つばき 2010レコ発ツアー『「夜更けの太陽」~響き合うココロの旋律~』

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2010.11.07

つばき
2010レコ発ツアー
『「夜更けの太陽」~響き合うココロの旋律~』
2010.10.30(Sat)
@代官山UNIT

 今年、結成10周年を迎えたつばき。その記念すべき年に、彼らのニューアルバム発売記念のツアーグッズを我がラッカは作らせてもらった。
 とは言え、実は僕らと彼らの付き合いは古い。それはさかのぼること10年近く。まだ「つばき」は「椿」の名で、ギター&ボーカルの一色君は学生で風呂なしのワンルームに住んでいた。あの時の「早く風呂つきの部屋に引っ越したいです」と笑っていたのがまるで昨日のことのようだ。そんな彼らを前職では、わりとプッシュ出来、僕とカトーの作っていたシリーズコンピ盤に参加してもらったり、主催のイベントに出てもらったりした。彼らの方もインディで名を上げ、メジャーへと移籍。順風な活動を送り、もうお互い<持ちつもたれつ>も不要になり、自然と接点が途絶えていった。その後、しばらくして僕らは自分たちの会社を立ち上げ、つばきも自分たちですべてをコントロールする活動へとシフトしていく。
 そんな中、ひょんなことから再び接点が持てたのは今年の初夏。彼らのニューアルバム『夜更けの太陽』の取材の一つを僕が担当させてもらってからだ。僕としても6年ぶりの彼らへの取材。僕の会社が何をやっているのか?を既に知っていた一色君から、「何か一緒に面白いことをやろう」との話が出、それを呼び声に具現化したのが、今回のツアーグッズのTシャツ、タオル、アクリルキーホルダーだったりする。

 かくいう我々は季節外れの台風14号が上陸寸前。壮絶な雨風吹き荒れる中、会場である代官山ユニットにたどり着き、彼らの登場を待った。
 この日は当然、これまでの彼らの歴史をたどるべく、今までの集大成的なライブを予想していた。しかし…。この日の彼らは決して<これまでの集大成>などではなく、今、そしてこれからをしっかりと見せ、信頼させ、馳せさせてくれるライブを行った。それを今から振り返る、以下のライブレポから感じとってもらえると僕は嬉しい。


 暗くなった場内にSEが鳴り響き、タオルを掲げたベース小川を先頭に3人が登場する。SEが流れ続ける中、各人フォーメーションにつきながらも、しばしのチューンナップ。SEに身を委ね、彼らの放つ1音が待たれる中、一色によるギターに乗せた歌い出しでライヴはスタートした。1曲目は「太陽」。その歌い出しに会場も全身で聴き入る。そこに小川とドラムの岡本によるリズム隊も加わると、それまでの抒情性に力強さとエモ―ショナルさが加わる。「夜を越えてゆけ ゆけ 間違いだらけでも素晴らしい未来」のフレーズに会場が督励され、会場中が<やはり一人じゃない>ことを全身で実感する。続いて、一色のエメラルドグリーンのテレキャスターのダウンカッティングがハードエッジに会場に切り込み、「ブラウンシュガーヘア」に突入する。小川の突き進むようなベースが道を切り開き、岡本の打ち出す16ビートが8ビートにチェンジするタイミングでは、会場もスリリングさからパーッとした解放感に変わる。間には、一色、岡本による美しい2声のハーモニーも加わり、逆にそれが後半の起爆へと繋がっていく。そして、続いての「いたい」では、「いた~い」のフレーズに会場も一緒に呼応。「射たい」「痛い」双方の意味を会場とステージが交互に放ち、ダンサブルで躍動的なビートに身をまかせながらも、会場が自身のアイデンティティを問う。

 ここで一色によるMC。「外は大雨ですが、せっかく来たんだから、めちゃくちゃ楽しんで帰りましょう。ここまで来てしまったんだから…」と、この台風の中、取り残された会場とつばきによる新たなるアライアンスが交わされる。もう、こうなったらとことん付き合うゼ!!

