THE NOVEMBERS PRESENTS Moiré.3

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2012.08.19

THE NOVEMBERS PRESENTS Moiré.3

THE NOVEMBERS PRESENTS
Moiré.3
2012.7.17
@Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

空気を震わせたリ、唇を震わせたリ、弦を震わせたリ、鼓膜が震えたり…。音、言葉、楽器、耳…。こと音に関しては、人は空気や器官、機材の振動を通してものごとを伝えたり、伝えられたりすることが多い。そして、「心を震わせる」「感動」なんて表現も実はその辺りから派生しているんじゃないかと、私は密かに思っている。
しかし、その震わせたリ、響かせたりするものの伝わり方の原理が実は波によってだということを、我々は昔教わりながらも、なかなか思い出す機会がない。あの発明王エジソンが海辺で寄せては返す潮騒を聞いているうちに、蓄音機の原理を思いついたことは有名な話だし。今でも音を波長で表わすのもその名残かもしれないのに。
とにもかくにも、波と音や音楽、波と感動は、切っても切れない間柄であり、親密な関係だ。

「Moiré」と銘打ったTHE NOVEMBERS企画のシリーズギグ。5月、6月、7月と3ヶ月連続で、いずれもここMt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて開催された。5月10日に、PLASTICZOOMSをゲストに行われた「Moiré」。6月15日にLillies and Remainsをゲストに行われた「Moiré.2」に続き、行われた第三回目は、THE NOVEMBERSオンリーのワンマンライヴ。とは言え、今までとは趣向を変え、スペシャリティを持って行われたこのシリーズギグらしく、この日も彼らの通例のライヴとは異なり、ホーン隊、ストリングス、そして、ドラムスといった彼ら以外の楽器が有機的に結びつき、これまでとは違った世界観を我々に寄与してくれた。

この「Moiré」シリーズの3回に渡り、それぞれ限定グッズを制作させてもらった、我がラッカ。Tシャツとステッカーをセットにした「Moiré.1 限定Tシャツセット」「Moiré.2 限定Tシャツセット」に続き、このMoiré.3でも、小林セレクトのオリジナルボディに写真家花代さんのフォトを乗せた「フォトTシャツ」。“tobird”作Moiré企画第3段インクジェットプリントによる「Moiré.3 限定Tシャツセット」。“tobird”作の繊細なタッチのイラストを再現した淡い色味のフェイスタオルも販売された。

このPLEASURE PLEASUREは、元映画館のライヴ会場。フロアは後方に向かうに連れ、なだらかな昇りを描き、シートは演劇や映画を観覧する際の落ち着きあるものが用意されている。加え、開演前に、ちょっとした緊張感と厳かな雰囲気をどことなく漂わせているのは、どのアーティストにも共通して言えるところ。しかしこの日は、”THE NOVEMBERSが普段とは違うステージを、どのようにここで見せてくれるのか?” その辺りの期待値も相まって、いつも以上の緊張感と厳かな感じが開演前の会場に漂っている印象を受けた。
この日は、彼ら以外にこのライヴの演出を手伝うアディショナル・ミュージシャンたちも事前に発表されていた。その、これまで彼らの作品を彩ったことない楽器陣たちの登用が、どのタイミングでどのような形で成されるのか?そのあたりの期待も含め、私も心持ち穏やかさを装いながら、そわそわした心境にて彼らの登場を待った。

