セカイイチ「おめでとうセカイイチ! Another Second Hand Release Party」
セカイイチ
「おめでとうセカイイチ! Another Second Hand Release Party」
2011.10.19(Wed)
@渋谷 O-WEST
「何を今さら」と言うことなかれ、セカイイチの歌は未来やこれからに向かっての歌ばかりだ。いや、それだとちょっと大ざっぱ過ぎるか(笑)。もちろん彼らの曲の中には、未来や将来に向けての直接的な歌ばかりではなく、中には現在を見つめ、過去を振り返らせるものも多い。しかし、それらも全ては、確実に今に繋がっており、今を経、明日以降へとしっかり続いていることを、歌を通し、改めて気づかされたり、諭したりしてくれる。そして、それらが彼らのこの近年のライブに観られる、より力強く、堂々と自信に満ち、来るものもキチンと受け入れる、あのダイナミックな包容感に表れている気がしてならない。
それを改めて感じさせてくれたのが、今回のワンマンライブであった。この日のライブはアンコールも含め全21曲。最新ミニアルバム『Another Second Hand』からの曲はもとより、今のメンバーが揃う以前の曲まで。全曲前向き上向きなステージを展開し、放たれる曲はどれも未来観や開放感に溢れ、今の彼らの好調そうな精神状態や、これからへの気概や期待に満ちていた。
今回も我がラッカは、このセカイイチのニューグッズを制作。今回のCDジャケットに表されていたバンド・ロゴを全面にあしらった「Another Second Hand Tシャツ」、ジャケットのフルーツの中でも特に印象深いバナナをモチーフにした、ビビッドなカラーも特徴的な「Another Second Hand タオル」を制作。この日から販売が開始された。
今回のグッズの制作をディレクションした、マーチャンダイザーのkAtoは、特にバナナのタオルの方に着目。セカイイチのロックバンドなのにポップな要素があるところと、バナナをオーバーラップさせ、バナナのグロテスクさを、あえてポップに表わしたく背景色にグリーンを施した。
スーッと場内が暗転し、歓声と拍手の中、ステージに3、4、5…えっ、5人!? そう、岩崎を除き、そのステージには、ギターの中内、ベースの泉、ドラムの吉澤に加え、サポートのギターとキーボードの姿があった。これまでもキーボードをサポートに迎えていたことはあった。しかし、それは数曲のピンポイント。しかし、この日は頭から、しかもツインギター体制は、彼らにとっても初めてのことだろう。”これはいつもと違うセカイイチが楽しめそうだゾ”。そんな期待の中、中内が骨太なギターリフを場内に響かせ、それをサポートギターの楢原英介(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)が、キャッチボールのようにクイックにリレーションしていく。1曲目は新作の頭を飾っていた「suck around」だ。そのイントロが終わる頃、岩崎がステージに登場。ハンドマイクを掴み歌い出す。そう、この日のライヴの何曲かで岩崎は、通例のボーカル&ギターのスタイルと違い、ギター持たない立ちボーカルにて歌われた。曲の中に出てくる「ミラーボール」の箇所が来るとフレーズに合わせ、ミラーボールも回り出し、いきなり場内をダンスホールに。泉もチョッパーを交えたスラップベースでグイグイとグル―ヴを巻き起こし、ドラムの吉澤も上昇感と躍動感のあるダンスビートを叩き出す。サポートキーボードの山本健太(元オトナモ―ド)もオルガンでグル―ヴィーな味付けを施し、1曲目から会場は完全にダンシングなムードに。続き、「Hey! You Realize」の曲名シャウトする岩崎。ノンストップで同曲に突入すると、スリリングなギターリフに乗り、ダイナミックなリズム隊も光り出す。そして、その上をワウを効かせた中内のピーキ―なギターも絡み、岩崎もタンバリンを叩きながら、ブームマイクにかじりつくように歌う。「今日は騒いでもいいんだぜ、渋谷~」との岩崎のシャウトに乗り、間髪置かず吉澤がフロアタムを交えた重いビートを叩き出し、泉のカウントからベースとギターのリレーションも特徴的な「グレースケリー」に突入。この曲では岩崎もギターを弾きながら、疾走感と適度な上昇感を持った同曲に歌でストーリーを加えていく。間奏部では中内もステージ前方までせり出し、ギターソロをプレイ。その彼目がけてフロア前方の密度が上がる。その後には、スイートなコーラスも交わり、激しさもマイルドにブレンドされ、ちょうど良い塩梅に。いやー、気持ち良い~。
