セカイイチ「The Band」TOUR2012

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2012.08.10

セカイイチ「The Band」TOUR2012

セカイイチ
「The Band」TOUR2012
2012.7.13(Fri) @新宿BLAZE

“今まで以上に塊(かたまり)のような強固感のある作品になったな….”。これが彼らの新作であり、6枚目となったニューアルバム『The Band』を最初に聴いた時の私の感想だった。そこに言葉を加えるとすると、支えあったり、補いあったりする要素も強いな、と。
セカイイチのニューアルバム『The Band』は、非常に強硬な作品であった。とは言え、それは作品のタイプや内容から感じたことでなく、むしろ、そのバックボーン的なもの。いわゆる、なんかこれまでの彼らが培ってきた色々なものがキチンと血や肉となり1曲1曲1フレーズ1フレーズを形成している。確信や自信に満ちた、そんな力強い印象のことだ。もちろん、ニューアルバムにも、新しい試みや冒険、実験、これまでになかった要素もところどころ見受けられた。しかし、それ以上に、作り上げていくうちに、固まり、確立し、そこから見えるものを手繰り寄せていき完成させた。そんな確固たる自信に満ちたアルバムのように思えた。

ここのところの彼らは益々力強くなっていく。背伸びも見栄もかなぐり捨て、丸腰の、かつての「こんなことも出来るんだぜ」「こんなこと、やっちゃったぞ」から、「やっぱりこれしか出来ないぜ!」「これがやりたいんだ!!」「やっぱこれだよ、これ!!」。そんな一周回って戻ってきた感もある彼ららしさが、プレイされる各楽曲から匂い立ってくるのだ。

そんな作品を引っ提げ、彼らは全国ツアーを行い、その東京公演が、この日、新宿BLAZEにて行われた。この日のゲストは、朋友ランクヘッド。大阪に続き東京でも、この組み合わせが実現した。

我がラッカは、今回の彼らのワンマンツアーに際し、新グッズを制作。“BAND MAN”という彼らのニューアルバム中の代表曲のタイトルから、メンバーそれぞれの楽器をモチーフにしたデザインを乗せた「トートバッグ」「Tシャツ」「フェイスタオル」を制作した。

いつものファンキーなSEが場内に流れ、クラップではなく手拍子がそのSEに合わせて鳴らされ、それに呼び込まれるように各メンバーがステージに現れる。ベースの泉健太郎がステージ前方まで出向き、ことさらその手拍子を煽る。スタンバイOKを告げるかのようなフィードバックノイズが、中内正之のギターから放たれ、ボーカル&ギターの岩崎慧による「セカイイチです。今日はよろしく」の軽い挨拶と共に、「everybody goes on」が力強く現れてくる。どっしりと安定感のある、適確な8ビートを叩き出すドラムの吉澤響。泉は早くも、お得意とも言える、左足を一歩踏み出し、踏ん張るスタンスで、リズムを取りながらベースをプレイしている。その上をダイナミックにカッティングとソロを悠然と響かせる中内。乾いたソリッドなギターの上、力強さとソウルフルさを交え、楽曲にパワーと光を岩崎の歌が与える。昇華されていくように絡み合い、合わさりあっていくバンドのグルーヴ。うーっ、1曲目からたまらない。セカイイチのダイナミズムを伝えるには、この上ないスタートと言える。”何をやれるか?””風穴を空けてやろうぜ””いや、空けてやる!!”との強い意志が、会場に襲いかかってくる。
岩崎の歌い出しとジャングリーなカッティングから「ニューカマー」にイン。会場も手拍子で歌に後押しを加える。フロント3人によるダウンピッキングのアンサンブルが、会場に疾走感と、”一緒に走り出そうぜ!!”感を生んでいく。「♪世界を変えるのは俺たちだと もう一度叫ぼう♪」。そんな同曲内のフレーズにうんうんと力強くうなずきたくなる。
吉澤が4つ打ちで繋ぎ、中内が不可思議なギターフレーズを乗せ、摩訶不思議に楽曲が完成されていく。3曲目は「clockwork」だ。一見ループのように感じるが実に動きの多い泉のベースフレーズが、楽曲に躍動感と生命力を育んでいく。吉澤のロールの後には、続けて泉がベースソロを見せたりと、同曲ではメンバー各人のプレイヤビリティを見せつける。高揚感と上昇感の上、妙な緊迫感がセカイイチならではのダンサブルさを伴って、会場をディスコインさせる。