まずは劇場らしく、開演間近を伝える1(いち)ベルがなり、これが会場の緊張感と期待値をグッと引き上げる。スーッと暗くなる場内。浮遊感のあるSEが流れる中、まずはメンバー4人が現れる。「こんばんは。THE NOVEMBERS始めます」とボーカル&ギターの小林祐介。いつものロングヘアーをオールバックにし、後でまとめたヘアスタイルだ。細かい気泡がゆっくり上昇していくかのようなVJに乗り、「37.2°」をプレイし始める4人。作品以上に丁寧で優しく、柔らかい歌声を小林が乗せていく。まさに1曲目が天から舞い降りてくるかのように、楽曲が会場に柔らかく降り注ぎ、観る者を優しく包んでいく。続いて、バックの映像が緑色の水平線を描き出し、新曲がプレイされる。ドラムの吉木諒祐もスティックをマレットに持ち替え、叩くというよりも触れる程度のドラミングでセンシティブに楽曲に生命力と躍動感を加えていく。これまでほとんど照明のなかったステージにここでようやく若干の色が入り始め、メンバーの姿が確認できるように。サウンドにもカラフルさが若干ながら混じり、VJに先程の気泡が合わさり、そのシンクロ具合が楽曲の各楽器が加わっていく感じとの上手いリンクを見せる。
赤と青のライトがステージに当たり、重なるところに紫色が生まれ出す。続いても新曲だ。これまでの2曲には無かった若干のカラフルでドリーミーな音色が、会場に淡くゆっくりと広がっていく。曲調も手伝ってだろうが、ここらでいつもなら激しい曲が強襲されるのだが、この日は穏やかな曲が続いていく。合わせていつもよりも各メンバーの動きも少ない。とは言え同曲では、小林のギターソロが鈍い光を放ち、その上をケンゴマツモトのギターが泳ぎ回る。小林の浮遊感のある音色と対照的なケンゴのギターがフリーキーに泳ぎ回り、早くも観客は彼らの魅力に浸り出していく。

ここで1人目のゲストが呼び込まれる。VOLA & THE ORIENTAL MACHINE等で活躍している楢原英介がステージに現れる。”当然ここはエレクトロヴァイオリンとの共演だろう!?”と思うも、楢原はシンセに。続いて登場したのは、またしても新曲だ。ここに来て若干の疾走感が会場に呼び込まれ、高松のベースもダウンピッキングを始め、それが楽曲にソリッドさを寄与していく。その上を自由に泳ぎ回り、色をつける楢原のシンセとケンゴのアルペジオギター。吉木は的確な8ビートを叩き出していく。ドライヴ感があるのに、どこか揺らぎの成分や沈殿感や浮遊感を有しているのが実に彼ららしい。
そして、もう一人のゲスト、左ききのゴーシュ、kαinの青月泰山が呼び込まれ、チェロを次の「pilica」にて加味していく。楢原もシンセからエレクトリックヴァイオリンにコンバート、ストリングス隊が形成され、その2本の弦楽器が厳かな雰囲気を同曲にブレンドしていく。ソロの部分ではとてつもない奥行きと広さを育んでいく両者。厳かであり、福音的であり、それでいて時折り呑みこまれるような狂暴性が場内を襲い、会場は彼らの一方的に放たれる世界観に身体を委ねるより方法がなくなる。
楢原がヴァイオリンからギターに。ステージ後方の幕に白色のライトが当てられ、その前のスタンドが赤いライトを当てている。続いては「mer」だ。小林はステージ中央でアコギを弾いているのだが、彼がこのNOVEMBERSにてアコギを弾く佇まいを自分は初めて見た。この6人で優しく、穏やかに会場の空間を優しくゆっくりとネジ曲げていく。

ゲストの楢原と青月が去り、再び4人だけに。ケンゴがアルペジオをまるでくゆらせるように弾き、これまた新曲にインしていく。後半には、紹介もまだ無いながらも、ソプラノサックスとギターがステージに現れ、楽曲の持つ独特の世界観を、それぞれの楽器で更に押し広げていく。NOVEMBERSのライヴのゲストで管楽器を観るのは初。サックスのプロ―が官能さと抒情性を楽曲に盛り込んでいく。
ケンゴがサンプラ―に移動し、サックスにNATSUMEN、L.E.D.の加藤雄一郎、トランペットにNATSUMEN、Frisco、そして元Platonの柿沢健司が加わり、これまた新曲がプレイされる。加藤、柿沢による2管のプロ―がぐるぐると回りながら、その音で会場を高みへと引き上げていく。そして、そこに再び楢原、青月の弦楽隊が呼び込まれ、「Misstopia」を形成していく。なんか”夢の中で描いていた景色に色をつけたら、こんな絵が完成していた?”的な音世界が広まっていく。至福と福音が重なり、荘厳さへと昇華。崇高で厳かで神秘的、それでいて安堵感や戻っていくべき場所を会場全体が思い浮かべていく。この辺りは、まぎれもなく前半のハイライトだ。