「紳士淑女のみなさん、ようこそ。セカイイチです」と岩崎。「今日の日に間に合わすためにグッズを作った」と、物販のタオルを堂々とを掲げ、いきなりグッズの宣伝が。嬉しい(笑)。
「今日は俺たちの過去現在未来を堪能して帰ってくれ」と続け、一際ワイドな景色を浮かばせるイントロから「Step On」に。ダイナミックなビートが会場に大きなステップオンを生み、一歩踏み出した独特のプレイスタイルで泉も全身でリズムを取りながらプレイ。歌われる「いつか1人になるんだぜ」のフレーズは、この日も含め、いつも僕の背筋をピンとさせる。どっしりとしながらも心にズンズンと響いてき、観る者に徐々に陽が昇っていくような印象を与える同曲に、会場全体が自身のそれぞれの想いや環境、現状を投影していく。シンセベースのフレーズと不穏なギターフレーズから「Melody」に入ると、吉澤のミディアムテンポでどっしりと叩き出させるビートに場内も揺れる。ミラーボールも回り出し、会場全体がゆったりと身体を委ねるように揺れている。「同じ喜びをつかまえに来たんだぜ 同じ苦しみをつかまえにいくんだぜ」のフレーズに会場も大きく同調する。続く「あたりまえの空」が始まると会場にいきなりの小春日和が訪れる。いつもより柔らかく、優しく明るい印象を持った同曲。吉澤のドラムがちょっとした前進感を生み、中内のギターソロがセンチメンタルな気持ちを振り払うかのように会場いっぱいに響く。しかし、それがなおのこと聴き手の胸をキュンと締めつけていく。
「今日は時間を割いてくれてありがとう。今日は健ちゃん(泉)が入る前に演っていた曲も久々に演るから」とのマニュフェストが。「健ちゃん、今日は試されるゾ~」といたずらそうな表情と共に岩崎が続ける。そして、4人だけになり、岩崎がガットギターをアルペジオで爪弾く。次は「帰り道」だ。岩崎のトボトボとした歌い出しに、聴き逃すまいと会場全体が耳をすます。岩崎が18歳の頃に作ったという同曲。音数が少ないぶん、心に染みゆくナンバーだ。続いても初期のナンバー、「しるべ」が場内に優しく滑り出す。この牧歌的なナンバーでは、吉澤もより丁寧にビートを紡ぐ。ラストに向け、まるで感情が堰を切ったように溢れていく同曲に、会場も同種の感情移入を始める。ラストはとてつもない高みまで会場全体を連れて行ってくれた。
楢原、山本がステージに再び現れる。楢原がエレクトロバイオリンを用い、「わずか」を始める。バイオリンとハモンド風のオルガンでリアレンジされた同曲。しっとりとした世界観に楢原のバイオリンが叙情性を加える。会場を夕景へと誘いつつも、確かにある安堵感がたまらない。会場全体もその愛しさを抱きしめる。ほっこりとした気持ちになる曲は続く。次の「ぷれぜんと」では、会場に贈られる「伝えたいことは一つだけ 愛しているよ」のフレーズが、まるで手渡しのプレゼントのように会場の隅から隅まで思いを込めて手渡される。「これからもずっと一緒にいよう」と歌われているような伴侶感が場内に満ち、みんなが幸せそうな表情を浮かべる。前曲までの雰囲気をガラッと変えるように、吉澤がノリの良いビートを叩き出す。続いては「folklore」だ。岩崎もそこまで持っていたギターを置き、アクティブに動き回り、お得意のアジテートラップを場内にかます。ソウルフルでグルーヴィーな雰囲気が場内にうねりを起こす。元々各人超絶なテクニックを有している彼ら。各メンバーによるショートな超絶ソロのリレーションがそこに加わると、場内はさらに熱狂度を上げる。そのままの勢いをさらに加速するかのように続いての「それはイイ!」に突入すると、さらにフロアの火に油が注がれる。ステージも会場も大合唱を生んだ同曲。中内はそのあまりの熱狂ぶりにメガネを飛ばしてまでもプレイを続ける(笑)。リリックにもある「成りたい自分になっている」との自信がメンバーの表情からありありとうかがえ、多くの人が、歌内容同様に、「これでいいのだ!」「それでいい!」と思う。
