serial TV drama『serial TV drama disc.1~3 : 初回限定盤特典付き』
serial TV drama
『serial TV drama disc.1~3 : 初回限定盤特典付き』
2012.3.24 (Sat)
下北沢GARDEN
「節目」という言葉がある。区切り目の折々に使われるこの言葉は、元々は樹や竹の成長の過程で現れる「節」を指すものだ。そして、この「節目」こそ、解散、もしくは活動を休止したバンドやアーティストのその前後を表わすのにぴったりな言葉だと私は思っている。「節」は成長過程だ。そこまでの育みを明示しながらも、その後の伸びや成長を、しっかりと表わし、期待させる。そしてそれらが更に伸びていき、新たな枝葉をつけ、繁らせていくさまは、まさしく解散後の各メンバーたちの、その後だと思う。
この日のserial TV dramaは、その日立ち会った全ての者たちにしっかりと、その「節目」を示してくれた。そしてそれは、彼らのこれまでの活動やライヴの場面、作品として、今後も我々の中に残り続けていくであろうことを確信させるものでもあった。
スタートからラストの曲が鳴り終わる瞬間まで、これまでの自身の歴史を凝縮し、総括するかのようなライヴが展開された、この日。とは言え、それはけっして単に歴史をトレースするに留まらず、文字通りオールタイムベストなセットリストを、現行のserial TV dramaとして、しかと展開してくれた。
思い返せば、ボーカルが鴇崎に変わってから、ここまでのライヴは、鴇崎参加以降を打ち出すように、あえてメジャーデビュー以前の曲を封印してきた印象があった。しかし、この日は鴇崎加入以前の曲も多数披露。しかもそれらはきちんと最新のserial TV drama然としており、それがことさら新旧隔てなく、お客さんを終始満足させる内容へとつながっていた。
我々ラッカは、この3年間、彼らのグッズの制作/デザインで携わらせてもらってきた。そして、今回のラストライヴに際しても、「SERIAL ATTACKS!!」のロゴTシャツの別色を制作。そして、この日、終演後に来場者全員に感謝の意味も込められて配られたステッカーをデザイン/制作した。このステッカーは、今回が彼らのライヴの最終回であることから、グループ名でもある「連続テレビドラマ」に絡ませ、あえてスタッフロール風にし、各メンバー名や歴代のロゴを配した。帰りに手にし、その最後の粋なプレゼントに感激した人も多かったのではないだろうか。→過去のグッズデザイン/制作物の一部
この日のライヴは、彼らの最後の雄姿を観ようと超満員。チケットは早々に完売した。
開演前から、”待ち切れない!”といった期待感が、満杯の会場に満ちている。その雰囲気をなだめるように、会場にはいつも通り、あえて穏やかで牧歌的なカントリー&ウェスタンやブルーグラスの類いがBGMとして鳴っている。
スーッと会場が暗転する。SEが鳴り響くと、それに合わせてメンバーを呼び込むかのように、場内からクラップが起こる。スモーク漂うステージにメンバーが一人一人登場。ドラムセットの岡田を中心に円を描き、そのフォーメーションのまま、1曲目の「狼」に入る。「楽しんでいこうゼ!!」と鴇崎。ドライヴ感あふれるギターリフが会場に弾みをつける。上昇感と至福感たっぷりのサビでは、4つ打ちに乗り、会場も大合唱。その後は、きたーっ、新井のスイ―プ奏法混じりのギターソロだ。ラストに向け、会場をグングンと高みへと引き上げる。ラストのフレーズの「今しかねぇ 答えろ」が、会場に詰問する。「どんどん行くゾ!!」と鴇崎。続けて「ティリラ・ティリラ」に突入すると、4声の美しいハーモニーが楽曲に景色感を加える。相の手部分では、会場中がクラップ。いきなり場内を見晴らしの良い場所へと連れ出す。「コピペ ~ENTER the SERIAL~」のチャイニーズなフレーズ混じりのギターリフが鳴りだすと、会場にハッピーさが呼び込まれる。同曲では、一言一言のステージとフロアとの呼応もあり、鴇崎の歌唱にもコブシが交わっていく。間では近藤のベースソロを経て、新井のギターソロに突入。4人がステージ前方までせり出てプレイを始めると、ステージもフロアも嬉しそうな笑顔の交歓がなされる。
「今日は俺たちのために集まってくれてありがとう。いつもよりちょっと長いけど、あっと言う間に思える時間にするから、この時間を俺たちにくれ!!」と鴇崎。会場全体がその呼びかけに嬉しそうに呼応する。
