岩崎慧&ウリョンPRESENTS『One Man Sings -folk has enough rock-』

岩崎慧&ウリョンPRESENTS『One Man Sings -folk has enough rock-』

岩崎慧&ウリョンPRESENTS
『One Man Sings -folk has enough rock-』
@代官山 晴れたら空に豆まいて
2010.8.11(Wed)
岩崎慧(From セカイイチ)、ウリョン(From cutman-booche)、佐々木亮介(From a flood of circle)、谷川正憲(From UNCHAIN)

 例え同じ歌であっても、聴き手のその時々の気持ちやシチュエーションによって、感じ方や響き方が違うように、演者にとっても同じ歌ながら、その時々の季節や気分、伝達手段によって違った歌として放たれ、響くことがある。ましてやそれが普段の常套であるロックバンド・スタイルではなく、アコースティックギターの弾き語りというシンプル且つデリケートな伝達スタイルであれば、なおのこと。演者のその時の気持ちの込め方や思い入れが更に加わり、同じ楽曲ながらバンド時には窺えなかったネイキッドさやバックボーン、ルーツが楽曲から滲み出たりする。

 今回レポートする『One Man Sings -folk has enough rock-』は、cutman-boocheのウリョンとセカイイチの岩崎をホストに、「ロックバンドのフロントマンが、あえてアコギと声でロックンロールする」という原初性溢れるイベント。彼ら所縁のバンドマンたちが、普段のエレキをアコギに持ち替え、自身の曲やカバーを身近に感じられる距離感で放ち合うものだ。第二回目の今回は、a flood of circleから佐々木亮介、UNCHAINから谷川正憲を迎え行われた。

 ”普段のロックバンド的スタイルでの楽曲や各人のカバーの解釈が、このような<縛り>でどのように響くのか?”も大きな興味としてあった、この日。偶然にも出演4組中3組が我がラッカにてグッズ制作やデザインにて日ごろ関わっている関係と、このイベント用のTシャツ(売価ナント¥1500!)も制作していることもあり、今回レポートを書かさせてもらうことにした。

One Man Sings -folk has enough rock-会場

 まずはこのイベントのホストを務めるウリョンと岩崎がギターを持ちステージに。イベントのテーマ曲「One Man Sings」を 本日の出演者名を入れ込み、愛着とユーモアを折り混ぜ歌い出すと、すっかり和やかでウェルカムな雰囲気に会場が包まれる。

 そして、2人のイントロデュースに乗り、まずはa flood of circleの佐々木が黒いアコギと共に現れ、座ってやおら弾き語りを始める。1曲目は「ブラックバード」。硬質なギターカッティングとブルースフィール溢れるしゃがれた歌声が聴く者をダイレクトに射す。目をひんむき、ツバを飛び散らせながら切々と歌う姿と歌に会場全体が”聴き漏すまい!!”とグッと力を入れ、前傾姿勢で聴き入る。続いて間髪を置かず、「Human License」が聴き手各々のアイデンティティを問い、ネイキッドな分、よりダイレクトに痛々しく聴き手の胸に突きつけられる。聴き手に問い、突きつけるナンバーは続く、次は10からのカウントダウン後の「問題です」のつぶやきと共に「Quiz Show」が飛び出す。そして、セカイイチの岩崎から教えてもらったコードを拝借して作ったという「コインランドリー・ブルース」が、自身を映し出し、照らし合わせるように歌われると、「自分のバンドは自身も含め夏が似合わないメンバーばかり」と自身のバンドの特徴を自嘲気味に伝え、「しかし、その姿に似合わず、”夏だな…”って曲も好きで…」の言葉の後、グレイプパインの「風待ち」がカバーされる。夏の残り香を感じさせる楽曲に、会場全体が今夏のタイムリミットへと思いを馳せる。そして、会場からの手拍子の中、「象のブルース」がリズミカルに、ブルージーに歌われ、同曲を終え、「みんなのおかげで明るい気持ちになれたけど、明るいまま終わるわけはない」とラストナンバーが放たれる。問いているようで、その実、”愛してくれ!!”と響く同曲は、最後まで会場中をLOCK ONした。

