曽我部恵一BAND TOUR 2012 TOUR FINAL

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2012.09.17

曽我部恵一BAND TOUR 2012 TOUR FINAL

曽我部恵一BAND
TOUR 2012 TOUR FINAL
2012.7.1(Sun) @渋谷クラブクアトロ

 タフだなぁ…。
 ライブが2時間をとうに過ぎ、それでもまだ更にペースを上げるように、楽曲を放ち、紡ぎ続ける、曽我部恵一のその勇姿を見ていて、何度も何度もそう思った。

 曽我部恵一BANDの3年ぶりとなったニューアルバム、その名も『曽我部恵一BAND』を引っ提げ、行われた今回の全国ツアー。そのファイナルがここ渋谷クラブクアトロにて7月1日に行われた。
 今回のツアーは全部で35箇所。北は北海道から南は鹿児島まで、全国津々浦々各所熱狂的なライブを展開してきたと伝え聞く。
 この渋谷クアトロは、曽我部恵一にとっては昔からなじみ深い場所。今回のツアーの前哨戦として、3月30日にこのステージに立った際には、発売直前のこのニューアルバムから一足お先に数多くの曲を披露。合わせて、「このツアーファイナルを同じ場所で行う」ことに言及し、「今日演ったニューアルバムからの曲たちが、この3ヶ月後にはどのように成長していくかを楽しみにしていて欲しい」とMCの際に語っていたと聞く。
 そして、この日のクアトロは、そのアルバムも高評価も手伝い、早期のソールドアウト。会場は立錐の余地もなく、改めて彼らの人気の高さを実感した。

 今回、我がラッカは、彼らのこのツアーに際して ニューTシャツとコットンバッグを制作した。

 オープニングアクトの尾崎友直が放つ、圧倒的な世界観の音の壁が聴く者を貼りつかせた、その緊張感が解けた頃、曽我部恵一BANDのメンバーたちが、わらわらとステージに現れる。
 1曲目はニューアルバム同様、「ソング・フォー・シェルター」。曽我部のトーキングブルース交じりの歌声が演奏の中、輪郭を表わしていく。ドラムのオ―タコ―ジの叩き出す、どっしりとした8ビートの上、大塚謙一郎のグル―ヴィーなベースと上野智文のギターが、楽曲の景色をゆっくりと広げていく。「♪おお坊や、そっちはどうだい?♪」と歌の中、何度も尋ねる曽我部。ラストに現れたハミング部では、ステージ/会場を交えての大合唱が起こり、それが全体を一つの方向へと向かわせる。それを受けた、上野のギターソロが景色をグワッと広げるように雄弁に語り出す 。遠くの友や、もう、この世にはいない志中の人に、会場の多くの人が想いを馳せていく。1曲目を終え、腕をグッと上げ、挨拶する曽我部。すかさず楽器をギターからバンジョ―に持ち替え、それを爪弾きながら、「兵士の歌」を歌い始める。上野もギターをマンドリンに持ち替え、会場に牧歌性が呼び込まれていく。ワルツのリズムの中、伸びやかに歌声を広げていく曽我部。時々、遠くに思いを馳せるように目を閉じながら歌っている光景も印象的だ。「♪偏西風が吹いて来て 俺を洗ってくれる さよならいとしい人よ どうか幸せで♪」のフレーズが、さすらい感ただよう会場をふわっと包み込んでいく。
 続いてギターの力強いストロークをきっかけに、ギター、ベース、ドラムが順に力強く合流していき、「クリムゾン」を完成させていく。大塚は足をグッと踏み出し、そこに力を込めながら、ぶっ太いグル―ヴを練り出していく。ダイナミックな8ビートを叩き出すオ―タ。その後、上野がそこに嵐を呼び込むようにストーム性の高いギターソロを吹き荒れさせる。ベースラインで繋ぎ、そのまま次曲の「ロックンロール」にインすると、4つ打ち裏ハットの16ビートが会場にダンサブルさを寄与していく。会場前方の密度もグッと上がり、みんなが嬉しそうに踊り、一緒に歌う。途中、曽我部もパーカッションへ移動。オータとのツインドラムのうねりが、会場の興奮感に更に油を注いていく。そこから曽我部のドラムソロに突入し、ボルテージも急上昇。合わせて、みんなが驚喜する。それに負けじとオータもドラムソロに突入。ドラムソロバトルが会場を巻き込み、とんでもないグル―ヴが生み出されていく。身体中がビリビリし、グイグイとその場面に惹きつけられていく。いや、ここは抑えねば(笑)。熱狂徒と化す場内。そのカオスから楽曲のテーマに戻ると、更に狂乱度が増していく。フロアを交えてのもの凄いグル―ヴと熱狂が生まれた瞬間だ。早くも前半最大のハイライトが訪れた実感が全身を包む。アウトロでは上野がメタリックなギターソロを交え、各人が名うてのミュージシャンたちであることを証明。ラストは曽我部の「ロックンロ~ル!!」のシャウトで締め。続いての「恋をするなら」に突入していく。タムとフロアタムを基調とした重いドラミングがセカンドラインのリズムに乗り、ボ・ディドリー・ビートへと移行。そのビートが躍動性や土着感、生命力を会場に育んでいく。反面、サビではあくまでもポップに。そのコントラストの軽やかさがたまらない。同曲を終えると、”やった!!”といった表情を浮かべ、上を向く曽我部。

