はこモーフ「明日からがんばるツアー」with ひらくドア TOUR FINAL

Filed under: LIVE REPORT — タグ: , — LUCK'A @ 2012.04.26

はこモーフ「明日からがんばるツアー」with ひらくドア TOUR FINAL

はこモーフ
「明日からがんばるツアー」with ひらくドア TOUR FINAL
2012.4.1(Sun) @下北沢Que

 明日からがんばる
 3ピースガールズバンド、はこモーフが放つ場合のこのフレーズは、けっして、「とりあえず今それはちょっと置いといて、明日から頑張ればいいや」といった、今ある課題を先送りや後回しにする意味ではない。いや、いわばむしろその逆。<今の状況を糧に、明日にはあの壁を乗り越えてやる!!>的な、前向きな活力やバイタリティを秘めた言葉だったりする。
 実際、この日のライヴでボーカル&ギターのたけたにも、拙いながら上記のことをライヴ中のMC中に語っており、観終え、会場を後にする僕の心に、その通りの気持ちを何度も強くよみがえらせた。

 そんな、『明日からがんばる』をタイトルにした、はこモーフの待望の1stアルバムが2月8日にリリースされた。彼女たちがこれまでライヴを通し培ってきた代表曲が詰まった、いわばこれまでの集大成とも言える同盤。気づけば自然と口ずさんでいそうな親しみやすくキャッチーなメロディとキュートな歌声。その割にはがしっとした演奏。そして何度もリフレインされるその覚えやすいサビフレーズといった、彼女たちの音楽性がギュッと詰まり、各楽曲が擁しているほんわかな雰囲気と、ところどころピリッとした、両極の成分が同居した作風が印象的であった。

 そんな彼女たちが、2月25日の京都を皮切りに、広島、大阪、名古屋、長野、仙台と、同アルバムのレコード発売ツアーを行った。全箇所同行したのは、これまた2月15日にレア音源集『Small Music For The Sleeping Time』をリリースした、ひらくドア。そして、いよいよこのツアーも、この日の下北沢Queにて、ファイナルを迎えようとしている。
 はこモーフ、ひらくドアに加え、GELLERS、OTOTOI GROUPを迎え、4バンドで行われたこの日のライヴ。今作を機に彼女たちに興味を持ち、足を運んだ方もかなりいたのだろう。会場は超満員であった。

 今回、我がラッカは、彼女たちのその記念すべき1stアルバムの発売に際し、LUCKON GRAPHICSによる、CDジャケットやアーティスト写真を制作した。
 また、グッズ方面も全面的に彼女たちのプロモーションも兼ねたインパクトづけと、そのキャラクターとバンド名の合致を狙ったディレクション&制作を心がけた。そのCDジャケットのキャラクターを全面にあしらった、彼女たちにとって初めてのTシャツと、バンド名にちなみ、クラフトボックスの中に刺繍をあしらった毛布風のブランケットを入れたものを制作。後者は別途販売のステッカーシートと組み合わせて、自分なりのはこモーフキャラクターを作れる遊び心も織り交ぜてみた。はこモーフのアートワーク&グッズ

 このスプリットツアーでかなりグル—ヴを高め合ってきたという、この2組。その成果が期待される中、この日の3番目に、まずはひらくドアが登場した。
 そうそう。伝え忘れていたが、このひらくドアのメンバーのうち、ベースの寺中エスとギターのヒロヒサカトーは、ラッカがグッズのデザインや制作をディレクションしている、井乃頭蓄音団のメンバーだったりもする。

 話をひらくドアのライヴに戻そう。年末よりサポートドラマーとして、男性ドラマー有安祐二が加わり、新体制でのライヴを行ってきた彼ら。この日を持って、その有安が正式メンバーになったと聞く。実は有安が加わっての彼らを観るのは初。以前の女性ドラマー、E.MURAYAMAの女性ならではのコーラスと適度な力の入らなさ、それでいてタイトなドラミングが、この有安の加入でどのような変化や動きを見せるのか?その辺りも楽しみに臨んだ。
 結論から言えば、女性ならではのハーモニーやコーラスワークでの楽曲へのふくよかさづけの面では、多少の物足りなさは否めないが、今まで以上のエモ—ショナルさや楽曲に対するメリハリ、 骨太さや男らしさ、特に疾走感のある曲では、男性ドラマーならではの躍如を感じた。

