Laika Came Back FIRST TOUR『Landed』

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2011.10.08

Laika Came Back
FIRST TOUR『Landed』
2011.9.19
@渋谷クラブクアトロ

 歌詞にしろ、メロディにしろ、捻り出したり、どこかから持ち出したりして、無理矢理作り上げるよりは、自然と浮かび、思いつき、生まれてくれるに越したことはない。ふと思いついたメロディや歌詞が、紡いでいるうちにいつの間にか歌となっている。そして、それがいつしか誰かの喜ぶ顔に繋がっていたり、受け手の想いと重なってくれたら…。そんなことを目標や夢に、今日も多くのソングライターは、曲を書き、発表している。

 目指してか、たどり着いてか、今やそのようなスタンスで音楽活動を行っているミュージシャンを私は知っている。20数年前、空前のバンドブームの中、若干高校生でデビューした彼は、その後、さまざまな音楽遍歴を経ながらも、常にキッズたちへの歌を送り続けてきた。そして、40歳を迎えた今、念願とも言える、自分の好きな音楽を自分の好きな方法論で紡いでいる…。
 その男こそ、車谷浩司(Cozy)。そして、その彼の今のメインの音楽スタイルや姿勢がLaika Came Backだ。
 Laika Came Backが作り出す歌は、この上なくナチュラルだ。伝えたいことも、それを伝える術である使用楽器もシンプル。しかし、そこには、それ以上の装飾の必要は見受けられず、にも関わらず、伝えたいことや物語、思い当たることをしっかりと我々の中に広げてくれる。

 この9月に届けられた、Laika Came Backの1stアルバム『Landed』は、2009年頃から今年の夏にかけ、全ての演奏/録音を自身で行い、自分の部屋と日本各地を始め、世界各国にて旅中に録られた楽曲が収められている。細かいことを考えず、リラックスした状態で、思い立ったその時に演奏し、歌い、録音された全10曲。シンプルでいて繊細なギターとベース、そして歌によって紡がれている今作は、フィールドレコーディングによる土地土地の風景が音としても刻まれ、シンプルで優しく、それでいて柔らかい言葉やメロディたちが、見守るような、それでいて見つめるような視線や視点の歌となり、まるで綴られるように伝えられている。
 同アルバムを手に、Laika Came Back初の全国ツアーが行われ、そのファイナルが、渋谷クラブクアトロにて実施された。まさに、彼の中で自然に生まれた歌たちが、聴き手の中で、どう育まれていったのか?にも興味があった、この日のライヴ。ようやく発売された作品に込められた歌や想いを対面で伝えてもらおうと、会場には多くの人が彼が現れるのを静かに待っていた。

  Laika Came Backプロジェクトのスタート時にグッズ制作を一手に預かることになった我がラッカのマーチャンダイザーkAto。これまでに毎度のTシャツ制作を始め、タオルハンカチ・パスケース・トートバッグ等々を制作。このツアー用にも、アルバムタイトルをあしらったTシャツ、ラッカのオリジナルケースを用いた缶ミラー制作した。中でもTシャツの方は、ボディ色とプリント色、大きさ、配置に重点を置き、かなり表現に気を配ったという。そして、それは、車谷本人も交えたやり取りを繰り返しながら仕上げられたと聞く。グッズ一覧URL

