MO’SOME TONEBENDER / 『世直し中毒ツアー・ファイナル』

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2008.12.20

MO’SOME TONEBENDER
『世直し中毒ツアー・ファイナル』
2008.11.05(Wed)
@赤坂 BLITZ

各曲全くタイプが違いながらも、どの曲もポップス性に満ち、作品全体に至福感が漂っていた最新アルバム『SING!』。 そんな同作品を引っ提げて全国12箇所に及ぶ『世直し中毒ツアー』を行ってきたMO’SOME TONEBENDERが、そのファイナルとして11月5日、赤坂ブリッツに登場した。
最新アルバムで伺えた、良い意味での音楽性の節操のなさと、収録しているいずれものポップへの昇華。しかも、それをこの3人だけで、どうプレイするのか?それも楽しみの一つに会場に足を運んだ。
そう、今回、我がLUCK’Aは、モ-サムの今回のツアーの物販売物一式を作成。既にその購入したT-シャツに着替え、タオルを肩にかけ、スタンバっている多くのお客さんを見るにつけ、なんだかこちらも誇らしくなる。

うっすらとBGMが流れ、ミラーボールがゆっくりと回っている会場内。そんな中で待つことしばし。突如客電が落ちると、大音量の荘厳なSEに乗り、メンバーが登場した。ギター&ボーカルの百々はLUCK’Aでデザイン/制作したT-シャツを着ている。
意外にもその百々のアカペラでの歌い出しによる「奇跡の歌」から始まった今回のライブ。そこに武井のベースが加わっていくも、しばらく百々のほぼ無伴奏による歌は続いていく。シーンとそれに聴き入る場内。そして、突如スイッチが入るがごとく、3人による演奏に突入。このカッコイイ頭出しにいきなり全身に身震いが走り、気持ちも高揚する。続いては”本領発揮!!”とばかりに「L.O.V.E.」に突入。その8ビートを搭載した激走モーターサイクルナンバーに、”待ってました!!”と呼応する会場。途中のドラム藤田による激速ロールもたまらない。そして、ノンストップでベースの2コードリフも光る「ボルケーノラブ」にイン。シンプルなドラムキットながらバリエーション豊かに叩く藤田の姿も勇ましい。

武井によるウェルカム的なMCを挟み、ニューアルバムから、盛り上がるナンバー「カクカクシカジカ」が飛び出す。同期も加わり、3人+αが曲に新たな表情をつける。ビートを刻む中、間奏ではエフェクトをいじる百々。続いて、サンプリングによる子供の声のカウントから、スタックスビートが飛び出す。歌詞もユーモラスな「アイドンノウ」だ。間に飛び出したギターソロは作品には無かったもの。甘いハーモニーも作品同様に決まっていたのが印象的だった。
チューニングもさっさと済まし、次から次へと、まさに矢継ぎ早に繰り出されるナンバーたち。続いて飛び出したのは、「JACK THE TRIPPER」だ。間の部分の百々によるラップも良い感じ。加えてやけくそ気味の武井、藤田の2人のコーラスも(笑)。後半の倍テン(テンポが倍になる)になるところは非常に盛り上がり、ラストでは藤田の怒濤のなし崩しドラミングが炸裂。そして、彼らの極初期からの代表曲「未来は今」が登場し、盛り上がりの火に油を注ぐ。間奏ではリズム隊が魅せ、そこにジェットライド的な百々のギターが乗り、盛り上がりをさらに加速させていく。そして、「イサムとデュエットします」の百々によるMCの後、「君とどこまでも」が始まる。ニューアルバムに収録されていた、おだやかでゆったりとした、美しくも幻想的な曲だ。藤田も稲垣潤一よろしく叩きながら歌う。
そして、彼らの曲でも比較的穏やかなナンバー「ペチカ」が、その雰囲気を引き継ぐ。浸るように聴き入る会場。組曲的なアレンジに変貌したこの曲では、白いライトの中での百々のギターも映え、音色が会場中に響き渡る。ハープシコードの音色と、シンプルなビートの上、ゆるやかに脱力気味に歌う百々。ステージライトにより、徐々に会場が明るくなっていくさまは、まるで陽が登っていくようでもあった。それが終わると会場内の空気がガラッと変わる。そう、続いては「虹を架けて」。ラストへ向かうスピード感と、ストレートになるところが気持ち良い。

