serial TV drama「今夜はココがパワースポット!ツアー 2011」

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2011.10.31

serial TV drama
「今夜はココがパワースポット!ツアー 2011」
@渋谷クラブクアトロ
2011.10.15

 正直言って驚いた。この日のserial TV Dramaのセットリストにだ。この日、プレイされた楽曲はアンコールも含め13曲。そして、それらは全て彼らの今回のニューアルバム『パワースポット』からの曲だった。アルバムのレコード発売のツアーということもあり、ニューアルバムの曲を中心にプレイされるのは当然なのだが、よりによってそれオンリーとは…。現在のボーカル鴇崎に変わり一年ちょっと。そこには、”自分たちは別バンドに生まれ変わった、現在のserial TV dramaだけで勝負してやる!!”、そんな意気込みが感じられた。
 鴇崎が加入してからのserial TV dramaは確かに変わった。よりスケール感とダイナミズム、なんでもあり感に満ち、ライブの方も、完全に鴇崎を全面に立たせ、ステージアクションや煽り、コール&レスポンス、エンタテインメント性が増したステージを展開するようになった。より、大きなステージを思い浮かべ彼らを観る方も増えたのではないだろうか。そして、それが如実に現れていたのが、今夏発売されたニューアルバム『パワースポット』であった。これまでで最も豪気でワイドでダイナミック、”これが同じバンド!?”と疑うぐらい、前作アルバムとは違った、各楽曲幅広く、それでいてエンタテインメントさに富んでいた同作品。しかし、そこには正直、両刃の刃な危険性も伴っていた。いわゆる、インディーズ時代の彼らのあの世界観が好きだった人が離れて行ってしまう。そんな懸念もはらんでいた。しかし、そこは逆にメジャー&鴇崎加入以降ファンになった人の新陳代謝を生んだようだ。そして、その辺りはこの日のフロアからも確実に伺え、最近ファンになったと思しき人々、以前以上に率の上がった男子たちも含め、彼らがステージに現れるのを待つ空気感からも受け取れた。

 そんなアルバム『パワースポット』を引っ提げての今回のツアーは、既に全国各地を回り、各所をパワースポットに変えてきたと伝え聞く。そして、ツアーセミファイナルとなった、この日の渋谷クラブクアトロでのワンマンライブも、現行のserial TV dramaを堪能させてくれるライブを展開。まさに、渋谷をパワースポットに変え、集まった者に活力と気、エネルギーを注入してくれるものとなった。

 今回も我がラッカのデザインチームLUCKON GRAPHICS(ラクオングラフィックス)がジャケットにも起用されていた今回のアイコンとも言えるダルメシアンをモチーフに制作したデザインも含め、通称ダルTこと「ダメルシアンTシャツ」「メシアンタオル」「ダルパスケース」「メシアンバッヂ」を作成した。今回のグッズ制作に際しマーチャンダイザーのkAtoは、リリースツアーだったこともあり、デザインの統一感を意識。今までの単発のデザインから、アルバムで象徴的だったダルメシアンの柄をモチーフに、よりトータル的なコーディネイトを意識したディレクションを行ったと言う。

 カントリー&ウェスタンやブルーグラスといった、あえて牧歌的なBGMが場内に流れている中、スーッと客電が落ちる。スペクタクル映画でも始まるかのようなファンファーレが響き渡り、効果音の足音がゆっくり近づいてくる。ステージ中央にスポットライトが当たと、そこにはメンバーが…と思いきや、タキシードを着たMC役の男性が。serial TV dramaを呼び込む声が、その男性より高らかに告げられ、その後、不穏な高笑いが場内に轟く。それを呼び声に、コ―ションベルが場内に鳴り渡り、5人のメンバーが1人1人ゆっくりと自信ありげな足取りと共にステージに現れる。ラッカ作成の今回のツアーTシャツを着てくれているドラムの岡田がデモンストレーション的にシンバルを鳴らす。ダイナミズム溢れるラウドなドラムが叩き出されると、そこにガシッとした、新井、稲増の2本のギターが生み出すギターリフが絡む。「渋谷~! 今日はここがパワースポットだぜ! いくゾ~!!」とボーカルの鴇崎。ハンドマイクでアクションたっぷりにこの日トップにして、ニューアルバムの1曲目を飾っていた「ティリラ・ティリラ」を歌い始める。景色観溢れるサウンドが魅力の同曲。アメリカハードロックばりのハード&ポップス&ストレートなナンバーが会場に炸裂。そこにスイートな3声のコーラスが乗り、それに合わせ、会場も一緒に歌う。オートチューンを効かせ、ケロらせたギター新井のハーモニーコーラスが楽曲に更なる近未来感を与え、1曲目から会場全体に盛り上がりを起こす。「どんどん行くゾ!行けるか?渋谷~!」と鴇崎が会場を煽る。「自由に踊れ~」と続け、上手(かみて)のスピーカーから新井のギターが炸裂する。続いては「コピペ」だ。裏ハットを交えた16ビートが場内にダンサブルさを生んでいく。新井がステージ狭しと跳ねながらギターを弾けば、稲増もそれを眺めながら嬉しそうにギターを弾く。その後、近藤のベースソロ~稲増~新井のギターソロへとリレーション。場内も1人1人の超絶が現れる度に驚愕と驚喜で迎え入れる。リリックの「誰も見たことのない景色を観に行こう」通り、場内をまだ見ぬ景色へと誘っていく。