憂鬱気味のイントロから、負けられないストーリーが展開される。続いては「シティボーイの憂鬱」だ。岡田と鴇崎がツインボーカルを聴かせ、新井もあえて無機質さを表すようにボコーダーボイスで歌う。輝いて見えていた色々なものが、日々を追うごとに輝きを失っていくさまを歌った同曲に、会場中も自身を省みる。稲増と新井のギターのリレーションから飛び込んだ「ガーネット」では、東京の夜の景色から昼の美しい情景へと会場を惹き込む。サビの解放感もたまらない同曲。稲増のカッティングの上、新井が自由にギターソロで泳ぎ回る。この2人のお互いの役割や棲み分けを熟知したが故のコンビネーションもこれが見収めかと思うと非常に残念だ。
そして、近藤のダウンピッキングが楽曲を引っ張ると、続いての「噛ませ犬」が始まる。スリリングなサウンドの上、かませ犬で終わらない気概が会場に満ちる。ラストの倍テン2ビートが会場の盛り上がりに更に火をつける。稲増のアルペジオによるギターイントロからしっとりと「yellow」に入ると会場も聴き入る。ここでは鴇崎のボーカルに注目。しっとりから徐々に熱を帯び、ラストに向け感情移入たっぷりに伸びやかな歌を聴かせ、スケールの大きなドラマティック性を楽曲に加えていく。
「下北沢、楽しんでるか?」と鴇崎。「しゃべりたいことは流れに任せる。今日はみんなもしゃべりたいことをここに残して欲しい。明るい未来に向けて演っていくから」と続け、「素敵な明日のために」の言葉の後、「立ち止まりJOURNEY」を始める。よりメローになった感のある同曲。停滞した気分を振り返させるも、キチンと前向きな気持ちにさせてくれる曲に会場中も聴き入る。4つ打ち、クラップの中、会場が海岸線まで導かれる。次の懐かしのナンバー「シーフード」では、3声のハーモニーが切なさにスイートさと清涼感を加えていく。「心配ないさ」のフレーズが今日はことさら信憑性を帯びてくる。
そして、「アカシア」では、会場に哀愁性が満ちていく。ジワジワと広がり、聴く者を惹き込む同曲。ドラム落ちになり、再びリフレインに戻るところではことさらゾクッと。ラストに向けて哀愁さがとてつもなく広がっていく。そのハーモニーと共に稲増も場内の温度を上げるかのようにギターを掻きむしりながらプレイする。ラ―ガの不思議な雰囲気が場内に広がっていく。次のアシッド感あふれる「ソング・オブ・ガンジス ~ホロレ禁じられの歌~」が、会場をガンジス河のほとりに佇ませる。稲増、新井がギターソロのリレーションを見せ、会場に大きなうねりを与える。新井が「全てを吐き出せ~!!」と場内を煽る。
ゲストのSHIHO(ステレオポニー)がドラムキットに座ると、ステージ袖から、毎度おなじみ、謎のラッパーOKDが現れる。まずはウォーミングアップにSay Ho~のコール&レスポンスで場内を温めると、そのまま「Overslept Kills The Day Feat. OKD」に入る。SHIHOがビートを叩き出し、稲増がブギーの効いたギターリフをループさせる。鴇崎をサイドMCに、OKDが切れ味&韻踏みまくりの見事なラップが会場をバウンスさせる。近藤もグリグリとクルーヴを作り出し、ヘビー感たっぷりの生バックトラックの上、流暢な2MCが連射される。
再び本来のフォーメーションに戻る5人。「バカなバンドでしょう?」と嬉しそうに鴇崎が切り出す。「だけどバカなバンドを観ているみんなもバカだから(笑)」と。その後、会場全体で「バカヤロ―!!」を叫ぶ。あーっ、スッキリした(笑)。
そして、続くイントロが嬌声を導く。「スペースオペラ」だ。途中のフレーズ「信じる言葉を胸に 終わらない夢を見よう」との誘いが今日はやけに胸に染みる。サビはもちろん大合唱。新井もステージセンターにてギターソロをかまし、その後、鴇崎が新井に抱きつき、腕をからませて歌う場面も。「掴んだら二度と離すな」のフレーズに、会場の一人一人が心の中でうんうんとうなづく。
懐かしい曲に一際嬌声が上がる。次の「赤いパーカー」では、これでもかといわんばかりの、稲増、新井によるギターソロバトルが勃発。2人がユニゾンでソロを弾く箇所が現れると、そのカッコ良さにゾクッとくる。
鴇崎が会場を交え、まずはシャウトの練習を。充分にウォーミングアップが終わったところで、続いての「アナログ革命」に入る。土着的なビートが会場に更なる躍動感と生命力を与え、鴇崎の歌声にもなまり&コブシが交じる。途中では、新井のギターと鴇崎のソウルフルなフェイクとの掛け合いが、フロアを盛り上げ、鴇崎もコブシとソウルフルさを使い分けて歌う。お祭りビートは続く。次の「桃源郷エイリアン」が始まると、みんな更にアホになって踊る。しかも、みんなこの上ない幸せそうな表情で叫び、踊っているではないか。そして、本編ラストに歌い、プレイされたのは「ユニコーンの角」。ここでは、”我慢できない!!”とばかりに、会場のいたるところでクラウドサーフが起こる。「僕はユニコーン 君のユニコーン この背中に君をのせて そばで闘おう 君と闘おう」のフレーズは、これからも心の中で続いていく、serialとお客さんとのアライアンスにして、彼らのこれからの新たな旅立ちへの宣言のようにも映った。