ここで一息。百々がギターをアコギに持ち替え、先日のルー・リードのドキュメント映画のトークショーにかり出された話やその映画についてをMCしつつ、そのルー・リードの「サテライト・オブ・ラブ」の一部をプレイ。あまり一般的でない、この曲をチョイスする辺りは、いかにも彼ららしい(笑)。そのまま、「グッモーニン」に入り、武井はシェイカー、藤田はエフェクト処理を担当する。例のトーキングブルース風の歌も好調。アルバム中最も渇いたロードムービー風の手触りがさらにリアルに伝わってくる。
続いてスリリングでアヴァンギャルドなインストナンバー「no evil」。ダルなブギーが響き渡る「ひまつぶしPart2」と立て続けにプレイ。会場を夢中へと誘う。そして、聴き覚えのあるイントロが会場内に轟く。「ロッキンルーラ」の登場だ。”待ってました!”と、お客さんも盛り上がる。武井のベースもグルービーだ。その後はさらに怒濤性に拍車がかかる。彼らのラウドでカオスな部分を浮き彫りにする「GO AROUND MY HEAD」では、間のダブさと、その後にやってくるカタストロフィー的カタルシスを体現。圧巻な音の壁に、なすがままの我々。会場全体が狂気へと発光していく。重いビートとギターリフ、武井のアジテートが始まる。続いては「joy」だ。作品以上の”なんじゃこりゃ!?”感に包まれる会場。武井のコアリズム体操(?)的なダンスも飛び出す。
“これでもか!!”と、ブッ飛んだ曲はまだまだ続く。サンプリングと4つ打ちが鳴り響き、武井もビームサーベルを振り回す。レイヴ感にトランス感覚もたまらない「LOST IN THE CITY」では、みんなアホになって踊り狂っている。そして、ビキビキしたベースのイントロと2コードでグイグイと突き進み、徐々にパターンを変えながらも聴き手の脳髄に入り込んでいく「BIG-S」。続いて、ハッと急に我に返るようにニューアルバムの幕開け的ポップナンバー「シンクロニシティ」が飛び込んでくる。基本非常に良い曲なのだが、ここで聴くとそれにさらに輪がかかる。ラストに向かうに連れ、エタニティとインフィニティを感じていたのはけっして私だけではなかったはずだ。
そして、ラストはアルバム中もっとも荘厳な曲「流星群」。聴いているうちに幸せに包まれていく自分が分かる。ロマンティックで、ある種の決意表明も感じる曲だ。

残念ながら、ここで本編は終了。しかし、アンコールの催促はとまらない。ストイックながら、全力でここまで走り続けてきたメンバーが、その疲れを微塵にも見せず、再びステージに現れる。
アンコールは、4つ打ちのポップで明るいナンバー「We Are Lucky Friends」。メンバーも客席もみんなが幸せで楽しそうな表情だ。ちょっとした照れくさい青春性をも感じさせるこの曲の登場に、ミラーボールも回り出す。なんか全てを許せる気がしてきた。
引き続き、ノンストップでトライバルでトランシーなシークエンスが流れ出る。ニューレイブナンバーの「BAD SUMMER DAY BLUES」だ。武井の神々しい雄叫びが会場中に響き渡る。最後の”これでもか!!”といわんばかりのニューレイヴ攻勢は凄かった。

客席からは再びアンコールの催促が。その声に応えるように半ばフラフラになりながらメンバーが3度登場する。正真正銘のラストは「凡人のロックンロール」。武井もアジる。百々もトランス状態で歌い、弾きまくる。藤田も最後まで肉体の限界と言わんばかりに人力で強靱なビートを作り出す。やっぱり、この人力へのこだわりと怒濤さがモ-サムなのだ!!もう最後はステージも客席もめちゃくちゃ (笑)。いや、そんなことすら関係ないほど、アドレナリン全開で気持ちいい!!
私は彼らのインディーズ・デビュー直前から観ているので、もう10年以上彼らを観てきたことになる。その都度サウンドの形態やスタイルに新しいカンフル剤が投与されながらも、ライヴを観終わった後の感想は、この10数年変わっていない。「スゲー」。そう、この言葉しか浮かばない。しかも、今回は今までで最も、そのスゲーがマックスだったことを最後に声を大にして言いたい。

(report : 池田スカオ和宏)


【セットリスト】
1. 奇跡の歌
2. L.O.V.E.
3. ボルケーノラブ
4. カクカクシカジカ
5. アイドンノウ
6. JACK THE TRIPPER
7. 未来は今
8. 君とどこまでも
9. ペチカ
10 . 虹を架けて
11 . グッモーニン
12 . no evil
13. ひまつぶしPart2
14. ロッキンルーラ
15. GO AROUND MY HEAD
16. joy
17. LOST IN THE CITY
18. BIG-S
19. シンクロニシティ
20. 流星群
Encore
En-1. We Are Lucky Friends
En-2. BAD SUMMER DAY BLUES
Encore2
En2-1.凡人のロックンロール

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