OverTheDogs「トイウ、モノガ、アルナラ スペシャル、ライブ」

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — admin @ 2012.08.02

OverTheDogs
「トイウ、モノガ、アルナラ スペシャル、ライブ」
2012.7.6(Fri) @ 赤坂BLITZ

ご存じの方も多いと思うが、この日、OverTheDogsのライヴが行なわれた赤坂ブリッツは、主にオールスタンディング形式としてライヴが行なわれることの多い大型の会場だ。
 この日の彼らは、座る、座らぬを抜きにし、そこにあえてイスを用意し、「観せる」ライヴを行なった。「見せる」でも「魅せる」でもなく、「観せる」。まさしくそんな言葉がぴったりなライヴであった。

 “えっ、OverTheDogsでイスありのライヴ!?”。この日、来れなかった人の多くは、その光景を想像し、訝しがったに違いない。そう思われた方は、たぶん、イス席でのライヴ=放たれるものを受け入れるライヴ。いわゆる能動よりも受動、そして感受が一方的に成される光景を思い浮かべたのだろう。加えて、ステージと客席という図式。そこに、どこか距離や隔たりのようなものが生まれる懸念を抱いていたにちがいない。しかし、この日の彼らは、会場を訪れた多くの人たちがライヴ後に受けた観後感通り、けっして一方的に感受を与えるライヴを展開しなかった。言わば、今回のスタイルや、この日ならではの演出や効果も手伝い、なお一層彼らの放つ歌物語の中に没頭。より入り込むことが出来、彼らの歌物語を自分の中に更に広げることが出来た。それを表わすように、私の周りでも、各歌の中に自分を佇ませながら観ていた方々ばかりであった。

我がラッカは今回、メンバー直筆イラストをボディから袖にかけ全面に配置し、多くの人の目を惹いていた「全面プリントTシャツ」。そして、この春に行われた「スペシャ列伝ツアー」にて初お目見え。人気の高いガチャガチャ内の、さまざまなモノにデコレーションできる、全26種のバラエティ豊富な通称「蒔き絵シール」を制作した。

 イス席ということもあるのだろう? 多少いつもに比べ、厳かな雰囲気が会場を覆っている。どことなく気品があるというか、上品というか、やはりなんかいつもとは違った空気が、開演前の場内には佇んでいた。そして、ステージには、張られた大きな白い幕が…。
フロアのイス席がほぼ埋まった頃、前説として彼らのマネージャーである坂本氏がステージ際に現れ、その流暢な語り口と時折交える和みあるトークで、会場の空気を和らげていく。そして、なんでもこの日のライヴが本日中に音源になり、この日、来場した人限定にダウンロード購入出来るというニュースが伝えられる。いわば、この日のライヴを早くもお持ち帰りが出来る、そんな新システムに会場が歓喜する。続けて、後ほど活躍(?)する「ブーブークッション」の説明が氏によってなされる。

 SEが流れ出し、そのファンタジーさにアヴァンギャルドな音が加わり出す頃、ステージを覆うスクリーンには、この日のイベントの開始を告げる映像が流れ出す。早くも、この日ならではの演出が会場を魅了していく。その映像をかき消すように、そこにドライヴ感のある1曲目の「スピカの事を」のイントロが重なっていく。白いスクリーンに裏側からプレイしているメンバーのシルエットが映し出され、会場がその影に向かい歓声を送る。シルエットが徐々に光を帯び、発光度を強めていく。一瞬スクリーンが真っ白く包まれ、Bメロに入ると、その幕が落ち、ステージ上のメンバーの姿が我々の目に飛び込んでくる。瞬間、さらに強まる歓声。ドライヴ感と疾走感溢れる曲調が、彼らの歌物語へと力強く、グイグイ引っ張っていく。イス席のはずだったのだが、既に全員が、”これえきれない!!”とばかりにオールスタンディング。楽曲への呼応を始める。ノンストップで「オ・ワールド・インスピレーション」に。ステージ後方にスクリーンが現れ、この日のために作られたスペシャルな映像が流れ出す。「『トイウ、モノガ、アルナラ』スペシャル・ライヴへようこそ!」と、ボーカルの恒吉豊。サポートドラムの比田井修(ex School Food Punishment)による4つ打ち裏16ハットのビートが高揚感と躍動感を生んでいく。佐藤ダイキのダウンピッキングによるベースが楽曲を走り出させ、ギターの樋口三四郎のギターが楽曲に色と幅を広げていく。星英二郎がその情景や心象風景を鍵盤で広げていくと、早くも恒吉が楽曲の世界観を、あのシアトリカルなボーカリゼーションにて、歌声以外でも伝え始める。