ここで10分間の休憩。各々がこれまで展開された約50分を振り返り、これからの後半戦に何が飛び出し、どんな趣向で、いつもとは全く違った彼らの側面を見せてくれるのか?に思いを馳せていく。
ここまで9曲中5曲が新曲。しかも、どれも趣向が違い、明らかに、『To (melt into)』「(Two) into holy」を経、その次のフェーズを目指し、明示すべき楽曲のように響いた。
待つこと10分。後半も1ベルと共に始まった。
バックのスクリーンにNOVEMBERSの一連のジャケットやアートワークを携わっているtobirdのイラストを使用した映像が映し出され、まずは小林がステージに現れる。小林がその映像をバックに「melt」を歌い始め、そこに高松がベースを加え、吉木、ケンゴがそれぞれの楽器を乗せ、そこに新しいゲスト、LOSTAGEの岩城智和がドラムを交えていく。吉木と岩城のツインドラムは、お互いドラムキットを向き合わせにさせて叩くスタイル。お互いアイコンタクトとビートに耳を集中させながらリズムを紡いでいく。ちなみにケンゴはギターではなくサンプラ―を担当。そんな各人たちにより、ゆっくりと「melt」という絵画が描かれていく。

ゆったり不穏なプリセット音が流れる。続いては、今春にリリースされたNIRVANAのアルバム『NEVERMIND』を丸々邦楽ロックアーティストたちでカバーしたアルバム『NEVERMIND TRIBUTE』に収録されていたNIRVANAの「Stay Away」のカバーを、作品と同バージョンで始める。深淵のようなズブズブと沈んでいくような、それでいて甘美と秘めた狂気がジワジワと会場に広がっていく。そして、一拍のブレイク後のギターソロが凄かった。狂気が会場を襲い、それを経た凪のような安堵感が全身を覆ってきた。鳴り続けるフィードバック音の中、2人のドラマーが入れ変わる。NIRVANAの「Stay Away」のコピーがここで飛び出す。カバーの次にコピーとは。この試みにはやられた(笑)。会場まるごとかっさらうように巻き込み、何もかも、もちろん観る者の心までも奪って行く。特に吉木、岩城によるツインドラムのウネリが凄い。続いて、その激しさを継承、いや更に増していくように「二―ルの灰に」へ。ケンゴのギターもアグレッシヴにフレーズを放ち、それに伴ないステージアクションも激しくなっていく。小林のシャウトにも魂が宿ってくる。ツインドラムが激しいグル―ヴで繋ぐ中、続く「dysphoria」に入る。狂気の淵へと会場を巻き込み、引きずり込んでいくかのような同曲。どこか距離を置いて、遠くの映像を観ているような。海の向こうや画面の向こうの凄い光景に成す術もなく立ちすくんでいるような。そんな気分になってくる曲だ。
続いて高揚感と焦燥感煽るかのようなナンバー「彼岸で散る青」を経て、本編ラストにて再び総勢9人がステージに現れる。そして、このシリーズのタイトルであり、主旨でもある新曲「Moiré」が気高く鳴らされる。破片が舞い、飛び散る映像がリピートされているVJ。彼らの歌や曲もまた、砕き、違った形で再生され、新しい解釈が生まれ、新しい物語が一人一人の中で育まれていく。この時に、ようやくこのライヴのコンセプトや到達点がどこなのか?が理解出来た気がした。彼らの歌も、このように色々な解釈を交え、また新しい形として成立されていくのだろう。思いが膨らんでいくように、とてつもない崇高な場所へと自分が引き上げられていくのが分かる。会場丸ごとかっさらうように巻き込み、何もかも、もちろん観る者の心までも奪って行くかのような安堵感で胸がいっぱいになる。ほっとしたような、戻ってこれたかのような、そんな感覚が足下から現れて、全身を包んでいく。

