andymori “100分間のファンタジー 遊ぼうぜ 踊ろうぜ” ツアー SEMIFINAL
andymori
“100分間のファンタジー 遊ぼうぜ 踊ろうぜ” ツアー SEMIFINAL
2012.4.14(Sat)@Zepp Tokyo
「光」と聞き、ふっと思い出す光景がある。それはナイターの野球場に足を踏み入れた際の自分の姿。
暗いゲートを抜け、スタンドに向かう階段を上がる。入口に辿りつき、そこからスタンド内へと足を踏み入れた瞬間のことだ。パーッと目の前に野球場内が広がると同時に、まばゆい光が頭から全身を包む。そして、思い出したかのように、少し遅れて襲ってくる歓声。それらがもたらす、”なんか、やって来たゾ‼”的な解放感と、あの光に包まれた瞬間の恍惚感は、例えようのない多幸感を、常に自分にもたらしてくれる。
しかしそれも、その踏み込んだ一瞬だけ。案外光の中に入ってしまうと、そのことをスーッと忘れてしまい、すっかりその実感を想い出せなくなっている。遠くにある時はあんなに憧れていたくせに、実際手にしてしまうと、案外興味がなくなってしまっている。なんとも自分勝手な話だ(笑)。
そう考えると、これまでに多くの人が、その「光」を、明るさはもちろん、目標や着地点、希望や憧れの対象としてきたのも分かる。そして、これまで古今東西さまざまな表現者が、この「光」を独自の感性や表現方法にて伝え、聴く者、観る者に感じさせてきた。
その『光』をニューアルバムのタイトルに冠したandymori。そして、この日の彼らは、ライティングの演出も含め、各曲の物語を色々な光で表してくれた。それははっきりとした光であったり、ぼんやりとした光であったり、眩しかったり、淡かったりと、様々な様相を見せていた。そこに我々は、時に目を見開いたり、凝らしたり、目を細めたり、遠い目をしたりをしながら、おおよそ掴めるはずもないその各々を、その自分の目や耳で捉えようとしていた。
そう、今回の彼らのツアーは、5月2日発売ニューアルバム『光』が、発表以前に全曲丸々披露された。しかも、曲順通りに。そして、それを事前に聞いていた私は、その各曲が会場でどのように鳴り、我々に響き、そして、それをどう捉えるかを楽しみに、雨降りそぼる中、会場のZEPP TOKYOに向かった。
年末に限定発売し、即完売した花火染めのパーカーから彼らとの付き合いが始まった我がラッカ。今回のツアーでは、ニューTシャツを制作させてもらった。真新しいものよりは、あえてユーズドっぽい雰囲気を持ったボディを提案した今回のツアーTシャツ。各会場、非常に好評だったようで、我々が訪れた4月14日のライヴでも、超満員の会場にて、多くの人たちがこのTシャツを着ていてくれていた。
暗転した場内。SEが流れる中、ステージが青いライトで浮かび上がる。そこにandymoriの3人が現れると、割れんばかりの歓声が渦を巻く。各々がフォーメーションにつき、デモンストレーション的にそれぞれの音を鳴らす。そして、SEをその音でかき消すように、藤原の歪んだ存在感のあるベースラインが会場に放たれる。1曲目は、その彼をアピールするかのような「ベースマン」だ。曲が進むに連れて、ステージバックから当てられる白色ライト。その光量が上がっていき、今回のアルバムジャケットにも起用されているandymoriのロゴがバックドロップに現れる。楽曲を引っ張る藤原の鈍い重さを有したベース。そして、その上をジャングリー気味に、小山田のギターが軽快に乗り、それらをバックに、少々上ずった感じの独特の歌声で歌が放たれる。「愛してるなんて まさか言わないぜ 風と共に行くだけさ」のフレーズが、”さぁ、ここから100分。風と共に俺たちと行こうぜ!!”と会場を誘う。カウパンクのノリを有した前のめりな岡山のドラミングが会場にライドオンを誘う。続いての「光」では、タイトル通り、後ろから照らされる白色の大きなライトが彼らの姿を神々しく映す。それに歩調を合わせるように、サウンドに勢いが、歌声にはエモ―ショナルさが加わっていく。
