ける彼らには、その辺りを強く感じる。
 そんな彼らがキャンドルの灯に包まれ、ライブを行うという。同じ火ながら<燃える>のが目的ではなく、人の心や暗闇をポッとあかるく燈す目的を持つ灯、キャンドル。考えると、こちらの方がより彼らの音楽性には近いではないか。

 その日のSPANK PAGEのライブは、彼らの通例であるオールスタンディング形式ではなく、シアタータイプの固定椅子席制の会場。以前より一度は彼らのライヴをホールやイス席制の会場で見たいと思っていた僕は、それがとても嬉しかった。それは何故か?もちろんスタンディングでの体感も捨てがたいのだが、彼らの音楽の持つデリケートさやセンシティブさは、音響設備のしっかりとしたホールや椅子席制でこそ映えると思っていたから。そう、彼らのライヴはどことなく目と耳、体全体で鑑賞する、そんな体感の仕方が合うのではないだろうか。それは彼らの音楽のどこかに絵画や映画に近いものを僕に想起させることも手伝っている。実際、それを1年半前のメジャーテビューしたての取材の際に彼らに伝えたのだが、その時は照れ笑いしながら、「いずれは是非演りたいですね」なんて答えてくれたっけ…。
 あれから1年半。あの時の会話などとっくに忘却の彼方だろうが(笑)、僕の希望が今叶おうとしている。

 今回の我がラッカはこのライヴ用に、特製キャンドル、大型缶バッヂ、そしてタオルの制作を担当した。

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 開幕のブザーが鳴り、場内が暗転。その暗闇の中、ステージにボーカルの仲手川が現れ、アカペラで「笑えないよ」を歌い始める。途中、ステージ中央のオルガン風の鍵盤の前に座わり、そのアカペラに音色を加える。歌い終わると、キャンドルが一本だけ点いたステージにて、「18CANDLESにようこそ。まずは僕の部屋から始め、最後にはみんなと一緒に高いところまで行けたらと思っています」と挨拶。聖堂系のオルガンが鳴り渡り、ステージ各所に配された大小のキャンドルに火が灯る。その幻想的な雰囲気の中、ギター/キーボードの山下、ベースの大成、ドラムの水野もステージへ。厳かな空気の中、一音一音重なるように「be」が完成させていく。仲手川のオルガンと、山下、大成のシンセによる重奏を更に支えるように、優しく、柔らかく、温かいコーラスも会場を包む。続いて、彼らの楽曲の中では最も雄々しい曲であろう「luv」での、歌い出しの雄たけびが力強く響き、会場を血沸き肉踊らせる。3人のコーラスも原初ながら悠久性を抱かせ、山下もタムとフロアタムを躍動感たっぷりに叩き、水野とのツインドラムばりのトライバル感で会場を包む。血がたぎるがごとくラストに向け、とてつもない高揚感が生まれる。うーっ、こういった場面は、やはり椅子席だともどかしい(笑)。そして、安堵感溢れる優しくも激しいイントロが会場に響き渡り、柔らかく優しい雨が会場を包み込んでいく。続いては「ame ~rain song~」だ。間の山下の轟音シャワーが心地良い。後半の安堵感とブワーッと広がっていくさまはたまらない。ラストに向けステージが発光していくかのように映り、合わせて会場全体も徐々に光に包まれていく。

 無言のチューニングタイムに入ると、キャンドルの厳かな雰囲気がまたもや会場に戻ってくる。
 水野のカウントと共に性急的なイントロが会場中に響き渡る。飛び出したのは「だませない孤独」だ。山下の鍵盤が焦燥感を煽り、大成と水野のリズム隊が疾走感を生みだす。合わせて心も走り出しそうだ。グワッと上がっていき、そこからフッとブレイクするところは、この日もたまらなく美しく、その後の疾走感を更に助長させていた。次は「らしさのありか」。同期したタップ入りのベースループと、そこに乗る仲手川の歌。その後、4人によるバンドサウンドに一変する瞬間、独特のゾクッ感が生まれる。大成のダウンピッキングも激しくなり、その後のギターソロとドラムの暴走感、そこからランニング部分へのシフトがたまらない。歌詞の「何かが動いた」ではないが、僕の心も確実に動く。前曲のフィードバックを打ち破る仲手川のギターイントロに乗り、続く「31eyes」では、水野のフロアタムを活かしたドラムが緊迫感と緊張感を作り出す。ゾクゾクとしてくる曲に、会場中が多少前のめりになる。段々と強まるシンセカウベルに合わせ、高揚感も高まっていく。その後現れるストレート部は、その緊迫感から解放されるようで、ことさら気持ち良さも倍増。さらにブリッジ部でのストレートなモータードライヴへのシフトもたまらない。水野も何かが憑依したように叩きまくっている。曲はそのまま「triangle」に突入する。彼らの中では比較的ストレートな同曲。間の仲手川のシャウトが会場を惹き込み、それをトリガーに残りの3人のプレイも会場をグイグイ惹き込む。水野のドラムのスネアやタム類の大きさに比べ、あえてのバスドラの小いささが、この会場ならではの程良いラウド感を生んでいる。

