キドリキドリ 1st album「El Primero 」Release Party

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2011.09.17

キドリキドリ1st album「El Primero 」Release Party

キドリキドリ
1st album「El Primero 」
Release Party
2011.9.01(thu)
@下北沢シェルター

実は、このライヴレポートを綴っている本日も、キドリキドリのライヴを観てきたところだ。毎度毎度、観る度に彼らのライヴは良くなっていく。それはきっと、ここ最近のライヴで彼らが得ているであろう、自身の音楽性への支持と理解の確信、そして、楽曲を伝えることの喜びや、そこからのレスポンスが相乗効果として、プレイやパフォーマンスに滲み出ているからにちがいない。
キドリキドリの音楽性は不思議だ。そのファクターの一つひとつは、正直目新しいものではない。かなり多岐に渡ってはいるが、成分各種は懐かしいものから新しいものまで、過去にどこかで存在していた音楽。70年代後期のニューヨークやロンドンのオリジナル・パンクの焦燥感や性急性、そしてラジカルな姿勢。それ以降のニューウェーブやノーウェーブの持っていた批評精神とインテリジェンス、シニカルさやスノップさ、かと思えば、アークティック的ループ感や昨今のロックンロール・リバイバルの持つ破天荒さやアンファンテリブルの洗礼も受けてそうだ。そして、それを無自覚に自身の楽曲にねじ込ませることによって、彼らは新しい音楽として我々に各曲毎提示してくる。そう、あの英語詞に乗せて。

そんな彼らが、1stアルバム『El Primero』を、この7月に発売した。勢いと焦燥、反逆とラディカル、シニカルとスノップを全11曲33分に詰め込んだ、エネルギッシュながらクールな1枚。そのリリース・パーティが9月1日に下北沢シェルターにて行われた。

前の現場があった為、我々が会場に着いた時には、この日の共演バンドであった、日本マドンナ、MUGWUMPS、Sawagiのプレイは既に終わり、この日のDJを務めた、藤田琢己a.k.a DJ SHOCK-PANGがファンキーなディスコサウンドを次から次へとテンポ良く繋いで場内を温めていた。会場は満員。キドリキドリの出番を期待値高くみんなが待っている。

今回、我がラッカは、彼らのニューTシャツの制作を行った。それに際し、MD(マーチャンダイザー)のkAtoは、今回のイラストのモチーフがおばけであったこともあり、それをバキッと表わすよりは、少しボヤけさせた方が良かろうと、あえてプリントのインクをあまりはっきりとは出さず、ボディに馴染ませることを心がけ、また、プリントの位置の表裏のバランスにも気を使ったと言う。

ボーカル&ギターのマッシュが前日に会った際に熱く語ってくれた、今、彼の中で最も盛り上がっている<スペインのミクスチャーロックシーン>、その1バンドのものと思しき楽曲が、暗転した会場に鳴り響く。場内からの温かいクラップに迎えられるように、上手(かみて)側に横向きにセッティングされたドラムも特徴的なステージに、3人のメンバーが現れる。いつも通り、この日もみんなドットの入った衣装を着用。しかし、そこは彼ららしく、メンバー一人ひとりのドットの大きさも違えば、ボーカル&ギターのマッシュとドラムの川元はシャツ、ベースのンヌゥはパーカーだったりする。その辺りからも、<統一感はあるけど、個性の違う一人ひとりが集まってのキドリキドリだ!>との無言のアイデンティティや主張を感じる。
多くのステッカーが貼られたマッシュのリッケンバッカ―から、アルペジオにて「What You Have To Do Is」のイントロが弾き出される。ンヌゥがスライドを効かせたベースラインで楽曲にグル―ヴィーさと適度な上昇感を加えて行く。どことなくポストロックさも有した同曲。ニューウェービーな歌い方と、ひねくれメロディが中心なぶん、サビではカウンター的にそのストレートさが活きてくる。続いてマッシュのギターカッティングと歌い出しから「Do You Wanna Be A Slave Of Babylon?」に突入。立て続けの速攻さが場内に更なる熱狂を生む。3人によるハーモニーが楽曲に彩りを添え、楽曲に満ちていた緊張感に些少のマイルドさが加わる。ンヌゥのベースが楽曲にドライヴ感を与え、川元もフロアタムを活かした重いドラミングを交えると、続くマッシュも、”今度は俺の番だ!!”とばかりにギターソロをキメる。
「申し遅れました、大阪から来たキドリキドリです」とマッシュが短い挨拶。間髪置かず次の「Mental Slavery」に入る。マッシュによるキーボード的な音色のイントロから始まった同曲。緊張感の中、キラびやかなギターフレーズが会場に響き渡る。サビではより感情たっぷりに激しく歌い、それがそれまでの無機質でニューウェーピーな歌声とのカウンターを生み、歌にメリハリとドラマ性をつける。