「The Band TOURの東京であります」と岩崎。そして、共演のランクヘッドへ、快い出演と本日の好演への感謝が告げられる。
続く「Beat goes on」では、中内、泉もコーラスに参加し出し、楽曲に涼しさを持ち込んでいく。会場も合わせて楽し気な表情に。シティポップス感が光景感を伴って、会場に広がっていく。手拍子の中、岩崎のギターと歌い出しから「風来坊」に。「♪どこに居てもいいのさどこかにきみがいるなら♪」と歌われる同曲。途中、ギターとボーカルだけになる箇所では、会場の手拍子と共に、全体で大合唱。一緒に楽曲を完成させていく。
「人生で2回目に演る曲です。今日は相棒がいないので、この3人と一緒に」。と、「Night and Daylight」に入る。シティライト感のあるナンバーで、作品での途中に入るSEAMOのラップパートを、ナント中内が担当。突如ラップで切り込んでくる。泉もサイドMCで絡み、続いて岩崎もトーキングブルース系のラップを加え、セカイイチならではの同曲を完成させていく。中盤以降では、吉澤も怒濤のドラミングを聴かせ、中内もギターソロを加え、楽曲に色彩を加えていく。そして、ハネるリズムのゾーンに戻ると、中内もジェスチャー混じりでラップを交じえて楽曲を完成させていく。

「今日はドンドン楽しんで行こうゼ!!」と岩崎。一拍置いて、「少しHな歌を」と続ける。「俺は知ってるぜ、今日ここに来ている全員がHだってことを。だけど、俺たちはもっとエッチだぜ。その中でも最もHな男がこれからドラムを叩くぜ」の紹介の後、吉澤が若干シャッフルを交えたリズムを生み出していく。続いての「ソフトフォーカス」では、メローなソウルがまるでとろけ出しそうに現れる。どうでもいいけど、この場合は、「H」というより、「セクシー」と称した方が合ってるぜ、慧ちゃん(笑)。

ここでMC。泉の「関西弁以外でのイントネーションが変だ」とメンバーからの魔女裁判が。ちなみに、ここまではニューアルバムからの曲ばかり。それに言及し、岩崎が「ニューアルバムからの曲ばかり演っても、あれなんで。次はYouTubeでもアップされている曲でも」と、「あたりまえの空」をプレイする。遡ること4年も前になる「Top Of The World Tour」の頃に作った曲が、春の雰囲気を会場に呼び込んでいく。パーッと景色が明るくなり、急に”愛しい人といつまで一緒にいることが出来るのだろう?”と、寂しさも交え、哀しい気持ちがことさら強くなっていく。岩崎のアルペジオと歌い出しから「正しさを間違えた王様」に入ると、遠い日の良き思い出として、会場の気持ちを、かつてのあの頃へと4人が飛ばしてくれる。自分にとって、何が一番の宝物かをみんなが考える。
そして、吉澤の4カウントから「Nothing has changed」へ。バンド全体の力強いグルーヴに身体が震える。「一つ一つ歩いていくよ」の歌詞フレーズが染みる。ラスト前には、3声によるハモりにてサビのテーマが再び。そして、そこから大サビへと転調していくところでは、感動と共にセカイイチのバンドの絆や、一丸となって目指しているもの、いつか掴んでやる的なものが、確実に一歩一歩、自分の足で向かい、掴みとってやる。そんな宣言のようにも響いた。

泉がMC。今日は特に興奮していて、この日のステージ衣装として着ようと思っていた、今回のCDジャケットに映っている上着を家に忘れてきてしまったことを皮切りに、以前に行われた、「セカイランクツアー」を振り返るトークを始める。
そう、この日のゲストはランクヘッド。かれこれ8年ほど前、ちょうどセカイイチがデビューした頃に、この2組は、全国津々浦々を28日間にも及ぶカップリングツアーを敢行。当時の若さや若気の至りも手伝い、各地で武勇伝を残してきたことを、思い返しながら、嬉しそうに語る。会場の中には、そんな当時のTシャツを着た人たちの姿もちらほら。それがそのまま、新しいものが現れては消えていく、その速い音楽サイクルの中、未だそのようなファンを多く抱えている2組を実に誇らしく思う。

