アナログフィッシュ「ナツフィッシュ!!! 2012」

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2012.08.10

アナログフィッシュ「ナツフィッシュ!!! 2012」

アナログフィッシュ
「ナツフィッシュ!!! 2012」
2012.7.16(Mon)新代田FEVER

なんか昭和50年代の人気スーパーカー・マンガ『サーキットの狼』の最終話でも見ているかのようなライヴだったな…。
“これでもか!””これでもか!!”、とお互いが抜きつ、抜かれつを繰り返し、最終的には同着でイン。しかも、その後、2台は高見へとどこまでも走っていく。
フロントの2人がアグレッシヴに歯車をかみ合わせ、それが合致した時、やはりアナログフィッシュは、とてつもない高見や景色を我々に見せてくれる。それを明示し、立証したかのようなライヴであった。
ここ最近の彼らは、秘めたエモさを、あえて焦燥感や前進気質でコーティングしたライヴを展開していたように映った。グングングイグイと、次を目指し、前に進もうと引っ張っていくボーカル&ベースの下岡晃と、それをオブラートに包むように、大きな包容力を持ち、常に足元を見ることや振り返ることも忘れない、ボーカル&ベースの佐々木健太郎。そして、それをしっかり、慌てず、構えず、常に的確な客観性を持ち、支える、ボランチのような斉藤州一郎のドラミング。それらが調和し、バランスを保ち、彼らの<良い>ライヴは形成されていると、勝手に納得し、甘受していた。
しかし、この日の彼らのライヴを観て、その印象は大きく変わった。お互いがキチンと足下を見
つつも、前を向き、上を向き、越えてやる的なアグレッシヴさが、三位一体的に伴ない、この上ないかみ合い方で歯車が回る瞬間こそ、彼らは、<良いライヴ>を超え、それこそ<凄いライヴ>を展開。ひいては、その先に待っている眺望へと我々を誘ってくれることを誇示してくれた。

去年は日比谷野外音楽堂でのワンマンライヴも控えていた為お休みだった、アナログフィッシュ夏の恒例のワンマンライヴ「ナツフィッシュ」が、今年は東京と大阪とで行われた。そして、その東京編は海の日を挟む3連休の最終日の7月16日。この新代田FEVERにて行われた。
この日のライヴのチケットは早々にソールドアウト。超満員の場内にて、みんなが彼らがステージに現れるのを持っている。

我がラッカはそんな彼らの今年の夏のニューグッズの数々を今年も制作させてもらった。ラッカ特製染めボディを使用した「Fun Boy Three Tシャツ」(シンプルな白ボディと、鮮やかな発色のチョコミントボディ)、Tシャツと同じ、3人の男の子のイラストのBIGな缶バッジ「Fun Boy Three BIG缶バッジ」、ストマックエイクのイラストタッチを活かした「ガーゼフェイスタオル」を制作。中でも、「Fun Boy Three Tシャツ」は、ライトイエローのボディ製も作られ、こちらは先日の「NO NUKES 2012」公演のみ限定販売された。

SEに乗り、メンバーがステージに登場し、スタンバイを始める。下岡による「こんばんわ アナログフィッシュです」の挨拶がライヴの開始を告げた、この日。それを呼び声に、ボーカル&ベースの佐々木健太郎と下岡のギターによるリフのリレーションの登場に会場が湧く。1曲目は「Sayonara 90’s」だ。いきなり会場に愛が溢れだす。優しい歌い方に、目に見えなかったものが徐々に愛しい人の形として、人々の頭の中に現れ出してくる。ドラムの斉藤州一郎のドラミングも手数が増えていき、佐々木のベースもグルーヴィー度を増していく。下岡のガリンガリンの音色のギターが楽曲の広がりと突進度を上げ、1曲目から広域観が会場に満ちていく。「♪トンネルの奥に光が見えるだろう たとえばLOVE♪」のフレーズに、みんなが自分にとっての、トンネルの向こうに待っている愛しいものを思い浮かべる。ノンストップでベースのイントロが会場の興奮度を引き上げていく。そこに3声によるコーラスが絡んで行き、2曲目の「サバンナ」を成立させていく。佐々木もこれまでになくアグレッシヴに、まるで連獅子ばりの首振りを見せ、プレイアクションを激しくさせていく。サバンナの向こう側へと想いを馳せる会場。斉藤のタムによるブレイヴ感溢れるドラミングに合わせ、会場もハンドクラップで連携を見せる。斉藤のドラムソロから新曲「My Way」に入ると、少ないギターコードカッティングに、それでいて細かい、平熱気味の歌が乗っていく。ジワジワフツフツとしたエモさを有した曲に、なんか彼らの今後の新曲の在り方の些事をも感じる。