短くてスピーディな曲が立て続けに放たれる。次のカラフルながら哀愁を帯びた「5/10」での、ちょっと長めのイントロが鳴ると、ンヌゥのスライドを交えたダウンピッキングが、ポップさとパンキッシュさを会場に与える。彼らのレパートリーの中では珍しく日本語詞である同曲。それも手伝ってのことだろう。サビの部分では会場も、これまで以上に一緒に歌っている。同曲の中間部では、マッシュが場内を軽く煽り、そのままギターソロに。ンヌゥ、川元による追いかけるコーラスも良い感じだ。
弾んだアルペジオカッティングから「Finally Found」に入ると、川元のドラミングと、トリッキーさを交えたンヌゥのベースも多少の楽しさとポップさを楽曲に持ち込む。硬質な楽曲が多い彼らの中では、わりと弾力を有している同曲。かと思えば、途中からは豹変。サビではより感情を込めた流れに移行し、会場もそれに呼応する。

ここでマッシュによる軽いMC。「今日のレコ発ライヴは自分たちが希望していた3組に出てもらった。楽しく演らせてもらう」と告げる。先程までの緊張感に更に緊迫性が加わるように、ここからは少々ホラーっぽさも交わった、ロカビリー&サイコビリータッチのナンバーが続く。まず「The Song Of New Age Rock’n’Roll」では、ベースも歪み、スネア中心のドラミングが恐怖感を伴った妙なスイング感で場内を覆う。コーラスもスクリームを交え、より盛り上がりを作る。ンヌゥがフレーズで繋ぎ、続いてもサイコビリーテイストのある「2010」にイン。マッシュの歌い方もあるのだろう、より緊迫感が高まる同曲。ンヌゥがスラップを交えたプレイを見せると、フロア前方の密度もギュッと高まる。
彼らの歌はどれもシニカルでクール、それでいて文学的だったりする。どの曲も、主人公へのアイデンティティの主張のようなもの感じ、二ヤリとさせられたり、グサリときたり、うんうんと納得したり…。まっ、それらはどれも聴き終えてパーッとした気持ちになりにくいものばかりだけど(笑)。

ここでMC。「自分たちはレベルミュージックや反逆の歌を英語詞で歌っている。今日は新曲を作ってきた」と新曲を初披露。これまでの彼らには無いタイプの複雑で色々な要素が絡み合い、組み合って完成していく、トリッキーさを持った同曲。特にドラムの川元は大変そうだ(笑)。とは言え、その複雑な分、サビでの起爆力は今まで以上。今後、もっと演り込んで、自分たちのものにすれば、必ずや彼らの代表曲になっていくことだろう。
「今回のアルバムは、トータルタイム33分。そして、今日のステージは全40分。ということは、全曲演るしかない」と、マッシュが苦笑い(笑)。そのまま「Say Hello!(I’m not a slave)」に入る。川元が突っ込み気味のビートを叩き出すと、性急性と焦燥感が会場の盛り上がりに更なる火を点ける。ショートチューンは続く。次のギターの掻き鳴らしのイントロから始まった「Everytime I see you」では、指弾きながら、まるでピッキングのようなンヌゥのベースプレイがグイグイと会場を彼らの世界観へと惹き込んで行く。
そして、またもや短いMCを経て、本編のラストは、「You Will Realize」をプレイ。この曲では今までの押せ押せで緊張感たっぷりだった世界から、ダイナミックさや大らかさが伺える流れに。ミッドさも交えたドラマティックさやスケール感のある同曲。みんなで大合唱出来るパートでは、場内のあちらこちらから歌声と共にジャンプも見られた。

