THE NOVEMBERS「To Two()melt into holy」

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2011.12.14

THE NOVEMBERS「To Two()melt into holy」

THE NOVEMBERS
「To Two()melt into holy」
SHIBUYA-AX
2011.11.26(Sat)

 「昇華」。私がTHE NOVEMBERS「To Two()melt into holy」ツアーファイナルである渋谷AXでのライヴを一言で表わすとこんな言葉になるだろうか。
2時間に渡る各曲が放つ様々な事象が、この日のアンコールのラストにプレイされた「再生の朝」に向け、昇華されていく。1曲1曲は各曲で独尊しながらも、全体的な一つの物語として成立していく…。なんかそんなライブだった。その様相はさながら「THE NOVEMBERS劇場」。照明に於いても、音響に於いても、VJに於いても、このツアー、初導入された初楽器やプレイの試みに於いても、楽曲の新アレンジに於いても、セットリストや各曲流れや構成に於いても、全てがトータル的に結びつき、ヒモづき、絡みつき、総合芸術へと向かっていった。それもあってのことだろう。普段の彼らのライヴを観後に感じるポツンとした感じ、1人、個であることを思い知らされる感じとは、また違った、ある種の清々しさにも似た大団円が、この日の観後の私を包んでいた。

 今回はニューアルバム『To (melt into)』&ニューシングル「(Two)into holy」のレコード発売記念的なツアー。それもあり、この日は両作品全13曲中12曲がプレイされ、そこに交えられた過去作品の曲たちも、今の彼らに符合するように、新しい表情や表現を見せてくれた。
この日の会場は渋谷AX。彼らの単独ライヴでは最大のキャパと広さを誇るこのステージは、ボーカル&ギターの小林のライヴ中のMCによると、彼らがまだデモCD-R等しか出していなかった3年程前に、syrup16gの前座でステージに上がった、思い入れのある場所だと言う。

 今回、我がラッカは、彼らのこのツアーに際し、新グッズとして、9/11のTOMOEツアーより販売を開始した、ニューTシャツ、ステッカーセット、ショルダーコインポーチ、特製ケース付き缶ミラー、小林祐介イラスト缶バッヂ、そして、それらに加え、このワンマンツアーでは、新しいデザインの「フェイスタオル」、また、今回のツアーの限定商品としてメンバーが素材選びから、ボディの形まで携わり、ボタンもオリジナルと細部までこだわった「オリジナルカーディガン」を制作させてもらった。

 アンビエントなBGMが鳴っている中、場内が暗転。足音が段々と近づいてくるかのような効果音が場内に響く。そして、そこにピアノのアヴァンギャルドな音色が交じり、スポットライトで浮かび上がったステージに、ドラムの吉木、ベースの高松、ギターのマツモトが現れる。そして、ちょっと遅れてボーカル&ギターの小林が、軽く手を上げながら登場。各々がセッティングを始める。おっ、小林は、ここ最近の愛器のグレッチではなく、今回は最初から、かつての彼の代名詞的ギターとも言えるジャズマスターを使用するようだ。セッティングを終え、しばしの沈黙。会場中に緊張感が漂う中、みんなが一音目が飛び出すのを待つ。そんな中、小林のギターのリバースが大音量で会場に響き、後ろからの強烈な青いライトがメンバーの表情をビハインドしていく。吉木のシンバルによる4カウントから、1曲目の「永遠の複製」が始まる。アルバム『To (melt into)』の1曲目を飾っていたナンバーだ。力強い吉木のバスドラと、マツモトのギターがノイジ―さとメランコリックさを併せ持ったアルペジオを奏でる。後から当たるライトが緑色に変わっても、彼らの表情は掴みにくいまま。長いイントロを経て歌に入ると、マツモトのギターが更に楽曲を泳ぎ回り、高松はダウンピッキングで低音を維持。更にそこに乗るようにマツモトのギターが狂暴性を増していく。小林もファルセットを交え歌い、彼の歌にも段々と感情が加わっていく。
 吉木が放つスタックスビートから「瓦礫の上で」にインすると、先ほどの世界観に若干のメランコリックさが加わっていく。変わらず少ないコードの上、ドラマティックさが加味されていく。また、高松も横に向けたマイクでコーラスをとる。そうそう、これは今回の2作品それぞれに言えるのだが、今回の作品は今までの彼らの特徴でもあった、メリハリや緩急、激静のコントラストや、手数の多いコード進行によるドラマティックさづけとは相反し、逆に少ないコード数や反復を、エフェクターや揺らぎ、微妙な変化を交え、たおやかにドラマティックさを表現したもの。一聴すると多少地味に聴こえるかもしれないが、その実、染み込むように身体に入り込み、クセになり、抜け出せなくなる。いわゆるシューゲイズやグローファイと言われる作品性に映った。

