killing Boy「killing Boy tour ~Frozen Music~」
killing Boy
「killing Boy tour ~Frozen Music~」
@EBISU LIQUID ROOM
2011.3.29(Tue)
昨年5月15日に日比谷の野音で、満員のお客さんの中行われた、「KINOSHITA NIGHT SPECIAL」にて限定発売された、木下理樹の”RIKI’S NOT DEADTシャツ”。以来、彼の新バンドkilling Boyの記念すべき初ライヴ&初めてベールを脱いだ「COUNT DOWN JAPAN 2010-11」に出演時に限定販売されたTシャツ。そして、この度のkilling BoyのニューTシャツ、タオル、ステッカーセットのパーマネントなグッズ一式等々、ここ1年、縁あって我がラッカは、木下理樹&killing Boyのグッズを制作させてもらっている。
そのkilling Boyの初めてのツアーとなった今回。間、残念ながら震災直後の名古屋でのライヴの急遽中止もあったが、東京では、ゲストに8otto、andymori、オープニングアクトにきのこ帝国を迎え、恵比寿リキッドルームにて行われた。
この日のチケットはソールドアウト。”彼らの音楽を体現するゾ!”と集まったお客さんでいっぱいだ。震災以来楽しみにしていたライブが各々の事情で中止や延期が続いたことも関係しているのだろう。”ようやくライブが体験できる!””今日は何もかも忘れ、楽しんでやる!”的な期待感やワクワク具合も半端ない。
そんな中、今回ライブを決行するに至った思いや、被災地に向けての悲痛な叫びのような、木下によるkilling BoyのMyspace上に掲載されていた、
「僕はライブをしたい。その行為で何か伝わるものがあるかも知れないなら、その可能性に賭けてみたい。ミュージシャンが出来る事なんてたかが知れています。今回ライヴを演るのは、今、やらないでいつやるんだって思ったからです。一日も早く、音楽が被災地で鳴り響くことを願います」
のメッセージを何度も思い返す。
そうそう。このkilling Boy。まだ馴染みが薄い方も多いと思うので、ここで軽く彼らを紹介すると。ART-SCHOOLの木下理樹をボーカル&ギターに、ストレイテナー/Nothing’s Carved In Stone等の日向秀和をベースに、そこにサポートレギュラープレイヤーとして、ギターに元SPARTA LOCALS、現HINTOの伊東真一、ドラムにNothing’s Carved In Stoneの大喜多崇規を迎えた4人組。「COUNT DOWN JAPAN 2010-11」の12/31にて突如衝撃のデビューを果たし、2011年3月には、木下の自主レーベル「VeryApe Records」より1stアルバム『killing Boy』をリリース。今回のツアーに至る。いわずもがな日向はART-SCHOOLの初期メンバー。今回実に7年ぶりに木下、日向が一緒に新しいプロジェクトを発足したというわけだ。
この日の開場中や転換時を盛り上げていた、SNOOZERの田中宗一郎DJによるガシガシなエレクトロがフロアを温めている中、まずはオープニングアクトのきのこ帝国がステージに現れる。
このバンドは初見。変拍子バリバリながら、バスドラがズンズンと響いてき、エコー感たっぷりの深い霧の向こう側から誘われるようなたゆたうボーカルと、4人のメンバーによるハーモニーワークや広がりが興味深かった。抒情性を醸し出しているかと思いきや、そこにカタストロフィー的ハーシュノイズが突如絡みついたり、サウンドのメリハリや流れも特徴的。YO LA TENGOやGALAXY 500に、ハーシュノイズやシュ―ゲイズ性、ポストロック性が加わった感じの面白いグループであった。
声質といい、佇まいといい、髪の長い、おとなしめな男性4人組だと思い観ていたのだが、ライヴ終了後、ボーカル&ギターとリードギターのフロント2人は女性だと知る(汗)。
続いてはandymori。個人的にはドラマーのチェンジ以降、初のライヴ観戦であったのだが、以前は上手(かみて=舞台の向かって右側)にあったドラムセットも、今はセンター後方にセッティング。それが何か現在メンバーによる”今のandymori”をアピールしているようにも映った。