アンコールも起こった、この日。サビの部分でもある”ノーノーノーノ―”のコール&レスポンスから入った「La Policia」では、彼らのファンキーな面が会場に一体感をもたらす。ンヌゥも”面目躍如!!”とばかりにグル―ヴィーにベースを弾けば、マッシュもファンキーなギターカッティングで場内に横ノリを起こす。もちろんサビでは大合唱。ハネ切らない川元のドラミングも硬質なままで、それが逆にいかにも彼ら流のファンキーさを醸し出す。後半は川元も感極まって立ち上がり、スティックで場内煽り、ラストは会場全体が大合唱。大団円を迎える。

この日、本編のラスト曲に入る前にマッシュは、「大阪から7時間をかけてまでも40分のステージを務めるのは、それだけみんなを楽しませたいから」と語った。僕はそこに、彼らのニューアルバムにも表れていた<凝縮性>を強く感じた。トータルタイム33分全11曲に凝縮されたパンキッシュでポップな彼らの音楽性は、平均1曲3分前後なのだが、各曲にこれ以上必要のない密度と充実度を感じる。言いたいこと、伝えたいこと、残したいものをキチンと3分という枠の中で完結し、それ以上もそれ以下も必要ない音楽として昇華させる彼ら。このライヴレポの日は、12曲で40分だったが、今日観たライヴは25分で7曲であった。しかし、今日にいたっては短い時間で少ない曲数ながら、それを微塵も感じさせない満足度の高いステージ展開した。1曲を5分~6分で伝えることが当たり前になっている昨今のポップス業界。もしかしたら彼らは、他のアーティストが5分~6分の楽曲に収めるところを、あえて3分前後に凝縮することにこだわっているのではないだろうか?と改めて思った。そして、そこに凝縮感や密度を感じさせないところが彼らの凄さなのだろうと、この9月1日と今日のライヴを振り返って思った。
Report : 池田スカオ和宏


【SET LIST】

1. What You Have To Do Is
2. Do You Wanna Be A Slave Of Babylon?
3. Mental Slavery
4. 5/10
5. Finally Found
6. The Song Of New Age Rock’n’Roll
7. 2010
8. 新曲
9. Say Hello!(I’m not a slave)
10. Everytime I see you
11. You Will Realize
Encore
En-1. La Policia


【MEMBER】

Vox&G. マッシュ
B.&Cho. ンヌゥ
Dr.&Cho. 川元直樹


【PROFILE】

超英文学的に世の中への批判を散りばめた歌詞、それを早口に歌い上げるイギリスはウェールズ出身のギターボーカル、かつてニ○ニコ動画にて10万回も再生されたほどのテクニックを持つガチヲタニートベーシスト、そしてオニギリ大好き好青年ドラムから成る、主に大阪で活動する、全員21歳のスリーピースバンド。バンド名は村上春樹の著書“ねじまき鳥クロニクル”から命名。
2008年3月、小学生来の幼馴染、マッシュ(Vo,Gu)とンヌゥ(Ba)が偶然同じ大学に進学し、久々に再会。結成に至る。その後、同じく小学生来の幼馴染でドラムに興味があった川元直樹(Dr)が加入。同年9月より本格的に活動を始める。
Gu,Voのマッシュがイギリスからの帰国子女ということもあり、楽曲は基本的に英詞。 00年以降のUKロックや90年代のUSインディからの影響を主軸に、ジャズ、パンク、ファンクなどの要素も含んでいる。 多彩な楽曲を展開しつつも、「英日折衷」というコンセプトは揺るがない。


【NEW ITEM】


FIRST ALBUM
『El Primero』
PDRD-1001
¥1,890(Tax in)
NOW ON SALE
[Polka dot records]

1.The Song Of New Age Rock’n’Roll
2.Say Hello!(I’m not a slave)
3.2010
4.You Will Realize(リード曲)
5.Do You Wanna Be A Slave Of Babylon?
6.What You Have To Do Is
7.Mental Slavery
8.La Policia
9.5/10
10.Everytime I see you
11.Finally Found


【LIVE INFORMATION】

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【ARTIST HOMEPAGE】

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