 仲手川の軽いMCを挟み、アカペラ風のコーラスから始まった「cocoa」では、水野がシェイカーを、大成が必要最小限の音を出す。ステージ後方の楕円形ビジョンにも数々の情景写真が映し出される。続いての「september」は、ロカビリーテイストを交えた、ポップで弾んでいるんだけど、切ない雰囲気を持つ不思議な曲。ラストの倍テン部からは、気持ちと共に会場の温度もグッと上がる。そして、冒頭にてアカペラだった「笑えないよ」が今度はバンドとして再演。途中水野もダンサブルなリズムを刻み、会場に躍動感を与える。
 再びステージ中央に鍵盤がセット。ここで仲手川が「キャンドルがきれいだな。楽しいだろうけど、寝ないでね(笑)」と、会場に和みを加える。そして「新しい曲を」の後、「Mr.you」が始まる。鍵盤を弾きながら歌う仲手川と、4つ打ちでつなぐ水野。そこにパッと色づけするように4人の音が成立していく。

 「今日は来てくれてありがとう」と仲手川。ここで仲手川家の系譜。両親が共働きだったため、祖父とよく過ごしていたこと。その祖父の住んでいた小さな家のこと。不思議とそこにいると落ち着いたこと。その小さな家での居心地の良さは自分の部屋のクローゼットに閉じこもるのと似ていて、それが最近はとてもお気に入りなこと。そして、「そのクローゼットの中で書いた曲」との紹介の後、新曲「隠れた君を見つけるほうけ」が始まる。シンセとベースラインのループ、少ない音数の中、ファルセット交じりで歌う仲手川。音数が少ない分、感情移入やアクションで楽曲に演出を加えていく。音数の少ない曲は続く。次は「今と夢と5分先」だ。仲手川のアルペジオと指パッチン音の長いイントロも印象的な深海感のある同曲。ベースラインと爪弾きギターと時々一音一音現れるシンセ音は、徐々に我々を深い海の底へと誘う。

 山下がヴァイオリンの弓的なものでギターの弦を弾き、それが幻想的な音を出す中、優しく柔らかい仲手川の歌が現れた「不器用な情景」。ゆったりとした歌い出しから2番へと入る際の情景の一変が聴く者の胸に広がっていく。加え3番に入るグワッとするところは、それこそ鳥肌もの。そして、ランプとキャンドルの灯りの中、「そばにいて」が歌われる。間には山下のギターソロが雄弁に語り出し、途中いつものごとく会場を一瞬カタストロフィに巻き込む。「果てるまでそばにいて」との仲手川によるトボトボとした歌とそのフェードアウト感がこの日もポッとしたぬくもりを与えてくれる。
 ここでMC。仲手川がキャンドルについてを説く。「ある意味、曲に入れ込む思いと祈りに込めた点は似ていて、それをそっとフォローし、支えるのがキャンドルだと思う。だから、そんな中で歌いたかったし、みんなと時間を共有したかった」との言葉に、会場中がこのライヴの意味や意義、そこに込めた想いを確かめる。

 ここからはラストスパート。まずはメトロノームの上、仲手川の歌いだしから始まった「see」。大成も仲手川の傍らに寄りプレイする。水野の4つ打ちが加わると、より生きている喜びを思い起こさせる。まさに先程のMCがそのまま歌になったかのような曲に会場中が魅入る。水野のバスドラ音とシンバル音が徐々に強まっていき、ハネでもつけて舞い上がっていくような至福感に会場が包まれる。シンバル台が倒れんばかりに強く叩いていく水野。会場中が福音に包まれていく。本編ラストは仲手川もアコギに持ち替え、4つ打ちとマーチ感がブレイブ感を煽る「誰も知らない」。力強いリズム隊とダウンピッキングの山下のエレキ、仲手川の凛としたアコギのストロークが会場の勇気を引き出していく。歌詞で何度も歌われた「誰も知らない地図を書こう。誰も知らない大陸へ移動」。その通り、間違いなく誰も知らない高みや景色を見せてくれた瞬間だ。これこそライヴの冒頭で仲手川が約束してくれた光景。感情たっぷりに最後まで歌い続けた仲手川も歌い終わると、”出し切った!”という表情で座り込む。