続いては、佐々木がボーカルを取るナンバーが登場する。「Goodbye girlfriend」だ。太く通る佐々木の歌声に下岡が高く浮遊感のあるコーラスを乗せる。そして、トドメは下岡によるメローなギターソロ。アレンジがシンプルな分、歌やコーラスで楽曲にアクセントを付けていく。ギターカッティングとループ感のあるベースから「GOLDRUSH」に。ボーカルが再び下岡にスイッチする。ステージとフロア共同で、「♪ゴールドラッシュは行ってしまったよー♪」の合唱で楽曲にアライアンスを生んでいく。とは言え、”ゴールドラッシュはこれから!!”のような気持ちを秘めながら、みんなが歌っていたことだろう。そう、彼らと一緒にこの先も掘り続ければ、更に大きな金脈に出会える気がしているのは、きっと私だけではないはずだ。
斉藤がドラムを刻み続け、下岡のギターイントロに場内が湧く。「アナログフィッシュの夏はここから始まります。素敵な時間にしましょう。よろしく!!」と佐々木。
ここからは佐々木がリードボーカルをとるナンバーが連発される。まずは「LOW」だ。安定したリズム隊の上、下岡がギターを自由に泳ぎ回らせる。「♪胸焦がして~♪」のフレーズの連呼が力強く響く。いやー、それにしても佐々木の声はしっかりと力強く通る。ふわっとした下岡の歌声とは対照的に直線的で、いびつながらガツンとしている。続いても佐々木のボーカル曲。彼が会場を指さし、そこから「世界のエンドロール」へと入っていく。変拍子バリバリで、ブログレライクな同曲。良い意味でアナログフィッシュの変態性がようやくここで現れる。アウトロでの斉藤によるバスドラの連打が会場を震わせ、エンドロールに向け場内が走り出す。佐々木のダイナミックさを有した歌唱は続く。次の「夜も眠れない」も言わずもがな。会場を魅了していく。

ここでMC。今回めでたくソールドアウトになったことが下岡から報告される。「ソールドアウトや完売といった言葉に縁遠いバンドだったので、その響きが一際嬉しい」と、笑いながら佐々木が続ける。
そして、新曲「星に願いを」が始まる。君と僕とが同じことを信じていたり、祈っていたりしたものが同じならこのくだらない世の中も最高といった内容が佐々木により歌われる。始める前の「アルバム『荒野 / On the Wild Side』の向こう側を模索や目指した上で出来上がった曲」との、下岡による曲紹介も納得できるナンバーだ。その下岡が歌をファンタジーにファンタスティックに引き継ぐように「SIM CITY」が歌い出される。”夜の間に僕の街を作って行こう”との誘いに、会場中が自分のイメージするシティを築き上げていく。転調したり、テンポアップしたり、ゆったりとしていたり等々、誠に慌ただしい歌だ。
プリセットされたシンセのフレーズが現れ、それに会場から一際大きな歓声が上がる。次は「Hybrid」だ。下岡もギターを置き、ハンドマイクで歌う。ジェスチャー交じり、感情移入交じりに歌う姿もとても印象的だ。センチメンタルとやるせなさと諦念がファンタスティックさを伴い、楽曲と共に会場に広がっていく。まさに天使と悪魔のハイブリッド。下岡が達成感と征服感に満ちた表情と共に、誇らしげに左腕を高々と上げる。このような光景もなんとなく珍しいように映った。
続いて、「抱きしめて」が鳴らされる。理想と夢のような場所を探し歩き、目指し続けるといった秘めた決意が会場に満ちる。そして、その歌内容がまるで、彼らのこれまでとこれからを指し示しているように響く。もちろん会場の一人一人も、己にとってのそのような場所へと想いを馳せていく。

佐々木が今年の10月10日に行われる恒例のライブについて話し、いつも自分たちの音楽を感じ取ってくれていること、いつも自分たちの音楽で踊ってくれていること、自分たちの音楽と一緒にお酒を飲んでくれていることに感謝を述べ、「そんなみなさんにこの曲を捧げます!!」と「Fine」のサビ頭を佐々木が高らに歌い始める。曲の間に、「愛してるぜ」と佐々木が伝え、それに呼応するように会場も大合唱。ありたっけの気持ちをステージに返す。盛り上がりナンバーは続く。「その次のフェイズに」と下岡による短い曲紹介の後、その名のとおり、「PHASE」がプレイされる。同曲では、会場中からこぶしが上がり、場内外が一体となり一緒に歌う。「♪失う用意はある? それとも放っておく勇気はあるのかい♪」のリリックには、ノリ良くも、相変わらず、色々と考えさせられる。
お約束とも言える「Do You Still Need BGM?」の問いに、会場中から力強く「No Thank You!」のレスポンスが返る。続いての「BGM」では、会場一丸となり、「B.G.M」「No Thank you」の大レスポンス大会が。いや~、毎度この曲が終わるとスッキリする(笑)。