SEが曲間を繋ぎ、星が流麗なピアノをそこに乗せていく。恒吉もギターを持ち、そのまま「カフカ」にイン。8ビートの上、樋口がダイナミズムを加えていく。サビのストレートになるところでは、会場も腕を上げながら呼応。バックの映像では、歌に出てくる1~5のカウントアップ&ダウンに合わせ、フランス語での1~5がシンクロして表れ、画面を徐々に、そのワードで埋め尽くしていく。まさに歌と映像がベストマッチ。この日ならではのスペシャル感が会場に満ちていく。間に表れた場内を交えてのクラップが、一体感をステージと客席の間に生んでいく。こうなると、もうそこに妙な隔たりや距離など存在しない。いつものスタンディングライブ同様、彼らを非常に身近に、そして傍らに感じ出す。

ここでMC。恒吉が、「立ってノッて聴いてもらったり、観てもらったりするライヴも、もちろん自分も好きなのだが、中には、じっくり聴いて欲しい曲もある。なので、今回このようなスタイルにした」ことを告げ、お客さんも充分納得した表情にて頷きを繰り返す。
そして、「みぎてひだりて~!!」との恒吉からのシャウトから、「みぎてひだりて」にイン。ライヴが更に転がり出していく。映像内に表れた、オバ犬君もそのスクリーンの中、旅を始める。タムを多用したドラミングがブレイヴ感とグラウンド感を引き出し、心の中でステージとフロア、フロアとステージ同士の右手と左手が繋がれていく。
一拍置き、恒吉が「普遍ソング」を歌い始める。メンバーがギターに合わせ、全員で続きを歌い出す。「ライヴっぽいゾ~」と恒吉。樋口のギターカッティングが疾走感を生み、ダイキとサポートギターの伊原真一(ex : オトナモ―ド)が向かい合い、カッティングをユニゾンで披露する。気づけばバックのスクリーンには、同曲が英語詞に訳されて流れているではないか。とは言え、その英訳。「普遍ソング」が、そのまま「FUHEN SONG」となっていたところが、またいい。伊原がアコギに持ち変え、星と佐藤のイントロから「ラバーボーイ ラバーガール」に入る。星もコーラスを加え、2声が楽曲にふくよかさを加えていく。これから大きくなっていくであろう、愛や幸せを会場全体が想う。樋口のギターソロが短いながらも雄弁に語り始めると、後半では佐藤もちょっと悲しげなコーラスを重ね、楽曲に更なる奥深さを与える。

アルバムの『トイウ、モノガ、アルナラ』についてのやり取りのMCの後、「このアルバムの曲ではないけど…」と恒吉。前作アルバムから「さかさまミルク」をプレイする。ミッドテンポの同曲。今や愛しい人が不在の寂しさに想いを馳せ、あの日、あの時、確かに一緒にいた光景を思い返させる。後ろから照らされる白色のライトがメンバーをより一層神々しく照らす。もう一度、その今はいない愛しい人とどこかで会えそうな気持ちが会場を優しく包んでいく。ファンタジーでドリーミーな起承転結のある映像が流れる。恒吉も両手でマイクを包み込むように、次曲の「星者の行進」を歌い始める。「♪僕はどこにも行かないから 君もここにいるのがいいよ そしていつか朝が来るからここで一緒に歌おう♪」のフレーズに会場全体がキュンとさせられる。

