Laika Came Back『From “Landed “to”Trace”』
Laika Came Back
『From “Landed “to”Trace”』
2011.12.15(Thu.)
@渋谷クラブクアトロ
Laika Came Backの1stアルバム『Landed』は、Cozyが一人で作り上げた楽曲たちが詰まった作品だった。約1年間に渡り世界各国を旅する中で生まれた楽曲達を、持っていったギター、ラップトップPC、そしてマイクのみを使い、その各現地で録音。歌を中心とした弾き語り+αのフォーマットで表されたその作品群は、全体的なトーンや雰囲気での統一は感じられるものの、各曲違った歌物語を聴く者にじんわりと広げてくれるものだった。例えると、それは一つの大きな物語。各曲は、その章節にあたり、それらが流れ、進み、最終的には『Landed』というストーリーへの結実を目指していた。
そして、2011年の秋口に行なわれた初の本格的なツアーでは、自身のギターによる弾き語りを中心に、パーカッションやウッドベースを加えたライヴを展開。その楽曲たちの歌物語や情景を更に引き出し、広げ、彩りを添えた。そして迎えた今回の『From “Landed “to”Trace”』ツアーは、それとは対照的に、Cozyのみで終始舞台を展開。自身の歌とアコースティックギター、そして時々起用されるエフェクター類のみで繰り広げられたその歌物語は、他のアーティストによる解釈やフィルターを経ない分、より生まれた姿に近い形で表された。
前回訪れることが出来なかった土地も含め、全国津々浦々にて、あの作品の雰囲気そのままに展開された今回のツアーは、より歌のネイキッドさも活きた再演方法も手伝い、終始優しい気持ちや雰囲気、博愛感で会場や来場した人々を満たしていった。
そんな、今回の『From “Landed “to”Trace”』ツアーに際し、我がラッカは「ツアーTシャツ」「Landed TOURの際のボディ違いTシャツ」「ニュートートバッグ」を制作した。
サイモン&ガーファンクルを始め、比較的牧歌的なBGMが場内に流れている。まだ無人のステージには、当てられたスポットライトの中央に赤いビロードがかぶせられた椅子と譜面台、そしてマイクスタンドがポツンと置かれ、他の楽器類は一切なし。ここからもこの日のライヴが彼一人だけで行われることが伺い知れる。
振り返ると『Landed』は、自身1人で作られながらも、そこには多少の作品ならではの多重さも加わっていた。”さて、あの作品内容を、1人だけでどのように表わすのだろう?”。そんな期待も胸に、まだ無人のステージと共に彼の登場を持つ。
スーッと場内が暗くなると、ピンスポットのライトの光量がより強まった中央に、愛用のスモールサイズのギターを手にしたCozyが現れる。おっ、今回のツアーTシャツを着てくれているではないか。腰かける感じで椅子に座ると、軽くチューニングを始め、「寒い中、ありがとうございます。ゆっくり楽しんでいって下さい」と一言。ギターをつまびき、1曲目の「Snadai Khmer」を始める。歌い出しと共にジワジワと優しい気持ちが広がり、今年をゆっくりと振り返らせる歌の登場に会場も聴き浸り、各々が様々な光景を思い浮かべる。2番では、自分でバスドラを踏むかのような音を出しながら、楽曲に躍動感を加えていき、合わせてフロアも消えることのない希望という笑顔を思い浮かべる。譜面をめくり、そのまま「あいうえお」に入ると、会場に更に柔らかい雰囲気が育まれる。日本語の1文字1文字が並び、それが言葉になり、意味を帯びてくることを、歌の進行と共に、みなが実感していく。やはり目の前で生で歌われると、曲の後半に次から次へと現れる、柔らかく簡単だけど生きていく中で大切にしなくてはならない言葉たちも、ことさら尊さを増して響く。
ここでMC。「今回のツアーが出来たこと、そこにみんなが来てくれたことに心から感謝します。今日は楽しんでいって下さい。僕もそれ以上に楽しませてもらいますから」と笑いながら語り、「今回のツアーはパーフェクトと言って良いほど、どの箇所でも見事に晴れで、「スーパー晴れ男」の面目躍如を保ったこと」「これでご飯を食べれるんじゃないか?と思っている」との冗談交じりの語りが、会場に和やかさをもたらす。
そして、「4回目のデビュー曲です」と、アルバム『Landed』のテーマであり、この作品を作る際に最初に出来た「Landed」を始める。カンボジアの一泊700円程の宿で作られた同曲。自分のつまびきを、その場でサンプリングし、それをその場でループさせたものに、自分のリアルなプレイを重ね、多重ギターを作り上げていく。そして、その上に歌を乗せていく手法で綴られる歌。眺めの良い景色に出逢えたかのように響く曲に、”さぁ、何をしよう””さぁ、何を描こう?”と、聴き手も自身の夢を重ねていく。と、同時にどことなく漂うただいま感が、彼のリスタートやこれからの自身の音楽に向き合う気持ちとして聴き手の中に広がっていく。
