キリンジ『KIRINJI LIVE2011』

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2011.11.15

キリンジ
『KIRINJI LIVE2011』
2011.10.20(Thu)
@SHIBUYA-AX

 いつも”何故だろう?”と思っていた。キリンジの提供楽曲の数々は、そのアーティストが歌うと、そこには良い意味でキリンジらしさは伺えなく、凄くそのアーティストに馴染むものばかり。しかし、発売された彼らのセルフカヴァー+提供曲集『SONGBOOK』を聴いて驚いた。それら提供楽曲もキリンジが歌い、プレイをすれば、それはやはりキリンジらしい楽曲以外何ものでもなかったからだ。なんだか本来の意味でのソングライター的本質をそこに見つけた気がした。そして、この日の前日は奇しくも、その『SONGBOOK』の発売日。ということは当然、このアルバムからの曲も多く演るんだろうな…と思い臨むも、演ったのはアンコールを含む全22曲中たった4曲(笑)。しかも、その日にプレイされ、歌われた曲たちも、彼らの中でも代表曲や人気曲というよりは、”おっ!?”や”ええっ!!””おおっ!!”って曲ばかり。いわゆる、いささかマニアックだったり、久々に演ったりといった楽曲ばかり。とは言え、このセットリストも、この日に集まったファンにとっては”待ってました!!”のオンパレード。そのイントロや歌い出しが始まる度に、会場からは驚嘆の声が上がり、それらは充分に会場を満足&納得させるセットリストであったことを証明していた。

 この日は、彼ら久々のライヴということもあり、オールスタンディングながら会場の後方までギッシリ。いつも以上に高い期待値が漂う中、我々も彼らの登場を待った。
 今回も我がラッカは、彼らのニューグッズの制作、そしてLUCKON GRAPHICS(ラクオン・グラフィックス)が、そのデザインを担当した。
“SONGBOOK”の文字をあしらった「タイポグラフィTシャツ」、畜光プリントを施した「80’sTシャツ」の2種。さらに前回のツアーで好評で購入できなかった人もいたという、「BUOYANCYロゴ」のボディカラー違いのTシャツを2種制作。また、Tシャツと同デザインの「缶ミラー」2種と、サーモマグ製の「タンブラー」も、マーチャンダイザーkAtoディレクションの下、制作された。

 それまで会場に流れていたBGMの音量が大きくなり、それがそのまま登場SEと化し、数カ所に置かれた、ほのかにともる間接照明のようなライトが浮かび上がらせるステージに、まずはバックのメンバーたちが登場する。間を置いて、キリンジの2人が登場すると、一際歓迎の拍手が大きくなる。ドラムの楠によるミディアムでタイトなビートに乗り、アコギを持った泰行が「スウィートソウル」を歌い出し、ステージは本格的に転がり出す。泰行のストロークと高樹のエレキによるつま弾きギター、そこにキーボードの伊藤とペダルスティールの田村が牧歌的な演出を加えていく。ソウルフル且つ後半には若干のエモーショナルさを加え歌う泰行。アウトロ的なサビが、情景や物語をほのかに思い返させ、合わせて間接照明の光量も徐々に上がっていき、より物語を彩って行く。

