毛皮のマリーズ『Restoration TOUR 2010』ツアーファイナル
毛皮のマリーズ
『Restoration TOUR 2010』ツアーファイナル
@恵比寿リキッドルーム
2010.7.11
「サッカーW杯決勝」「参議院総選挙」と、一般的には大イベントが揃った2010年7月11日。それらをも凌駕するイベントがこの日、我ラッカにはあった。それは毛皮のマリーズ『Restoration TOUR 2010』ツアーファイナル@恵比寿リキッドルーム。<ロックンロールの復権>を目の当たりにさせてもらった、この日のワンマンは、私たち同様1000人もの立会人を集め、そのチケットは2分で完売だったと聞く。
以前より物販物の制作や私のライティング業務、はたまた当サイトのグッズレポートと、会社ぐるみでお世話になっている我がラッカは、ニューデザインのTシャツを始め、今回のツアーでも色々なグッズを制作させてもらった。
場内が暗転し、土着的なパーカッションが鳴り響く。「レディース・アンド・ジェントルマン」のイントロデュースと共にフロア中央の巨大なミラーボールが回り出し、R.ストーンズの「HONKY TONK WOMEN」的な越川によるギターリフと、ドラムの富士山のカウベルが場内に響き渡る。まずはその越川、富士山、ベースの栗本に今回のゲストキーボードの奥野による、ダルでルーズなイントロが流れ出す。興奮を煽り、ジラすように、その中に上下ライトブルーのスーツを着たボーカル志磨がミック・ジャガー然とした古臭いツーステップと共にステージに現れる。スタンドマイクを掴み、そのまま1曲目の「金がなけりゃ」にイン。オリジナルのカリプソとは違い、南部臭プンプンのアレンジに場内のボルテージも一気に上がる。続く「COWGIRL」に突入すると、ワイルドカウがいななきを上げフロアに突進。勢いの加速を上げにかかる。そして、ニューアルバムの1曲目を飾る「ボニ―とクライドは今夜も夢中」が飛び出すと、場内も”待ってました!”と更にライドオン。作品以上のドライヴ感に会場とステージに言いようのない一体感が生まれる。再びルーズなブギーが飛び出す。続いては「DIG IT」だ。大サビの上昇感と解放感からアウトロの倍テンへの雪崩込みにフロアも蜂の巣を突いたような騒ぎに。曲中には志麿から「今日は最後までロックンロールしかやないから頼むよ」との力強いマニュフェストが。それに会場中がアライアンスを組むように力強い呼応を返す。
ここでハンドマイクに持ち替えた志磨が「ロックンロールよ、いきっぱなしで戻ってこずに、コテンパンにしてくれ。だけど、戻ってくるなら、生きて帰ってこい!!」とシャウト。その叫びに乗り、「ガンマン、生きて帰れ」が鳴らされる。作品での乾いた感じを良い意味でブレイクし、今風のロックンロールとして響かせるところは彼らの面目躍如。これは終始そうであったのだが、例えオールドマナーのロックンロールをカマそうが、今の彼らにかかれば最新鋭のロックンロールに変貌するから不思議だ。そこからJAIL HOUSE的なイントロの「犬ロック」に突入すると、よりフロアの密度も上がる。釣られて会場中がツイストを踊る、わけはなく、コブシとポゴダンスで呼応する。ラストは志磨がHOUND DOG(エルビス・プレスリーの曲)よろしく、犬の仕草を見せる。そうそう、今回のツアーは今まで以上に、多くの曲でその歌詞のフレーズに合わせ、体現するパフォーマンスを志磨がしていたのも印象的であった。
志磨がアコギに持ち替え、自称<20歳の頃のヒット曲>、「サンデーモーニング」「悲しい男」が放たれる。”自分は20歳の頃。どんな将来を想い描いていたのだろう?”。そんなことを会場中に想像させた同2曲。特に「悲しい男」は、作品でメインを占めていたトラジ的な面が、富士山のロール交じりのドラミングのブレイブ感も手伝い、どこか希望や明るさを漂わせていた。
