aquarifa 「scene」release tour ~君は瞳の中になにを映しますか?~

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2012.07.18

aquarifa「scene」release tour ~君は瞳の中になにを映しますか?~

aquarifa
「scene」release tour ~君は瞳の中になにを映しますか?~
2012.6.26(Fri) @下北沢シェルター

そのライブ中、僕は何度か、最初にこのaquarifa(アカリファ)の音源を聴いた時のことを思い返していた。彼らを初めて聴いた時の印象は、ズバリ、”「い・ろ・は・す みかん」のようなバンドだな”、というものであった。「い・ろ・は・すみかん」とは、もちろん、あの天然水「い・ろ・は・す」のみかん味のこと。あれを最初に口にした、あの時の信じられなさは今でも鮮明に覚えている。見た目、完全に透明で、どこから見ても水なのに、それを飲んだ際に、その概念を打ち砕く、シッカリとしていたみかんの味の、その驚愕具合に、何度も”嘘だろ!”嘘だろ!!”と頭の中で唱えながら、ごくごく飲んでは、その透明なままの液体を何度も眺め直していた。
頭で思ってる一見融合が想像しにくいもの。それが合致し、いつの間にかスタンダードになり、いつしか当たり前へと変わっていくことがある。頭で思い描くだけなら簡単だ。要はその理想をどう具現化させていくかにある。そう言った意味では、このaquarifaは、その理想を具現化させたグループと言える。もちろん、ここに至るまでに繰り返された試行錯誤やトライ&エラーを経ての成立だろうが。

aquarifaは、物語性と情景感、叙情と激情を多分に有した、音響/ポストロック/インストロックを通過したサウンドが特徴の4ピース・バンド。その上に乗るキュートでスイート、それでいて多少の諦念と、はかなげさや神秘性を宿した女性ボーカルの絶妙なマッチが独創さを感じさせるバンドだ。目を覆いたくなり、息すら止めたくなる、このクルーエルな世界の中、一条の光を目指し、それを追いかけるように。また、ちょっとした蜘蛛の糸のような素晴らしさの一片を見つけ、それをいちるに祈るように信じるような音楽性や歌世界は、聴く者に、”まんざらこの世界も捨てたもんではないよ”とゆっくり諭してくれる。その上、彼らの音楽性はそのポピュラリティーのポテンシャル、聴きやすさや親しみやすさも含め、しっかりPOPSとして昇華、成立させている。しかも、かなりの高度なテクスチャーを用いて。

この日は、4月に発売された彼らの初の全国流通となった1stミニアルバム『scene』のレコード発売記念ツアーのファイナル。合間に数度かの東京でのライヴと、仙台、京都、大阪、名古屋、そして再び大阪と、全国をその作品と共に周ってきた。

今回、我がラッカは、彼ら初となるグッズとして、Tシャツ2種と蓄光の缶バッヂを制作した。元々、今回『scene』のCDジャケットは、LUCKON GRAPHICSが手掛けていた。そのこともあり、デザインは全面的にLUCKONチームに委ねられた。また、Tシャツに関しては、バンド初ということもあり、自然な形でバンド名をフロント面にあしらってみた。全面に配されているフルムーンは、彼らの歌詞の中に何度か共通して月という言葉が出てきていたことによる。そして、今回制作の蓄光バッヂは、彼らのバンドロゴの中に三日月が描かれているところからひもづいており、マーチャンダイザーのカトーは、そこから月光を連想。蓄光の缶バッヂ制作へのアイデアへと結びつけた。
「aquarifaのグッズは、ライヴ会場及びLUCK’A PLANETにて絶賛販売中です!! ⇒ LUCK’A PLANET