ここで先述のブーブークッション(これもラッカが制作)がようやく活躍する。まずはピアニカに楽器を持ち替えた星にスポットライトが当たる。2拍子のフレーズを繰り返し吹いている中、「星君は顔がとんがっているから、横から見ると月みたいだ」と恒吉。ここでその音色に乗せて、ブーブークッションの登場タイミングについて説明を始める。そして、その為に今回はあえてイス席にしたと、冗談を加える。そのピアニカの伴奏に合わせ、佐藤もトライアングルを持ち出し、それらの合奏に乗せ、「頭が悪いだけ」を歌い始める。そして、曲終わりに、みんなが一斉に席に座り、敷いて置いたブーブークッションにて、会場全体にブーという音が響き渡る…と思いきや…。あれ? ちょっと失敗(笑)。気を取り直して、曲の後半から再度トライ。BOOOOO~。今回は大成功。妙な連帯感が場内に生まれる(笑)。そして、その雰囲気とは正反対。次曲は、しっとりと荘厳なピアノのイントロから「儚々な」に。ラストの感動的な大転調と、そこから大サビに入るところでは、会場全体もグッと楽曲に入り込む。

「ここからはライヴも後半戦だ!!」と、恒吉もギターを持ち、華々しいフレーズを放つ。まるで嵐の晩のような様相が場内を巻き込み、その凪から、「神様になれますように」へ。アグレッシヴさとダイナミックさが会場に呼込まれ、場内全体が更に走り出していく。一体感を生むように、グイグイと全体を引き寄せていくかのように、全てを惹き込み進んでいく同曲。会場中も一緒に、力の限り歌っている。ノンストップで「映幻の花」に入ると、ライヴは加速度を上げ、会場との一体感がますます強まっていく。恒吉の歌にも熱さとエモーショナルさが加味されていき、樋口もスリリングなカッティングで楽曲にアクセントをつけ、ドラマティックな展開を楽曲に施していく。そして、流麗なアレンジに変貌した「メテオ」では、「楽しい時間はちょっと寂しい。始まりがあれば、終わりがある。会えなくなるなら、さよならはいらない。どうしたらいいんだ?」と恒吉が会場に尋ねる。そして彼が、「星が人間になって、流れ星になって、また人間として生まれ変わる。そう想像したら、案外この世界も寂しい世界じゃないと思えるようになってきた」と続け、曲に入る。同曲では、ミラーボールも回り出し、「♪流れ星が生まれ変わって きっと人になるんだ そしたら 僕等また会えるね だから泣かなくていい♪」「♪人はいつか星になる 星はいつか人になる そうやって繰り返していれば ずっと 一緒だよね♪」と、と繰り返し歌い、場内が何度も何度もうんうん頷きながら、そのエターナル感に全身を預ける。間には佐藤がスラップベースを利かせ、ファンキーさを楽曲に持ち込んでいく。うーん、やはり何度聴いても珠玉の名曲だ。

恒吉による、和むMCを挟み、ここからはラストスパート。「愛」では、ステージライトに白色度が増し、楽曲の勢いと力強さに比例し、その光量もグングン上がっていく。ドライヴ感のあるサウンドの上、「♪愛というものがあるなら♪」と繰り返させるフレーズに、今回のニューアルバムの中でもこの曲が特別感を持っている意味を実感する。
星のピアノの音色に乗せ、本編ラストの「本当の未来は」が始まると、色々な未来の発明品を想い描き、同時に自分のずっとずっと先の姿や生活へとみんなが思いを馳せる。バックには幻想的なアニメーション映像が流れ、その中の主人公が歌物語が進むにつれ、いつの間にか大人になり、未来に居、歳をとっていくに連れ、色々なものや人と出会い、自分を豊かにしていく。そんな映像物語が展開され、それが楽曲とのベストマッチを見せる。恒吉もマイクコードをルーペ型に丸め、そこから、未来でも覗くような仕草を見せる。その先には、きっといつか遠い未来の自分が佇んでいたにちがいない。ホント、明るい未来へと思いを馳せさせてくれるナンバーだ。

ここからはアンコール。まずは比田井と伊原だけでセッションを始める。そして、それに乗り、メンバーが再びステージに登場。スタンバイOKと共に「うた」が始まる。弾んだ感じを会場に呼び込んだ同曲。佐藤もグルーヴィーなベースで応戦し、会場全体が笑顔と嬉しそうな表情に。
ここでMC。11/1に渋谷クラブクアトロにて企画を演ることが告知される。また、この日のライヴを振り返り、「今後もこういったスタイルのライヴを演りたい」と続け、10月には初のシングル、そして11月にはニューアルバムの発売を予定していることを伝える。
アンコール2曲目は、その11月発売のシングル「マインストール」が初披露された。サビ頭から始まる楽曲で、みんなが一緒に歌える力強い楽曲だ。「将来は君の思い通りだよ。最高の空想と信じればいい。きっと未来も変えていける」、そんなことが歌われていた。これまた、彼らの真骨頂と言える、未来について想いを馳せさせ、その永遠性を感じさせてくれるナンバーだ。
ここでライヴは全て終了。しかし、まだアンコールを促する声は止まず…。ついには恒吉が一人ステージに戻り、ライヴの感想を語る。楽しかったライヴならではの光景だ。

