凛として時雨「TOUR2011 “αβ+1″」ツアーファイナル

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2011.12.20

凛として時雨「TOUR2011

凛として時雨
「TOUR2011 “αβ+1″」ツアーファイナル
@恵比寿LIQUIDROOM
2011.11.30(Wed)

 凛として時雨にとって、お客さんとの距離や近さとは何だろう?このライヴ中、何度もそれについて考えを巡らせた。
 一体感を求めるわけでも、反応を楽しむわけでもなく、一方的に放たれる彼らの音楽と、それを身体ごと受け止める人たち。フロアから返ってくるエネルギーを受け、増幅して返すこともなければ、ただただ自分たちの音楽をある意味一方的にステージから放ち続ける時雨。対して、客席はそれを時になすがままに身を任せ、反応や呼応し、どんどん先に進みゆく彼らに置いていかれないように、振り落とされないように、必死でしがみつくようにステージ目がけ手を伸ばし、自身の思いをぶつけていく。
 一見一方通行で、冷たく映るこの光景や関係だが、実際にライヴを体感したことのある人ならお分かりだと思うが、そこには不思議と疎外感や排他感、対峙性は感じない。いや、それどころか、お互いぶつけ合うその感情や思いは、時に絆にも似た同士感を感じるもの。そして、そこにはそこはかとない愛的なものさえ感じる時がある。

 「凛として時雨TOUR2011 “αβ+1”」と題された今回はライブハウスツアー。9月27日の東京・下北沢CLUBQueを皮切りに全国27箇所を周り、この日がツアーファイナルとなった。各箇所同様、この日の会場の東京・恵比寿のリキッドルームも、彼らの人気から比べると当然の完全なるキャパオーバー。しかし、それでも行われたところを考えると、この至近距離から放つ意義と、それを経て何かを確かめたいとの思惑が感じられる。

 結果から書こう。私的には、久々にライヴハウスクラスの至近距離で彼らを観、いつもより近くに感じるぶん、身近に感じられるのではないかと期待して臨んだ。しかし、その至近さにも関わらず、彼らは近くにいても、孤高に感じる時もあったし、逆により眼前に迫り、まるで同化するようにダイレクトに伝えてくれているように映った時もあった。

 今回、我がラッカは、このツアーに於いて、「αβ+1 Tシャツ&七分袖Tシャツ」「ノート&ペン」「アクリルキーホルダー」「タオル」「缶バッヂ」「携帯ストラップ」を作成した。Tシャツと七分袖Tシャツの素材は、それぞれTCのオリジナルボディを使用。今回のロゴがフォトのコラージュだったこともあり、そのフォト感を出すために油性インクを使用した。また、タオルの方も、手に取ってもらえばその違いが分かってもらえるほどのこだわりが反映されたもの。そして、毎度のクリアファイルに代わるステーショナリーとして制作されたノートとペンは、ノートはクラフトをオイルコーディングし、風合いを出し、ペンも全て紙で出来ているというこだわりの逸品。加え、缶バッヂは、デザイン性を上手く活用するようにブリキの銀盤面を活かし、そこに直接印刷された。これらは全て、ラッカのマーチャンダイザーのkAtoとTKが何度も打ち合わせをしながら、制作を進めていった。