 ブライトなギターカッティングに場内がオッとなる。次は「秘密」だ。大きなうねりを持ちながらも、ノリのある曲の登場に会場全体もライドオン。サビのスタックスビートにみんなが全身で呼応する。加え、ラストのストレートさには会場も更に大ノリを見せる。そのまま「スタイル」に突入すると、サビでは小川もタテに飛びながら、弾んだフレーズを放つ。ノンストップでライヴは続く。次の内省的なナンバー「アセロラ」は、逆に生きる光や力を求め、その救われなさが、その向こうの信じるものを強く思い出させ、信じさせる。ラストに待っている「新しい季節が 未来が僕らを待っている」のフレーズが、会場中に安堵感と救いをもたらせる。
 シャーというノイジ―なSEとシンセによる幻想的なSEの上、「雨に涙目」が始まる。ドリーミーさと激流が合い混じった同曲をイントロに、ニューアルバム同様の流れで「夜更けの旋律」にイン。AメロBメロで歌われる悶々さが、逆にサビの「いいんだよ いいんだよ」のフレーズに信憑性を持たせ、観る者の信頼感を強くさせる。途中放たれた一色のシャウトが、会場に<作っては壊し、何度でも夢を見てもいいんだよ>と力強く諭す。そうそう。この日、幾度も一色は色々なタイプのシャウトを放った。それは、”届け!!”との叫びであったり、”やっぱりこれでいいんだ!!”と自己確信出来た時の嬉しさ、”何で分ってくれないんだ!!”との何か大きなものに対する苛立ちやジレンマ、そして時には、オーディエンスからのエネルギーのお返しの呼応のように、その時々で心の奥底の思いや気持ち、感情を声を上げて何度も伝えてくれた。

 ここでMC。一色が今回のニューアルバムについて、久々に3人だけで作ったこと、それが新鮮で良かったこと、昔からつばきを聴いていた人からは、「昔に戻ったようだ」とよく言われ、それも3人だけで作ったことに起因しているかもしれないこと。また、逆に久々にこの3人だけで作ったことで、今までの自分たちにありそうでなかった曲が出来たことを告げ、その<今までのつばきでありそうでなかった曲>「バス停前」がプレイされる。アルバムでは比較的牧歌的に響いた同曲も、ライヴならではの一味違ったスケール感と抒情感とトボトボ感を加わえて披露。ほのかなブライト感が会場内をゆっくりと包む。続いての「夜が明けるまで」では、「分かってるから いつも いつも 君は頑張っている」の涙が出そうな慈しみのフレーズと、その後の小川と岡本による柔らかく包み込むようなコーラスが場内を温かく優しく包む。
 ディレイとエコーの効いたギターイントロと、それをシッカリと支えるリズム隊から始まった「震える手、光射す部屋」では、会場が一気に一色の部屋へと引き込まれる。「結局僕はなんだったの?」の問いかけと、ラストの「君がいなくたって 明日のために働かなきゃ」のフレーズが身に染みる。