 SEに使っていた、ジョン・レノンが歌詞 に出てくるところも心憎い「恋と名曲」からスタートした彼ら。エンディングでのポエトリーリーディングも含め、1曲目から歌の幅を味あわせてくれる。続いて、力強さと弾力性を兼ね備えた「Love Love Love Love」が現れると、有安のちょっと硬質なドラムが映えてくる。ポップさが会場に弾力を与え、合わせてフロアも心を弾ませる。ボーカル&ギターのタカユキカト—をメインに、ヒロヒサカト—へのボーカルのリレーションも見どころであった同曲。グル—ヴィーな寺中のベースもアピールを見せ、後半に向かうにつれ、楽曲がポップスからロックへと様相を変えていく。途中にはタカユキのウェットな歌い出しも交え、それに続くように、急変したヒロヒサの発狂ギターソロがフロアを強襲する。気づけば、おっ、ベースの寺中は、はこモーフのTシャツを着ているではないか。
 そして、ヒステリックなイントロから続く上昇感あふれるナンバー「木枯らしとマスク」に入る。彼らの中では、珍しく疾走感があり、ストレートなナンバーの登場に、会場も合わせてステージへと前のめりになっていく。タカユキの歌にも更なるエモーショナルさが加わっていき、楽曲や歌い方に熱が帯びてくる。歌内容とステージアクションや秘めた思いが対照的なのも印象深かった。

 ここでMC。はこモーフとのツアーを振り返り、今回のツアータイトルに、ヒロヒサが言及。結果、「ステージの上の人は今日を頑張り。それを聴いたお客さんは、明日から頑張るのが良いのではないか?」との提言に落ち着いた(笑)。
 そして、次の「休み明けの季節」では、少ないコード数ながら、中盤にあえて逆説的に入る複雑なコード進行を織り交ぜる。うーん、その辺りの一筋縄ではいかないポップさもいかにも彼ららしい。サビでは寺中の運指がより躍動していき、会場に弾んだ雰囲気を育んでいく。続く「七夕のお祭り」では、七夕の短冊に書いた、ささやかな主人公の願いが会場いっぱいに穏やかに広がっていく。たおやかな2ビートの上、「あおいちゃんじゃなくて君といれらたらいいな」のフレーズが、聴く者の心をポッとさせる。この曲では、ヒロヒサのギターソロも再び炸裂。寺中や有安がつける弾みの上を、彼のギタープレイが自由奔放に泳いでいく。
 そして、会場全体が主人公と共に、その彼女のピンクに支配された部屋へと誘われる。ラストは「ピンク色の部屋」だ。漂うサイケデリック感からラストに向けてのシフトアップがたまらない同曲。 それが同時にフロアに高揚感を引き起こす。ここではタカユキのギターソロもヒステリックにアグレッシヴに語り出す。ここからラストまでは、ステージも会場も、まさに同曲のリリックとおりフィニッシュへと向かっていく。ラストは、とてつもない恍惚感を残し、彼らはステージを去っていった。

 続いて、この日のトリであった、はこモーフが登場する。
「こんばんわ。みなさん。今日はありがとうございます。はこモーフです」とは、ボーカル&ギターのたけたに。言い終わると同時に、「30分じゃ何も出来やしないわ」とギターを弾きながら歌い出す。そう、この日のトップを飾ったのは「30分」。アルバムの1曲目を飾っていたナンバーだ。「30分じゃ伝え切れやしない」なんて歌う彼女たち。この日のタイムスケジュールからすると、彼女のステージの持ち時間が歌われているようにも響く同曲に、”この日の30分だけは、永遠に続いてくれ!!”と、会場中が切に望む。途中3拍子やミディアムなパートも交え、楽曲にアクセントをつける3人。タイトにドラムを刻むなかむらと、下向きでクールさを醸し出しているいけがみ、そして、こぼれんばかりの笑顔でギターを弾き歌う、たけたにのバランス構成には、非常に好感が持てる。ラストに向かうに連れ、なかむらのコーラスも楽曲に加わり、たけたにのギターがフランジャーをかますと、楽曲に不思議な揺らぎが加わる。うーん、その辺りの作品とは違ったライヴならでは感を出せるところにも、彼女たちの本質とも言える、ライブバンドであることを実感する。
 ノンストップでいけがみがドラムの方を向いたまま、ベースをつなぐ中、「ありがとう。はこモーフです。今日は最後までよろしくお願いします」とたけたに。流れはそのまま、「もっとちょうだい」へ。時折り混じるノイジ—さが、ポップさや可愛さだけではない彼女たちの他面と出会わせる。そのポップさとオルタナの交互のリレーションに振り回されていると、サビでは急変。ストレートさへと突入し、なかむらが力強いながらもタイトなビートを叩き出し、その上を、本来ピッキングで表わすところをあえて指弾きしているかのような、いけがみのプレイが楽曲により爽快感と疾走感を加える。そして、「大きいかぶ」に入ると、間に各楽器による抜き差しが施され、楽曲にメリハリとバリエーションづけが成される。彼女たちの最も面目躍如な楽曲の登場にフロアもがぜん盛り上がる。