 「今日は後ろの方まで入ってますね。ツアー2011の早くも半ばになってしまいました(今回のツアーは東阪の2箇所3公演。この日はその中日)。今日は最後まで楽しんでいって下さい」と泰行の最初のMC。ライヴは2曲目の「鋼鉄の馬」に突入する。明るさを加えつつも、さらに牧歌さとカントリー度も増した同曲に、高樹と楠が甘いコーラスを加味していき、楽曲のふくよかさを増させていく。「遠く行こう、どこへ行こう」と歌う泰行。そのリリック通り、まさにさまざまな景色へと会場ごと連れて行ってくれるようだ。そして、リズムもガラッと変わり、これまでの牧歌的な風景から場面は温泉街に(笑)。続く「温泉街のエトランジェ」では、意味ありげな大人の世界、いや事情へと会場をゆっくりと誘っていく。湯の町エトランゼへと場面を変え、ちょっと不惑でアヴァンチュールな気分が会場に満ちる。ここでは田村もペダルスティールからギターに楽器を持ち替え、ワウを効かせたギターが楽曲にほのぼのさをブレンドさせ、泰行から高樹へとボーカルのリレーションと2人のハーモニーが場内を浸らせる。続いて、高樹のフュージョンライクなギターカッティングによるリフから「牡牛座ラプソディ」に入ると、場内から驚声があがる。千ヶ崎のベースが骨太なグルーヴィーさを楽曲にプラスしていく。キリンジの中でも比較的激しい歌内容に合わせるように場内にもギュッと締まるような一瞬が訪れる。後半ではテンポアップ。それがさらに場内に熱狂を生み、アウトロでは高樹が豪気なギターソロを弾きまくり、それが会場のグルーヴと相まり、更なる熱狂を生んでいく。会場全体がグイグイとステージに向け、惹き込まれて行くのが分かる。そして、ミディアムで聴かせるナンバーの「クレイジー・サマー」が続いてやってくると、みんながちょっと前に過ぎた夏を思い返し、同時に演出的なオレンジ色のライトが場内を黄昏へ向かわせる。

 ここでMC。「今日は普段演らないような曲目を考えて来た」と泰行。その間に高樹もシャツの袖をまくり、ギターを弾く気まんまんだ。そして、「既に出来上がっている(酔っぱらって上機嫌)な人に捧げます」と、「悪い習慣」を始める。ついつい嫌なことがあるとお酒に逃げがちな僕にはちょっと痛い歌だ(笑)。後ろめたさを含みつつも、それ感じさせないように歌うところがいかにもキリンジらしい(笑)。そして、そこから一気にスリリングさへと持ち込むように「柳のように揺れるネクタイの」にイン。突っ込み気味のドラムが会場全体に躍動感を与えていく。ペダルスティールと高樹のギターのツインリードからラストに向かうに連れ激しくなるロングテールなギターソロがたまらない。会場は高揚感でいっぱいだ。続く「Lullaby」では、高樹と田村のペダルスティールが郷愁的なサウンドを放つ。同曲を引っ張るのは、伊藤の鍵盤と田村のペダルスティールだったりする。

 ここで再びMC。その日の数日前にリリースされた『SONGBOOK』について話し、ライヴ盤の本質について兄弟で談義。その後、本日のメンバー紹介がなされ、”待ってました!!”の物販の案内が丁寧にされる。今回、何故かBUOYANCYのニューTシャツもあることにも言及。しかし、それに関しては墓穴のように、答えもゴニョゴニョ気味(笑)。それらを掛け合いのように、2人でおもしろおかしく場内に伝えていく。
そして、ここからは、その『SONGBOOK』からのナンバーが立て続けに歌われる。「他人への提供曲は何故かミディアムなバラードが多い(笑)」とは泰行。まずは「ハルニレ」。牧歌的で、「あの日のはしゃぐ声で 唄っている」のフレーズも印象的な楽曲だ。甘酸っぱく、色々なことを思い起こさせるナンバーに、お客さんもそれぞれがあの日、あの頃の自分へと想いを馳せていく。そして「わたしの青い空」は、「火遊びしていても心だけは売らないのです」のフレーズも強烈。楽曲とリンクするかのようなムーディな照明の中、高樹もギターをガットギターに持ち替え、楽曲が伝えられる。そして、楠がタブラを叩き、千ヶ崎がウッドベースに持ち替え、伊藤のエレガントなピアノの中、「お針子の唄」が始まると、同曲のアダルトな雰囲気に場内も酔いしれる。続いて、ダークな雰囲気ながら、聴かせ、情景を思い浮かばせるナンバー「それもきっとしあわせ」が会場に放たれる。同曲のラストでは、とてつもなくダイナミックに会場を眺めの良い高みへと連れて行ってくれた。