続く、佐々木がリードボーカルを取った「Na Na Na」では、お客さんも「ナナナ」を大合唱。ステージ、フロア交えて、一緒になって楽曲を完成させていく。この曲でのハイライトは、やはり斉藤による暴発ドラミングだろう。まさに”嵐を巻き起こさん!!”とばかりに叩き、打ち、蹴る。アクションでは負けじと、佐々木も大車輪ベースピッキングを見せ、これまでとは違ったダイナミズム感を我々に放ってくる。楽曲後半に向け、グイグイとボルテージと加速度を上げていく同曲。フロアを引き離しにかかるも、みんなしっかりついてくる。
「今日はどうもありがとう。曲順は新旧織り交ぜ色々と考えて、何をラストに持っていったらしっくりくるか?を悩んだんだけど、やはり、この曲で終わりたい」と下岡。本編のラストは、「TEXAS」だ。大らかでどっしり、それでいてダンサブルなビートの上、テキサスの遥か向こう側に陽が落ちながらも、どこかの国では陽が昇ることを思い直させ、思いを馳せさせるナンバーだ。前向きに広がっていく歌を最後にプレイしたかった気持ちが理解できるし、それこそが彼らの今のモードや現在思い、考え、そして向かおうとしている方向性なのだろう…なんて考えながら聴き浸っていた。

アンコールに3人が出てくる。ラッカ製のTシャツを3人共着てくれているではないか。「今日のライヴは自分たちの中でも最高の部類に入るワンマンだと思う」と下岡。これまでに何度もそれと同じ気持ちが、この日のライヴ中に、自分の中で起こったことだろう。その一言を聞き、”やっぱりな”とかなり嬉しくなる。 「では最近演っている新曲を。この場に似合うだろうか?」と下岡が続け、まだタイトル未定の新曲を始める。先ほどの新曲もそうだが、彼らのこれまでのこねくり回したかのようなアレンジとは違い、少ないコード数と展開をミニマル化させることで、永遠性やエターナル感を抱かせる、ゆっくりじわじわと景色を広げさせてくれる楽曲だ。「躍りたいように、躍らなきゃそんそん」と、続く「ダンスホール」が飛び出すと、2人のボーカルのリレーションと、斉藤の叩き出す躍動的なビートに合わせ、フロアが弾む。もちろんサビの「♪123で321♪」の部分は全体で大合唱。最後の一体感と盛り上がりを見せる。 正真正銘のラストは「アンセム」。ステージも白色に明るく発光。佐々木もお得意のステップを踏みながらベースを軽やかに弾き、歌っている。迷いながらもまっすぐ進んでいかなくちゃ、探さなくちゃ、進まなくてどうする? そんな力強い気持ちが会場に満ちる。まさにこれこそ、今の自分たちがアナログフィッシュに対して抱いている思い、そして、たぶんメンバー自身が強く思っていることではないだろうか? “これからのアナログフィッシュは強いゾ!!”。なんかそんな確信が足下からじわじわと込み上げてくる。
「来年、また夏に会おうぜ」と佐々木。それを笑いながら、下岡が「来年の夏になる前にまた会おうね」と、会場に向けて言い直す。そりゃそうだ(笑)。

ダブルアンコールの声が鳴りやまず、本来ならここで、あと1~2曲ほど飛び出していたのだろうが、この日の彼らは、再びステージで楽曲を鳴らすことはなかった。なんか、”この凝縮感とやり遂げた感をいい感じのまま残させてくれ”そして、”これを次に繋げさせてくれ”、そんな断腸の思いが伝わって来、会場もそれを察する。

なんだかこれまでで最もイキイキとし、今後のアナログフィッシュの向かいたい方向や、活動意義のようなものがありありとうかがえたライヴであった。ピチピチではなくイキイキ。なんかそんな表現が似合う一夜だった。彼らのエポックなライヴをこれまで何度か観て来、その都度、これがこれまでで最高のライヴだと帰路に思い返すことが多かったのだが、この日は、それらとはちょっと違っていた。これをどんな言葉で表わそうかと思案したが、やっぱり出てくるのは「アグレッシヴ」のワードのみ。今後の飛躍や躍進を多大に期待させる、そんな一丸となった攻めと勢いがヒシヒシと伝わってくるライヴだった表れなのだろう。
下岡はライヴ中のMCで、「今、新曲をばんばん作っていて、それをライヴで試していってる。来るライヴ、来るライヴで、その一部や楽曲の変化の過程。面白いものが見せられると思う。だから、どんな小さなイベントライヴでもいいから、是非今後も来て欲しい」と語った。そう、新曲ももちろんだが、バンドのモチベーションやアティテュード等、これからのアナログフィッシュは色々と我々をワクワクドキドキさせる手の内を用意している。 このライヴの帰路、次の彼らのフェイズのゲートが、大きく開き始めたのをこの目で見た気がした。