アンコールは2曲。dipのカバー「human flow」と、「再生の朝」が鳴らされる。「human flow」は、ゆっくりたゆたうように、しかし、しっかりと芯があるようにプレイされ、歌われる。至福の先に包まれていくようだ。続く「再生の朝」は、ケンゴのサンプラ―と、ストリングス隊のリバースが荘厳さを生み、ツインドラムが躍動感と生命力を育んでいった。徐々にテンポがアップしていき、それに引っ張られるように生み出される高揚感と、見晴らし良い美しい光景へと引き上げてくれるステージの9人。心が洗われ、浄化され、とてつもないカタルシスが会場を魅了していく。そんな気高さと荘厳さを残し、9人はステージを去った。
バックのスクリーンには、エンドロールが流れ、次の11月の東名阪のワンマンライヴの告知が流れ、ステージにもうメンバーが戻ってこないことを悟らせる。なんか凄いものを観たかのような観後感がジワジワと全身包んでいく。

感動は波を通して伝えられる。しかし、その波と同じものは2度とこない。
なんとなく、小林が今回のシリーズギグのタイトルを「Moiré」としたかが自分なりに分かった気がし、この日がとてつもなく尊く、愛しく思えた。

 
Report : 池田スカオ和宏


【SETLIST】

1. 37.2°
2. 新曲
3. 新曲
4. 新曲
5. pilica
6. mer
7. 新曲
8. 新曲
9. Misstopia
10. melt
11. Stay Away- NIRVANA COVER
12. Stay Away- NIRVANA COPY
13. ニールの灰に
14. dysphoria
15. 彼岸で散る青
16. Moiré
Encore
En-1. human flow
En-2. 再生の朝


【MEMBER】

Vo.&G. 小林祐介
G. ケンゴマツモト
B. 高松浩史
Dr. 吉木諒祐

TONIGHT GUEST MUSICIAN
Violin, G, Syn : 楢原英介(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)
Cello : 青月泰山(左ききのゴーシュ、kαin)
Tr. : 柿沢健司(NATSUMEN、Frisco、ex. Platon)
Sax : 加藤雄一郎(NATSUMEN、L.E.D.)
Dr. : 岩城智和(LOSTAGE)


【PROFILE】

2002年に小林と高松によって前身バンド結成。2005年3月、THE NOVEMBERSとしての活動をスタート。3種リリースしたデモテープが話題となり人気を高めていく。2007年11月、1stミニアルバム『THE NOVEMBERS』をリリース。2008年6月、1stアルバム『picnic』リリース。それを引っ提げて行った全国15箇所にも及ぶツアーは各所大盛況。同年夏には各所フェスにも出演、大反響を得る。2009年3月、2ndミニアルバム『paraphilia』をリリース。多数の著名気鋭ロックバンドとのツアーや各種夏フェス、大型イベントに参加。同年11月には東名阪ワンマンライブも全公演SOLD OUTを記録する。2010年3月、待望の2ndアルバム『Misstopia』をリリース。3箇所のワンマンを含む全国14箇所のレコ発ツアーを敢行。その後も各地夏フェスや全国ツアーを行う。同年11月には、前年に引き続き東名阪ワンマンライブ「November Spawned A Monster」を行い、全箇所ソールドアウト。追加公演も行われる。
2011年8月3日には、3rdフルアルバム『To (melt into)』と1stシングル「(Two) into holy」を同時リリース。同年11月には全国8箇所に及ぶワンマンライヴツアー「To Two( )melt into holy」を行い各所大成功を収める。
2012年5月、6月、7月と「Moiré」と銘打った自主企画のシリーズギグを、シアタータイプのホールにて行い、各日新しい彼らの側面を披露。大成功を収める。


【NEW ITEM】

3rd Full Album
『To (melt into)』
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¥2,310(Tax in)
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[DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT inc.]

1. 永遠の複製
2. 彼岸で散る青
3. 瓦礫の上で
4. はじまりの教会
5. 37.2°
6. ニールの灰に
7. 日々の剥製
8. 終わらない境界
9. holy

1st Single
「(Two) into holy」
UKDZ-0116
¥1,470(Tax in)
NOW ON SALE
[DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT inc.]

1. 再生の朝
2. 夢のあと
3. 小声は此岸に響いて
4. melt


【LIVE SCHEDULE】

http://the-novembers.com/category/live/


【ARTIST HOMEPAGE】

http://the-novembers.com/”
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