アンコールでは、かつて彼らがSEとして起用していたQUEENの「Radio Ga Ga」が場内に流れ、懐かしのナンバーが飛び出してくることを会場中が予感する。ここからの3曲は、彼らのインディーズ時代の代表曲たちが懐かしいスタイルを伴って、しかし、あくまでも鴇崎がボーカルの今のスタイルにて歌われる。
しっとりとした切なさが会場に広がっていった「ginger」、雰囲気を変え、ワイドさとコーラスとハーモニーが加わり、彼ら特有のダイナミズムにスイートさがブレンドされた、今の彼ららしい展開となった「まえぶれ」、新井がライトハンドを交えた超絶なギターソロでつなぎ、タオル大旋回の「まばゆい」に入ると、そのスタジアムアンセム部では、みんなタオルを広げ呼応。ラストフレーズの「見えるかい?」の問いに、「見えたよ!!」としっかりと心の中で応える自分が居た。
ダブルアンコールにも応えてくれた彼ら。ここで一人一人が会場に向けて挨拶をする。
「笑いすぎて顔が痛いよ(笑)。悲しい顔をしている人が少なくて良かった」と稲増が語り、岡田は「これからはこの5人で演ることはないだろうけど、僕たちの音楽はみんなの中で生き続ける。自分たちは解散しても作品は残り続けるので、どうか音楽を聴き続けて欲しい」と繋ぐ。近藤は、「僕たちは今日で終わりだけど、違った誰かの新しいステップになってくれたらいいな」と話し、再び鴇崎が「俺が入ってからの2年は最高だったでしょ(笑)? おかげさまでこの2年で凄く大きくなれた気がします。みんなありがとう」と感謝の意を述べ、最後はリーダーである新井が、「誇りを持てるグループだったと思う。迷惑も色々とかけてきたけど、今はありがとうの気持ちでいっぱいです。最後に見せたかった光景を見せれて良かった。もう少し早く、このような光景を見れたら、また違っていたのかもな」とのちょっぴりの後悔を語り。そして、今までどうもありがとうございました」と締める。場内のいたるところから、すすり泣きが聞こえる。
しかし、そのセンチメンタルな雰囲気をあえて吹き飛ばすかのような、最後のナンバーが2発、ここからは放たれる。まずは、ダイナミックに豪快に、インディーズ時代からの盛り上がり曲「THE DANCE」が会場を強襲する。ここではホント久しぶりに、岡田のジャイブと新井のギターとの掛け合いが見れ、会場を交えた大盛り上がりを巻き起こす。そして、ラストはやっぱりこれでしょうの「PARTY ROCK ANTHEM」が、誇らしげに気高く会場中に鳴り響く。華やかでパーッとした同曲では、各人が用意した色とりどりの風船が場内に飛び交い、弾み回る。無数のカラフルな風船が飛び交う美しい中、笑顔と泣き顔が交差する。ミラーボールも回り出し、会場中の電気がつき、ステージもフロアも一体となっていく。力の限りシンガロングを繰り返す会場。うーん、彼らの最高の門出の花道にして大団円だ。最後は新井のあの一言。そう、「調子いいぜーオラー!!!」を会場ステージ交えてのレスポンスで締め。まことに彼ららしいパーッとした散り際であった。
これを持ってserial TV dramaは解散した。そして、早くも鴇崎、稲増、岡田は新バンド「T.S.R.T.S」を結成し活動を開始している。間もなく新井も近藤も次の動きに入ることだろう。まことに「節目」という言葉がぴったりの解散ライヴだったなと、今振り返っても思う。
そうそう。「節目」について、ちょっと付け加えたいことがある。「節」も樹や竹が先に先に延びて行くのに連れ成長するという事実だ。そう「節」は成長を続ける。そして、その節の成長こそ、解散したバンドに対する、みんなの心の中に残っていく思い出だと私は思う。時間が経ちどんどんと大きく、逞しくなっていく在りし日の雄姿。彼らはこの日、「節目」を迎えた。それぞれの更なる飛躍ややりたいこと、向かいたい道のために。
最後に、serial TV dramaのみんなやスタッフのみなさん、長い間、色々とお世話になりました。そして、ラッカはこれからもみなさんのそれぞれを応援していきます。どうぞこれからもよろしく!!