とは言え、メンバーは変われど、彼らの特性とも言える、短い歌ながらもポップのエキスやエッセンスをギュッと凝縮し、それでいて適度な軽さを有している音楽性は一切変わらず。己の歌を時に抒情的に、時に勢いよく、気持ちの良いポップなショートチューンとして次から次へとテンポ良く繰り出していた。
そして、やや小さめでシンプルなドラムキットがステージの中央前方に設置される。続いての8otto(オットー)は、かなりリミッタ―のハズれたステージを展開してくれた。彼らのライブを観るのも2年ぶりぐらい。ベースがサンプリングパーカッションを駆使したり、ドラム&ボーカルが立ってアジテートしたり、踊ったり。相変わらず人力なのだが、以前にも増しストイックでマシナリー、アナ―キックさや熱さを帯びたステージを展開してくれた。より開放的で何でもありになったそのステージは終始会場を魅了していた。
そして、いよいよヘッドライナーのkilling Boyの登場だ。一際高い期待感と、ちょっとした緊張感が場内を包む。
SEが流れ出し、ボーッと赤紫のライトに浮かび上がったステージに4人が現れる。実は彼らのライブは初見だったのだが、手に持つギターはお馴染みのフライングVながら、意外にも木下は下手にポジショニング。そして、センターにはベースの日向がスラップへの準備も万全に待ち構えている。
メンバーがそれぞれのフォーメーションでセッティングを終了すると同時に、日向の硬質でスラップの交じったビキビキのベースソロに、ギターの伊東がロングトーンの効いたフィードバック音を乗せる。そして、木下がそこに呪術的で無機質な歌を乗せる。1曲目は1stアルバム同様「Frozen Music」だ。大喜多による4つ打ちを基調としたダンサブルなドラムと打ち込みが土着性とマシナリー性の融合を見せ、フロア全体がそこに体を委ねる。木下、伊東による2本のギターもユニゾンをかまし合い、それが場内にカオスとサバトを生む。まさに盤以上に体感性を有した幻想的なステージだ。
曲が終わると、「ありがとう」と木下。そのまま2曲目へと繋ぐSEが流れ、先程の世界に色とストレートさを加えるように、続いての踊れる8ビートナンバー「1989」が飛び出す。サビの解放感と適度な上昇感がたまらない同曲。日向もリズムに合わせ、体を前後にバンキング。体全体でプレイを始める。伊東のギターフレーズも雄大に会場に広がっていく。再びSEで繋がれ、続いての「Perfect Lovers」に。3拍子のナンバーの登場に、会場全体がロンドな雰囲気に浸り、木下の幻想的な歌が、どこかメランコリックな世界へと会場を誘う。バックから当てられた白色のライトが、彼らを幻想的に映し出す。
伊東のギターフレーズによるリバースが止むと、日向のベースソロから「cold blue swan」にイン。会場も木下の歌内容同様に、「夜がずっと続けば良いのに」と思う。間には日向のチョッパー交じりのスラップも炸裂。ステージ上の緑色のライトも楽曲の不穏さを更に演出している。
続く「black pussies」では、大喜多のダイナミックなドラムに伊東のパラレルなフレーズが絡みつき、木下の若干トーンを落とした歌とで絶妙なバランスを魅せる。とは言え、この曲では木下の歌もより感情を露わに。途中交えられた大喜多のドラムソロを始め、各人がミュージシャンビリティの高いメンバーの集団であったことを改めて思い知らさせる。
そして、ブレイブ感のある4つ打ちのドラムに、木下と伊東によるツインギターのユニゾンリフから「xu」に突入。日向も伊東も曲の高揚感の上昇に合わせてアクションを激しく加えていき、アウトロでは何とも言えない躍動感を場内いっぱいに広げていく。
各人のチューニング後、「新曲を演ります」と木下。続いては新曲「no love lost」が会場に放たれる。2本のギターによるメロディアスなハモりとユニゾン、そこに加わる日向のチョッパー交じりのスラップも印象的な同曲。Aメロ、Bメロがダークでメロディアスなぶん、サビでのパーッとした解放感がたまらない。イントロでのモチーフがアウトロでも再び起用され、それが不思議な起・承・転・結・起・感を生む。
ここで若干のMCが。「今日は自分の意志で来てくれてありがとう。ほんの少しでもいいから幸せな気持ちになって欲しい」とギターの伊東。続いて、ドラムの大喜多も「色々大変なこともあるけど、このような幸せな時をどうか楽しんで欲しい」と続ける。で、木下や日向は…?期待して待つもむなしく、次の「Sweet Sixteen」に入る。ヘイトな7daysが綴られつつも、続けられる「君に触れられたら他に欲しいものはなにもない」と歌われる同曲に、場内中が自身の場合を投影する。