 続いて、今度は稲増のギターカッティングと岡田のフロアタムを活かしたドラムによるイントロに、あえて無機質な新井のボコーダーボイスが絡み、「シティボーイの憂鬱」にイン。スタンドマイクスタイルに代わった鴇崎がロックスター然としたボーカリゼーションを魅せる。
ここでMC。「今日は楽しんで行こうぜ渋谷」と鴇崎。岡田がラウドなドラミングで繋ぐ中、「このツアーで色々な場所をパワースポットに変えてきたけど、東京は強敵だ。ここで一つになろう」と、Are You Readyのコール&レスポンスが。締めの鴇崎のハイトーンシャウトが絡み、そのまま「アナログ革命」に。コブシの効いた多少演歌調な歌が印象的な同曲。対象的にズンズンとゆったり上昇していくような心地良さが会場を支配する。合わせて会場も昇り調子。新井のファズとワウを効せた70’風ギターフレーズと、鴇崎の掛け合いに会場も魅入る。そして、再びテーマに戻ると、岡田もドラムを叩きながらシャウトを発し、それがフロアに火を点ける。歌詞の「初恋のフライングVが折れちまった マイケルのジャクソンも死んじまった  ギタークレイジー・ゲイリームーアも死んじまった オジーオズボーン 彼だけは相変わらず」の箇所は、以前から是非とも生で聴きたかったが、予想通り爆笑させてもらった(笑)。再びハンドマイクに戻った鴇崎も自由になった左手で思い思いのアクションを加えていく。
 前曲の余韻のように、2本のギターのフィードバック音が残る中、岡田の重い8ビートから壮大な「SWEET HOME」に。鴇崎の伸びやかで通る声が映えるナンバーだ。ミッドテンポでちょっと哀しみを帯びた同曲に、会場も浸りながら聴き入り、自身のそれぞれの故郷を思い返す。情景と心情を更に広げるように新井が雄弁なギターソロで演出を促す。まるで大河の流れを眺めているかのような同曲。新井のギターがストリングス風な音色を奏で、更なる情景感を広げていく。

 ここでMC。「帰ってきたぜ東京」と鴇崎。「俺たちが死ぬほど楽しめば、みんなも楽しいはず。今日はワンマンライヴ。いつもより長いけど、ボルテージを上げて最後まで演っていくゼ!」と会場とのアライアンスを組むと、切なく哀愁性たっぷりなギターリフがスピーカーから溢れ出す。続いては、WINKの「愛が止まらない」のカバーだ。同曲ではキチンと女心も歌ってみせる鴇崎。いやー、やはり鴇崎の歌声は歌謡的なメロディに映える。近藤のベースラインがドライヴ感を加え、それがまるで哀しみを振り払うかのように歌が描く恋物語へと会場を惹き込んでいく。上昇感のあるスタックスビートをサビで岡田が叩き出せば、会場も呼応。「止まらないの~」と歌われながらも、あえてストップ&ゴ―を交えるところも心憎い。
 稲増がギターで繋ぎ、岡田もスティックをビ―ターに持ち替え、インタール―ド的な短いインストをプレイ。そのままミディアムバラードの「英雄」に突入すると、同曲に会場中が聴き入り、心が素直になっていくのが分かる。そんなしんみりもつかの間、突如ダイナミックな展開へと豹変。パーカッションも同期し出すと、会場に土着的な躍動感が生まれ、最後はとてつもない高みへと会場を連れて行ってくれる。