 そして、曽我部、上野によるツインギターによるユニゾンカッティングから「ねむれないあの娘のために」に。同曲では、楽曲構成がシンプルな分、歌でアクセントがつけられていく。上野、大塚もコーラスを交え、楽曲にふくよかさをもたらしていく。「♪ねむれないきみのために ぼくはうたをつくって ねむれないきみのために ぼくはうたをうたおう♪」と歌われる同曲。多くの人がその場面にうっとりとした表情を浮かべる。  
 続く上野によるギターイントロが鳴ると場内がそれに一際反応。驚喜の声が高まる。続いては「スウィング時代」だ。サビではお客さんもコブシを上げて大呼応。それに応えるように曽我部も力強く左腕を誇らしげに高々と上げる。サビの高速16ビートと、その上に乗るドライヴ感のあるギターソロが飛び出すと、高揚感なんて言葉では片づけられないほどの興奮が足下から込み上げてくる。それを我慢出来ないようで、僕の周りでは、これまで以上にステージに向けての呼応が強まっている。勢いがあり、走り出す曲は続く。次は「キラキラ!」だ。もう、この曲が来れば大合唱でしょう。”待ってました!!”とばかりに、会場中が自分たちの歌のように、全編に渡って同曲を歌う。まさに大合唱ソング。「♪ハレルヤ!エブリデイ♪」状態だ。「♪いつだって誰もわかっちゃいないんだ!!♪」との曽我部のアジテートと、そこに次ぐ上野のギターソロが興奮のるつぼを更に掻き回す。

 くぐもった歪みを帯びたギターアルペジオの中から「おとなになんかならないで」が現れる。オ―タもスティックからビーターに持ち替え、ゆったりと重めのドラミングを加えていく。「♪おとなになんかならないで ぼくのBaby♪」と自分の子供を前に歌っているかのような情景が目の前に広がっていき、ロマンティックな雰囲気が会場を覆っていく。しっとりと言い聞かせるように歌う曽我部に、それに聴き浸る会場も印象的な場面であった。
 曽我部がギターをアコギに持ち替える。続いては「街の冬」だ。寒い夜、外気温とさほど変わらない寒い部屋の中の情景を思い浮かばせながらも、温かい想い出が会場に広がっていき、仲の良い姉妹が部屋の中で二人寄り添っている光景をみんなが思い巡らせていく。わびしくもむなしい事件がモチーフながら、どこか心をポッと温かくさせる同曲。歌の内容を吹き飛ばし、笑い飛ばすように激動交じりに場内に放射されていく。会場のボルテージもグングン、グイグイ上がり、会場に大きなうねりが巻き起こり、全体を惹き込んでいく。ラストに向け、こみ上げてくる高揚感と興奮感がたまらない。

 レスポールに持ち替える曽我部。何かをゆっくりと思い出すように、遠い記憶を辿るように、ちょっと上を見ながら、「月夜のメロディ」を歌い始める。会場に優しく柔らかい雰囲気が訪れ、それに浸りながら、みんながあの晩へと想いを馳せていく。ダイナミックさとブレイヴ感溢れるイントロから「胸いっぱいの愛」にイン。と思うもつかの間、急遽豹変し、リズム隊が狂ったように怒涛のカタストロフィなプレイへと突進していく。上野もその上を泳ぐように、アヴァンギャルドにフリーキーにギターをプレイ。地響きのような、オ―タのツインペダルによるバスドラの連打が、会場に激しい風を巻き込んでいく。そんな中、ピッチを保ち、我関せずで歌い続ける曽我部。「♪胸いっぱいの愛で抱きしめて歩く♪」と歌う、そのコントラストが面白い。