いつものSEが場内に鳴り響く。それが一旦止み、一時の静寂。しかし、それを経たが故の”いよいよ始まる…”とのライヴへの緊張感が会場を支配する。
真っ暗な中、青白く浮かび上がったステージに、中野、345、TKが順に現れる。まだSEが鳴り響く中、スタンバイする3人。中野がスティックを誇らしげに天に向けて指し、ステージ前方の密度がグッと上がる。その中、いきなりキラーチューン「nakano kill you」が飛び込んでくる。”1曲目からこれとは…”と、のっけから驚喜しながら、”待ってました!!”とばかりに、ただでさえ近いステージ向け、フロア前方が全身で呼応する。ツインボーカルと、そのリレーションも印象的な同曲。ヒステリックにサディスティックに会場を惹き込んでいき、サビではお馴染みの中野による、一打毎のスティック回しが会場を魅了。345のダウンピッキングが疾走感を生み、TKが絶叫交じりで歌を進める。そこに345が深いエコーのかかった柔らかく神秘性溢れるコーラスを加え、楽曲にコントラストをもたらす。続いて、オプリを交えたTKによるイントロが、なだれ込むように場内に炸裂。嬌声が一際上がる。続いては「想像のSecurity」だ。TKのギターと345のベースが楽曲にドライヴさを加え、中野もタムを交えた怒涛感たっぷりのドラミングを見せる。間にはメランコリックな部分を挟み、再び怒涛へと盛り返すところは鳥肌もの。ノンストップでTKのテレキャスターから幾何学なイントロが放たれ、これまたメランコリックが高い「COOL J」が始まる。中野も先程よりも回転数をアップさせた、回し位置も高いスティック回しを交えたドラミングを披露。ヒステリックさと、その真逆とも言えるウィスパーな歌い方を交えてTKが歌う。そして、345のベースラインから始まった「DISCO FLIGHT」では、中野のドラムが、”俺の独壇場だ!!”とばかりに会場を引っ張る。そこにTKのギターが絡ると曲が更にスパーク。サビの4つ打ちダンサブルさへと突入する。そして、TKによるギターソロが場内に更なる発狂性を与え、345がそこにコーラスを添え、曲にマイルドさを加えようとするも、”それの上を行かん!”とばかりに、TKがこれでもかのシャウト。ライヴハウスならではのシンプルなライティングが、まるで”丸腰で勝負!!とでも言ってるかのように響く。同曲のラストは中野の地鳴りのようなツインペダルのパスドラ。それが場内を揺るがし、突然遮断されるようにピタリと止むと、逆にこれまでの怒涛さが嘘のような静けさが会場を包む。

「凛として時雨です」とTKが一言。そして、TKのギターと同時の歌い出しに場内も驚喜。「I was music」に入ると、間のヒステリックな部を挟み、ダイナミズムな部分とのコントラストを見せる。そして、そこを経たが故の、サビのストレートさがたまらない。ここでは、”もう我慢できない!!”とばかりに、ステージ目がけて各所でクラウドサーフが発生する。中野の4カウントの後に飛び出した「Knife Vacation」では、ここまでとは違った柔らかさが楽曲に加わっていく。サビでは会場も呼応。ラストは345がボーカルのイニシアティブを取り、楽曲にふくよかさと神秘性を添えていく。間髪置かず、中野によるハイハットの4カウントの後、TKのウィスパー交じりの歌が始まる。次は「a symmetry」だ。彼らの曲の中では比較的抜き差しの多い同曲。その分、TKが歌で物語を広げていく。「光を消して 耳を塞いで 光を消して 探せないように」と絶叫しながらも、決して耳をふさがせず、目を閉じさせず、”忘れさせてやるものか!!”と響く同曲。中野がドラムでアクセントを付け、345が柔らかく優しいボーカルを楽曲に付与する。前曲の雰囲気をかき消すように、TKのギターが掻きむしられ、続いての「テレキャスターの真実」にイン。前曲での「結局どっちを抱きたいの?テレキャスターとレスポール」と会場に歌で尋ねておきながらも、続いての曲で「真実」を見せようとする、その流れに二ヤリ。同曲では345もスラップ交じりのベースを披露。楽曲がファンキーに彩られていく。ヒステリックなツインボーカルが楽曲の高揚感を互いに高め合っていくかのようだ。いゃー、かなり複雑なアウトロながら会場もシッカリとついていく。続いての「ハカイヨノユメ」のギターイントロが轟くと場内も一際歓声を上げる。間には一打一打重い中野のドラミングと、シンバルからシンバルへと叩き分ける際のスティック回しも披露。アウトロでのTKのギターソロが場内に更なる熱狂を生んでいく。