アヴァンギャルドなピアノのSEが緊張感をグッと引き上げる。そんな中、メンバー4人がステージに登場。各々自分たちのフォーメーションに着くと、各楽器を手にデモンストレーションを始める。ひとところ会場へ、その楽器類による威嚇が終わると、ドラムの佐藤智洋を中心に、メンバー4人が円陣を組み、飛び出す体制を整える。振り向きざま、まずは轟音の壁を作り、その中から、「アカリファ始めます」とボーカル&ギターの岩田真知が一言。そのノイズの壁から、この日1曲目の「in vain」が輪郭を現し始める。彼らのバックボーンや柔軟性、多くの人にツカミとして放つには最適なスタートだ。甘くキュートさを擁した岩田のボーカル、佐藤の4つ打ち16の裏ハットのダンサブルさが、楽曲に躍動感を加えていく。サビに入ると倍テンになるシストアップ感と駆けだし感、いきなり開けたかのようなストレートさが気持ち良い。会場も合わせて心を走らせていく。ノンストップで「バーミリオンキッチン」に。ギターの松川真也と、ベースの吉田拓人、そして岩田のフロント3人のアクションも激しくなっていく。吉田のベースが楽曲をグイグイと引き上げ、松川がコーラスを加え、楽曲に更なるふくよかさをもたらせていく。激しさと甘さ、そしてそこはかとないポップさや躍動感をキチンとバランスよく持っている、彼らならではの面目躍如な曲だ。頭2曲で既に彼らの魅力が炸裂。作品だけしか知らず、今回が初見のお客さんのハートもしっかりとグリップさせていく。

3曲目は「regret」。佐藤の生み出す、マスロックライクなドラミングからなるビートと、より深くリバーブのかかった岩田のボーカルが絶妙の相性を見せる。加え、松川のギターは楽曲の上を泳ぐようにパラレルにギターフレーズを広げていく。吉田の単身プレイのブレイクの後、佐藤と松川が徐々に楽曲に色をつけていく。そこからカタストロフィーギター部に突入。このツンデレ感がたまらない。ここにくると逆に岩田のキュートな歌声がクールに響く。彼女のこの歌の表情の変化は不思議だ。とは言え、岩田の歌声の聴こえ方の変化は、何もこの曲に限ったものではない。いわば自然に歌っているからこそ、周りの温度や雰囲気で色々な響き方をする。それは、そこまでスクリームさせずとも激的さを、そこまで感情移入たっぷりにしっとりと歌わずとも儚さを、周りのサウンドに負けじと力を込めて放たずとも自然とその辺りが出ており、それがきちんと彼らの音楽をポップスせしめているとも言える。確かに、このサウンドの上では、幾ら激的にシャウトしたりスクリームしたりしても、同色化するだけ。そこからポップス性などは、打ち出せやしない。しかし、逆もまた然り、彼女のその声質だからこそ、彼らのサウンドは難しいことをやろうが、激しい曲をやろうが、キチンとポップスとして成立し、聴きやすさまでもを手に入れていると言える。

ここで一息。佐藤がMCを担当する。まずはメンバーを特徴を踏まえて紹介。それが、それぞれをかなり言い得ていて笑えた。

ライヴに戻ると、「farewell」のゆったりとしたアルペジオがまどろみのようにゆっくりと景色を広げていく。佐藤によるフィルにアクセントをつけたドラミングが、ゆっくりと物語を広げていく。曲が進むに連れて、徐々に会場を広く、そして眺めの良い景色へと誘う。幻想的な世界へと惹き込んでいきながらも、後半に向かうに連れ激しくなっていく演奏とプレイアクションにお客さんも自身の感情を重ね合わせていく。今気がついたのだが、ボーカルの岩田はお客さんの顔を見てあまり歌っていない。いや、正確には、見てはいる、しかしその歌で呼びかけ、語りかけ、伝える先には、その人自身を越えた、その向こうにある、その人の意識そのものが在るように映った。
そして、短い曲の紹介の後、ほぼノンストップで「closet」に。今まで以上に広がり、多く人が彼らに興味を持つきっかけになったであろう同曲が始まると、そのドラマティックなイントロ段階から会場が前傾姿勢に変わる。一際感情を込めるようにマイクスタンドを掴み歌う岩田。このクルーエルワールドを俯瞰しているかのような歌内容に皆が自分の心象光景を寄り添わせていく。間では、あえてビートを落し、裏打ちのダウンビートが一瞬の涼風を吹き込む。その心地良さに浸っているのもつかの間、その後はノイズの壁へと会場をご案内。その強襲に、みんな嬉しそうに惹き込まれていく。サビの部分の上昇さと躍動感、激しさとポップさの融合させっぷりがたまらない。吉田がベースのヘッドをライヴハウスの天井に押し当て、アグレッシヴさを強調する。怒涛のアウトロの中からリバース音だけが残り、それらが会場に静けさを取り戻していく。