 シューゲイズな曲は続く。次の「はじまりの教会」では、音の抜き差しがあるぶん、小林が歌でアクセントとドラマ性を与える。小林はここでトレモロアームを交えた、ゆらぎのあるギターソロを披露。ピタッ突然閉ざされるように終わる同曲に会場がポツンと取り残される。「どうもありがとう」と小林がポツリ。
 マツモトのギターアルペジオに、小林のつま弾きが交わり、続く「小声は此岸に響いて」が始まると、微睡むような心地良さが会場に生まれる。同曲では小林が優しく柔らかいボーカルを乗せ、触れる程度の吉木のドラミングが、まさにタイトルを体現。優しく包まれるように会場中が聴き浸る。重くゆったりとした8ビートと共に「アマレット」に突入する。以前よりあるこの曲でも小林はこれまでの曲同様、あえて日常的な歌い方を施す。その上をベースが動き、ギターが泳ぎ回るようなアルペジオを見せる。ラストに向かうに連れ、広げていくその光景を始まりに、陽が登り、合わせて会場の体温も上昇していく。楽曲の後半に向け、ステージの光量も上がっていき、それがやけに神々しく映る。その「アマレット」のアウトロの中から激しいドラムとギターのパラレルなフレーズが現れ、続いての「こわれる」が登場する。ようやく現れた激しい曲に合わせ、マツモトもアクティブなアクションを交え、小林も発狂ギターソロを楽曲に入れ込み、場内の沸点を上げる。激しくエモーショナルなボーカルが場内に混沌を巻き起こす。そして、「ニールの灰に」では、途中に激しくなる箇所やワイドでダイナミックな面を挟み、体温や温度が感情の激しさや起伏を添加していく。

 「THE NOVEMBERSです。今日は最後まで楽しんで帰って下さい」と、ここで小林が軽くMC。
 ライヴに戻る。いきなり4人で入った「夢のあと」では、バックの白色ライトが大全開になり、そのまばゆい逆光が各人に神々しさを与える。この曲ではマツモトのギターはイントロのみ。あとはギターを小林に任せ、マイクロサンプラ―を駆使。緩やかで浮遊感のある音を楽曲に含ませていく。彼らの中では、変拍子やズレを活かした不思議な安堵感を擁する中、マツモトがハープのようなドリーミーな音色をプラスしていく。続いて飛びだした「pilica」では、色づいていくような雰囲気が会場に満ち、それが独特のポップ観を鳴らす。途中では三拍子に急展開していく同曲。そのままノンストップで「sea’s sweep」に突入すると、前のめりな吉木のドラムと共に、そのドリーミーさが会場をまどろます。

 ここでMC。上述のこのAXのステージの思い入れが、ここで語られ、その時から、ここで自分たちがワンマンを行う予感がしていたこと。その時点では自分たちだけの力で立つものだと思っていたが、いざ今日になり、その実現を振り返ってみると、自分だけの力ではなく、みんなの力がなくてはこのステージに立てなかったことを伝える。