「新曲を演ります」とTK。その言葉に場内が湧き立ち、会場中がグッと構える。ギターのカッティングと共にTKの歌い出しから始まった同新曲。ちょっとしたメランコリックさと、間には2人の声も重なり、ツインボーカル性を帯びたところも印象的であった。間にはダウンカッティングと歌による永い箇所を経て、再び楽曲のテーマに戻るところは鳥肌もの。今後の作品化も楽しみだ。続いて、深いエコーの効いた中野のドラムと、345のドリーミーでスイートな歌い出しが幻想的な世界へと惹き込むように「illusion is mine」を始める。4つ打ち、16のリズムがズンズンと進んでいき、段々と会場中を高揚させていく。
「久しぶりにアコースティックギターでも」とTK。用意された椅子に座り、アコギを持ち「Tremolo+A」を始める。アコギの起用とは言え、ここはしっとりとしたアレンジで送るはずもなく、元々あるダイナミズムに時雨らしさ、そこに作品以上の情熱性と若干のスパニッシュテイストが交じったアレンジが会場に広がっていく。
続いて、すかさずTKが愛用のテレキャスターに持ち替え、これまた情景感溢れる「夕景の記憶」に入る。ダイナミズム溢れる景色性豊かな同曲。ここではTKも優し気にウィスパーを交えた柔らかい歌を場内に放つ。演奏が会場の1人1人が思い浮かべているであろう景色を広げていく。ジワジワとその世界観へと会場を惹き込んでいく同曲。ラストのTKのプレスの長い叫びに捕まり、場内も金縛りにあったように身動きがとれない。

ここで中野がドラムキットの中、すくっと立ち、ハンドマイクを持つ。場内には、これまでとは違った期待感が溢れ、会場中が中野に注目する。
まずは、「このツアーのファイナルを記念して」と、彼がギターを弾き語り。以前にも披露した某国民アイドルのデビュー曲を聴かせてくれる。うーん、確実に前回より上手くなっている(笑)。しかも、この日は、普通バージョンとバラードバージョンの2種を披露。バラードバージョンでは、深く通る上手いのども披露。そして、この夜のみの特別披露として、たどたどしくも湘南乃風の「純恋歌」を感情移入たっぷりの弾き語り。同曲ではミラーボールも回り出し、これまでとは多少違った演出が。そして、その雰囲気をガラリ。ここからはみなさんお待ちかねの、中野によるコール&レスポンスコーナーが。この日のラインナップは、Say バイブス!~たますじ~チョコレートディスコ(Perfume)~(B’zの「ULTRA SOUL」のメロディで)リキッドルーム~ぐるぐるぐるぐるどっか~ん~We Are X~(再び)ぐるぐるぐるぐるどっか~ん~のフルコース。これにはお客さんも大満悦だ。続いて、気を取り直すが如く、中野もドラムのポジションに座り直し、驚愕にして怒涛のドラムソロを披露。いやー、先程まで会場をそのコール&レスポンスで翻弄していた男と同一人物とは思えん (笑)。

このドラムソロの終わる頃、TKと345が再びステージへ。中野がドラムソロのラストの1打を叩き終わると同時に「JPOP Xfile」にイン。疾走する8ビートが会場に一体感を生んでいく。345のボーカルも加わり、「だんだん分からなくなって」のフレーズもリアルに響いてくる。アウトロではギターソロも炸裂。会場を興奮の坩堝へと惹き込む。中野の怒涛のドラムの中、TKのギターカッティングが入ると、続いての「Telecastic fake show」に。”待ってました!!”とステージ前方の密度が上がっていく。と同時に、フロアからは一際の大きな呼応が。同曲では、345の追いかけるコーラスもたまらない。加え、TKのチョ―キング交じりのギターソロも場内に白熱を生み、ラストに向かうに連れ、高揚感と緊迫感あふれる。怒涛のナンバーが狂暴性を上げながら更に突進してくる。長めのイントロから放たれた、次の「感覚UFO」では、TKの歌に重なっていく甘い345のコーラスが白眉を見せる。これでもかと言わんばかりにステージに向けコブシ突き上げるフロア。345のアクションも激しくなり、髪を振り乱し、リズムに乗りステップを踏み始める。

ここで物販の説明が345から。いつもの頼りなげで、支えたくなるような口調で、たどたどしく、しかも全種に「おしゃれアイテムとして」が付けくわえられ、伝えられる。
そして、「傍観」が始まると、会場も終わりを悟る。絶望の深淵を見せながらも、どこか孤高まで会場を引き上げてくれる同曲。さっきまであんなに暴れていた会場も、圧倒されたかのように、その荘厳さに気押される。微動だに出来ない会場。そんな中、TKは絶叫を繰り返し、345もベースを掲げ、そのまま会場のお客さんに預け、ステージを去る。中野も去り、残ったTKは、切迫感詰まったヒステリックで発狂ライクなギターソロをかまし、その後、フィードバックノイズを残し、ステージを降りる。段々とアンプリファイされていくそのフィードバックノイズがピタッと止み、静けさが会場を制すると、ハッと我に返るように会場からは思い出したがように拍手が起こった。