 会場が暗転し、アルバムのオープニングを飾っていた「Coming Home」が登場SEとして場内に優しく流れる。向かって上手(かみて)に、ウッドベースの森田、下手(しもて)には、パーカッション/ドラム類に囲まれたChang-woo、そして、その間、ちょっと引っ込み気味の場所で、ガットギターサイズのスモールなアコースティックギターを肩からかけたCozyがスタンバイを始める。その足元は裸足だ。セッティングが終わると、ギターを繊細につま弾き始め、そこに優しげなハミングを乗せるCozy。1曲目はアルバムの序章を告げるように収録されていた「Humming」だ。つま弾きとハミングを中心に編み上がっていく歌。Chang-wooのパーカッションも歌をさりげなく支え、あくまでも温かさを保ちながら、森田もコーラスを加えていく。そして、ハミングが途絶え、それにならうように一つ一つ消えていく音。最後にCozyのアルペジオのみが残り、そのまま2曲目の「Landed」へと会場を運ぶ。そこに小川のせせらぎのようなChang-wooによるチャーム類、森田のベースが弓弾きで生み出す鳥の鳴き
声が、そこに合わさっていく。優しく淡い水彩画のようなCozyの歌声。会場も遠い記憶やかって観た光景や風景を思い返すように、まどろみの表情を浮かべながら聴き入っている。中盤より加わるパーカッションが躍動感や生命力を同曲に加えていく。
 「今日は1stツアーにようこそ」とCozy。1stツアーが出来、この日、無事にファイナルを迎えられたこと、フレキシブルな音楽性で作品を作り、それを持ってツアーをやる夢が叶ったこと、ここに多くの人が集まってくれたことへの感謝を、嬉しそう且つちょっと照れながら続ける。

 カンボジアの「スナダイクマエ孤児院院歌」に日本語をつけた「Snadai Khmer」を、アルペジオギター、ウッドベース、シェイカーとカホンで伝えると、会場に希望が漲っていく。”苦難の中でも、力強さや明るさ、希望を忘れないでいれば幸せはきっとやってくる”と優しく歌われる同曲。それに合わせ会場全体も、孤児院で明るく遊び回っている子供たちの光景や表情を思い浮かべる。アルペジオが続いて行く中、友人であり、タレントのジョージ・ウィリアムズの誕生日に彼へ送った「George」に入る。親愛なる友人に向けての愛着と愛情、リスペクトが場内に溢れる。英語詞の歌に、ウッドベースとコンガがほのかな演出を加え、途中一瞬入る日本語が、シンプルな分、より聴き手に染みる。途中より、Cozyのギターもアルペジオからクリスピーなカントリータッチのストロークに変わり、ピッチを上げ出したパーカッションも強くなり、それらがほのかな高揚感を生み出していく。

 続いて、昔から好きな曲で、アナログ、CD、配信と、そのフォーマットが時代毎に変われど、必ず傍らにあったという、The Cyrkleの「Red Rubber Ball」を始める。オリジナルより更にカントリータッチ度を増した同曲。エレキに持ち替えられたベースと、カホンが前のめり感を表わし、そのノリの良いポップさ具合が、会場もグッとステージに惹き寄せられる。そして、ベースとつま弾きギターと歌い出しから、上記のジョージの8歳になる娘に、「歌って」とねだられたのをキッカケにレパートリーに加わり出した、Fools Gardenの「Lemon Tree」がソフトリー且つカインドリーに始まる。途中からは、カウベル、チャーム類、タンバリンを交えながらカホンを叩くChang-woo。2曲続いたカバー曲に場内もほっこりとした気持ちになる。
 再び森田がベースをエレキに持ち替え、ドラムセットにChang-wooが移ると、続いてのカバー曲、Snow Patrolの「Chasing Cars」が始まる。歌に入る前の「季節的にちょっと早いけど、やはり歌いたくなる」の説明通り、ウィンターソングである同曲。自身のギターをリアルサンプリングし、それをループさせたバッキングトラックの上、ロングトーンのベースとCozyの英詞の歌が乗っていく。聴いている間中、白々と夜が明けていく光景が浮かんでくる。途中からはCozyのアコギにも歪みが加わり、アルペジオからカッティングへと変わると、Chang-wooもフロアタムを活かしたドラムに変貌。楽曲に力強さが増していく。その後、音が抜けていき、再びCozyのつま弾きと歌に戻ると、会場中がなんとなくの安堵感に包まれる。