 ここでステージ頭上から明るい一等星のようなライトが一つ。その灯りがボーッと灯される中、続いて、マツモトのギターのつまびきとゆったりとした吉木の8ビートも印象的な「終わらない境界」に入る。その電球のような灯りの中、”あの人はどうしているのかな?”と会場中の1人ひとりが、愛しい人に想いを馳せ、歌が進むと、そのリリックにあったランプに合わせての、今回のその照明だったことにようやく気づく。マツモトがマイクロサンプラ―で音を加え、そのマツモトと高松が包み込むようなコーラスを与えていく。テンポも速くなり、音量も曲が進みゆくにつれ大きくなる同曲。合わせてステージの光量も上がっていく。

 このツアーでは、幾つもの新しい試みがマツモトに見られた。まずは上述のマイクロサンプラ―の導入、後半にはハーモニカも披露、そして、「日々の剥製」では、ネックの根本を使い、ライトハンドを披露する。明暗のコントラストの比較的ハッキリした、この「日々の剥製」。吉木もダイナミズムと生命力のある、4つ打ち交じりのドラミングを見せる。そして、重い8ビートから急変。マツモトのノイジ―なギターカッティングから「dysphoria」にインすると、高松もベースループを見せ、吉木も全身を使った激しいドラミングを見せる。マツモトの発狂ギターソロも炸裂し、シャウトを増した小林の歌と共に、彼のギターソロがヒステリックに場内にささくれを作る。同曲では、これまで彼らの音楽観に浸るように漂っていたフロアにも微かな動きが見える。
 激しく重い曲は続く。赤いライトの中、プレイされた「dnim」では、激しさと穏やかさのコントラストと温度差を見せる。高松もひたすら激しくダウンピッキングし続け、小林も喉が裂けんばかりのシャウトで会場を巻き込む。マツモトも全身全霊を込めて永い髪を振り乱しながらギターを弾き倒している。
 吉木がスピーディな8ビートで繋ぎ、それが一瞬止むと、「彼岸で散る青」のイントロが美しくも冷たく始まる。上から白色に当たるライトも映える同曲。フロントの3人がこちらを向きプレイ。バックのまばゆいライトが神々しい。激ししいけど、美しささえ感じる曲だ。吉木も、”これでもか!!”と言わんばかりにスタンディングプレイも交え、渾身の力を込めて叩く。ラストに向けての高揚感とそれが途切れた時の沈黙の落差が凄く、曲の激しさの分だけ、その後の静けさが心に染みる。
 「おそくまでどうもありがとう。最後の曲です」と小林。続けて、先の初AXについて再度語り、影響を受け、リスペクトしている先陣アーティストたちの名を挙げていく。そして、「僕たちは僕たちなりに、後に作品を残すつもりで演っている」との所信表明後、「作品を残すのは僕たちではないので、残すつもりで演っている。みなさんが関わってくれたことに感謝しています。ありがとうございました」の言葉の後、本編ラストの「holy」が始まる。ギターを弾きながら同曲を歌い出す小林。マツモトがマイクロサンプラ―を使い、神々しい音色が場内に満ちる。青色の美しいライトの中、プレイされた同曲。会場の体温も徐々に上がっていき、そのさまはまるで体温を取り戻していくかの如く。小林も自身の声をリアルサンプリングして、それに合わせて妖艶を重ねて行く。神々しく美しく、孤高で魂が浄化されていくようだ。ラストはとてつもない高みへと誘ってくれ、会場全体を感動へと包んでいく。