続いて、親友のジョージ・ウィリアムスに捧げられた「George」が。ジョージのささやかな生活や悦びがCozy目線で英語詞を中心に、家族やペットたちの名前も交え伝えられる。2番より現れる日本語詞からは、再び先程のバスドラの音も加わり、漂うホーム・スイート・ホーム感に会場中が自分の愛しい人を思い浮かべる。そして、前回のツアーでもカバーされた「切手のない贈り物」がここで披露される。「小学校の歌の時間に、この歌を歌う日の番が来ると嬉しかった」と語られ歌り、歌い始められた同曲。伴奏方法も、ここまでのアルペジオスタイルからストロークへとチェンジし、それによる躍動感が場内に溢れる。会場中が遠い目をしながら、心の中での大合唱を行う。唱歌のカバーは続く。次は下校のメロディとしても馴染み深い、ドボルザークの「新世界」に日本語詞をつけた「遠き山に日は落ちて」だ。夕景の帰路が浮かんでくる同曲。ライトもオレンジ色に変わり、一日を振り返りつつ、温かい我が家へと帰る在りしの自分の姿を多くの人が思い浮かべる。そして、オーストラリアにて満天の星空という天然のプラネタリウムを見ながら作り、それを日本に戻り思い返しながら完成ざせたという「Southern Cross」がプレイされると、リアルサンプリングされたギターのループに乗せて、満点の星空の下、一緒に笑顔になっていく光景が思い浮かぶ。長いアウトロが、ことさら会場に、ここから遠く離れた地での星空の中、一際輝くその一等星へと思いを馳せさせる。
「じゃあ、第二部でお会いしましょう」と一旦ステージを去るCozy。そう、今回のツアーは2部構成で行われ、このインターバルの間に、多くの人がここまでの余韻に浸り、”後半には何を歌ってくれるのだろう?”と、期待に胸を膨らませた。
ステージを去ってからおよそ10分。再びCozyがステージに登場した。
軽いチューニングの後、アルペジオを始め、そのリアルサンプリングのループに乗せ「Humming」に入る。ハミングだけなのだが、そこに1人1人が思い思いに歌を思い浮かべ完成させていくかのような同曲。中盤より現れるバスドラが生命力を楽曲に加えていく。そのまま次の「Trace」にインすると、Cozyもウィスパーを交え歌う。まさにこの季節にピッタリな冬を想起させる曲に、その中で描かれている距離感をまるで自分のことのように会場中が感じる。
第一部での唱歌のカバー類と対をなすように、次からの2曲は、洋楽のカバーが英語詞で歌われる。まずは、ギターのボディを叩く音をリアルサンプリングし、これをリズムに歌い始めた、70年代のパワーポップバンドBIG STARの中心人物、Alex Chiltonの「The EMI Song」から。リズムを抜き差しし、ギターにはオプリを交え、ラストはメロディを無伴奏で歌う等、独特のカバーを聴かせてくれた。続いては、前回のツアーでもカバーされた、これからの時期にピッタリなSnow Patrolの「Chasing Cars」が登場。曲が進んでいくに連れ、神々しく荘厳に響いていった同曲では、ラストに向かうに従い、福音が鳴り響き、会場がどんどん光に包まれていくような気持ちへとなっていく。トーンを代えるように、次の「終電車」では、後半にはここまでナチュラルでクリアなトーンだったギターに歪みが入り、これまでの優しい雰囲気に硬質でザラついた雰囲気が加わる。深く深呼吸するCozy。その後、再びギターのボディを叩き、馬が走り出して行くかのような光景を思い浮かばせるループをバックに、本編最後の「駿馬」が始まる。起伏のあるドラマ性が楽曲に満ち、ラストはギターを歪ませ、それが独特の高揚感を生んでいく。同曲に吸い込まれるようにステージも発光。圧巻と高みへの誘いを会場に残し、Cozyはステージを去った。
アンコールは3曲。「来年もみなさんに会える機会が増えれば良いなと思っています。アンコールは更にリラックスして演らせてもらいます」の一言の後、「桜の花と書いて『桜花』。地味だけど、春の歌があっても良いと思って作りました」と、新曲「桜花」を始める。懐かしい友達に会いに行きたくなり、会えたかのように響く同曲。「明日、晴れたら何をしよう 明日、雨なら何をしよう」と間に歌われ、多くの人がそのフレーズに、”自身の場合は?”を重ね合わせる。アンコール2曲目も新曲を披露。ツアーの前日に出来た曲で、まだ歌詞はついていないとのこと。ボディを叩く音をリズムに、つまびきによるドラマづけと、表情づけ、そして、まだ正式ではないが繰り返される歌フレーズによる、ほぼインストながら、非常に情景感を持った楽曲に会場が聴き入る。この曲では、この日これまで見られなかったギターソロも披露。所々スパニッシュなフレーバーも絡み、楽曲に哀愁性を滲ませていく。