 続いて、謎のラッパーOKD(オーケーディ)がステージに登場。新井も突如不在になったドラムに座り、躍動感のあるヒップホップビートを叩き出す。OKDが「I Am OKD」と会場とコール&レスポンス。近藤がブッといベースのループを繰り返せば、そこに70’sハードロック的ギターフレーズを稲増が絡めていく。そこに乗る鴇崎と岡田のツインMC。所狭しとステージを動き回り、次から次へと言葉を放出する。「一緒に最高のステージを作り上げよう!」と繰り返される同曲に、会場も呼応しっぱなし。アトラクション的な曲ながら、会場全体にとてつもない一体感を生んでいく。ドラムに座った新井も、半ば破れかぶれ。楽しそうにダイナミズム感たっぷりにドラムを叩いている。まさにserialのアナザー面にフロアも終始大盛り上がり。新井は途中叩きながら腕をつりそうになったとのこと。そりゃそうだ(笑)。
 
ここで鴇崎が、新宿で出会ったおじいちゃんネタで長く引っ張るも内容的にイマイチだったので、ここでは割愛(笑)。
 気を取り戻すように、「夏も終わっちゃったけど、夏の最後の想い出ということで今日は楽しんで下さい」と「桃源郷エイリアン」を始める。イントロでは鴇崎が新井と、場内も交え、ジャイブの掛け合いをかます。お祭り的土着ビートが秋祭りを想起させる同曲。鴇崎もコブシを交えた演歌調の歌い方で楽曲を伝え、サビでは盆踊り風のふりつきで哀愁溢れるメロディの上に乗せ踊る。もちろん会場中が、それに合わせ盆ダンス。特にサビの部分でのフロアは、秋祭りの会場と化していた(笑)。
 「最後~暴れるゾ~!!」と鴇崎。新井、稲増が向かい合い、ギターリフを刻むと、続く「狼」に突入する。ダイナミックな8ビートロックと上昇感を交えた伸びやかなナンバーに、フロア前方の密度も更に上がる。サビの上昇ダンサブルな部分では、ここ一番の盛り上がりと一体感を見せ、3声のコーラスがポップスさと弾力を楽曲に加えていく。アウトロでは、岡田も短いながらもドラムソロを披露。そこから本編最後の「バラード」に、しっとりと入る。いつぞえの自分への手紙のように響く同曲。間にはミラーボールも回り出し、優しげな空間が辺りを包み込む。新井、岡田のコーラスも優しく柔らかく歌に添い、新井のギターソロもセンチメンタルを湛え、会場に響き渡っていく。場内にゆっくりと強い光を取り戻していくかのように、ゆったりとダイナミックに広がっていく同曲。会場も聴き浸り、みんなが未来の自分へと思いを馳せているのが伝わってくる。

 ここからはアンコール。ステージにキーボードがセッティングされ、スペシャルゲストとして、今回のレコーディングにも参加した、キーボードのMr.高木(serialの事務所社長)とギターのマトゥーダ(ソニーミュージックのプロモーター)が呼び込まれ、7人の大所帯で「PARTY ROCK ANTHEM」を始める。一瞬にして場内をパーティー会場へと変えてしまった同曲に、ステージもフロアも楽しさ全開で踊りまくる。新井とマトゥーダがツインリードを見せ、稲増と新井も左右のステレオを活かしたギターリレーションをかます。ボコーダーを交えた新井の歌も良い感じだ。同曲中間部でのシンガロングでは会場全体が大呼応。その後、みんなが膨らませた色とりどりの風船が場内に飛び交い、巨大な風船もどこからか現れると、大小さまざまな風船たちがステージ、フロア、所かまわず場内を飛び回る。うーん、キレイだ。
 「今日のココは、宇宙一のパワースポットになったよ。ありがとう」と鴇崎。直後、ドライヴ感のある2人のギターを中心とした、「ユニコーンの角」のイントロが炸裂する。それを呼び声に、最期の一暴れを見せる会場。景色観のある、伸びやかでストレートなサビでは、会場も大合唱。最後の一体感を見せる。同曲では、途中のインサートされるオペラ部も作品どおりのバッチリさ。それを挟むが故に、サビのストレートさが気持ち良く響く。ラストの激走2ビートに場内も、この上ない最後の盛り上がりを見せ、ラストのシンガロングが会場に最後の一体感を呼び込む。
「また、絶対に遊ぼうぜ」と鴇崎。会場からはこの上ない力強い呼応が返る。そこには、この日のライブの充実に対する返礼と、”これからもついて行くゾ!!”との、頼もしい応答のように響いた。