 アンコールに応え出てきてくれた彼ら。小林はラッカ作成のカーディガンを着てくれている。「温かいので、是非着て下さい」との宣伝は、その彼の弁。
 ここからはアンコールが2曲。まずは、ヨンシのような遠い記憶を呼び起こすような歌声と、それをエフェクト化し、リアルサンプリングしていった「melt」から入る。同曲では、彼らの一連のジャケットのイラストで人気の高いtobird作成の絵が動画形式で、プレイしているメンバーを通し、ステージ後ろのスクリーンに大写しされる。ここではマツモトもハーモニカを披露。穏やかで優しく柔らかく溶けるようなジワジワとした至福感が会場を包み、ラストに向かうに連れて増す、そのシュ―ゲイズ観がたまらない。
 続いてはアンコール2曲目。楽曲のプレイの前に、これまたワンマンとしては初の試みであった。ゲストにART-SCHOOLのギター戸高、LOSTAGEのドラム岩城を加え、ツインドラム、ツインギター、マツモトはマイクロサンプラ―を、高松はベースとタムを叩き、この6人にて「再生の朝」のプレイを始める。フロアタムを中心としたツインドラムと2コードでの上昇感が会場を覆い、ラストの一丸となった巻き込みは圧巻。会場をグイグイとその歌世界へと惹き込んでいく。最後は会場全体が神々しさに包まれ、ステージも発光。ラストは誇らしげに小林がジャズマスターを掲げた。その表情はどことなく、この日のライヴの成功と、この「THE NOVEMBERS劇場」演り終えた後の征服感や成就した者だけが見せることの出来る表情のように僕には映った。繰り返しになるが、まさに「昇華」という言葉がぴったりの2時間の劇場であった。


【SET LIST】

01. 永遠の複製
02. 瓦礫の上で
03. はじまりの教会
04. 小声は此岸に響いて
05. アマレット
06. こわれる
07. ニールの灰に
08. 夢のあと
09. pilica
10. sea’s sweep
11. 終わらない境界
12. 日々の剥製
13. dysphoria
14. dnim
15. 彼岸で散る青
16. holy
Encore
En-1. melt
En-2. 再生の朝


【MEMBER】

Vo.&G. 小林祐介
G. ケンゴマツモト
B. 高松浩史
Dr. 吉木諒祐


【PROFILE】

2002年に小林と高松によって前身バンド結成。2005年3月、THE NOVEMBERSとしての活動をスタート。3種リリースしたデモテープが話題となり人気を高めていく。2007年11月、1stミニアルバム『THE NOVEMBERS』をリリース。2008年6月、1stアルバム『picnic』リリース。それを引っ提げて行った全国15箇所にも及ぶツアーは各所大盛況。同年夏には各所フェスにも出演、大反響を得る。2009年3月、2ndミニアルバム『paraphilia』をリリース。多数の著名気鋭ロックバンドとのツアーや各種夏フェス、大型イベントに参加。同年11月には東名阪ワンマンライブも全公演SOLD OUTを記録する。2010年3月、待望の2ndアルバム『Misstopia』をリリース。3箇所のワンマンを含む全国14箇所のレコ発ツアーを敢行。その後も各地夏フェスや全国ツアーを行い、同年11月には、前年に引き続き東名阪ワンマンライブ「November Spawned A Monster」を行い、全箇所ソールドアウト。追加公演も行われる。
2011年8月3日には、3rdフルアルバム『To (melt into)』と1stシングル「(Two) into holy」を同時リリース。同年11月には全国8箇所に及ぶワンマンライヴツアー「To Two( )melt into holy」を行う。


【NEW ITEM】

3rd Full Album
『To (melt into)』
UKDZ-0115
¥2,310(Tax in)
NOW ON SALE
[DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT inc.]

1. 永遠の複製
2. 彼岸で散る青
3. 瓦礫の上で
4. はじまりの教会
5. 37.2°
6. ニールの灰に
7. 日々の剥製
8. 終わらない境界
9. holy

1st Single
「(Two) into holy」
UKDZ-0116
¥1,470(Tax in)
NOW ON SALE
[DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT inc.]

1. 再生の朝
2. 夢のあと
3. 小声は此岸に響いて
4. melt


【LIVE SCHEDULE】

http://the-novembers.com/category/live/


【ARTIST HOMEPAGE】

http://the-novembers.com/

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