 ブルースの次にはソウルフルでソフィスティケイトされた歌が会場を包む。2番手はUNCHAINの谷川だ。「どうも谷川正憲です」の挨拶の後、まずは自身のバンドの「Last Piece」がボサノバ調にアレンジされ歌われる。優しく柔らかい歌い出しから後半にはエモさも交わり、歌が会場中に広がってゆく。続いては、谷川が大好きなスティービー・ワンダーの「If You Really Love Me」が愛着溢れる形でソウルフルにカバーされる。

 曲が終わる毎に「谷川正憲です」と伝える彼。その言葉を放つことにある種の快感を得たようだ(笑)。続けて、「今後、このようなスタイルで演る際は『マスヲUNCHAIN』名義でもいいんじゃ?」と場内を和ませる。

 続いてはUNCHAINの「Super Collider」がブルージーにデフォルメされてプレイされる。ソフィスティケイトに変貌しながらも、より温かくダイレクトに響く同曲。ここでの技巧的なギターのカッティングはある種見ものであった。次のカバーは意外にもドリカムの「いつのまに」。オリジナルのハイトーン性をソウルフルなファルセットを交え独特の譜割で歌いこなす。続いては、ボサノバ・タッチを前面に打ち出した「Tonight’s The Night」。ブルージーでジャジーなギターソロも交わり、楽曲にアダルティさを加える。この曲のラストでのフェイクや感情移入たっぷりな歌い回しには鳥肌。会場中がグッときたことだろう。そしてラストはオルタナ・ブルース的にアレンジされた「Don’t Stop The Music」で締め。聞くところによれば、彼がこのような一人での弾き語りに挑むのは、ほぼ初。その割には手慣れて映り、UNCHAIN時とは趣きを違えながらも、同バンドの様々な音楽性のブレンドやハイブリッドさの片鱗が各曲キチンと窺えたのも印象的であった。

 ウリョンと岩崎がステージに現れる。ここから2人で出番の順番をジャンケンで決めるとのこと。ウリョンが勝ち、先行は岩崎。そのまま足元の無数のエフェクトが並べられたボードと彼、そしてギターがステージに残される。”えっ、アコースティック・スタイルなのに、そのエフェクター類って…!?”。その秘密が解かれるのは、数曲後になってのことであった。

 その岩崎。まずはソウルフルでアドリブ交じりの歌い出しから始まった「聞いてますか お月様?」で、会場全体をまるで月明かりに優しく照らされているかのように、身も心も裸にされている気持ちにさせると、続く夜のしじまに響き渡り、染み入るように歌われた「あたりまえの空」では、聴き進むに連れ、多くの人に、歌に出てくる満開の花の下での光景や心情を思い浮かべさせる。そして、後半には足元のエフェクターを駆使し、幻想さを交え歌われた「アンテナ」、”この夏、自身に何が残り、何を残せたのか?”が歌を通し会場に問われた「夏の終わり、」。そして、「RAIN/THAT/SOMETHING」では、ギターカッティングとギターフレーズのリアル・サンプリング・ループに合わせ、お客さんも手拍子で呼応。最後のサビの部分では、岩崎とお客さんとで共に楽曲を成立させるべく合唱も発生。この辺りも、この親近感のある距離ならではだ。そして、更に会場とステージの距離を縮め、一体感を生むがごとく、次の「合言葉」では、会場中で歌に合わせてハミングが発生。その際のお客さんの嬉しそうな顔もとても印象的であった。

 ここでウリョンが呼び込まれ、そのウリョンが好きだという「あかり」が、岩崎、ウリョンのデュエットにて歌われる。岩崎の歌とギターに、ウリョンのコーラスやハーモニーとブルースハープ。2人がリレーション式でボーカルを取り、2人の声質の近似が楽曲にふくよかさを加え、バンド・スタイルとは違うドラマ性やブルージーさを楽曲に加える。