ここでMC。12/28に渋谷WWWにてワンマンライヴが行われることが発表され、会場からは、「おめでとう」との温かい声が。
そして、会場からのハンドクラップの中、歌われた「RAIN/THAT/SOMETHING」では、不穏なAメロ、Bメロからパーっと解放されたかのようなサビの軽快さが、場内に弾んだポップさを生んでいく。当然ラストのサビでは、フロアも大合唱。いや~、ここにくると完全に主役は会場側だ。
山本によるエフェクティブな効果音の中、不穏でスリリングに現れた「猿の惑星」では、グイグイと惹き込んでくるグルーヴィーなビートがセクシーさも伴い会場に絡みつく。そして、加速度を上げていくように「井の中の世界」へと飛び込むと、発狂とオルタナ感という、これまでにないテイストが彼らの楽曲に現れ出す。泉がベースをループのように繰り返し、メロ部ではダウンピッキングで疾走感を生んでいく。リリックで繰り返される、「限界なんて超えてしまえ」の世界観を、まさにプレイでも表現。ラスト付近岩崎が放った「超えて行け~」のシャウトと共に、ステージもフロアも一体となって限界超えにかかる。続く、中内の伸びやかなギターストロークと、お客さんのクラップ、そして、コール&レスポンスから「カプセル」に入ると、ステージもフロアも一丸となって走り出す。同曲では今度は岩崎のかぶっていた帽子が振り飛ぶ。しかし、それをものともせず楽曲は進んでいく。「こうやって 渋谷で O-WESTで」とリリックの部分を変えて歌うこの日の特別感には、会場も大熱狂だ。
吉澤のスタックスビートのつなぎから楢原のギターへと絡む中、それをバックに「全力で愛してくれますか!!」と、会場にたずねる岩崎。続けて「日本には、あまり魂に響く音楽がないから、俺たちはそれをやるよ。出ない答えはない。一緒に見つけあおう、一緒に教え合おう」と語り、「Ride on songs」を始める。まさに未来に力強く響き、届かせていきたい歌の登場に、更に場内の熱狂度も上がる。”この想いや気持ちや願いよ、この歌に乗って色々な人の下に届け!!”とばかりに誇り高く、気高く鳴り響く同曲に、会場もその歌に込められた気持ちを、他の誰かに伝えんとばかりに一緒に歌う。
ここからはアンコール。4人のみが登場する。全員今回発売されたニューTシャツを着てくれているではないか。しかも、再び告知もバッチリとしてくれ、うーん、至れり尽くせり(笑)。
「まだまだ暴れ足りないんじゃないか?」とギターをかき鳴らしながら場内を煽る岩崎。続いては、モーターサイクルナンバーの「New Pop Song Order」が場内を強襲する。中内もエフェクターをマニュアルでいじり倒すカオスな部分を挟み、再びモーターサイクル部に戻るところでは場内も鳥肌&一際熱狂度もアップ。場内全員が同曲にライドオンする。続いての「あかり」では、岩崎もガットギターに持ち替え、未来へと場内を誘う。ガットギターの音色がよりブレイブ感を増幅させ、その中で、これからの希望と未来が力強く歌われる。相変わらず、この目にこの先、どのような輝かしい光景が映るのか?そんなことを確かめたくさせる歌だ。「音楽好きでありがとう」と最後に岩崎。いや、こちらこそ、「ありがとう」だ。ホント、今回のライヴタイトルは、それこそ「ありがとうセカイイチ」にしたいぐらいだよ(笑)。
メンバーがステージから去っても全く鳴り止まない拍手に、ダブルアンコールで応えてくれた彼ら。まずは今作っている新曲を1フレーズだけサービス的に披露。なにしろお客さんはともかく、作った岩崎以外にも初披露だったという同曲。「怒りがテーマ」というだけあり、かなりポリティカルなナンバーであった。そして、続けて「常に自分たちに力を与えてくれている曲で、セカイイチをずっと続けようと思わせてくれている曲です」との紹介の後、正真正銘のラスト曲として、「聞いてますか、お月様?」を始める。ボサノバタッチの同曲に、会場を出たら、きっと煌煌と輝いているであろうお月様を会場中が思い浮かべる。”必要な力を与えてくれる存在がお月様だとしたら、逆に我々に力を与えてくれるのがセカイイチの音楽なんだな…”としみじみと思った。まるでお月様のような、見透かされていて、とことん正直になれ、力を与えられ、且つ眺めているうちにそこには愛しい人の姿が映ったり、目指すべくものが輝いていたりするセカイイチの音楽。あれっ、例え方は違うが、以前これと似たことを書いた気がするゾ…。いや、だとしたらなおさら、今も変わらす彼らの音楽は、僕にそう思わせるってことだろう。
