セカイイチ『folklore tour 2011』ファイナル

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2011.05.19

セカイイチ
『folklore tour 2011』ファイナル
2011.04.23
@SHIBUYA O-WEST

 1月に発売されたエイベックス移籍第一弾アルバム『folklore』で、新しいスタートをきったセカイイチ。温かくて優しく包み込むような、それでいて情熱的で力を与えてくれるような強靭なアルバムを引っ提げての全国ツアー『folklore tour 2011』がついに、この渋谷O-WESTにてファイナルを迎えた。あいにくの雨と風に見舞われながらも、フロアは大入りのオーディエンスで埋め尽くされ、これから始まる熱きステージへの期待感に溢れていた。みんなこの日を本当に待ち望んでいたのだ。

 今回のツアーに際し、ラッカはセカイイチのNEWグッズとして、NEW Tシャツのデザインおよび製作、そして木製スプーン&フォークセット、ナイロンバッグ、缶バッヂ4種を製作した。

 お馴染みのSE、カーティス・メイフィールドの「MOVE ON UP」が流れると、自然と沸き起こる手拍子に迎えられながら、メンバーがステージイン。岩崎は両腕を大きく広げながらオーディエンスの熱気をしっかりと受け止め、ギターを固く握りしめる。鳴り響いた力強いストロークは「Step On」のイントロだ。じわじわと生命力が漲ってくるような始まりに、見ているこちらも握りしめる拳に力が入る。熱量のある岩崎の歌声が安定感抜群のバンドアンサンブルとサポートキーボードとして参加しているタケウチカズタケ(SUIKA/A Hundred Birds)のオルガンサウンドと相まって、まるでスケール感たっぷりの映画を観ているような感動を生んでいた。「今日を忘れられない日にしようぜー!」という岩崎の一声から、吉澤が刻む軽快なリズムに乗って「Touch My Head」へ雪崩れ込む。リズムに合わせてハンドクラップと、《Touch My Head》という大合唱が沸き起こったフロアに、岩崎は何度も「いいね!」と声をかけて満足気だ。さらに加速度は増していき、「New Pop Song Order」で一気にヒートアップ。両足を最大限に広げ、アグレッシヴにベースを引き倒す泉、繊細ながらも一音一音が気迫に満ちた中内のギター、破壊力のあるビートを刻んでいく吉澤のドラム、そして渾身の想いを叫ぶ岩崎。今の4人の自信みなぎる様子がステージから確かに伝わってくる。

 「今日は周ってきたツアーの集大成をお見せしますので、楽しんで帰ってくれよ」とファイナルへの意気込みを語り、子どもへと伝え聞かせていきたい勇気と優しさを持ち合わせた「Kids Are Alright」をプレイ。希望に満ち溢れるようなキラキラとしたギターのアルペジオと岩崎のハートフルな歌声に身体を揺らしながら耳を傾ける。続けて、エネルギッシュなシャウトと骨太なバンドサウンドが冴え渡る「考えすぎの僕がいる」、それとは真逆の穏やかで伸びのある「真冬の陽炎」とニュー・アルバムからの楽曲を惜しげもなく立て続けに披露。シンプルだからこそ丁寧に紡ぎ上げられた1曲1曲にクオリティの高さを感じさせる。そして、個人的に生で聴くことを楽しみにしていたオアシスのカバー「Married With Children」。岩崎が多大なる影響を受けたというオアシスに対する最大限の敬意を払ったセカイイチらしいカバーだ。『folklore』=民間伝承という意味を持つこのアルバムで、伝えていくべきこと、残していくべきものを溢れんばかりの自信とともに形にし、オアシスの解散以後、世界的に愛されるこのバンドの名曲すらも「俺たちが歌い継いでいく」とばかりに力強くプレイされたこのカバー。あまりにもハマりすぎていて、いつまでも聴いていたい気分に浸ってしまった。