 ここでMC。自分が紅白に出るという夢を観たことについて語り出す泰行。そんな中、「ダルダラ」とタイトルされた夢の中で妄想的に出て来たタイトルの曲を歌うことに決まったと締めつつ、その謎の楽曲「ダルダラ」の曲調を、会場それぞれに想像させつつ、ライヴへと戻る。\
「ここからは明るい曲を演ります」との泰行の言葉の後、「風を撃て」が始まると、会場も前のめり状態。ダイナミズム溢れる躍動感のあるブライトなポップナンバーにみんなも合わせて揺れる。高樹のガットギターも同曲に躍動感と情熱性をプラスし、田村も持ち替えたギターでソロをスパークさせていく。次の「僕の心のありったけ」では、シャッフルの効いた4ビートが会場を包む。「この心のありったけ、ありったけを今夜は君の中の宇宙に放ちたいのさ」のフレーズには会場中がうなづき、千ヶ崎もグルーヴィーなループで会場をグイグイと惹き込んでいく。そして、軽快なギターカッティングから「GOLDEN HARVEST」に入ると、千ヶ崎もチョッパーを交え、ファンキーさを演出していく。伊藤もミュートしたトランペットのような音色で加色。泰行もギターは持つが、あえてほぼ弾かず、ボーカリストに専念しているかのよう歌う。そして、高樹と楠によるツインギターによる「絶交」の豪気なイントロが現れると場内も驚喜。彼らの中では珍しい裏打ちの曲に、会場も心地良さそうに身を委ねている。泰行の歌声もさらに熱を帯び、それに比例するように、会場の揺れもますます大きなものに。伊藤も鍵盤でグルーヴィーさを加え、改めて、やはりノリの良い曲では、みんな我慢できずに盛り上がることを立証。各々の楽しそうで幸せそうな表情がそれを物語っていた。
そして、ラストの3曲が凄かった。ここからはラストまで熱をどんどん上げていくかのような3連発。まずは、春を感じさせる、どこかに行きたくなるような明るいポップスナンバーの「絶交」。中間部での田村と高樹とのツインリードの後は、怒涛の高樹のギターソロへ。前に進み行くような軽快な16ビートドラムが会場をグイグイと牽引し、ブライトな泰行の歌が会場に独自の世界を広げていく。進み行くナンバーは続く。次の「ジョナサン」では、「逃げ出そうぜ」の歌詞通り会場一丸となってランドスケープ。一気に景色の良い場所へと全員を誘う。そして、楠の怒濤のドラミングと共にやってきた本編ラストの「夏の光」では、そのリズムに乗せ会場中がクラップ。そのままの勢いでスプラッシュするように同曲への飛び込みはまさに鳥肌。ステージ上のミラーボールも速いスピードで回り出し、生命力と謳歌性と躍動感が場内に満ちる。みんなが”生きている!!”との実感に浸り、季節は一気に夏へと引き戻される。ラストは兄弟による美しいハーモニーを聴かせ、彼らはステージを降りた。

 ここからはアンコール。今回ラッカが制作したTシャツをみんなが着てくれ、再びステージに現れる。アンコール1曲目は「鼻紙」。アコーディオンとワイゼンボーン(スティールギターの一種)が用いられ、楽曲に郷愁感を加えていく。そして、「くよくよするなよ」では、ワイゼンボーンとウッドベースが、ハワイアンmeetsカリプソな世界観へと場内を誘い、正真正銘のラストは、今回の東日本大震災の支援のために書いたという「あたらしい友だち」。優しくもどこか力強さと明るさと希望を有している曲だ。なんだか新しいんだけど、昔からの旧友に逢ったかのよう温かい気持ちを我々の心に残し、彼らはステージを後にした。
気づけば開始から2時間越。正直、ライヴでは初めて聴いた曲も多々あったにも関わらず、僕にはどれもが彼らの代表曲のように響いた。何故だかそれは、冒頭にも記述した、ソングライター的な資質とどこか同質のもののように思えた。提供曲だろうが、自身用の曲だろうが、代表曲と例えられようが無かろうが、彼らのソングライティングは、どの曲もやはり非常に高いクオリティを誇っており、たぶん今日プレイされた楽曲たちも、違った方々が歌えばきっと、あたかもその人たちの代表曲のように響くのだろう。とは言えやはり、キリンジが歌えば、キリンジの楽曲以外なにものでもない。そんなアイデンティティを秘めた憑依的な晴らしき楽曲たち…。この日のライヴの帰路、そんなことをずっと考えていた。