 そして、ランニングにバミューダという夏ならではな出で立ちのウリョンが登場。口笛とギターの爪弾きから「少年時代」にインする。自身の少年時代と今の自分とを照らし合わせ、忘れなかったこと、思い出すこと、思い返すことがシンプルな伝達方法の中、会場中に思いを馳せさせる。続いては関西弁で歌われる「ジョゼ」。ギターとブルースハープというスタイルで送られる同曲に会場中が聴き入り、愛しい気持ちで胸がいっぱいになる。ノリの良い手拍子の中、突入した「Verse book」では、間のウリョンによるスキャットのコール&レスポンスにて会場の高揚感も増進。そして、「葛藤の多い自分のようなB型みたいな曲」とのMCのあと歌われた「トキノカットウ」にはB型の自分も妙に納得。サビの部分では会場中の大合唱を生み、お客さんと共に楽曲を完成へと導く。「1曲1曲、1ステージ1ステージ大切に、自分たちの歌を通して、みんなを元気にしたい。一つ弱い自分と決別できた」との言葉のあと「夏のかけら」が歌われると、曲から溢れ出る<何かを求め、何かを探している気がする>が、まるで自身のことのように響いてくる。

ここで岩崎が呼び込まれ、鼓舞ソング「立ち上がれ」がオール・スタンディングと化した会場に響き渡る。力強く、ダイナミックなナンバーの登場に、会場中がコブシを握り、それを天に向け突き上げる。…までは至らなかったが、心の中ではみんなきっと挙げていたことだろう。


 
 ここからはアンコール。まずはラッカ制作のこのイベント用のTシャツを着たウリョンと岩崎が登場。本日共演した佐々木と谷川も呼び込まれ、中島みゆきの「ファイト!」がカバーされる。オリジナルの鬼気性に負けず劣らず、4人4種の切々とした感情がたっぷり移入された同曲。厳しいんだけど、どこか温かく、聴く者のコブシを握らせ、”向き合わなくちゃ!!””闘わなくちゃ!!”的な気持ちを込み上げさせた。

 そして最後はウリョンと岩崎がステージに残り、2人で感謝の気持ちを込め「One Man Sings」のエンディング・バージョンが和やかに歌われ、イベントは大団円を迎えた。


 ギター一本と歌が故のダイレクトでネイキッドな表現方法ながら、お客さんと共に作り上げる空間性も伴い、普段以上に雄弁に響いた感のある、この日の各人の歌。次は是非アナタにも味わって欲しい。その日、その時、その歌はあなたにどう響くのか?僕はそれが今からとても楽しみだ。ちなみに次の『One Man Sings』は12月22日です。


Report : 池田スカオ和宏 Photo : LUCK’A


【SET LIST】

岩崎慧&ウリョン
1.One Man Sings -OPENING THEME-

佐々木亮介
1.ブラックバード
2.Human License
3.Quiz Show
4.コインランドリー・ブルース
5.風待ち(GRAPEVINEカバー)
6.象のブルース
7.タイトルなし

谷川正憲
1.Last Piece
2.If You Really Love Me(Stevie Wonderカバー)
3.Super Collider
4.いつのまに(Dreams Come Trueカバー)
5.Tonight’s The Night
6.Don’t Stop The Music

岩崎慧
1.聞いてますか お月様?
2.あたりまえの空
3.アンテナ
4.夏の終わり、
5.RAIN/THAT/SOMETHING
6.合言葉
7.あかり(w/ ウリョン)

ウリョン
1.少年時代
2.ジョゼ
3.Verse book
4.トキノカットウ
5.夏のかけら
6.立ち上がれ(w/ 岩崎)

Encore

岩崎、ウリョン、佐々木、谷川
1.ファイト!(中島みゆきカバー)

岩崎慧&ウリョン
1.One Man Sings -ENDING THEME-

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