THE NOVEMBERS “Misstopia” release tour “find a pilica”
“Misstopia” release tour “find a pilica”
TOUR FINAL ONEMAN LIVE
2010.5.21(Fri)
@AKASAKA BLITZ
最近のTHE NOVEMBERSの楽曲は何かしら<光を感じる>ものが多い。とは言え、この<光を感じる>とは、<明るい>といった類とは多少違う。明白な光が当たったり、光に包まれたりというよりは、その一歩手前。目の前に横たわる闇の先にうっすら確認できる道や広がっている光景を思い描かせたり予感させたりするもの。それは前作ミニアルバム『paraphilia』から感じられ、3月10日発売の2ndアルバム『Misstopia』で確信し、この日のワンマンライヴで体感に変わった。以前窺えた<分る人にだけ分れば良い>との一方通行でつれない世界観の放射から、<さぁ、これが俺たちだよ。これを聴いて何を感じる?>と、それこそ蜘蛛の糸でも会場に垂らすような間口の広さを強く感じたのだ。それを裏づけるように、彼らのこの日のステージは、従来の方法論にあった、正気と狂気、静寂と轟音、美しさと残酷さ、それら二律背反を急転させることで表わすメリハリやコントラストによるドラマティックさづけやインパクトに頼ることなく展開された。
今回も我LUCK’Aは、THE NOVEMBERSのツアーのグッズ一式を制作させてもらった。しかも今回はアイテムも多岐に渡り、Tシャツ、フェイスタオル、缶バッヂの既存ラインナップの新デザインものに加え、ショルダーバッグ、ラバーキーホルダー、アルミボトルといった新アイテムもプラス。物販スペースは百花繚乱の様相を見せていた。
この日は金曜日。週末の残務をガ―ッと片づけ会場の赤坂ブリッツに定刻に到着。客席の扉を開けると、ちょうどSEが流れ、投影されるVJの中、メンバーがスタンバイを始めたところであった。SEが止み、一瞬ふっと静かになる。アルペジオが爪弾かれ、民族音楽のようなものにシンクロし、それらとクロスフェードする形で、小林&ケンゴのギターと、ベース高松のダウンピッキング、吉木の力強いドラミングが会場を支配する。ニューアルバム収録のどっしりと広がりのあるナンバー「ウユニの恋人」で幕を開けたこの日。スケールの大きいワイドな曲展開とその歌内容は、この日のこれからの彼らの宣言や、会場全体への誘いのようにも響いた。続いてディメンションの効いたギターに適度な上昇感、楽曲にキラキラ感が絡む「pilica」に継がれる。間にミディアムなサイケさを挟み、後半への高揚感と至福感への繋ぎが神々しい。
「こんばんわ、NOVEMBERSです。今日は楽しんで帰って下さい」と小林の軽いMCと、しばしのチューニングタイム。その間、シーンと静まり、息を飲むように次に放たれる音を待つさまは、いつも通り。例え会場が大きくなろうが変わっていない(笑)。続く「she lab luck」が始まると、高松とケンゴのアクションも徐々にアグレッシブになっていく。間のストロボやバックから当てられるまばゆいライトも彼らの特異性を背面から照らしているようだ。ノンストップで「Figure 0」に入ると過激さが更に増す。ズンズンと進んでいきながらもズブズブと会場中を惹き込んで行くその楽曲に、小林のボーカルにもエフェクトがかかり、呪術さがパラノイア感を増幅させる。そして、「アマレット」のアルペジオの柔らかいイントロに突入すると、なんだか包まれているような優しい気分になる。歌が終わり、長いアウトロが続く中、会場中がこの歌の中描かれた「海に帰りたい 子宮に帰りたい」を思い返し、各人自分が最後に帰るべく場所を思い浮かべる。闇から徐々に光を取り戻していくようにノンストップで「BROOKLYN」に入ると、ケンゴのギターもファンキーなカッティングを交え、間には小林の心のつぶやきのようなラップも交わる。ライヴでは昔よりプレイされ、スリリングさと緊張感に満ちた「Exit」も、この日はより楽曲の深部をえぐり出し、ドラマティックさを増強。高松の動き豊かなベースライン、タイトでラウドな吉木のドラムの上、ケンゴのギターも奔放に泳ぐ。
大きな会場ならではのライティングも見ものであった、この日。メンバーの背後から放たれるその光のフォーメーションは、彼らの世界観の演出にはもってこいであった。