振り返りつつも、そこには回顧さは微塵もなく、逆にそれがあるからこその今があり、そして、それは明日やその先の未来へと続き、繋がっている。そんなことをこの日のライヴでは改めて気づかされた。セカイイチは今後も常に前や上を向き、そんな歌をゴツゴツとしたタッチで私たちに手渡してくれることだろう。やはり僕は、そんな彼らと、未来やこれからの象徴、そして愛しさの代名詞とも言える、あのお月様を目指し、STEP ONを繰り返し、一緒に歩んでいきたいと改めて思った。例え、メンバーたちに熱がられても(笑)。
Report : 池田スカオ和宏
写真は名物物販販売員「だるまっち」こと高橋理恵さん、2回目の登場です。この日はセカイイチのグッズを販売してくれました。
【SET LIST】
1.suck around
2.Hey! You Realize
3.グレースケリー
4.Step On
5.Melody
6.あたりまえの空
7.帰り道
8.しるべ
9.わずか
10.ぷれぜんと
11.folklore
12.それはイイ!
13.RAIN/THAT/SOMETHING
14.猿の惑星
15.井の中の世界
16.カプセル
17.Ride on songs
Encore
En-1.New Pop Song Order
En-2.あかり
Double Encore
W-En-1. 新曲(さわりだけ)
W-En-2.聞いてますかお月さま?
【MEMBER】
Vocal&Guitar 岩崎 慧
Guitar&Chorus 中内 正之
Bass&Chorus 泉 健太郎
Drums&Chorus 吉澤 響
【PROFILE】
2001年8月、ソロ活動をしていた真性唄歌いの岩崎が、前々から惚れ込んでいたドラマー吉澤を誘い結成。アコギボーカルとドラムという縦一列形態にてライヴを始める。
2002年10月、中内加入。4ピース体制となる。2003年3月、泉加入。現体制となる。
同年12月、デビュー・アルバム『今日あの橋の向こうまで』をインディーズよりリリース。
2005年4月、トイズ・ファクトリーより2nd シングル「石コロブ」を発売。メジャーデビューを果たす。同年5月、1stアルバム『淡い赤ときれいな青と』を発売。
2006年6月、2ndアルバム『art in the EartH』発売。
2007年11月、 3rd アルバム『世界で一番嫌いなこと』発売。
2009年2月、4thアルバム『セカイイチ』発売。4月?5月 “Top Of The World Tour” 大阪・名古屋・東京でのワンマンライブを含む、全国7ヶ所にて開催。
2010年3月?4月 自主企画イベント”光風動春” 大阪・仙台・名古屋・東京にて開催。11月 tearbridge recordsより、ニューシングル「Step On」を発売。
2011年1月、5thアルバム『folklore』を発売。4月2日からは同作品を引っ提げ「folklore tour 2011」を敢行。ワンマン3箇所を含む全箇所大成功を収める。
2011年11月、ニューミニアルバム『Another Second Hand』発売。
【NEW ITEM】
NEW MINI ALBUM
『Another Second Hand』
NFCD-27317
¥1,890(Tax in)
NOW ON SALE
【tearbridge records】
M-1. suck around
M-2. Hey!You Realize
M-3. melody
M-4. それはイイ!
M-5. Ride on songs
【LIVE SCHEDULE】
http://www.sekaiichi.jp/live/live-sekaiichi/