以前、メンバーがうちの会社のカフェに遊びに来てくれた際に手渡された、この日のライヴを知らせる告知フライヤーには、「僕たちがやりたかったスタイルのライヴを見せることができるし、自分たちにとってのライヴという一つの答えがここにある」的なことが書いてあった。OverTheDogsの思うライヴの答えをしかと見せて、いや、観せてもらった、この日。「観る」というのは、一点を凝視しながらも、どこか全体を俯瞰交じりで見る行為のこと。時に彼らの放つ歌物語の中に自分を佇ませたり、旅をさせたり、想いを馳せたり…。いつも以上に、各曲の中で自分が生きていた感を、この日のライヴでは強く受けた。たぶん、いやきっと、この感じはオールスタンディングでは得られなかっただろう。この日、この会場で、このスタイルと演出ならではでしか得られなかった充足感がまだ残る中、僕も多く人と共に会場を後にし、駅へと向かった。

 
Report : 池田スカオ和宏


【SETLIST】

1. スピカの事を
2. オ・ワールド・インスピレーション
3. カフカ
4. みぎてひだりて
5. 普遍ソング
6. ラバーボーイ ラバーガール
7. さかさまミルク
8. 星者の行進
9. 頭が悪いだけ
10. 儚々な
11. 神様になれますように
12. 映幻の花
13. メテオ
14. 愛
15. 本当の未来は
Encore
En-1.うた
En-2.マインストール


【MEMBER】

Vo.&G. 恒吉 豊
G.&Cho. 樋口三四郎
B.&Cho. 佐藤ダイキ
Key.&Cho. 星 英二郎


【PROFILE】

ゼロ年代の純文学と共振する独特の歌詞世界とVo. & Gt.恒吉のハイトーンボイスで熱い視線を集めている4人組ロックバンド、オバ犬(ケン)こと「OverTheDogs」。
2002年、結成。
2009年10月、新宿Marble 初ワンマン (SOLD OUT)。
2010年6月、インディーズ1stアルバム『A STAR LIGHT IN MY LIFE』発表&渋谷EGG MANワンマン(SOLD OUT)。
2011年4月3日渋谷WWWワンマン(SOLD OUT)。『ROCKS TOKYO 2011』『SUMMER SONIC 2011』にも出演。さらに2011年10月にはJUN SKY WALKER(S)の寺岡呼人の呼びかけにより『Golden Circle Vol.16 “ジュンスカ×ユニコーン”』@日本武道館に出演する。10月26日には、メジャーデビューアルバム「トケメグル」を、亀田誠治(東京事変)、佐久間正英、いしわたり淳治(ex-SUPERCAR)らをプロデューサーに迎え発表。11月11日渋谷CLUB QUATTROワンマン公演を大成功に収め、同年末には、COUNTDOWN JAPAN、 VINTAGE ROCK std. COUNTDOWN “GT2012″に出演した。
2012年1月にはiTunes Storeが”今年ブレイクが期待できる新人アーティスト10組”を選出する特別企画「Japan Sound of 2012」の10組に選ばれ、2月からスペースシャワーTV主催「スペシャ列伝ツアー2012」と題した、全国8公演のイベントに参加!!同年3月14日には、江口亮をプロデューサーに迎えて制作されたミニアルバム『トイウ、モノガ、アルナラ』を発表。そのレコ発ワンマンツアーを東名阪で敢行。大成功に収める。


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2nd MINI ALBUM
「トイウ、モノガ、アルナラ」
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¥1,500(tax in)
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【DREAMUSIC】

1. 愛
2. オ・ワールド・インスピレーション
3. 儚々な
4. 映幻の花
5. スピカのことを
6. 星者の行進


【LIVE INFORMATION】

http://overthedogs.com/live/1208.html#12649


【ARTIST HOMEPAGE】

http://overthedogs.com/index.html

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