ここで志磨のMC。「長いツアーを回っての最終日。今日はとてもスペシャルなライヴにしようと思ってきた」と語り、ゲストのアルトサックス、バリトンサックス、トロンボーンのNATSUMENホーンズを呼び込む。「良いことがある人は、さらに良いことがあるように。悪いことがあった人は、それ以上悪いことが起こらないように。全ては上手くいく。そんな歌です」と、ニューアルバムの精神的支柱とも言える「それすらできない」を始める。極上のソウルバラードに会場中が聴き入り、多くの人が自身を見つめる。悲壮な場面や心情が歌われながらも、なんて心を動かし、鼓舞する歌なのだろう。この歌を聴くと、本当にこれ以上悪いことが続かないと本気で思えてくる。
ポップでモータウンな雰囲気が場内の空気をガラリと変える。続いては「BABY DOLL」だ。富士山の弾んだビートに栗本のウキウキするようなベースライン。幸せで嬉しい気分が場内を包む。それがステージにも伝わってのことだろう、志磨もスタンドマイクでボックスステップを踏んでいる。続いてノンストップで栗本が歌う「すてきなモリ―」に突入すると、そのポップな雰囲気に桃色が加わる。キュートな歌声が場内に微笑ましさを生む。
ここでのMCでは、ツアーでの成功への感謝を伝え、今回のツアーではステージから見えるクラウドの光景がそれまでの得体の知れないものから、何ものにもかえがたい愛しいもののように映ったこと。ここに集まったのは、全て話が長くて、頭はいいんだけど、まどろっこしくて、ひねくれてて、バカ正直で、それていて<俺は絶対に他の人間と違って凄い!>と自負している、そんな自分のようなタイプの愛しい輩たちが今日はここに1000人も集まったこと等が伝えられる。そして、それを呼び水に、<大切にしてきた音楽のような人生>と<人生のような音楽>の縮図「ビューティフル」が誇らしげに鳴らされる。サビの部分ではフロアからも大合唱。今や同曲がしっかりとアンセムとなっていることを実感した。
ノンストップで「REBEL SONG」に突入すると、キュートな栗本のコーラスやサイドボーカルも加わる。既に前曲で沸点に達しているフロアに更にもう一撃が加わる。
もう一度、NATSUMENホーンズと奥野が呼び込まれる。志磨が「ツアーが今、終わります。ロックンロールありがとう。毎晩、ワーワーうるさい地下室へと誘ってくれたバンドワゴンに感謝」の言葉と共に本編最後に「バンドワゴン」が飛び出す。騒乱と狂騒な今回のツアーを走馬灯のように呼び起こす同曲。ラストは華やかにド派手に、これからも彼らが全国にロックンロール・パーティを届けていく宣言のように映った。
ここからはアンコール。まずは志磨が「ロックンロールは一度も負けたことがない。常に勝ってきた」と、その夜の選挙結果での当選の如く、場内全員で万歳三唱を行う(笑)。アンコールの1曲目は新曲「コミック・ジェネレーション」。富士山の力強いドラミングから始まり、8ビートが主体のロックンロールな同曲。「愛も平和も欲しくないよ。だって君にしか興味ないもん」とのストレートなフレーズも印象的で、続くハミング部も覚えやすく、即歌いやすい。彼らの新しいアンセムになりそうだ。「昔書いた新しい曲」の曲紹介の後、飛び出したのは「ジャーニ―」。上昇感と生命力、段々と明るさを帯び、最後にはとてつもない高みへと連れて行ってくれる同曲に会場も陶酔する。クライマックスではフロアのクラウドの上にスタンドする志磨。シンシナティ・ポップ・フェスでのイギーポップか!?うーっ、誰か彼にピーナッツバターを渡してくれ(笑)。そのまま客席にダイブし、まさに同曲の「とまると俺死ぬから」のリリックを体現しているかのようなパフォーマンスに場内の興奮もピークに。
ダブル・アンコールではまず「YOUNG LOOSER」がプレイされる。ミラーボールも回り出し、それが負け犬(ルーザー)に優しい光を与えるかのような救われた気分にさせてくれる。ステージ上の志磨から突き上げられた力強いコブシが、”俺は負け犬じゃない!いつの日か!!”の力強い志を感じさせてくれた。続く性急的で駆け抜けるような「愛するor die」では、お客さんも”待ってました!!”とライドオン。ここまでくるともはやフロアは阿鼻叫喚だ。