話はライヴに戻る。続いては「僕らの悲鳴」だ。中間部では、”待ってました!!”とばかりにカタストロフ・サウンドも飛び出し、会場の温度と緊張感をグワッと引き上げる。メンバーもパラノイアに酔狂。小林のシャウトも会場中に響き渡る。「地の果てまでも遊びに行こう」と歌われるフレーズが会場中に心中気分を生む、続いての「パラダイス」では、幻想的なフレーズのループと、途中からは吉木のドラムがドゥーム且つ暴発性を撒き散らす。「優しい曲を聴いて下さい」との軽いMCとチューニング・タイム後は、「keep me keep me keep me」。小林とケンゴのアルペジオがアンサンブルを見せる。逆回転を効かせたシュ―ゲイズ的SEが流れる中、「philia」に突入すると、吉木の生み出す上昇感溢れる16ビートが炸裂。途中より高松もコーラスに加わり、楽曲にたおやかさを加える。そのままの流れや勢い、雰囲気を持ったまま「sea’s sweep」に飛び込む。途中加わるサイケさが徐々に自分らしさを取り戻していくかのよう。そして、その余韻と残響音が残る中、攻め気味のドラムが突入する。続いては「Gilmore guilt more」だ。途中、”これでもか!!”と言わんばかりのケンゴのカタルシス的ノイズギターが炸裂。その後、小林も愛用のジャズマスターを置き、シャウト。それがディレイと共に渦巻く中、小林を除く3人は怒涛の演奏で援護。そのカオスの中を小林は客席に飛び込み、なおもシャウト。そこから再びテーマに戻ったところでは身も心もグワッとさせられる。その興奮冷めやらぬ中、ケンゴの性急的なギターから始まった「dysphoria」では、吉木の一打一打力を込めて叩くスネアとフロアタムが会場を躍動させる。ノイジ―に歪んだ高松のベースがグイグイと曲を突き上げる。聴き慣れたギターイントロが場内に響き会場が湧く。初期からのライヴでの定番曲「こわれる」がここで登場だ。ドラマティックな曲の登場とカッコよさ、そして途中のモータードライヴ感溢れる演奏とギターソロがたまらない。そのまま音の抜き差しと静寂、轟音とノイジ―さのコントラストも印象的な「dnim」に入る。ラストの怒涛となし崩し、”どうにでもなれ!”的な破綻感が炸裂した瞬間だ。
チューニングタイム。「誰かしゃべってもいいんだぜ」とMCをメンバーに振る小林。メンバー各々自分達の楽器のチェックに勤しんでいることを察し、そのまま、今日のこのファイナルを迎え、アルバムに携わってくれた方が沢山いたことへの感謝。そして、今日この日のステージに立てることへの感謝等を伝える。その後、ベースの高松にMCが振られるも、あまりの小声のために反応薄(笑)。しかし、ワンマン限定品を含め、しっかりとグッズの告知は行ってくれた(笑)。MCは小林に戻り、「一人一人顔も違えば、考え方も違う人たちがこんなに大勢集まってくれるなんて凄い。自分の人生15年間(ユーモア)で最も感動的な一夜です。一緒に楽しい夜にしましょう」的なことを会場に告げる。そして、優しいアルペジオに乗せ、クルーエルでビューティフルな朝の情景から始まる「バースデイ」が歌われる。この優しさの直後に現れるであろう怒涛さに、会場中が緊張感を伴い待ちかまえる。突如現れるノイジ―な洪水と感情の吐き出しに、会場中のカタルシスが一気に上がる。まさに静と激の波動攻撃だ。そして、ケンゴのハーモナイズドの効いたギターも神秘的且つ優しく鳴り響く中、本編ラストには光や平常、正気を徐々に取り戻すかのように「Misstopia」が鳴らされる。高みへの昇華と心への浄化さえ感じさせる同曲は会場に福音のように鳴り響いた。
ここからはアンコール。白いシャツに着替えた小林が、ギターをグレッチに持ち替える。彼がジャズマスター以外を持つのを初めて見たのだが、そのギターから出される音色を想像するに、プレイ前はこのバンドでのミスマッチを危惧せざるをえなかった。しかし、ここからはそのグレッチならではの温かみや厚み、膨らみが似合う曲が2曲鳴らされる。1曲は小林が19歳の時、前ラインナップにて録られた彼らの発表楽曲中最古の「marble」と、同じく小林の尊敬する芸術家マルセル・デュシャンに捧げられた、ニューアルバムのラストを飾っていたメランコリックながら穏やかな気持ちに浸らせてくれる「tu m’」だ。
ダブルアンコールにも応えてくれた彼ら。