正直に書こう。僕はこの日の彼らに、いつものステージより至近になるぶん、より近さや身近さを求めた。ややもすれば、ステージとフロアとの隔たりの少ないぶん、全体感や一緒感を味わえるかも、と。しかし結果は、そこに共有感はあるものの、いつものようにステージとフロアといった構造はそのままであった。しかし逆に、それが非常に彼ららしいなと感じたのも事実。そう、彼らは彼ら。例え近かろうが、遠かろうが、自身の音楽をいつも通り放つだけ。それを感受傍受し、身体や頭を使って反応するのも、やはり我々の勝手なのだ。

 勘違いしないで欲しい。彼らの音楽は大音量だから、激しい音や音楽性だから伝わってきたり、近くでプレイしているから、より届くといった類いのものではない。至近でプレイされてても、遠く感じる時もあるし、遠くでプレイされてても傍らに感じたり、向かい合ってくれている気がする時もある。凛として時雨の音楽は、会場の大小や、その距離に関わらず、確実に我々に届いてくる。そして、それを受け、我々がどう捉えるか? を問いてくる。そこに近さや遠さを感じるのは、彼らではなく、かく言う我々の方なのではないだろうか? このライヴハウスツアーは、もしかしたら、時雨が我々に近づいてくれるのではなく、我々がより時雨に近づいていく。そんなことを目的に行われたのではないだろうか? と、今になって非常に思う。

 
Report : 池田スカオ和宏


【SETLIST】

01. nakano kill you
02. 想像のSecurity
03. COOL J
04. DISCO FLIGHT
05. I was music
06. Knife Vacation
07. a symmetry
08. テレキャスターの真実
09. ハカイヨノユメ
10. 新曲
11. illusion is mine
12. Tremolo+A
13. 夕景の記憶
14. JPOP Xfile
15. Telecastic fake show
16. 感覚UFO
17. 傍観


【MEMBER】

VOCAL&GUITAR: TK
VOCAL&BASS: 345
DRUMS: ピエール中野


【Profile】

2002年埼玉にて結成。その後、メンバーチェンジを経て現メンバー編成となる。
2004年3月初の全国ツアーを経て、DEMO音源を2000枚以上売り上げる。
2005年11月 自身のレーベル「中野Records」を立ち上げ、待望の1st album 「#4」(ナンバーフォー)を始め、2枚のアルバム、1枚のミニアルバム、1枚のシングルをリリース。
2008年12月、1曲16分+フォトブック仕様の 2ndシングル「moment A rhythm」をSony Music Associated Recordsよりリリース。
2009年5月、3rdアルバム『just A moment』をリリース。5月には”last A moment”ツアーを、11月からは全国ZEPPツアー“Tornado Z”を敢行。各所大成功を収める。
2010年1月からは全国ライブハウスツアー”I was music”を行い、そのスーパーファイナル公演として、彼らの単独ライヴでは最大規模のライヴをあえて彼らの地元・さいたまスーパーアリーナにて4月17日に行う。同年9月22日、4thアルバム『still a Sigure virgin?』を発売。同作品はオリコン・アルバムチャート第一位を獲得。快挙を成し遂げる。10月21日より全国ツアー“VIRGIN KILLER”スタート。各所大成功を収める。
2011年4月28日からは、全国7箇所を回る初の全国ホールツアー「VIRGIN KILLER SUICIDE」を敢行。最終日は7月6日の東京国際フォーラムAでのライヴも成功に収める。
9/19には、東名阪で対バンを迎え 「時ニ雨♯13」を、9/27からは、全国ライブハウスツアー 「TOUR 2011 “αβ+1″」を行う。


【Package Item】

4th FULL ALBUM
『still a Sigure virgin?』
AICL-2174
¥2,800(tax-in)
NOW ON SALE

1. I was music
2. シークレットG
3. シャンディ
4. this is is this?
5. a symmetry
6. eF
7. Can you kill a secret?
8. replica
9. illusion is mine


【Artist Homepage】

http://sigure.jp

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