 正直言って、アルバム同様、1時間ちょっとで終わってしまうのだろう的な観測を持っていたのだが、気づけばスタートから2時間。MCを除き楽曲だけでもびっちり100分は演っていたと思う。平均すると1曲当たり約8分。その割には、比較的あっと言う間の印象があったのは、そこに充実感と飽きることのない享楽性を有していた証だろう。いささか記憶が薄れてしまってはいるが、これまでの彼らのライヴに、このように観後感は無かったように思う。やはり、serialは変わった。それは、この日、何度も、もっと大きなステージでプレイしている彼らの姿をそこにダブらせていたであろう、過去から見続けている人たちも同感なはず。
ますますのスケール観を持って、エンタテインメントロックを突き進んで行く決意を表わしたかのような、この日の彼ら。そう、serialには、新しく見つけた、その行き先を迷わずに突き進んで欲しい。その先には、きっと、今日よりももっとずっと大きなステージが待っているはずだから。

 
Report : 池田スカオ和宏

こちらは今回のツアーで全国各地で対バンしてきたバンドからの、寄せ書きやこの日へのメッセージの入った大型ポスター


【SET LIST】

1.ティリラ・ティリラ
2.コピペ
3.シティボーイの憂鬱
4.アナログ革命
5.SWEET HOME
6.愛が止まらない
7.英雄
8.Overslept Kills The Day Feat.OKD
9.桃源郷エイリアン
10.狼
11.バラード
Encore
En-1.PARTY ROCK ANTHEM
En-2.ユニコーンの角


【MEMBER】

Vo. 鴇崎 智史
G. 新井 弘毅
G. 稲増 五生
B. 近藤 太
Dr. 岡田 翔太朗


【BIOGRAPHY】

2004年1月結成。5月よりLIVE活動開始。
2007年3月、1stミニアルバム『ginger』を発表。
2008年3月、店舗限定3曲入りシングル「まえぶれ」をリリース。各メディアから賞賛の嵐。同年7月、待望の1stフルアルバム『シリアルキラー』をリリース。全国ツアーを敢行し、ファイナルの下北沢CLUB QUEは即日ソールドアウト。同年末にはCOUNT DOWN JAPAN08-09、VINTAGE×DI:GA 2009、ROCK IN JAPAN 2009などのフェスティバルに出演。
2009年10月、2ndアルバム『SPACE OPERA』をリリース。その後も全国ツアーを実施する等、積極的にライブ活動を重ねる。
2010年7月、メジャーに活動のフィールドを移しSony recordsよりミニアルバム『マストバイ』をリリース。同年8月、新ヴォーカリストとして鴇崎智史を迎え、新たな歴史を刻み始める。同年11月、シングル「ユニコーンの角」をリリース。2011年2月、同作品を引っ提げて東名阪ツアー行う。同年3月、初のカバー曲を含む「愛が止まらない-Turn It Into Love/シティーボーイの憂鬱」両A面シングル発売。6月、3rdシングル「桃源郷エイリアン」発売。同年8月17日メジャー1st ALBUM『パワースポット』発売。9月2日より、東名阪ワンマンライヴを含む同作品のレコ発ツアーを敢行。


【NEW ITEM】

NEW ALBUM
『パワースポット』
SRCL-7693
¥3,059 (Tax in)

NOW ON SALE
【Sony records】

M-1 ティリラ・ティリラ
M-2 桃源郷エイリアン
M-3 シティーボーイの憂鬱
M-4 SWEET HOME
M-5 アナログ革命
M-6 ユニコーンの角
M-7 Overslept Kills The Day Feat.OKD
M-8 狼
M-9 コピペ~ENTER the SERIAL~
M-10 英雄
M-11 愛が止らない-Turn It Into Love-
M-12 PARTY ROCK ANTHEM
M-13 バラード


【LIVE INFORMATION】

http://www.serialtvdrama.com/ live/


【ARTIST HOMEPAGE】

http://www.serialtvdrama.com/


【twitter】

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