「いきなりですが、ここでゲストです」との小山田のイントロデュースにより、今回のニューアルバムで2曲トランペットで参加した、ファンファン(くるり)がステージに呼び込まれる。曲に入る前に、唐突に小山田が彼女に、「レコーディングはどうだったか?」を質問。上手く返すと、次の矛先は藤原に。一人焼き肉に挑戦したことの感想を独白させられる(笑)。そして、フロアタムを重く交えた「インナージャーニー」にインすると、会場に雄大なる夕陽感が持ち込まれていく。サビでリフレインされる「旅に出よう」のフレーズに、ファンファンの郷愁性溢れるトランペットが絡んでいく。郷愁性のある曲は続く。次はファンファンのシンセによるイントロから入った「君はダイヤモンドの輝き」だ。藤原のコーラスも楽曲にふくよかさを寄与していく。次の「3分間」からは、ガラリと雰囲気が変わる。藤原のベースが楽曲にウネリを加え、岡山によるブリティッシュビート気味のドラミングが、ロックンロールによる3分間のパーティへと誘う。「こっちに来いよ、遊ぼうぜ」と歌にて誘う彼ら。小山田のアクションもよりアクティブになり、歌の熱量も増していく。前曲のアウトロのなし崩し感から、そのまま岡山が4つ打ちでつなぐ。ファンファンによるブレイブなトランペットのフレーズと、カウパンクのりのビートが場内に躍動感を生む。次の「クラブナイト」では、夜明けと真夜中が頭の中で交差する。「どこまでもいこうよ」と誘う同曲。「君の好きなレコードをかけるよ」のフレーズに多くの人が、その刹那に胸をときめかせていた。
ここでファンファンがステージを去り、ちょっと場面転換。椅子が用意され、小山田がブルースハープ、藤原も椅子に座り、岡山がアコギで弾き語りを始める。そのフォーメーションに驚く中、当たり前のように「ひまわり」がプレイされていく。優しく誘うように歌われる同曲に、多くの人がステージに心を寄り沿わせていく。続く「ジー二ー」は、重くミッドテンポなナンバー。彼ら流のミディアムバラードの上、紡がれるような歌世界に、みんなが各々の想いを乗せていく。
岡山がジュークボックスロックンロールのビートを叩き出す。続く「愛してやまない音楽を」では、その岡山を加えた3声のコーラスが会場にシンガロング性を生み出して行く。そして、次の「シンガー」に入ると、3人のハーモニーがゆったりと雄大に会場いっぱいに広がっていく。それに合わせ、心地よさそうに左右に身体を揺らせる場内。「君の悲しみを僕が歌うから」のフレーズに加え、ラストの小山田のハミングに合わせ、みんなが心の中で一緒に歌う。そして、「彼女」が始まると、会場の各所から無数のシャボン玉たちが放射され、幻想的でファンタジーな世界が作り出される。アウトロでは、岡山も壮大なドラムソロを魅せてくれた。
ここまでがニューアルバム『光』の収録全曲。これらが終わると同時に、バックドロップも一緒に去っていく。
ここからは、彼らの代表曲たちが連発される。とは言え、まずはアコースティックスタイルから。
「16」では、アコギ、カホン、ベースと3人が座ってプレイ。1番は小山田の弾き語り、そこに2番からは、岡山のカホンと、藤原のベースが入り、楽曲に躍動感が加わっていく。岡山のドラムは、よく聴くと16ビートなのだが、それを一切感じさせないストレートさを有している。続く「Sunrise&Sunset」では、ジャングリーに鳴らされるアコギと強目のカホン。それに合わせて場内からクラップが起こる。「嘘つきは死なない 争いは止まない 欲しいものは尽きない 悲しみは消えない」のラストのフレーズも印象的な同曲に、多くの人が心を同化させる。続いて、「このツアー中に携帯を落したという寛(藤原)に捧げる曲です」とは小山田。「投げKISSをあげるよ」が始まると会場も二ヤリ。会場中が曲に合わせ、藤原や自身に、「大丈夫ですよ 心配ないですよ」と伝える。そして、「ケータイデンワを落っことして サイフを落っことしたって 大丈夫ですよ 問題ないですよ」のフレーズが現れると、みんなが一斉に藤原へと視線を移す(笑)。