 「ツアーファイナルにお越しいただきまして、ありがとうございました。この日を心待ちにしておりました」とたけたに。「大好きなバンドさんばかりに出演してもらい幸せです」と続ける。

 プレイに戻る。「たりらったら、たりらったら」の歌い出しから始まった「空を食べる」では、作品以上のサビでのストレートさやドライヴ感が会場を走り出させる。そこに乗せた、「いくらいくらいくらいくら」「いつもいつもいつもいつも」等のキャッチー
なフレーズが、フロアにカタルシスを与え、逆に、「足りちゃったらダメ」とのラストの結論に、一人ひとりが自分を見つめ、答えを引き出そうとする。アウトロでは、いけがみとなかむらのコーラスも加わり、3声のハモりが会場に少々のドリーミーさを呼び込む。ノンストップで性急さを湛えた「誰かの歌」にインすると、ジャングリーなギターが楽曲にスピード感を与え、いけがみのベースが爆発寸前まで盛り上がりを誘引していく。後半に向け、スピーディさを増して行く楽曲展開に、会場も徐々に熱を帯びていく。そして、ドリーミングな歌い出しと、アルペジオによるギターイントロから入った「呼吸する」では、段々と陽が昇っていくような感覚を会場全体に広がらせていく。間には、ノイジ—でオルタナ的な部分を挟み、これまでプレイ中にはアクションの無かった、たけたにが全身全霊の力を込め、一心不乱にノイジ—なギターソロを掻き鳴らす。

 続いては、この日のハイライトであった「村に平和が戻ったよ」。と、その前に作品同様、イントロデュース的に入っていた小芝居が、作品と同様に、ひらくドアのヒロヒサカト—によって演じられる。音源では子役のセリフだった「ただいま〜」のフレーズも、特別にこの日は、フロアからの大呼応にて成立。それを呼び声に楽曲に入る。個人的には、アルバムの中で最も好きだった同曲。たけたにの歌い方にもコブシが交じり、いけがみ、なかむらのコーラスが、それを追いかける。安堵感に包まれるナンバーを聴きながら、いつも通りの大切さや大事さ、そして、”もしそれが奪われたら…”までを深く考えさせられる曲だ。とは言え、当のたけたには更に嬉しそうな表情で、同曲に色々なアクセントをつけて歌っている…。ラストは「明日になったら、分かるだろう。その方へ進め」と歌われる「手のなるほうへ」。多幸感たっぷりのクラップの中、フィナーレに向け、グングンと景色が広がっていく。アウトロでのノイジーな部分では、ドラムに向かい2人が円を描きながらプレイ。合わせてどんどん会場が高みのあるところへと引き上げられていく。ぼんやりとした多福感の中、本編は終了。

 鳴りやまない拍手の中、アンコールに応えてくれた3人。いけがみは今回のはこモーフTシャツに着替えてくれている。「今回のツアーで遠くの人に会うことができた。だけど、それもいつも近くにみんながいたからこそ。そんな近くに居てくれる人たちのことを歌った歌です」と「悪口」を始める。途中たけたにはギターを弾かず、ジェスチャー混じりで、まるで気持ちを伝えるかのように歌う。近くに居るからこそ歌える、繰り返し内容を変えて、愛情/愛着たっぷりに歌われる「〜しないで」たち。その向こうには、”これからもしっかりと見ていて、私たちはもっと大きくなって、遠くまで行くから!!”との強い意志が込められているように映った。
 
「明日から頑張れ〜!!」の言葉を残し、ステージを降りた3人。
「明日からがんばる」。うん。実に素晴らしく、彼女たちのスタンスを表していた言葉だったんだなと、改めて気づかされた一夜であった。