 「せっかくのワンマンなので久しぶりの曲を持ってきたから」と岩崎が話すと会場からは大歓声が沸く。それを受けて「お前ら、俺たちの過去も未来も愛してるんやなー」と超ご満悦の岩崎。インディーズ盤に収録されている17歳の頃作ったという「神通力」を披露すると、会場はほっとしたような安穏に包まれる。《あなたに会えてよかった あなたと話せてよかった》と昔も今もセカイイチは変わらずに人とのつながりが持つ温もりを歌っていることに気づかされる。今の季節にぴったりな「あたりまえの空」では会場がピンクのライトで染められ、普遍的なグッドメロディが心をしっかり掴んで離さなかった。

 「アルバム『folklore』の曲をたくさん演奏できるのも今日で最後かもしれないんですよ。だってアルバムはどんどん増えていくわけだから。今日で『folklore』のツアーは終わりにするけど、それは、次に向かうということです。次のアルバムを期待していてください!」とその先の未来を期待させる頼もしい一言を伝える。「年齢を重ねるごとに大人にならなあかんのかなとも思うけど、大人になんかなりたくないっていう反発心もあるわけです。しかし、ガキのままではいかんという歌をうたってもよろしいですか?」と反骨精神剥き出しのロック・ナンバー「folklore」で後半戦へ突入! ポエトリーリーディングのような刺激的なシャウトとソウルフルに荒ぶるバンドサウンドが交錯し、オーディエンスの高揚感は急速に増していくばかり。そこへ追い討ちをかけるようにラウンジ・ソウルミュージック「Daylight」の猛攻勢では、ミラーボールが煌く中、SUIKAからタカツキとATOMの二人も登場し、岩崎とともに流麗なラップを繰り出していく。《Daylight Daylight 渋谷を照らせ》と岩崎が歌詞の一部を変えて歌えば、大歓声が沸き起こりオーディエンスは完全横ノリの波に乗って、フロアはクラブ空間さながらの様相で熱を帯びていった。そして、この熱狂ぶりを一旦クールダウンさせるかのようにピアノとアコギの柔和な音色で「わずか」、たくさんのハンドクラップと「ラララ」のコーラスに包まれた「タイムマシーン」というシンプルな楽曲が続く。実力と器量を兼ね備えた今のセカイイチだからこそ成立するポップのあり方を改めてここに証明したように思う。

 「今、世の中が大変なことになっています。でも関係ない人は本当にいないと思います。今、何をしたらいいのか、俺たちも模索中であります。みんなもやりたいと思ったことをやればいい。何かためになるんじゃないかなと思うことを一緒にがんばってやっていきましょうよ、元気にしていこうぜ日本を」と震災以後の心情を露わにし、「何年先も光ってるんだからよ、かくれんぼはやめにして、やってやろうぜ」とアコギを力強くかき鳴らした。そう「あかり」だ。曇った心を照らす一条の光のように、そして、隠していた想いすらも曝け出させるような音楽。私たちはセカイイチの音楽を前に最早嘘をつくことはできないのだ。会場の一人ひとりを見つめるようにして歌う岩崎の目を見て、彼の本気が伝わってきた。

 そして、不穏な空気を醸し出し、岩崎のカウントダウンで始まった今回のアルバムで一際実験的な「猿の惑星」へ突入。闇を切り裂くような硬質なギターのリフに、ミューズばりのスペーシーなエレクトロ・ロックを轟かせ、4つ打ちのビートが会場を揺らす。威勢のよいコール&レスポンスを挟んで、「踊ろうぜ、渋谷! 踊ってやるぜ、渋谷!」と王道のロックンロールナンバーで踊らせた「グレースケリー」、「限界」という言葉をぶち壊し、攻撃的に音塊にダイブしていくような「井の中の世界」とフロアをかき回していく熱いナンバーを投下して、いよいよクライマックスを迎える。一呼吸置いて「故郷にこの歌を贈ります」と静かに言葉を添えて始まった「ハローグッバイ」。滲み出るような優しさと、確かな決意を持って一歩一歩前へ進んでいく、逞しい今のセカイイチの姿が浮き彫りになって見えた。