バンドフォーメーションに戻る3人。小山田のジャングリーなギターカッティングに会場から歓声が上がる。「革命」では、一際会場も盛り上がる。一体感を持った呼応がすさまじかった同曲。「心に風を吹かせるんだ」の箇所では、みんなが”心に自身の風を起こすぞ!!”と誓ったにちがいない。更に速いナンバー「FOLLOW ME」に入ると、会場もますます勢いづいてくる。小山田のギターも、”ハリケーンを起こさん!!”とばかりに狂気的な性急ギターカッティングを魅せ、その雄姿に更に会場の火に油が注がれていく。ロッカバラード的なイントロを挟み「everything is my guitar」に突入すると、グル―ヴィーな藤原のベースが楽曲をグイグイ引っ張っていく。岡山の打つスネアに、シャープさとタイトさが加わり、歌に芳醇な情報量と熱が増してくる。
「ザワザワしてもらった方がいいんですよね」とは、チューニング中に、シーンとなり、次の彼らの放つ歌を身構えて待つ会場に向けての小山田の言葉。超ショートチューンの「ナツメグ」を挟み、従来の「所沢の空の下 グロリアス軽トラックでいこうぜ 田舎道」の歌詞を、「東京の空の下 グロリアス軽トラックでいこうぜ」と、一部変えて歌われた「グロリアス軽トラ」、ステージ前方の密度を更にグイッと上げた「クレイジークレーマー」、続く「スーパーマンになりたい」では、「スーパーマンになりたい」「スーパースターになりたい」と陰を踏みつつ、「スーパーマン スーパースター」の部分に於いては会場を交えての大呼応へと持ち込む。そして、「都会を走る猫」では、4ビートのシャッフルリズムがフロアを今までとは違った手法で踊らせる。「都会を走る猫に名前はいらない 校庭を走る友達に裏切られるように」のフレーズが全オーディエンスの胸に突き刺さる。
3人が再び岡山を中心に見合って「ハッピーエンド」が始まる。同曲では会場も左右に揺れながら大合唱。文字通り全体がハッピーエンドに包まれる。ギターと歌い出しから始まる「andyとrock」が放たれると、歓声が一際強く渦巻く。まるで自分たちのことを歌っているかのような同曲。途中からのテンポアップにもしっかり会場全体がついていく。続いて、観客全員をシビれさせた「ユートピア」、藤原のベースプレイにも更なるアクションが加わる。続く「ボディーランゲージ」では、小山田の歌にも、良い意味でのやりっ放し感と、やるせなさが足されていく。
「楽しい~!!」と会場から声が上がり、「ありがとう」と答える小山田。続いて、岡山の着ているTシャツについて言及。それに真摯に応える岡山。時間は短いながらも、会場に和やかな雰囲気が持ち込まれる。
彼らのライヴは不思議だ。どこかカントリーやウェスタン、カウパンク等の牧歌的なところを有しながらも、ちょっとした性急感や緊張を擁していたりする。それを各曲2~3分の間、息苦しさを全く感じさせない緊張感を良い意味で持続し、立て続けに放射していく。ほのぼのとした歌い方だけど、どれもキチンとしたテンションを保ち、パンキッシュとは違ったパンク性を感じさせる。そう、彼らの音楽は、他にはないユニークさを持っている。今さら説明も要らないだろうけど。
話を本編に戻そう。「兄弟」では、やはりあの3月11日とそれ以降の自分たちの身の在り方を振り返えらせる。雄大にして、ある種のメッセージ性を秘めた同曲に会場も聴き浸る。2番のコーラスでは3声のコーラスも加わり、楽曲に力が漲っていく。続いて、早くも新曲が披露される。今回の作品に起用されたレコーディングスタジオからその名前が拝借された「サンシャイン」では、ギターにもよりヒステリック度が増し、性急さも増していく。「青春と呼ぶ日がきた時は この歌を思い出してくれ。同じポイントで笑えた時 うまくやれてる気分になったよ」、なんてまさにバンドならではの共有共同体のことではないか。ここでアイコンタクトを見せる3人。その光景と一丸性に、とうの昔に過ぎ去ってしまった「青春」なんて言葉を思い出した。なんて書きつつも、この曲はアウトロが凄かった。岡山のまるでハリケーンのような叩きっぷりには、ほれぼれさせられた。
ライヴは更にスピードを上げていく。一瞬のベースソロを聴き漏らさず、大嬌声が藤原に向けられた、「すごい速さ」、ストロボによるライティングも刺激的であった「Peace」とライヴはテンポ良く進んでいく。