 
Report : 池田スカオ和宏


【SET LIST】

ひらくドア
1. 愛と名曲
2. Love Love Love Love
3. 木枯らしとマスク
4. 休み明けの季節
5. 七夕のお祭り
6. ピンク色の部屋

はこモーフ
1. 30分
2. もっとちょうだい
3. 大きいかぶ
4. 空を食べる
5. 誰かの歌
6. 呼吸する
7. 村に平和が戻ったよ
8. 手のなるほうへ
Encore
En-1. 悪口


ひらくドア

【MEMBER】

Vo.&G. タカユキカトー
G. ヒロヒサカトー 
B. 寺中イエス
Dr. 有安祐二


【BIOGRAPHY】

2006年8月、タカユキカトーの大学のバンドサークルのイベントで「タカユキカトー」として初ライブ。この日アルバム「ガールフレンド・イン・エステシティ」(CD-R)発売。11月、渋谷Lushで初ライブハウス。
2007年4月、ヒロヒサカトー(ギター)が加入。ライブが下北沢ばっかりになってくる。12月、東急東横線の車内注意書きを見て、バンド名を「ひらくドア」にする。
2008年5月、寺中イエス(ベース)が加入。10月、1stアルバム「LoveLoveLoveLove」(CD-R)発売。
2009年3月、1stシングル「君の銀色のギター」(CD-R)を100円発売。
2010年1月、2ndアルバム「He Luck Door」をCDで発売。ひらくドアの単独音源が初めて全国流通する。6月、THEラブ人間とのスプリット盤「自分勝手.ep」(CD-R)を発売。300枚限定で完売。
2011年3月、アルバム「思い出」をCDと無料mp3の2形式で同時発表。CD版が1ヶ月で800枚くらい売れる。JACCSのキャンペーン「あなたの夢に応援歌」に参加、曽我部恵一BANDやカジヒデキと並んでCMに出演して話題になる。
2011年夏、関西で「MINAMI WHEEL 2011」「見放題2011」「西院ミュージックフェスティバル 2011」とフェスに参加、全て入場規制がかかり白熱のライブ!12月、大阪心斎橋acidで初のワンマンライブを行う。テレビ東京系列の特番「今夜誕生!史上最高の“恋歌”」にひらくドアが出演、大きな話題となる。ドラムスE.MURAYAMA脱退。
2012年2月、アルバム「Small Music For The Sleeping Time」発売。ドラムスに有安祐二を迎え新体制でのライブも始動。


【NEW ITEM】

レア音源集
「Small Music For The Sleeping Time」
IZR-012
¥1260(Tax in) 
【井筒レコード】
NOW ON SALE

1. 愛と名曲
2. Beautiful Song 
3. 赤いかきごおり 
4. My Love Is Not Forever 
5. ばいばいマリー
6. Small Music For The Sleeping Time 
7. 渋谷サマー・オブ・ラブ 
8. 海とガールフレンド 
9. I Think About You!


【LIVE INFORMATION】

http://izutzrecord.com/live/


【ARIST HOMEPAGE】

http://izutzrecord.com/


はこモーフ

【MEMBER】

Vo.&G. たけたにエミコ
B.&Cho. いけがみカナエ
Dr. なかむらヨシミ


【BIOGRAPHY】

2009年5月より現メンバーで活動開始。
2009年6月、自主制作CD-R「空を食べる e.p.」を発売。
2010年2月、初自主企画「明日からがんばる」開催。自主制作CD-R「はこモーフ」を発売開始。初回制作分を完売。10月、太平洋不知火楽団とスプリットツアー「ディフェンスに定評のあるIKEGAMIツアー」全5箇所を完遂。12月、「明日からがんばるvol.2」開催。
2012年2月、アルバム『明日からがんばる』を発売。同レコ発ツアーをひらくドアと<はこモーフ201241_下北Que_lucka>全7箇所を行い、各所大成功を収める。


【NEW ITEM】

FIRST ALBUM
『明日からがんばる』
RCSP-0029
¥2,100(Tax in)
【redrec / sputniklab】
NOW ON SALE

1. 30分
2. 大きいかぶ
3. 誰かの歌
4. 空を食べる
5. もっとちょうだい
6. 村に平和が戻ったよ
7. 背中
8. 手のなるほうへ
9. 不器用讃歌


【ARIST HOMEPAGE】

http://www.haco-mofu.jp

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