おもむろに思い出したかのように岩崎が、「今日は30歳になって初めてのライヴ。これでみんな晴れて30歳になった」ことが伝えら、会場中から、多くの「おめでとう」が岩崎に贈られる。
「だけど、バンドの精神年齢は、30歳から」と岩崎。うんうん。セカイイチを観ているとなんだか非常に説得力がある(笑)。
ライヴに戻る。吉澤のドラム、泉のベースが乗り、中内のギター、岩崎のギターが、次々とメンバー紹介後重なっていき、「あかり」に。”一緒に眺めの良い景色を観に行こうぜ!!”と、会場を誘う。岩崎が「懐かしのナンバーを演ってもいいですか?」の問い掛けと、”待ってました!!”のイントロが場内に驚喜を広げていく。続いては、初期からの代表曲「石コロブ」だ。岩崎がギターを誇らし気にかき鳴らし、入った同曲。「♪自分のために今日は歌おう 時間を忘れ無我夢中で 誰かのために今日は歌おう♪」のフレーズに、会場のひとりひとりが、その誰かが自分のことのように思う。ラストに向かうに連れ、弾きまくり、叩きまくりの絵図は圧巻。楽曲をダイナミックに展開していき、会場をグイグイとあの頃ではない、今ならではのセカイイチワールドへと惹き込んでいく。

「虹」に突入すると、やんわりじんわりゆっくりと人生讃歌が会場中に広がっていく。色々と抱えることは多いけど、なんか聴いているうちに全てが浄化されていくかのような同曲。<秘めた力を秘めないようにしていく>宣言が岩崎から成された後には、「快楽主義者」が飛び出す。アイリッシュミュージックに、日本の土着とも言える、ええじゃないか節と琉球旋律が交差し、その独特のブレンドされたダンサブルさが会場を躍らせる。中内のギターがフィドルのような音色を放ち、高揚感と煽動感を煽っていく。続く「グレースケリー」では、吉澤の重いフロアタムの上、岩崎と泉が場内を煽る。中内も逆サイドのフロントまで出向きギターを弾く。モータードライヴ感溢れるロックンロールが、疾走感と共に会場全体を走り出させる。続く、「Oil Shock」と「井の中の世界」は、あいも変わらない超絶ナンバー。「Oil Shock」では、泉も超絶スラップでフロアを驚嘆させる。場内をカオスに巻き込む箇所が特徴の同曲。続く「井の中の世界」での、「♪越えてゆけ どうせ君が作った 限界なんでしょ♪」のリリックが、この日も私の心を叱咤し、煽ってくれた。その次曲は「カプセル」。イントロが出ただけで、みんなが”待ってました!!”と驚喜の声をあげる。同曲のサビの部分では、会場を交えての大合唱。「♪五年後 十年後 未来には何もなくて♪」と、自分の未来にみんなが夢を馳せながら、一緒に力強く歌う。岩崎もギターを投げ出し、ハンドマイクを掴み、エネルギッシュにシャウトしながらステージを走り回り、動き回り歌う。この日一番のハイライトだ。当然会場は絶叫のしっぱなし。フロア前方の密度が更にアップし、会場の温度もグッと上がる。

ここでMC。岩崎が語る。中学の頃に本格的に音楽を始めたこと。せっかく入った高校を、音楽でメシを食っていこうと決意した時に辞めたこと。音楽は何かを変えられることを常に信じていること。そして、大好きな故忌野清志郎について語り。いつか突然、歌いたくても歌えなくなってしまう時がくる。なので、その時まで、今のこの人生観を音楽で燃やし続けようと思っていることを語り、「これからも自分は歌うのを止めません。最後の最後、命が尽きるまで。その時まで、みんなよろしくな」と締め、本編ラストの「バンドマン」を歌い始める。「♪バンドマン 涙が乾くようなやさしい歌を聴かせてよ お願い その歌声をいつまでも止めないで お願い 聴かせてよ ぼくのバンドマン♪」。中内と泉のコーラスが誇り高く、楽曲に気高さを加えていく。4人により歌が、そしてライヴが昇華されていく。ラストのハミング部ではまるで自分の歌のように、みんなが思い思いに、一生を賭けて追いかけ続けていくべき、自分にとっての何かを、辿りながら、そのものに対しての想いを込め、歌っている光景が見られた。
アンコールは1曲。「New Pop Song Order」がプレイされた。