 そしてMC。一色が今回のツアーは各地でライヴでの雰囲気やノリが違った印象を受けたこと、ツアー中、岡本の実家にメンバー全員で計3泊もしたこと。岡本家での出来事等を面白可笑しく伝える。
 ライヴに戻る。スケール感のあるイントロから「街風」にインすると、サビのダイナミックさと大サビの16ビートがパーッとした明るさを会場全体に呼び込む。サビ前の3人のハーモニーの美しさにドキッとしつつも、そこから再入したエモ―ショナルさに、逆に場内もグッとくる。
 パーッとした明るい曲は続く。次の「バタフライ」では、サビのダンサブルさに合わせ、小川も弾みながらベースを弾く。一色も感極まって「サンキュー」とシャウト。場内はダンスホールに一変だ。そのまま疾走感溢れる「めまい」に突入すると、フロア前方も詰まり、密度が増す。サビのストレートさには場内もコブシで呼応。ラストは会場全体が同じベクトルを向き、言いようのない一体感が生まれる。一体感を生む曲は続く。一色の「まだまだ盛り上がっていくゾ!!」の煽りと共にプレイされた「春の嵐」では、会場が一際高い所まで導かれる。うーん、良い眺めだ!!
 岡本の4つ打ちとブレイブ感のあるビートの繋ぎに乗せ、「まだまだ盛り上がって行こうゼ!!」と一色。次の「亡霊ダンス」では、小川のチョッパー交じりのファンキーなベースと、サビではミラーボールも回り出し、会場を開放的で上昇感たっぷりのダンスホールに一変させる。しかも、しっかりと腰にこさせるダンサブルさは、だてに10年演ってないことの証(笑)。ギターソロでは一色が、続くベースソロでは小川がそれぞれ前にせり出し、会場の熱量を一気に上げにかける。押せ押せの曲は続く。次は性急的なナンバー「覚めた生活」だ。エモ―ショナルで豪気な<ロックバンド・つばき>の姿に会場もご満悦だ。


 
 「今日は大雨の中、来てくれてありがとう。ここまできたらもう、(自分が大雨や嵐男だと)認めるしかない」とは一色。初期のライヴから、”ここぞ!!”という大事なライヴの時には、たいてい嵐や大雨がやってくること。そして、「今後は胸を張って台風男を名乗ろうかな」とおどける。そして、今までのライヴの中、今日が最もアッと言う間だったことを加える。
 そして、本編ラストは「声の行方」。歌で問われる「ねぇ 今僕の声は君に聴こえているかい?」に、会場全体から「もちろんしっかりと聴こえている」と、心のレスポンスがステージに返る。彼らが伝えたいことがありステージに立っていること。そして、それを受け止め、自分の糧にし、自分の歌にするために、今日ここにみんなが集まったことを会場の全員が確認したかのような瞬間だ。

 ここからはアンコール。3人が今回ラッカが作成したTシャツを着て再登場する。まずはこのツアーグッズの告知を小川がするも、その投げやり度に一色がダメ出し&フォロー(笑)。「余ってるんじゃなく、今日来てくれる人のために沢山作ったんだよ」のフォローに拍手。上手い!!
 「悲しみの中からはじめよう」が始まると、サビの16ビートが場内にブレイブ感と力強さを与え、雄大な同曲に場内も身を委ねる。同曲のハイライトはやはり後半。それこそラストにはとてつもない高みへと我々を連れていってくれた。そして、一色のギターが空間を切り裂き、歌い出しと共に、アンコール2曲目の「昨日の風」がプレイされる。途中テンポアップした際には、合わせて会場もライドオン。一色のボーカルもエモ―ショナルに歌い回し、場内の温度も合わせて上がる。楽曲の高揚に合わせ、小川のプレイもアクティヴになっていく。
 ここで軽いMC。「つばき史上最もあっと言う間のライヴだった」とは一色。そして、始まったのは「サヨナラ」だ。「東京に来たのは春で そんな事も思い出す 目を閉じればそこに あの頃の記憶が映る」と歌われる同曲。この日の彼らはこの歌を歌った時、一体胸に何を胸に去来させたのだろう?「人生なんてこんなもんか 会いたい時に会えなくて」と歌われる同曲。きっとこの日の彼らは、この日集まったオーディエンスに向かい、「いや、やっと会えたね」、という真意を持って歌っていたにちがいない。