 森田とChang-wooが去り、ここでCozy1人がステージに残る。そして、「今度は今回行けなかった場所にも行ける」と嬉しそうに次のツアーの告知を始める。
 ここからはしばしCozy1人だけでステージを務める。自身の歌を「牧歌的な歌ばかりであか抜けない」と自嘲。そんな自分の音楽のルーツは、やはり音楽の授業であったことを伝え、財津和夫の「切手のない贈り物」を始める。かつてはみんなの歌として日本全国で歌われ、親しまれてきた同曲。その親しみ易さを自分流にアレンジされた歌がギター一本で会場に伝えられる。まるで手渡しのプレゼントのような伝えられ方をされた同曲。きっと会場も心の中で手拍子をしながら、大合唱をしていたことだろう。
 ギターのつま弾きと歌から入った次の「あいうえお」では、50音を上手く使ったシンプルなあいうえお作文のような微笑ましさが会場を包む。独特の語り口調のような歌声も印象的な同曲。その楽曲の雰囲気が場内に、より郷愁感をもたらしていた。

 森田、Chang-woo、各々のキャラクターや現在の活動状況も交え伝えられたメンバー紹介を経て、「もう少し一緒に楽しんでいって下さい」とCozy。2nd配信ソングでもあった「Trace」が始まると、Chang-wooによる鉄琴と、Cozyのアルペジオに乗った歌が、愛しい人の表情やしぐさを各々に思い浮かばせる。途中「その手は離さない」と力強く歌われる同曲。会場もしんみりと聴き入り、長いアウトロが会場にそれぞれの情景を余韻と共に想い起させる。
 一呼吸置いて入った「終電車」では、Cozyも感情移入たっぷりに歌い始める。ベースは弓を用い、Chang-wooのタブラがそこに加わる。しっとりと進みながらも、ギターに歪みが加わると雰囲気も豹変。ステージ上の赤いライトと共に会場を混沌へと惹き込んでいく。ラストはすっかりオルタナグループに変貌だ(笑)。森田も5弦ベースに持ち替え、Chang-wooもドラムセットに座り、「駿馬」が始まる。ギターと歌い出しから始まった同曲では、Chang-wooもスティックをビーターに持ち替え、重い一打一打を楽曲に加えていく。Cozyの歌も感情移入を増し、ドラムが大きく力強いグル―ヴ生み出していく。「そのまま進め!!」のリリックも強く痛く会場を揺さぶり、Cozyも左足を一歩前に出し、前傾フォームで力強くギターを弾く。そして、ノンストップで力強いタムを中心としたドラミングから、アルバムでも白眉であった怒涛とカタルシス溢れる「Southern Cross」へ。Cozyもギターをストラトに持ち替えプレイ。ドラムが力強くなっていくに連れ、会場の高揚感も上がっていき、合わせてCozyのギターアクションも激しくなっていく。アウトロでは歪みも大全開。会場全体がステージから発せられるグル―ヴにグイグイ惹き込まれていく。空間をネジ曲げるかのようなCozyのオルタナギターにファットなベース、タムを中心とした重めでミッドなドラミングが生み出すサイケ感が凄い。そんな”凄い”の余韻を残し、森田とChang-wooが、そしてCozyも会場に深々と一礼をし、ステージを降りる。