ここで再び、トランペットのファンファンがステージに呼び込まれる。タイトでどっしりとしたビートの上、ギターがジャングリーに鳴り、ファンファンのトランペットが哀愁感たっぷりなフレーズを泳がせる。サビメロをトランペットに預け、会場からは大合唱が起る。ゆったりとぐわっと夕陽が眼前に広がっていく。ラスト近辺のドラム落ちになるところでは、更に会場も大合唱。アウトロでは岡山がテンポを上げ、疾走。ウワモノ部隊はテンポをキープしたままという、そのアンバランスさが会場を魅了する。最後には大団円とクライマックスで会場が支配されていく。
アンコールは1曲。新曲の「宇宙の果ては この目の前に」がプレイされた。”人は死んだらどうなるのか?””宇宙の果てはどうなっているのか?”に想いを馳せさせながら、大きな生命のサイクルやリーンカーネーションが会場を覆っていく。アウトロのサイケ感が、会場をここではないどこかへと誘う。
ステージから去った3人。星空のように散りばめられた無数のライトが、場内に星空を描く。それは、「また会おうぜ!!」と言っているかのように、各電球が精いっぱいの「光」を灯していた。
Report : 池田スカオ和宏
【SET LIST】
1.ベースマン
2.光
3.インナージャーニー
4.君はダイヤモンドの輝き
5.3分間
6.クラブナイト
7.ひまわり
8.ジーニー
9.愛してやまない音楽を
10.シンガー
11.彼女
12.16
13.Sunrise&Sunset
14.投げKISSをあげるよ
15.革命
16.FOLLOW ME
17.everything is my guitar
18.ナツメグ
19.グロリアス軽トラ
20.クレイジークレーマー
21.スーパーマンになりたい
22.都会を走る猫
23.ハッピーエンド
24.andyとrock
25.ユートピア
26.ボディーランゲージ
27.サンセットクルージング
28.兄弟
29.サンシャイン
30.ベンガルトラとウィスキー
31.すごい速さ
32.Peace
33.1984
Encore
En-1.宇宙の果ては この目の前に
【MEMBER】
【PROFILE】
2007年秋に結成。都内のライブハウスを拠点に活動を開始する。
2008年10月、1st EP 「アンディとロックとベンガルトラとウィスキー」をリリース。
2009年2月、1st album『andymori』をリリース。様々な大型フェスティバルにも出演しつつ、夏には初のワンマンライブ「シモキタサワディーモリ」を下北沢basement barにて開催。10月、恵比寿LIQUID ROOMにてワンマンライブ「SAWASDEECLAP YOUR HANDS」を開催。
2010年2月、2nd album『ファンファーレと熱狂』をリリース。初の全国ワンマンツアーを敢行。追加公演も含めて全会場SOLD OUT!夏には11本のフェス、イベントに参加し、秋には東名阪ワンマンツアー’ぼくたちアンディモリ’を開催。ツアー最終日の初の日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブはSOLD OUT!2010年11月、ドラムの後藤大樹脱退。12月、新ドラマー’岡山健二’が正式加入。5月、全国10都市のワンマン’春の楽園’ツアーを開催。
2011年6月、3rd album『革命』をリリース。9~10月、過去最大キャパで全国10都市の「3rd album ‘革命’ 発売記念 ワンマン’秋の楽園’ツアー」を開催。
2012年2月、2nd LIVE DVD「秋の楽園ツアー 2011.10.07 Studio Coast」をリリース。3月~ ‘100分間のファンタジー 遊ぼうぜ 踊ろうぜ’ ツアー全国6都市7公演のZepp Tourを開催。同年5月2日には4th album「光」 をリリース。
【NEW ITEM】
4th ALBUM
『光』
XQFQ-1115
¥2,500(tax in)
1. ベースマン
2. 光
3. インナージャーニー
4. 君はダイヤモンドの輝き
5. 3分間
6. クラブナイト
7. ひまわり
8. ジーニー
9. 愛してやまない音楽を
10. シンガー
11. 彼女