『スプートニクラボ・ヒストリー』
『スプートニクラボ・ヒストリー』
毛皮のマリーズ / OKAMOTO’S / Droog / 夜のストレンジャーズ / THE 抱きしめるズ
2010.11.10(Wed)
@渋谷CLUB QUATTRO
今年で設立7周年を迎えたインディーズレーベル&音楽事務所「スプートニクラボ」。毛皮のマリーズ、OKAMOTO’S、ズットズレテルズ、Droog、抱きしめるズ、MOTOR MUSTANG、夜のストレンジャーズ、Fated Lyno、RIGHTNING V等々、<ロック>という範疇の中、さまざまなタイプのロッキンなアーティストたちを、このレーベルは数多く輩出してきた。
僕がこのレーベルと接点を持ったのは5年ぐらい前。まだ前職だった時だ。あの頃と変わらぬ、社長とA&Rの2人を中心に、毎度コンスタントにこれだけの、くせ者たちを転がしているバイタリティには、毎度頭が下がる。2人とも普段はひょうひょうとしているのにね(笑)。
そんなこんなで色々と関わらしてもらっているスプートニクラボ。我がラッカは、みなさん御存じの毛皮のマリーズの物販物一式の制作の他に、これまで、Fated LynoやLIGHTNING VのCDジャケットのデザインやグッズ制作、新しいところでは、THE抱きしめるズのグッズ一式を作らせてもらっている。ホント、我がラッカの創設以来、色々とお世話になっているレーベルなのだ。
そんなスプートニクラボが設立7年目にして、初の冠ライヴを主催するという。当然我々もお祝いのお花と共に参戦。精一杯の敬意を持って、日ごろグッズ制作に携わらせてもらっている、毛皮のマリーズとTHE抱きしめるズを中心に、ここに当日の模様を記させてもらおう。
まずは、昔より仲良くさせていただいている、A&R畠山氏による開演の挨拶からライヴはスタートした。良質な音楽供給への感謝のような多くの拍手や温かい眼差しから、このレーベルが決してアーティストだけでなく、レーベル全体としてしっかりとブランディングされ、愛されていることを改めて実感する。
一発目はOKAMOTO’Sが勢いよく登場。各人フォーメーションに着くやいなや、力強いフロアタムから1曲目の「20」が始まる。”これから始めようぜ!!”的ナンバーの登場に場内が早くも同乗。ステージ前方の密度がぐっと上がる。マラカスをシェイクしながらフロアを煽り、歌うボーカルのショウ、タイトなブリティッシュビートを低い打点で伝えるドラムのレイジ。ベースのハマは冷静に的確に、しかしキチンとグル―ヴ感を持ったベースを弾く。ギターのコウキのSGからは火の出るようなギターソロも炸裂し、1曲目からフロアは熱狂の渦に。続いて、フロアのノリにヨコを加わえた、ファンキーなナンバーや11/3に発売されたニューアルバム『オカモトズに夢中』からのゴキゲンなブリティッシュビートロックンロール・ナンバー等が立て続けにプレイされ、のっけからのドライブ感とグルービーな曲に会場の熱狂度も上がる。
間のMCではショウから「17歳のまだ高校生だった頃の最初のアルバムは、このレーベルから出したこと。大好きなレーベルであること。このイベントに出れてハッピーなこと。何度でもこんな素晴らしいイベントを演った方が良いこと」が伝えられ、中盤以降も、モッド性とビート性溢れるナンバー「笑って 笑って」や、はたまたルースターズの「恋をしようよ」の性急的なカバー等、トップバッターながら、会場を熱狂の渦に巻き込んだ。
2番手は、前述通り、当社でグッズの制作全般をやらせてもらっている、THE抱きしめるズが登場。SEに乗り、4人が跳ねるようにステージに登場。スタンバイの準備ももどかしく、待ちきれないとばかりにプレイを開始する。1曲目は「コロンバイン」だ。ドラムのとばの放つビートの上、突き進む篠崎のギターとヤギサワのベース。そんな中、ボーカルの渡辺の歌うロマンティックな歌がヤケクソ交じりに会場に放たれる。巨漢篠崎のES-335からマシンガンのようなギターソロが火を吹く。勢いと加速は増し、M-2「名前を呼びたい」に突入。渡辺も持っていたギターを置き、ハンドマイクで歌う。「君の名前を呼びたいのさ」と、狂おしいほどの求愛ナンバーが火を吹くようなサウンドの上、炸裂。篠崎もその体躯に似合わず、軽やかにジャンプを繰り返す。更に加速度を増すようにM-3「Mr.フルスイング」に突入すると、ステージ前方にみんなが押し寄せる。狂おしいほどのラブソングがヤケクソ混じりのドライヴ感と爆発力のあるサウンドの上、飛び出す。渡辺も高揚し、客席にダイブ。