「明日は昼から大阪でライヴだけど、そんなことはもうどうでもいい。今日が楽しければそれでいい。骨は拾ってくれたまえ」とは小林。このMCからも、この日のライヴでの自身の充実度と満足度が伝わってきた。明日の大阪での「RUSH BALL☆R」での彼らのプレイを楽しみにしている方々には悪いけど、ここはもう行くところまで行ってくれ(笑)!!そんな気持ちの中、ラストの定番ナンバー「白痴」が放たれる。グランジでオルタナ、それでいてひんやりとした美しさを持つ同曲。やはり最後の最後は暴発と衝動の限りを尽くしてくれたのであった。
今回もオーディエンスが彼らの放つ音楽や世界観をなす術もなく一方的に享受している光景は変わらなかった。いや、ますます強まったのかもしれない。そのステージが大きくなればなるほど、動員が増えれば増えるほど、それは強まっている気がする。しかし、それも彼らのライヴを体感してみると納得できる。世界観を丸ごと身体で受け止めるが如く、激しい場面では自然と身体が動くものの、曲の大半では歌の主人公に自分を投影させているからだ。ノるのではなく、浸る。それは彼らが大きくなれば大きくなるほど、完璧に近づいていけばいくほど、強く現れてきた。そこには昨今のライヴ特有の強制的な一体感も共同演出も不要。ただ、心で共振/共鳴するだけで良い。体感する者各々が、その場で自分なりの物語を広げていけば良いのだ。別にみんなが同じ映像を浮かべる必要はないのだ。ボーカル&ギターの小林がMCにてよく口にする「楽しんで」とは、まさにそのこと。
自分たちの世界観を聴き手に一方的に放ち、突きつけるようなライヴから数年。今や彼らはこんなにも許容範囲を広げたバンドに成長した。そんなことを確信させてくれた一夜であった。
Live Report : 池田スカオ和宏
【SET LIST】
M-1. ウユニの恋人
M-2. pilica
M-3. she lab luck
M-4. Figure 0
M-5. アマレット
M-6. BROOKLYN
M-7. Exit
M-8. 僕らの悲鳴
M-9. パラダイス
M-10. keep me keep me keep me
M-11. philia
M-12. sea’s sweep
M-13. Gilmore guilt more
M-14. dysphoria
M-15. こわれる
M-16. dnim
M-17. バースデイ
M-18. Misstopia
Encore
En-1. marble
En-2. tu m’
Double Encore
W-En-1. 白痴
【MEMBER】
LtoR
Vo.&G. 小林祐介
Dr. 吉木諒祐
B. 高松浩史
G. ケンゴマツモト
【PROFILE】
2002年に小林と高松によって前身バンド結成。2005年3月、THE NOVEMBERSとしての活動をスタート。3種リリースしたデモテープが話題となり人気を高めていく。2007年11月、1stミニアルバム『THE NOVEMBERS』をリリース。2008年6月、1stアルバム『picnic』リリース。それを引っ提げて行った全国15箇所にも及ぶツアーは各所大盛況。同年夏には各所フェスにも出演、大反響を得る。2009年4月、2ndミニアルバム『paraphilia』をリリース。多数の著名気鋭ロックバンドとのツアーや各種夏フェス、大型イベントに参加。同年11月には東名阪ワンマンライブも全公演SOLD OUTを記録する。2010年3月、待望の2ndアルバム『Misstopia』をリリース。3箇所のワンマンを含む全国14箇所のレコ発ツアーを大成功に収める。
【NEW ITEM】
2nd FULL ALBUM
『Misstopia』
UKDZ-0101
¥2,415(Tax in)
【DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT inc.】
NOW ON SALE
M-1.Misstopia
M-2.Figure 0
M-3.dysphoria
M-4.pilica
M-5.パラダイス
M-6.sea’s sweep
M-7.Gilmore guilt more
M-8.I’m in no core
M-9.Sweet Holm
M-10.ウユニの恋人
M-11.tu m’
【LIVE SCHEDULE】
http://the-novembers.com/category/live/