 
Report : 池田スカオ和宏


【SETLIST】

1. Sayonara 90’s
2.サバンナ
3. My way
4. Goodbye girlfriend
5. GOLDRUSH
6. LOW
7. 世界のエンドロール
8. 夜も眠れない
9. 星に願いを
10. SIM CITY
11. Hybrid
12. 抱きしめて
13. Fine
14. PHASE
15. BGM
16. Na Na Na
17. TEXAS
Encore
En-1. 新曲
En-2. ダンスホール
En-3. アンセム


【MEMBER】

Vo.&G. 下岡 晃
Vo.&B. 佐々木 健太郎
Dr. 斉藤州一郎


【PROFILE】

1999年、中学の同級生であった佐々木、下岡がデモテープ創りを開始。アナログフィッシュを名乗り始める。
2001年、都内でライブを開始。
2002年、斉藤合流。佐々木、下岡の二人のメインボーカルに斉藤のコーラスが加わる現在の重声大音量の形態に。
2003年6月、インディーズより1stアルバム『世界は幻』発売。7月ライヴサーキットツアーを敢行。
2004年6月、『世界は幻』『日曜日の夜みたいだ』を完全コンパイル+リマスタリングしたリイシューアルバム『アナログフィッシュ』をエピックレコードよりリリース。アルバム・レコ発イベント、FUJI ROCK FESTIVALをはじめ、各地のイベントに出演。9月、メジャー移籍後初音源『Hello Hello Hello』をリリース。その後、全国ツアーを敢行。
2007年までにコンスタントな全国ツアーや各フェスへの出演、4枚のアルバム、4枚のシングル、2枚のミニアルバムを発売。
2008年3月、ドラム斉藤州一郎が病気療養のため脱退。佐々木、下岡の2人体制で新アナログフィッシュスタート。7月、総勢7人のゲストドラマーを迎えアルバム「Fish My Life」をリリース。11月”Fish Your Vibe! TOUR”を敢行。
2009年4月、サポートドラムに菱谷昌弘、キーボードに木村ひさしを加え、4人体制でのニューアルバムの制作に取り掛かる。8月、オリジナルドラマー斉藤州一郎の復帰を電撃発表。10月、10周年記念祭り”10×10×10″を新木場スタジオコーストにて開催。 この日より斉藤がドラムに復帰。再び3ピースバンドとなる。
2010年2月、斉藤復帰後初のアルバムとなる『Life Goes On』を発表。4月、「Life Goes On tour」を敢行。10月、九段会館にて総勢10名on stage 「The Analogfish Orchestra」を敢行。12月、タワーレコード/ライブ会場限定ロング・シングル「nightriders」をリリース。
2011年5月、EP「失う用意はある?それともほうっておく勇気はあるのかい」リリース。7月、初のアナログ盤「TEXAS(やけのはらバージョン)」リリース。9月、アルバム『荒野/On the Wild Side』リリース。
2012年3月、ベスト盤とライブ盤の2CD『ESSENTIAL SOUNDS ON THE WILD SIDE. ~ THE BEST & HIBIYA YAON LIVE.』をリリース。


【NEW ITEM】

BEST ALBUM&BEST LIVE ALBUM
『ESSENTIAL SOUNDS ON THE WILD SIDE. ANALOGFISH:HIBIYA YAON LIVE & MORE.』
PECF-1039
¥3,000(Tax in)
NOW ON SALE
【felicity】

[DISC1]
1. 荒野
2. Light Bright
3. 確率の夜、可能性の朝(Feat.前野健太)
4. 曖昧なハートビート
5. 最後のfuture
6. PARADOX
7. ガールフレンド
8. アンセム
9. Living in the City
10. ナイトライダー2
11. Hello
12. のどかないなかのしずかなもぐら
13. バタフライ
14. Na Na Na
15. Hybrid

[DISC2]
1. TEXAS
2. SAVANNA
3. LOW
4. ロックンロール
5. TOWN
6. UNKNOWN
7. NO WAY
8. 平行
9. 戦争がおきた
10. 風の中さ
11. PHASE
12. Fine


【ARIST HOME PAGE】

http://www.analogfish.com

【LUCKON】を開く 【LUCK'A PLANET】を開く
aquarifa PLAYBUTTON 発売中” title= LOVEHUMAN

ENTRIES

LIVE REPORT」カテゴリの記事

ARCHIVES

TAGS

SEARCH