トリプルアンコールでは、まずは志磨一人がステージに登場。「大切なツアーが今、終わろうとしていること」「何故、今回、メジャーから作品をリリースしようと思ったかについて」そして、「これからも大切で素晴らしいロックンロールを、良いと言ってくれる多くの人の前でプレイし続けること」を語る。そして、アコギとブルースハープにて「晩年」をしっとりと歌い始める。中盤からは越川、栗本、富士山も加わり、力強いロックバンド的演出と、あの日、あの時の自分の姿がオーバーラップ。いつも以上に神々しい彼らがそこにいた。
ロックンロールの魔法をかけられること2時間半。夢か、うつつか、エディット・ピアフの「愛の讃歌」が流れ出し、ハッと魔法を解かれた自分がそこにはいた。トリプルアンコールの際に志磨が語った、「変わったと言うヤツもいるけど、あえてメジャーという生き馬の目を抜く大土俵で、かっこいいロックンロール、人が喜ぶロックンロールを自分たちはプレイし続ける」との力強いアイデンティティのアピールを思い返しながら。”これからも彼らと共に行こう!!”と力強く思った。
Report 池田スカオ和宏
【SET LIST】
1.金がなけりゃ
2.COWGIRL
3.ボニ―とクライドは今夜も夢中
4.DIG IT
5.ガンマン、生きて帰れ
6.犬ロック
7.サンデーモーニング
8.悲しい男
9.それすらできない
10.BABYDOLL
11.すてきなモリ―
12.ビューティフル
13.REBEL SONG
14.バンドワゴン
Encore-1
En-1.コミック・ジェネレーション
En-2.ジャーニ―
Encore-2
WEn-1.YOUNG LOOSER
WEn-2.愛するor die
Encore-3
TEn-1.晩年
【MEMBER】
Vo. 志磨 遼平
G. 越川 和磨
B. 栗本 ヒロコ
Dr. 富士山 富士夫
That Evening Support Key. 奥野真哉(from ソウルフラワーユニオン)
【PROFILE】
2006年9月、1stアルバム『戦争をしよう』リリース。2007年12月、2ndアルバム『マイ・ネーム・イズ・ロマンス』リリース。2008年5月、ミニアルバム『Faust C.D.』リリース。夏から秋には「AOMORI ROCK FES 08」「ロッケンローサミット(渋谷AX)」「MINAMI WHEEL 08」などにも出演し、観客の度肝を抜く。2008年12月、3曲入り両A面シングル「ビューティフル /愛する or die」リリース。2009年4月、3rd ALBUM『Gloomy』リリース。オリコン アルバム総合チャートでは初登場51位を記録。2010年4月、メジャーデビューアルバム『毛皮のマリーズ』リリース。それを引っ提げた『Restoration Tour 2010』を5月の下北沢SHELTERを皮切りに敢行。大成功に収める。
【NEW ITEM】
Major Debut Album
『毛皮のマリーズ』
COCP-36083
¥2.500(tax in)
【コロムビアミュージックエンタテインメント】
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M-1. ボニーとクライドは今夜も夢中
M-2. DIG IT
M-3. COWGIRL
M-4. 悲しい男
M-5. BABYDOLL
M-6. バンドワゴン
M-7. サンデーモーニング
M-8. それすらできない
M-9. 金がなけりゃ
M-10. すてきなモリー
M-11. 晩年
【LIVE SCHEDULE】
http://www.kegawanomaries.jp/hell/gig/index.html