「来年も元気で逢いましょう。では最後に、Laika Came Backにとって大切な曲をもう一度」とCozy。ラストは再び「Landed」で締め。「ありがとうございました。おやすみなさい」と深々とお辞儀をした後、手に持ったギターを掲げ、ゆっくりとステージを去っていった。
色々と大変な事のあった、2011年を思い起こさせ、だけど、そこから生まれたこれまでになかった新しい光や希望、生命力を感じさせてくれた、この日のライヴ。途中、MCで「僕がずっと好きでい続けている歌は、童謡や唱歌といった、あか抜けなくて牧歌的な類い」と語っていたCozyだったが、この時代、我々に必要なのは、地面の不安定にも、どんな高い波にも負けず、埋もれることのない、歌い継がれ、親しみ継がれる歌なのではないだろうか?そして、それは決して力強かったり、背中を押す類の歌だけではなく、例えると、Laika Came Backの歌のような、優しい気持ちや博愛的な包容力を持った歌なのではないだろうか? と、ライヴかの帰路、何度も思った。
Report : 池田スカオ和宏
[ライヴ終了直後の楽屋に挨拶。今回のツアーやライヴについて、Cozyに振り返ってもらった]
―前回のツアーでは、ベースとパーカッションを入れたスタイルでしたが、今回のツアーはお1人だけで行ったんですね。
●そうです。Laika Came Backのライブの基本はこの形です。今回は、より楽曲が出来た感じに近いライヴが出来たんじゃないかとは思います。
―今回のツアーを振り返ってみていかがでした?
●非常にシンプルで思ったとおりの物が出来ました。持っていくものもギター1本とエフェクター、あとは身一つでしたから。
―1人での弾き語りを基調にしながらも、随所でエフェクター類を起用していて、演出的にも前回のツアーと全く遜色なかったですよ。
●ありがとうございます。あのエフェクター類も特に事前にプリセットしている訳ではなく、プレイの際に僕がリアルに弾いたものをサンプリングしてループし、そこに演奏や歌を乗せていってます。緊張感もありますが、その分、一回一回違フィーリングの違ったものがお聴かせ出来たかと思います。
―何曲かで、ドラムのバスドラを踏む音が鳴っていましたが、あれは?
●あれはエフェクターケースのフタを踏んでいます。
―新曲も2曲披露してくれましたね。
●春の曲「桜花」と、もう1曲はインストの曲です。この曲たちも含め、新曲の制作を始めているので、また近いうちに作品をリリース出来ればと思います。とは言え、今のところ2012年の活動はまだ何も決めてません。自分の好きな音楽を演らせてもらっているので、その辺りの焦りは全くないです。今後もマイペースに活動出来ればと思います。
Interview & Text : 池田スカオ和宏
【SET LIST】
1. Snadai Khmer
2. あいうえお
3. Landed
4. George
5. 切手のない贈り物(カバー)
6. 遠き山に日は落ちて(カバー)
7. Southern Cross
-休憩-
8. Humming
9. Trace
10. The EMI Song (カバー)
11. Chasing Cars (カバー)
12. 終電車
13. 駿馬
Encore
En-1. 桜花
En-2. 新曲
En-3. Landed
【PROFILE】
Cozyによる音楽を中心としながら、社会活動、その他ライフスタイル全般を含めたプロジェクト。2010年3月、1stソング「Landed」配信開始。2010年12月、2ndソング「Trace」配信開始。2011年 1月 渋谷 WWW にて 映画「180° SOUTH」公開記念イベントライブ出演。2011年8月、RISING SUN ROCK FESTIVAL 出演。2011年 9月7日、1stアルバム『Landed』発売。2011年 9月〜12月、1stツアー『Landed〜From”Landed” to “Trace”』開催。
【NEW ITEM】
FIRST ALBUM
『Landed』
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¥2,500(Tax in)
NOW ON SALE
[Muttnik/PARCO CO.,LTD.]
1. Coming Home
2. Humming
3. Landed
4. Trace
5. Snadai Khmer
6. あいうえお
7. George
8. 終電車
9. 駿馬
10. Southern Cross
【LIVE INFORMATION】
http://laikacameback.blogspot.com/p/tour_25.html