 
 続く、15年以上歌い続けられている「青春狂走曲」は、やはりお客さんによる大合唱から始まった。もうこの曲はお客さん任せ。曽我部もギター置き、マイクをツカミ、歌い、会場が思い思いにそこに自分たちの歌を重ねていく。まさに狂騒曲状態だ。続いての「シモ―ヌ」までくると、更にステージもフロアも関係なく、会場全体が大合唱状態に。シモ―ヌよ、恋をしている場合じゃないよな(笑)。
 気持ち良く、ちょっとした陶酔顔を交え、ギターを爪弾き、語り出す曽我部。続いては「夜の行進」だ。「7月1日、渋谷のクアトロ、みんなありがとう」とアドリブを交え、よしなしごとをトーキングブルースのように歌いながら、ツアーが終わってしまうことが、寂しさを込め告げられる。スネアをタムタム代わりにオ―タが手で叩き、そこに上野がボトルネックを使ったスライドギターで夜を緩やかに呼び込んでいく。
 オ―タが再びスティックをビーターに持ち替え、7インチでシングルカットされたばかりの「サーカス」を始める。どっしりとした4つ打ちを踏みながら、エッグシェイカーを振り、シャッフルを刻むオータ。上野も甘いコーラス加え、楽曲の雰囲気をよりスイートに仕上げていく。

 「恋の病、『Love-Sick』」と曽我部が短く曲紹介し、「Love-Sick」に。満たされているのに物足りない、そんな日常が会場に広がっていく。レゲエの裏打ちのリズム部では、ファットなベースラインとダウンビートの弾むようなカッティングが心地よさを生み出し、間には曽我部も気持ち良さそうにギターソロを披露。ラストの「♪Everythings Gonna Be Alright♪」の大合唱が会場に大団円感を持ち込む。爪弾きと共に、誰かに聞いて欲しい独りごとのような歌い出しと口笛から各楽器が加わっていき、次曲の「テレフォン・ラブ」が育まれていく。そして、現れるは会場を交えての大合唱。各々がまるで自分の歌かのように思い思いの気持ちと愛を込めて歌う。まるでステージとフロアとの交歓が見えるようだ。
 疾走感のある上野のギターによるダウンカッティングから「サマーフェスティバル」へ。ドライヴ感溢れる中、楽曲がしなやかに軽やかに走り出していく。アウトロでは加速度をこれでもかといわんばかりに上げ、それが上がる度に、会場に例えようのないカタルシスが満ちていく。そして、「たんぽぽ」を挟み、続く「オーロラ」では、歌にそっと寄り添うような演奏が耳を惹く。曽我部も合わせて優しく、柔らかく歌を紡いでいく。時々上を見て歌っていたのは、星空とオーロラでも思い描きながら歌っていたからなのだろうか。長いアウトロが楽曲の余韻を引っ張っていく。そして、その雰囲気を破るように、続いて飛び出したのは「魔法のバスに乗って」。再び会場全体がキラキラと発光し始め、魔法のバスへの乗車チケットが全員に手渡される。モーターサイクル感溢れるイントロから「ポエジー」に入ると、大塚もダウンピッキングで疾走感を作り出しながら、軽やかなステップを交えてのプレイを魅せる。後半に向け、疾走が激走に変わっていき、そのシフトアップにフロアも興奮度を上げていく。その熱狂度を更に押し上げるように「恋人たちのロック」に突入。嬉乱と大合唱の中、興奮と熱狂の坩堝と化すフロア。高揚感が恍惚感を引き連れて身体全体を襲う。続く「STARS」も大合唱ナンバー。曽我部もハンドマイクにし、ステージの最前列を右に左に動きながら、お客さんと一緒に歌う。同時に、なんかもの凄い帰着感と安堵感が会場全体を包んでいく。そして、本編ラストは、アコギをカッティングしながら歌い出した「満員電車は走る」。「♪心がどうしようもないとき あなたの心が壊れてしまいそうなとき 音楽は流れているかい♪ そのとき音楽は流れているかい♪」。私小説のような歌が満員電車と共に1億2千760万の叫びを切り裂いて走っていく。そんなにきれいな歌ではないのに、心が浄化されていくよう感じるのは何故だろう? アウトロでは倍テンになり、ヒステリック度を上げ、ラストは曽我部のシャウトでエンド。4人はステージを降りる。