「こんなに大勢の前で演る機会がないので舞い上がる」とMCで語る篠崎。その舞い上がりっぷりは、ライヴの終始に表れていた(笑)。「今夜は腰砕けになるまで踊って欲しい」と続ける。
続いては、「君のあそこにブチ込みたい」と、曲内容とは裏腹にちょっと悪ぶって紹介した「I Wanna be your boyfriend」。伝えたいことが心と体からほとばしるかのようなナンバーに、キュンと甘酸っぱい気持ちになる。リビドーではなく、まさに恋に恋している感じだ。そして、M-5「東京震災」では、マイクをそのまま客席に預け、コーラスマイクで歌う渡辺。初見の人が大半ながら、その勢いは会場をグイグイと巻き込み、惹き込む。ラストは渡辺のリードの下、会場が大合唱。悔し泣きが嬉し泣きに変わった瞬間を見た。<ジョン・レノンにはなれないけど、THE抱きしめるズでいいじゃん>そう思えた全5曲であった。
続いてはdroogがステージへ。まずはドラムの右田、ベースの多田、ギターの荒金の3人がステージに現れ、豪気で凶暴なロックンロールサウンドを放ち、それに乗り、噂にたぐわずロッキンなルックスのボーカルのカタヤマが登場。ドライヴ感とワイルド感溢れるロックンロール「人類」が展開される。グラマラスな雰囲気とふてぶてしさを持ったカタヤマのボカリゼ―ションと、多田はディー・ディー・ラモ―ン・スタイルの大股開きでプレイ。次の「奇跡の果て」でもレスポンスしやすいサビに会場も全身で呼応。UKパンクの潔さとUSパンクのいかがわしさが相まったサウンドとバンド・スタイルに、会場中が惹き込まれていく。そして、「お気に入りのレコード」ではギターもダウンピッキングに変わり、楽曲に疾走感とスピーディーさを加え、「両手にノルマ」では、ミドルグル―ヴが腰にき、これまでのパンキッシュでロックンロールなサウンドに、陰陽さとグラマラスさを加える。また、「からかわないで」では、シフトアップがそのまま会場を惹き込み、連れ回し、そのままラストのミッドテンポのデトロイト・ロック風「いざさらば 書を捨てよ」にイン。サビの部分に合わせ、場内もコブシを合わせる。新人ながら既にスケール感と独特の風格を持つ彼ら。久々にグラマラスなロックスターに出会えた気がした。
続いては、出演5バンド中、最も熟練した3ピース・ロック・バンド、夜のストレンジャーズが登場。これまでファズ系のギターが全開だった中、フルアコによる音色が温かい。トラベリンバンド的風情とロードムービー的物語の歌が温かい「ダウンオンザロード」からスタートした彼ら。安定感とぬくもりのある演奏や歌に、場内がこれまでのバンドとは明らかに違ったまなざしでステージに魅入る。続いてトラブルボーイにまつわる微笑ましいよしなしごとが綴られる、ブルージーでブギー、それでいてホンキートンクな「トラブルボーイズ」。ツイストでも踊りたくなるロックンロールナンバー「プライベートな話をしよう」等を立て続けにプレイ。場内を温める。それにしてもボーカルのミウラは味のある良い声をしている。テンポ良くライヴは続き、軽快なリズム&ブルース「サムクックで踊ろう」では、みんなが幸せそうにゆったりと曲に合わせ腰を揺らせ、「ギブソン」ではロマンティックなロッカバラードにて場内をうっとりとさせ。「最終バス」では、歌詞で描かれた最終バスを降りた主人公のその後に思いを会場中に馳せさせた。そして、ラストはゴキゲンに盛り上がる「ヤング&ヒッピー」で締め。永遠の少年性を会場内に残し彼らは去っていった。