ここで軽くMC。木下から、先程8ottoのベースのTORAが客席にダイブしたことに言及し、伊東にフロアへのダイブを促すも拒む(笑)。
そして、ラストはショートシャープショックに場内にコンフュージョン(混乱)させた、その名も「Confusion」をプレイ。”これでもか!!”と、四位一体のインタープレイがぶつかり合い、場内にカオスを生む。最後は、日向が「来てくれてありがとう。とりあえず頑張っていきましょう」と挨拶。そのままステージを降りる。
ここからはアンコール。4人でテーマに合わせて、フリーフォームに自分たちの音を加え、絡め、一つの曲を完成させていく。そして、待ってましたの木下からの、「今日はありがとう。いろいろ大変なことばかりだけど、生きていて、普通に音楽があればいいと思っている。大それたことはできないだろうけど、僕たちのライヴを観て、少しでも気分がましになったり、”明日も仕事がんばろう!!”と思ってくれたら嬉しい。大きなリスクの中、協力してくれたスタッフや今夜来てくれたみなさんに感謝します」の言葉から、そのまま「Call 4 U」にインし、ライヴは終了した。
3.11の震災以来、自粛や節電協力、来場する方々への安全への気遣い、ライヴよりも今、自身の大切にしなくちゃいけないもののために等々、色々なアーティストが各々の理由でライヴを中止や延期にしてきた。そして、killing Boyはあえてそんな中で演ることで、自分たちの、そして、来てくれた人達のアイデンティティや、”今だからこそ求めているもの”を証明、提示してくれた。
決して明るい歌ではないのに、どの曲もどこか生々しさや躍動を宿していると思えてならなかった彼らの歌。それこそが彼らが歌詞とは裏腹に、歌やサウンドに込めた思いだったのかもしれない…。諦念や絶望を漂わせながらも、どこか人生の謳歌をこっそりと促しているような印象を受けていた彼らの作品の深意が、こんな状況下だからこそ改めて気づいた一夜であった。
Report : 池田スカオ和宏
【SET LIST】
M-1. Frozen Music
M-2. 1989
M-3. Perfect Lovers
M-4. cold blue swan
M-5. black pussies
M-6. xu
M-7. 新曲
M-8. Sweet Sixteen
M-9. Confusion
Encore
Session~Call 4 U
【MEMBER】
Vo.&G. 木下理樹(ART-SCHOOL)
B. 日向秀和(ストレイテナー/Nothing’s Carved In Stone/etc)
Regular Support
G. 伊東真一(HINTO/ex:SPARTA LOCALS)
Dr. 大喜多崇規(Nothing’s Carved In Stone)
【BIOGRAPHY】
killing Boy始動。
木下理樹と日向秀和が再び手を組み化学反応を起こす。
ギター伊東真一(HINTO/ex:SPARTA LOCALS) ドラム大喜多崇規(Nothing’s Carved In Stone)、盟友二人のサポートを得、その姿は12/31「COUNTDOWN JAPAN 10/11」MOON STAGEにて暴かれる。
2011年3月には、木下の自主レーベル「VeryApe Records」より1stアルバム『killing Boy』発売。
同作品と共に、2011年3月29日には主催ライヴ「killing Boy tour ~Frozen Music~」を敢行。
【NEW ITEM】
1st ALBUM
『killing Boy』
¥2,310(Tax in)
VARUK-0001
【VeryApe Records】
NOW ON SALE
1. Frozen Music
2. Call 4 U
3. cold blue swan
4. xu
5. Perfect Lovers
6. 1989
7. black pussies
8. Confusion
9. Sweet Sixteen
【LIVE INFORMATION】
http://www.myspace.com/killingboyofficial