 アンコールに応え再びステージに戻ってきたメンバーは本当に清清しい表情を見せていた。「たぶん、今日の日のことをめっちゃ思い出すんやろうな。すごく幸せな日でした。本当にお前らが頼りですよ。裏切らないですよ。音楽で応えていきます」と岩崎はオーディエンスに向けて誓いの言葉を捧げ、アコギのアルペジオが心に染み渡る「眠りにつく、その前に」を優しく奏でた。《眠りにつく、その前に 今日のワンマンのこと思い出したりして》とまた歌詞の一部を変え、今日の日のことを思い返すようにしてそっと語りかけるように歌う。眠りにつく前のもやもやとした気持ちをリセットさせ、新しい一歩を踏み出す勇気をくれるこの歌に心から感謝の気持ちでいっぱいになった。

 客電がつきSEが流れても、さらなるアンコールを求める拍手は止まない。まだまだ、セカイイチのライブを観ていたいという切なる想いが通じてか、ダブルアンコールでステージに現れてくれた彼ら。最後は4人だけで、セカイイチの始まりとなった楽曲「聞いてますか お月様?」を力いっぱいにプレイする。これまで歩んできたセカイイチのバンドストーリーの新しい一歩をまた踏み出すために、彼らはバンドを始めた頃の歌を、かみ締めながら演奏した。それは決してゼロに戻った原点回帰というものではなく、過去を一つひとつ積み重ねてきた上で今見える視点を歌い継いでいくという潔い精神だ。”これからもセカイイチについて行こう!!” そう素直に思える素晴らしい一夜だった。

【アベ エリコ】


【SET LIST】

1.Step On
2.Touch My Head
3.New Pop Song Order
4.Kids Are Alright
5.考えすぎの僕がいる
6.真冬の陽炎
7.Married With Children
8.神通力
9.ブリキの月
10.あたりまえの空
11.folklore
12.Daylight
13.わずか
14.タイムマシーン
15.あかり
16.RAIN/THAT/SOMETHING
17.猿の惑星
18.グレース・ケリー
19.井の中の世界
20.ハローグッバイ
Encore
En-1.眠りにつく、その前に
En-2.素晴らしい世界
Double Encore
W-En.聞いてますか お月様?


【MEMBER】

Vocal&Guitar 岩崎 慧
Guitar&Chorus 中内 正之
Bass&Chorus 泉 健太郎
Drums&Chorus 吉澤 響


【PROFILE】

2001年8月、ソロ活動をしていた真性唄歌いの岩崎が、前々から惚れ込んでいたドラマー吉澤を誘い結成。アコギボーカルとドラムという縦一列形態にてライヴを始める。
2002年10月、中内加入。4ピース体制となる。2003年3月、泉加入。現体制となる。
同年12月、デビュー・アルバム『今日あの橋の向こうまで』をインディーズよりリリース。
2005年4月、トイズ・ファクトリーより2nd シングル「石コロブ」を発売。メジャーデビューを果たす。同年5月、1stアルバム『淡い赤ときれいな青と』を発売。
2006年6月、2ndアルバム『art in the EartH』発売。
2007年11月、 3rd アルバム『世界で一番嫌いなこと』発売。
2009年2月、4thアルバム『セカイイチ』発売。4月〜5月 “Top Of The World Tour” 大阪・名古屋・東京でのワンマンライブを含む、全国7ヶ所にて開催。
2010年3月〜4月 自主企画イベント”光風動春” 大阪・仙台・名古屋・東京にて開催。11月 tearbridge recordsより、ニューシングル「Step On」を発売。
2011年1月、5thアルバム『folklore』を発売。4月2日からは同作品を引っ提げ「folklore tour 2011」を敢行。ワンマン3箇所を含む全箇所大成功を収める。


【NEW ITEM】

NEW ALBUM
『folklore』
NFCD-27301
¥3,000(Tax in)
NOW ON SALE
【tearbridge records】

M-1. Touch My Head
M-2. Step On
M-3. Kids Are Alright
M-4. わずか
M-5. 考えすぎの僕がいる
M-6. folklore
M-7. Daylight
M-8. 真冬の陽炎
M-9. Married With Children
M-10. 猿の惑星
M-11. グレース・ケリー
M-12. タイムマシーン
M-13. ハローグッバイ
BONUS TRACK
眠りにつく、その前に


【LIVE SCHEDULE】

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