 アンコールは3曲。その前に「俺も今日はそこに座ってみてたかったよ(笑)」と仲手川。いや~、実際見せたかった。ホント素晴らしいんだから。
 アンコール1曲目は、映画『BECK』でも起用されていたナンバーのSPANK PAGEバージョン「BOY」。力強く、ワイド感とスケール感を持った曲だ。そして、優しくジワジワと染みる愛や愛しさに満ちた「go」が会場に広がり、会場中スイートホーム感に包まれる。アンコールのラストは「呼吸」。会場の雰囲気も手伝い、いつもより優しく、柔らかく響く。仲手川も途中からハンドマイクに持ち替え、会場からも曲に合わせ手拍子が起こる。今まで一人ひとりでの体感だったのが、ここにきてこの会場ならではの共有が生まれる。最後は仲手川1人が残り、「きっかけはいつも目の前にある」のリフレインを、お客さんの手拍子の上、アカペラで歌う。大合唱こそ起こらなかったが、この日の会場の一人ひとりが心の中で合わせて歌っていたことだろう。

 「キャンドルと声の夜」との副題の通り、この日のライヴは、厳かながら、優しく柔らかい、まるでそのキャンドルの灯りのような雰囲気が会場を包んでいた。”やはり火は火でも、彼らの場合は何かを燈すための火だったんだな…”と、ライヴの帰路中、何度も思った。

Report : 池田スカオ和宏


【SET LIST】

1. 笑えないよ
2. be
3. luv
4. ame ~rain song~
5. だませない孤独
6. らしさのありか
7. 31eyes
8. triangle
9. cocoa
10. september
11. 笑えないよ
12. Mr.you 
13. 隠れた君を見つけるほう
14. 今と夢と5分先
15. 不器用な情景
16. そばにいて
17. see
18. 誰も知らない
Encore
En-1.BOY
En-2.go
En-3.呼吸


【MEMBER】

Vo./G./Key. 仲手川 裕介
G./ Key. 山下 啓一郎
B. 大成 泰
Dr. 水野 雅昭


【PROFILE】

緻密さとセンシティブさ、そこはかとない叙情性やドラマティックな世界観を持ち、「和製Sigur Ros」「和製Coldplay」とも称され、現存のJ―POP/J-ROCKシーンでは異彩な存在感を放っている4人組ロック・バンド。2004年横浜で中学時代の幼馴染み3人(仲手川/山下/大成)が中心となり結成。ライヴと並行し、完全自主制作のアルバムの制作や数種のコンピ盤への参加を経て、 2007年にはインディーズにてミニアルバム『I GO HOME』リリース。2009年1月TSUTAYA 限定シングル「不器用な情景/呼吸」をリリース。ほぼノン・プロモーションにも関わらず各チャートを席巻する。2009年春に「koi」にてメジャーデビュー。2ndシングル「ame ~rain song~」を経て、同年8月、ニューミニアルバム『らしさのありか』を発売。同年夏には、多くの夏フェスやイベントに参戦。2010年1月、ニューシングル「不器用な情景」を発表。同年3月には初のワンマンライヴを成功させ、6月からは「笑えないよ」「だませない孤独」、UKレジェント・ロックバンドoasisの「Don’t Look Back in Anger」のカバー曲と3ヵ月連続でデジタルシングルを配信。同年9月には、映画「BECK」提供曲を自らプレイした「BOY」を配信リリース。同月24日にはキャンドルに囲まれた中で行われたワンマンライヴ「18CANDLES 18SONGS キャンドルと声の夜」を成功させる。


【NEW ITEM】

DIGITAL SINGLE
「BOY」
現在公開中の映画「BECK」劇中では『MOON BEAMS』というタイトルで映画のハイライトシーンで使用され話題を呼んでいる、仲手川裕介の書き下ろした同曲。
映画公開後にまき起きた各方面からの音源化の熱い要望を受けて、着うた、着うたフルにて絶賛配信中。


【LIVE SCHEDULE】

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【ARIST HOME PAGE】

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