「バンドマン」と聞いて、思い出す逸話がある。それはRCサクセションが人気を急上昇させていた1980年代初頭に発表された彼らの自叙伝内の忌野清志郎の記述だ。そこには、こんなことが書いてあった。「僕はミュージシャンなんかじゃない。ただのバンドマンなんだ。だから職業欄には『バンドマン』と書いている」。かなり短絡的に書いてしまったが、これは、彼らの代表曲「RHAPSODY」にも表れている(清志郎さんが、「お嫁さんに下さい」と、当時の彼女の両親のところにお願い行った際の帰路の歌。「バンドマンにうちの娘はやれん!!」と罵倒された実話に基づく歌だそうです)。
当時、希代のボーカリストや時代の寵児としてももてはやされ、完全に自己を確立していたであろう頃の発言なだけに、この清志郎さんの「バンドの1/5」的な発言は実に印象深い。

バンドは集合体だ。メンバー各人が噛み合って、動き出し、機能していく。このアルバムがこれまで以上に、固まり感や強固感を感じたのか?にようやく今、辿り着いた。
セカイイチはますます強く、そして強固になっていく。そんな確信が足元からじわじわと込み上げ、遂には私の全身を包みこんでいった。

 
Report : 池田スカオ和宏


【SETLIST】

1.everybody goes on
2.ニューカマー
3.clockwork
4.Beat goes on
5.風来坊
6.Night and Daylight
7.ソフトフォーカス
8.あたりまえの空
9.正しさを間違えた王様
10.Nothing has changed
11.あかり
12.石コロブ
13.虹
14.快楽主義者
15.グレースケリー
16.Oil Shock
17.井の中の世界
18.カプセル
19.バンドマン
Encore
En-1.New Pop Song Order


【MEMBER】

Vocal&Guitar 岩崎 慧
Guitar&Chorus 中内 正之
Bass&Chorus 泉 健太郎
Drums&Chorus 吉澤 響


【PROFILE】

2001年8月、ソロ活動をしていた真性唄歌いの岩崎が、前々から惚れ込んでいたドラマー吉澤を誘い結成。アコギボーカルとドラムという縦一列形態にてライヴを始める。
2002年10月、中内加入。4ピース体制となる。2003年3月、泉加入。現体制となる。同年12月、デビュー・アルバム『今日あの橋の向こうまで』をインディーズよりリリース。
2005年4月、トイズ・ファクトリーより2nd シングル「石コロブ」を発売。メジャーデビューを果たす。同年5月、1stアルバム『淡い赤ときれいな青と』を発売。
2006年6月、2ndアルバム『art in the EartH』発売。
2007年11月、 3rd アルバム『世界で一番嫌いなこと』発売。
2009年2月、4thアルバム『セカイイチ』発売。4月~5月 “Top Of The World Tour”大阪・名古屋・東京でのワンマンライブを含む、全国7ヶ所にて開催。
2010年3月~4月 自主企画イベント”光風動春” 大阪・仙台・名古屋・東京にて開催。11月 tearbridge recordsより、ニューシングル「Step On」を発売。
2011年1月、5thアルバム『folklore』を発売。4月2日からは同作品を引っ提げ「folklore tour 2011」を敢行。ワンマン3箇所を含む全箇所大成功を収める。
2011年11月、ニューミニアルバム『Another Second Hand』発売。
2012年3月、6thアルバム『The Band』発売。


【NEW ITEM】

6th ALBUM
『The Band』
NFCD-27334
¥3,000(Tax in)
NOW ON SALE
【tearbridge records】

1.ニューカマー
2.快楽主義者
3.Clockwork
4.Nothing has changed
5.風来坊
6.Beat goes on
7.ソフトフォーカス
8.Night and Daylight feat. SEAMO
9.everybody goes on
10.正しさを間違えた王様
11.バンドマン


【LIVE SCHEDULE】

http://www.sekaiichi.jp/live/live-sekaiichi/


【ARTIST HOME PAGE】

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