 ここからはアンコール。まずはCozy1人だけステージに現れる。おっ、ラッカ制作の黄色のライカ犬Tシャツを着ているではないか。
 これまで23年、色々な音楽を演ってきたが、ここからは自分の好きな音楽を演っていこうと決意したこと。そのためにLaika Came Backを始めたこと。そして、好きな音楽を演り、それを作品にし、ツアーをすることが出来たことへの感謝を改めて会場に伝える。加え、最後には「これからも一緒に歳をとりながら歩んでいきましょう」との嬉しい言葉も。そして、「ツアー中もちょくちょく変わり、ライヴで育っていく、まだ歌詞はないが大好きな曲」と言葉を続け、まだ歌詞がついていない新曲を始める。鳴らされるコードとその上に乗る確かなメロディとハミング。その向こうに自分なりの歌や言葉を乗せたり、浮かべたりしたのは、会場を見渡すと、どうやら僕だけではなさそうだ。
 再び森田とChang-wooが呼び込まれ、ツアーが終わる感想を各々一言づつ告げる。そして、「真心を込めてもう一度プレイしたい」とCozy。彼の立脚地点であり、始まりだったという、「Landed」が再びプレイされる。会場内の到るところにセットされた青と白の無数のLEDの電球たちが、満点の星空を会場に作り出す。同じ曲ながら先程のプレイ時とは違ったエターナル感や緩やかな至福感が会場を包んでいく。”この瞬間が永遠に続いてくれ!!”と願ったのはけっして私だけではないだろう。
「また逢いましょう。おやすみなさい」と優しい一言を残し、彼らはステージを去った。

 この翌週24日、幕張メッセでの「GG11」にて、CozyはAIR名義で久々に登場(この際のAIRニューTシャツもラッカが作成。即完売だった)。緩急溢れる楽曲で会場を沸かせ、翌日25日、東京ドームシティホールでの凛として時雨と共演したCHARAのステージでは、ギタリストとして活躍。彼女の歌世界をエレキ、アコギを交え、しっかりと演出していた。

 Laika Came Backとは、けっしてグループ名や活動名ではない。それは、Cozyの自分の音楽に対しての今のスタンスやアティテュードのこと。そして、音楽活動を始めて23年。Cozyがたどり着いた、自分のための音楽のこと。彼がふと思いついたメロディや歌が、紡いでいるうちにいつの間にか曲として完成し、いつしか誰かの喜ぶ顔に繋がっていたり、誰かの想いと重なっていた。そんな音楽のこと。それを実感し、目の当たりにさせてくれた、この日。Laika Came Backの1stアルバムが、何故『Landed』とタイトルされたかを、改めて知ることが出来た一夜であった。『Landed』…「到着」「帰着」…。そうだ、そうなのだ!

 
Report : 池田スカオ和宏


【SET LIST】

1.Humming
2.Landed
3.Snadai Khmer
4.George
5.Red Rubber Ball(The Cyrkleカバー)
6.Lemon Tree(Fools Gardenカバー)
7.Chasing Cars (Snow Patrolカバー)
8.切手のない贈り物(財津和夫カバー)
9.あいうえお
10.Trace
11.終電車
12.駿馬
13.Southern Cross
Encore
En-1. 新曲
En-2. Landed


【MEMBER】

Vo.&G. 車谷浩司(Cozy)
THAT EVENING SUPPORT MEMBER
B. 森田晃平
Per. 村瀬“Chang-woo”弘晶


【PROFILE】

Cozyによる音楽を中心としながら、社会活動、その他ライフスタイル全般を含めたプロジェクト。2010年3月、1stソング「Landed」配信開始。2010年12月、2ndソング「Trace」配信開始。2011年 1月 渋谷 WWW にて 映画「180° SOUTH」公開記念イベントライブ出演。2011年8月、RISING SUN ROCK FESTIVAL 出演。2011年 9月7日、1stアルバム『Landed』発売。。2011年 9月、1st Tour『Landed』開催。10月27日からは2nd Tour『From ” Landed ” to ” Trace “』開催。


【NEW ITEM】

FIRST ALBUM
『Landed』
XQKQ-1001
¥2,500(Tax in)
NOW ON SALE
[Muttnik/PARCO CO.,LTD.]

1. Coming Home
2. Humming
3. Landed
4. Trace
5. Snadai Khmer
6. あいうえお
7. George
8. 終電車
9. 駿馬
10. Southern Cross


【LIVE INFORMATION】

http://laikacameback.blogspot.com/p/tour_25.html


【ARTIST HOMEPAGE】

http://laikacameback.blogspot.com/

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