 ダブルアンコールでは、まずは一色一人が登場し、本日まだニューアルバムの中、演っていなかった「僕だけの季節」をギター一本で弾き語る。歌に込められた想いに会場中が聴き浸り、短い曲ながら、場内をしっかりとしっとりさせる。そして、小川、岡本もステージに再登場。プレイを始める前に、一色が、何かを見つけるために演り続け、自分が演り続ける理由を探し続けるとマニュフェスト。加え、感謝の意を会場に伝え、「ファイナルなので特別に1曲」と「光~hikari~」を始める。「進もう、光さす方へ」と歌われる同曲。ステージも会場も光に包まれ、会場一人ひとりの心の中に夜明けを感じさせた。

 彼らの望む光はまだ彼らには射してはいないのかもしれないが、光の射す方角はしっかりと見受けた。そんなライブであった。それは不知火かもしれない。しかし、その光を追い求めて彼らはこれからも進んでいく。そう、照らされたり、逆に暗くて見失いそうになったりしながらも、段々強くなっていく光を、これからも信じて、つばきの11年目は始まっていく。我々ラッカも微力ながら、これからの彼らを応援していきたい。

Report : 池田スカオ和宏


【SET LIST】

1.太陽
2.ブラウンシュガーヘア
3.いたい
4.秘密
5.スタイル
6.アセロラ
7.雨に涙目   
8.夜更けの旋律 
9.バス停前
10.夜が明けるまで 
11.震える手、光射す部屋
12.街風
13.バタフライ
14.めまい
15.春の嵐
16.亡霊ダンス
17.覚めた生活
18.声の行方

Encore
En-1.悲しみの中からはじめよう
En-2. 昨日の風
En-3. サヨナラ

Double Encore
WEn-1.僕だけの季節
WEn-2.光~hikari~


【MEMBER】

L→R
Dr. 岡本奈穂子
Vo.&G. 一色徳保
B. 小川博永


【PROFILE】

2000年4月、大学進学のため上京していた一色を中心に「椿」結成。
2001年3月に小川、2002年5月に岡本がそれぞれ加入し、現在のメンバーとなる。
2002年10月、バンド名を「椿」から「つばき」へと改名。
2002年11月に1000枚限定で発売したミニアルバム「向こう側」は1ヶ月で完売。以後、コンスタントにリリースをしながらライブを中心に精力的に活動。
2005年2月にはシングル「昨日の風」でメジャーデビュー。
2008年からは活動の場をインディーズに移し、同3月にアルバム「覚醒ワールド」、2009年3月にはアルバム「流星ノート」をリリース。
同年11月からライブ会場限定CD「花が揺れる/最低な気分、雨に打たれて」を発売開始。(現在は完売)
レコ発となる「東名阪ワンマンツアー”花に雨”」を盛況に終わらせ、2010年1月から「ライブ会場限定レコ発ツアー “花に雨”」で全国を回る。
また2010年はつばき結成10周年ということで、毎月10日に「つばき10th Anniversary “正夢になった夜”」を開催中。
さらに同年8月にニューアルバム『夜更けの太陽』をリリースし、秋にはレコ発ツアー『つばき 2010レコ発ツアー「夜更けの太陽」~響き合うココロの旋律~』で全国を回る。ファイナルの代官山ユニットのワンマンライヴを大成功に収め、その後、全国ツアー『つばき2010レコ発ツアー「夜更けの太陽」~再び出会うココロの旋律~』を11月19日より敢行。
現在までに6枚のフルアルバム、2枚のミニアルバム、1枚のベストアルバム、11枚のシングル、1枚のライブDVDを発売している。


【NEW ITEM】

NEW ALBUM
『夜更けの太陽』
UKCD-1130
¥2,625(Tax in)
NOW ON SALE
【UK.PROJECT inc.】

M-1. 太陽
M-2. 声の行方
M-3. いたい
M-4. 震える手、光射す部屋
M-5. バス停前
M-6. 秘密
M-7. 雨に涙目
M-8. 夜更けの旋律
M-9. 夜が明けるまで
M-10. 僕だけの季節


【LIVE SCHEDULE】

http://tsubaki-net.com/cgi/schedule.shtml


【ARTIST HOME PAGE】

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