Report : 池田スカオ和宏
【SET LIST】
1.狼
2.ティリラ・ティリラ
3.コピペ ~ENTER the SERIAL~
4.シティボーイの憂鬱
5.ガーネット
6.噛ませ犬
7.yellow
8.立ち止まりJOURNEY
9.シーフード
10.アカシア
11.ソング・オブ・ガンジス ~ホロレ禁じられの歌~
12.Overslept Kills The Day Feat. OKD
13.スペースオペラ
14.赤いパーカー
15.アナログ革命
16.桃源郷エイリアン
17.ユニコーンの角
Encore
En-1.ginger
En-2.まえぶれ
En-3.まばゆい
Double Encore
W-En-1.THE DANCE
W-En-2.PARTY ROCK ANTHEM
【MEMBER】
Vo. 鴇崎 智史
G. 新井 弘毅
G. 稲増 五生
B. 近藤 太
Dr. 岡田 翔太朗
【BIOGRAPHY】
2004年1月結成。5月よりLIVE活動開始。
2007年3月、1stミニアルバム『ginger』を発表。
2008年3月、店舗限定3曲入りシングル「まえぶれ」をリリース。各メディアから賞賛の嵐。同年7月、待望の1stフルアルバム『シリアルキラー』をリリース。全国ツアーを敢行し、ファイナルの下北沢CLUB QUEは即日ソールドアウト。同年末にはCOUNT DOWN JAPAN08-09、VINTAGE×DI:GA 2009、ROCK IN JAPAN 2009などのフェスティバルに出演。
2009年10月、2ndアルバム『SPACE OPERA』をリリース。その後も全国ツアーを実施する等、積極的にライブ活動を重ねる。
2010年7月、メジャーに活動のフィールドを移しSony recordsよりミニアルバム『マストバイ』をリリース。同年8月、新ヴォーカリストとして鴇崎智史を迎え、新たな歴史を刻み始める。同年11月、シングル「ユニコーンの角」をリリース。2011年2月、同作品を引っ提げて東名阪ツアー行う。同年3月、初のカバー曲を含む「愛が止まらない-Turn It Into Love/シティーボーイの憂鬱」両A面シングル発売。6月、3rdシングル「桃源郷エイリアン」発売。同年8月17日メジャー1st ALBUM『パワースポット』発売。9月2日より、東名阪ワンマンライヴを含む同作品のレコ発ツアーを敢行。
2012年3月24日、下北沢GARDENで行われたワンマンライブをもって解散。鴇崎、稲増、岡田は新バンド「T.S.R.T.S」を結成し活動開始する。
【NEW ITEM】
NEW ALBUM
『パワースポット』
SRCL-7693
¥3,059 (Tax in)
NOW ON SALE
【Sony records】
M-1 ティリラ・ティリラ
M-2 桃源郷エイリアン
M-3 シティーボーイの憂鬱
M-4 SWEET HOME
M-5 アナログ革命
M-6 ユニコーンの角
M-7 Overslept Kills The Day Feat.OKD
M-8 狼
M-9 コピペ~ENTER the SERIAL~
M-10 英雄
M-11 愛が止らない-Turn It Into Love-
M-12 PARTY ROCK ANTHEM
M-13 バラード