 アンコールは1曲だけ。曽我部と上野がステージに現れ、「今日はみんなの心が主役。僕は歌うだけ。それをみんなで受け取って欲しい」と、曽我部が語る。「ステージの上から見下ろして演るのは、ちょっと心苦しいんで」とフロアに降りて、その真ん中でみんなが囲むようなスタイルの中「mellow mind」を始める。上野の切ないマンドリンに、牧歌的な曽我部のバンジョー。みんなが見えるようにお客さんも座り、増幅ナシの楽器とマイクなしのスタイルで同曲が披露される。そして、本日来てくれたことへの感謝とまたどこかで逢おうとの約束がひっそりと歌に乗せて語られ、ライヴは幕を下ろした。

 アンコールを含め全27曲がプレイされた、この日。そして、ライブ終了直後には、即物販コーナーに赴き、購入者一人一人にサインを書いてあげている曽我部の姿があった。そこでは、たった今まで2時間半以上ライブを行ったとは思えないほど、一人一人とキチンと笑顔でコミュニケーションをとり、来てくれたことへの感謝を一人一人に述べていた。
  やっぱりタフだ…。
  いや、この場合に頭に思い浮かんだタフは、ストロングや打たれ強い等のタフとは、ちょっと違う。タフはタフでも、「多富」という文字。そんな満たされ、充足した時間が、ライヴの帰路までも僕を包んでいた。

 
Report : 池田スカオ和宏

*写真は、ライヴ終了後、ラッカ制作のTシャツに曽我部さんからサインを入れてもらっている、マーチャンダイザーのハルヒサカトー


【SET LIST】

1.ソング・フォー・シェルター
2.兵士の歌
3.クリムゾン
4.ロックンロール
5.恋をするなら
6.ねむれないあの娘のために
7.スウィング時代
8.キラキラ!
9.おとなになんかならないで
10. 街の冬
11. 月夜のメロディ
12. 胸いっぱいの愛
13. 青春狂走曲
14. シモーヌ
15. 夜の行進
16. サーカス
17. Love-Sick
18. テレフォン・ラブ
19. サマーフェスティバル
20. たんぽぽ
21. オーロラ
22. 魔法のバスに乗って
23. ポエジー
24. 恋人たちのロック
25. STARS
26.満員電車は走る
Encore
En-1. mellow mind


【MEMBER】

Vo.&G. 曽我部恵一
G.&Vo. 上野智文
B.&Vo. 大塚謙一郎 
Dr.&Vo. オータコージ


【PROFILE】

ソロを始め、様々なクリエーターとのコラボレーションやプロデューサーとしても活躍。また、アコースティック編成での「曽我部恵一ランデヴーバンド」や2008年に再結成を果たした「サニーデイ・サービス」等で活動している曽我部恵一を中心に2006年に結成された、シンプルな4人組のロックンロールバンド。
2008年、アルバム『キラキラ!』を発表。広い層からの圧倒的支持を得る。同年8月「キラキラ!ツアー」のライブを収録した、アルバム「トキメキLIVE!」、DVD「六月の鯨」をリリース。
2009年2月、シングル「ほし」を、6月には2ndアルバム『ハピネス!』、ミニアルバム『ソカバンのみんなのロック!』をリリース。同年10月、シングル「プレゼント」をリリース。2012年4月4日、実に3年ぶりとなる3rdアルバム『曽我部恵一BAND』をリリース。これを引っ提げて全国35箇所のツアーを敢行。大成功を収める。
全国各地からのオファーに応え日本中を飛び回り、各所にて小細工無しのストレートで熱いライブを繰り返している。


【NEW ITEM】

曽我部恵一BAND
『曽我部恵一BAND』
¥2,500(Tax in)
ROSE 129 
紙ジャケット仕様
【ROSE RECORDS】

収録曲
1. ソング・フォー・シェルター 
2. 恋をするなら 
3. 兵士の歌 
4. クリムゾン 
5. ロックンロール 
6. 街の冬 
7. 月夜のメロディ 
8. 誕生 
9. サマーフェスティバル 
10. 胸いっぱいの愛 
11. 夜の行進 
12. サーカス 
13. たんぽぽ 
14. ポエジー 
15. 満員電車は走る


【ARTIST HOMEPAGE】

http://www.sokabekeiichi.com/livedate/


【LIVE INVITATION】

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