ここでMC。岩田がしゃべる。この日、来てくれたことへの感謝と、昨晩、取り置きが6枚しかなく今日のフロアがガラガラだった夢を見たことに言及。みんなが来てくれてほっとしたことに話を落ち着かせる。
本編の最後は「シロツメクサ」。静かに甘さを擁したキュートな歌声で、物語に優しく誘いこむように歌い出す。バックの面々も、淡い絵の具でゆっくりと色を付けていくように4人で「シロツメクサ」という絵を完成させていく。そこから徐々に激しさとカタルシス面へと移っていく同曲。激しいのだが、不思議な安らぎと帰着感が身体を包んでいく。轟音の中、まるで滝の裏側にいるような妙な静けさが全身を覆う。ふっと我々をクルーエルワールドから、安らげる場所へと呼び戻し、4人はステージを降りる。

アンコール。
ドラムの佐藤がラッカが作成したニューグッズの宣伝をしてくれる。ちょっといい加減なところもあったけど(笑)。
アンコールは1曲。CDには未収録の「switch」がプレイされる。激しいイントロが会場の熱を一気に上げる。ドラムとベースのリズム隊を主体に、歌とギターが抜き差しを加え、ドラマツルギーを完成させていく。手数の多いドラミングに、中盤では緊張感と高揚感で会場の温度をグッと引き上げ、ノイズの洪水と共に各人のプレイアクションも激しくなっていく。ラストに向かって、会場と共にまっすぐ激走していくかのようなプレイを見せる4人。達成感と征服感を残し、彼らはステージを去った。
ステージを彼らが去った後も、最後に彼らが楽曲で発光していた残像は、しばらく残ったままだった。そして、残された僕らは、その発光した残像に向け、惜しみない拍手を贈った。

 
Report : 池田スカオ和宏


【SET LIST】

1. in vain
2. バーミリオンキッチン
3. regret
4. farewell
5. closet
6. シロツメクサ
Encore
En-1. switch


【MEMBER】

Vo.&G. 岩田真知
G. 松川真也
B. 吉田拓人
Dr. 佐藤智洋


【PROFILE】

aquarifa-アカリファ-
エモーショナルで広大な楽曲、圧倒的なライブパフォーマンスが話題を呼んでいる、女性ボーカルを擁した4人組ロックバンド。
早くからEMI&残響レコード主催イベントへの出演、SPICEレコーズやwild gun crazyのコンピへの参加を経験。
過去に4枚の自主製作盤をリリースし、いずれもディスクユニオンのチャートで上位にランクイン。
その後もロングセールスを記録。耳の早いリスナーから注目を集める。
タワーレコード初のアーティスト発掘オーディション「Knockin’on Tower’s Door」にて、応募総数1000組超の中からの10組に選ばれ二次審査へ進む。二次審査にて全国タワーレコードで期間限定販売された2曲入りCDが、オリコンインディーズシングルウィークリーチャート11位にランクイン。
2012年4月待望の1stミニアルバム『scene』を全国リリース。5月からは同作品と共に全国ツアーを周り、各所で好反応を受ける。


【NEW ITEM】

FIRST MINI ALBUM
「scene」
KUP-009
¥1500(Tax in)

1. closet
2. 2:00 A.M.
3. in vain
4. film
5. regret
6. farewell
7. シロツメクサ


【LIVE INFORMATION】

http://aquarifa.net/pc/live


【ARTIST HOMEPAGE】

http://aquarifa.net/pc/index.html


【aquarifaのグッズは】

ライヴ会場及びLUCK’A PLANETにて絶賛販売中です!! ⇒ LUCK’A PLANET

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