Report : 池田スカオ和宏

【SET LIST】

1.スウィートソウル
2.鋼鉄の馬
3.温泉街のエトランジェ
4.牡牛座ラプソディ
5.クレイジー・サマー
6.悪い習慣
7.柳のように揺れるネクタイの
8.Lullaby
9.地を這う者に翼はいらぬ
10.ハルニレ
11.わたしの青い空
12.お針子の唄
13.それもきっとしあわせ
14.風を撃て
15.僕の心のありったけ
16.GOLDEN HARVEST
17.絶交
18.ジョナサン
19.夏の光
Encore
En-1.鼻紙
En-2.くよくよするなよ
En-3.あたらしい友だち


【MEMBER】

Vocal、Guitar:堀込泰行
Guitar、Vocal:堀込高樹
[Suport Member]
Pedalsteel:田村玄一
Bass:千ヶ崎学
Keyborads:伊藤隆博
Drums:楠均


【PROFILE】

1996年10月、堀込泰行(VOCAL/GUITAR)、堀込高樹(GUITAR/VOCAL)の2人(兄弟)でキリンジ結成。多くのアーティストからリスペクトが絶えない確立されたシンガーソングライターとしてのスタイル、スウィートに練り上げられるメロディー、イマジネーション豊かな詞世界、そして、兄弟ならではのハーモニーと洗練されたサウンドプロダクションで奏でる”キリンジ・ワールド”を現在までに展開。著名/一般に限らず幅広い支持を受けている。現在までにパッケージシングル17枚、配信シングル11曲、オリジナルアルバム8枚をリリース。また、その楽曲性に熱愛者も多く、現在までに数多くのアーティテストへの楽曲提供を行っている。
2008年にはメジャーデビュー10周年を迎え、ベストアルバム「KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration」をリリース。2009は弟・堀込泰行がソロ・プロジェクト“馬の骨”で2ndアルバム『River』を、兄・堀込高樹は“ザ・グラノーラ・ボーイズ”のメンバーとしてフェスなど活動も積極的に展開。ソロを経験して音楽的な振り幅や自由度が高まり、2010年夏には17枚目のシングル「夏の光」、8枚目のアルバム『BUOYANCY』を発表。その後、2010年10月30日より『KIRINJI TOUR 2010/11』と題し、全国24箇所25公演のツアーを行い、各所大成功を収める。
2011年7月には、東日本大震災の直後、彼らが思いをこめて制作した新曲「あたらしい友だち」を震災チャリティーシングルとして配信開始。同年10月19日には、セルフカバー+提供楽曲による2枚組アルバム『SONGBOOK』リリース。東名阪のワンマンライヴを行う。


【NEW ITEM】

NEW ALBUM
~Connoisseur Series~
『SONGBOOK』

COCP-36926-7
¥2,625(税込)
【日本コロムビア】
NEW ON SALE

DISC-1
COVER SIDE (キリンジによるセルフカバー)
1.jelly fish
2.ロマンチック
3.ハルニレ
4.髪をほどいて
5.若葉の頃や
6.わたしの青い空
7.お針子の唄
8.それもきっとしあわせ

DISC-2
FORMAL SIDE (提供曲集)
1.わたしの青い空 / 藤井隆
2.髪をほどいて / bird
3.ロマンチック / 土岐麻子
4.ハルニレ / Keyco
5.若葉の頃や / 畠山美由紀
6.somewhere in TOKYO / 古内東子
7.愛が私に教えてくれたこと / 松たか子
8.それもきっとしあわせ/ 鈴木亜美 joins キリンジ
9.プールの青は嘘の青 / 南波志帆
10.春の嵐 / ミズノマリ


【ARTIST HOMEPAGE】

http://columbia.jp/artist-info/kirinji/

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