ここでいよいよ、本日のトリ、毛皮のマリーズの登場だ。この日の彼らは、あえてスプートニクラボ時代のナンバーのみでプレイ。その潔さとレーベルやこれまで支えてくれたスタッフに対する敬意や愛着をヒシヒシと感じた。SEのエディット・ピアフの「愛の讃歌」が場内に響き渡る中、ミリタリールックとサンダ―バート・ギターの越川、黒のジャンプスーツのヒロT、上半身裸の富士山が登場。そう、これは2ndアルバム「マイ・ネーム・イズ・ロマンス」の頃のスタイルではないか!ちょっと違うのは、この日の志磨が上半身裸で、下はラメ入りのパンツであったこと(しかも裸足)。この理由は後述。1曲目は「LOVEDOGS」。おおっ、ここ最近のスタイルとは違い、なんと粗野で暴走気味のフルスロットルなロックンロールなんだ。志磨ものっけからフロアに向かってダイヴをかます。続いての「人生」では、ストゥージ―ズばりのストロングなロックンロールが会場を支配する。怖いぐらいの緊張感と暴発力が会場を包む。越川のギターのファズ度も凄い。彼らの粗野で野蛮なロックンロールの攻めは続く。続いては「ロマンチック」だ。ワイルドで怒涛のロックンロール攻撃に、いつもとは違った、いわば古巣レッドクロス時代のちょっと暴力的な雰囲気のノリが会場に起こる。「今日は俺、優しくないからな」と志磨が一言。そこから即、「ACボーイ/DCガール」にイン。場内も”待ってました!!”と飛びつく。越川のアクションもいつもよりもアクティブだ。クールビューティと化したヒロTが支えるベースを弾けば、富士山も野蛮な8ビートを連射。一方的にガシガシと攻め立てるナンバーは続く。続く「アンプリファイヤー」では、1コードが延々と続く中、志磨の呪術的な歌声と、富士山の放つビートが徐々に会場に高揚感を生み、興奮を生む。うーん、やはり今日はいつも以上にストイックでストロングだ。惹き込み方も一方的で強引。越川も途中で足元のエフェクターのつまみをいじり、場内にカオスを作り出す。後半はそのままの興奮度と高揚感を保ち、志磨が客席にダイブ。
「We Are 毛皮のマリーズだ!!」と志磨から力強い一言が。それがまるで”俺たちはいつでも心はここだゼ!!”とのマニュフェストに響く。そして「BOYS」に突入。いつもなら南部臭漂うこのナンバーもこの日は粗暴性と野性味とワイルドさが激増。恋の歌も何故か今日は優しく響かない。続いての「クライベイビー」も、今日は一方的で優しくない。だけど今日は、会場も含め自分もそこに惹かれたりする。MG’S的ビートなのに、いつも以上に興奮。周りも呼応度とリアクションがいつもと違う。良い意味でステージと客席とが対峙している。今日はお客の方も、けっして優しくないゼ、志磨君。うーん、あの日、あの頃のレッドクロスでの、お客さんはステージに向け”挑まん!!”と押し寄せ、容赦のない、しかし愛情の込もったヤジがステージに向け、飛ばされてい頃を思い出す。
ちなみに本編の間、MCらしいMCは一切なし。
アンコールに応えてくれた彼ら。まずはミラーボールも回り出し、ロマンティックでファンタスティック、それでいてスイートソウルな「MAYBE」で場内をうっとりさせる。ヒロTの指弾きから弾かれるファットなベースラインが、月明かりに照らされ、心が正直になっていく自分に出逢わせてくれる。富士山もスイートソウルを支えるように叩き、越川もギターソロでは雄弁に愛の囁きを響かせる。やはり最後は優しく決めてくれるじゃん。
ここでようやくMCらしいMCを志磨が。「この日のラメ入りのパンツが実は、このスプートニクラボの鈴木社長がバンド時代に作ったもので、その意志を引き継ぐように今日は履いている」こと。「ここまでレーベルに大きくしてもらったことへの感謝」そして、「ロックンロールで幸せにしよう。ロックンロールは人を幸せにしてくれる。大きな夢をみんなで一緒に見よう」的なMCの後。これまでの感謝と、これからのよろしくを込め、前述の鈴木社長がステージに呼び込まれる。
アンコール2曲目は、客席への志磨のダイブから始まった「REBEL SONG」。ラストはやはり超大盛り上がりのブギーなロックンロールでピシッと締めにかかる。
振り返ると、ロッキン&ロックンなバンドしか出してこなかった印象のあるスプートニクラボ。これからもこのレーベルの歴史は続いていき、シーンや聴く者に大切な作品を幾つも残していくだろう。誰かが必要としている音楽。そんな一部の宝物が、いつしかみんなの宝物へと変わる。そんな瞬間を見れた気がした。
ラッカはこれからもこのレーベルと一緒に歩んでいく。スプートニクラボさん、これからもよろしく!!
Report : 池田スカオ和宏
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