凛として時雨Presents「トキニ雨#13 ~Tornado Edition~」

Filed under: LIVE REPORT — LUCK'A @ 2011.10.22

凛として時雨
凛として時雨Presents
「トキニ雨#13 ~Tornado Edition~」
@TOKYO DOME CITY HALL
2011.9.25(Sun)
W / Chara

 ラッカHPのライヴレポ中、凛として時雨の前回の東京国際フォーラムでのステージ(http://picka.lucka.jp/1713)の印象を僕は、「包容感や美しさ、優しさや柔らかさは、普段のオールスタンディングやホール以外のところでは体感できないものであった」と伝え、そして、「同じ音楽を放ちながらも、ハコの大きさやシチュエーションにより、様々な表情が表れる時雨の音楽~次に彼らから放たれる音楽は、果たしてどんな表情なのだろう? 今からそれがとても楽しみだ」と締めた。
 今回のTOKYO DOME CITY HALL(旧JCBホール)は、天井も高く、スタンディングフロアを有しながらも、3階席まであるという、大型のホールにしては、どこの位置からもステージが近く、見やすいシチュエーションが特性。音の方も天井が高い分、鳴りや響きにも定評があり、よりどこの席でもダイレクトに音が伝わってくるもの。そして、今回のステージから私が受けたのは、その国際フォーラムの際とは正反対の感受。一方的で突き放してくるように放たれる音が、より鋭角的に飛び込んでくるように響いてくるものばかりであった。

 実に2年2ヵ月ぶりとなった、時雨をホストに対バンを迎え行われてきた2マン・ライヴ・イベント「トキニ雨」。13回目を迎える今回は、「~Tornado Edition~」との副題が付けられた初のツアーとなった。
9月19日には福岡にてストレイテナー、9月21日には大阪にてBOOM BOOM SATELLITES、そして、この日はCharaという、まさに音楽性もキャラクターもステージングも違ったアーティストとの共演も話題となった同ツアー。それに際し、我がラッカは、そのツアーTシャツを制作。デザインは時雨のこれまでの一連の作品に携わってきた、Yukiyo Japanによるバンド名が上手くデザインに落し込まれ、Yukiyo Japanにしては珍しいタイポ的なデザインとなった。また、今回のボディは、TKのソロプロジェクト“film a moment”でも活用されたLuckand製。これは、LuckandのディレクターでもあるマーチャンダイザーkAtoが考案した、特殊加工を施したオリジナルボディがTKの目に止まり、今回のツアーTシャツに起用されたもの。

 繰り返しになるが、この日の共演はChara。実は、そのCharaのバックバンドの一員としてギタリストを務めたのは、ラッカもグッズの制作でお世話になっている、Cozy( Laika Came Back)であった。ちょうど前日には、幕張メッセでの大型フェス「GG11」にAIR名義で久々に登場。ボーカル&ギターとして、その緩急のあるステージングで多くの観客を惹き込んでいた彼が、今回はギタリストとしてCharaの歌世界に、どのような演出や彩りを施すのか?にも多々興味があった。
 
まずはステージに、ツインドラム、Cozyのギター、ベース、キーボード、女性コーラス、そしてCharaが登場。途中映えるシャウトやフェイクも印象的に、時雨とはまた違ったハイトーン・ボーカルが、会場を乗せ、盛り上げ、エンタテインメントへと誘ってくれた。そんな中、やはり驚くべきは、この日のツインドラム体制。その様相から、かなりヘビーでウネリもあるドラミングを想像していたのだが、あえてドラムキットもそれぞれの特性を生かした展開に留め、11月2日発売予定のニューミニアルバム『うたかた』からのArcade Fireのようなブレイブソングの一足先の披露を始め、伸びやかに会場にその歌声を広げていった「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」、ツインドラムとCozyのアコギを活かした「やさしい気持ち」、Cozyと共にCharaもアコギを弾く中、歌われた「伝言」、ピーターを用いたツインドラムによるフロアタムがカオスを呼び、そこから言いようのない生命力までしっかりと運んでいった新曲群等々、代表曲から新曲まで、今の布陣、今のスタイルで楽しませてくれた。

約20分ほどのインターパルの後、いつものベル&ハーシュノイズのSEが、暗くなった場内を緊張感で覆い、その空気感が会場全体をぐっと前傾姿勢にさせる。ゆっくり幕が開き、ステージ下方から当てられる白いライトがステージをボーッと浮かび上がらせ、そこにメンバーが登場。各人がフォーメーションに着くと、ピエールのハイハットによるカウントと、TKのファンキーなカッティング、それを呼び声に緑色のライトが客席を徘徊し出す。1曲目は「a symmetry」だ。そのファンキーなギターカッティングに歌を乗せるTK。中間部ではラップ風の歌を聴かせ、345のコーラスが対象的に優しく温かく場内を包む。TKのシャウトがステージ前方のクラウドたちをグッとステージ前方に吸い寄せると、曲のラストに向け、ヒステリックな怒涛さとピエールのストームのようなドラムが場内にラッシュを生んでいく。逆にそこから再びテーマに戻る際の美しいことよ。ラストは安堵にも似た穏やかさへと持ち込む。そして、その穏やかさをTKのギターデモンストレーションが引き破り、切り裂くように轟く。次の「テレキャスターの真実」では、345もスラッピーなベースを見せる。中間部の走り出すところでは、345のコーラスがTKのボーカルを追いかけ、追いつくようにスイッチ。この辺りの目まぐるしさは、いつも以上に激しい気も…。そして、パラレルなギターフレーズとスネアにリバープを効かせたピエールの8ビートドラミングも印象的だった「COOL J」では、TKの伸びやかなシャウトと345のコーラス、間奏でのソロを交えたギターカッティンが場内に何度も驚喜を生んでいく。

TKが「凛として時雨です」と一言。
チューニング後は、345のガリンガリンで硬質なベースラインとTKの寂しげで諦念を帯びた歌声から「I was music」に。歌詞で繰り返される「いいよ、おかしくなって」のフレーズがことさらこの日は信憑性を帯びて響く。場内もいつもよりおかしくなってる気も…。それに対し、逆にサビのストレートになるところの伸びやかさの気持ちいいこと、気持ちいいこと。345のベースラインとTKの歌から、”待ってました!!”の中間部の盛り上がりが訪れると、会場も”抑え切れない!!”とばかりに、フロアのあちらこちらでクラウドサーフが起こる。続く、「DISCO FLIGHT」では、345のベースラインとその後現れるTKのカラフルなギターフレーズに移ると、オープニングで現れた緑色のレーザーライトも再び徘徊し出す。ここでは2人のボーカルのリレーションの後、TKのモンスタートーンテレキャスターが炸裂。発狂ギターソロを会場中に浴びせ、サディスティックなギターカッティングが場内を力ずくで、そのトルネードに巻き込む。サビではピエールの生み出す4つ打ちが会場にダンサブルさを加えていく。その上、TKの深いエコーの中から現れるシャウトボーカルも深く、それはまるで深淵性を醸し出すが如く。ラストは地鳴りのようなバスドラのストームと、高いフレットを活かしたギターソロが場内にエクスプロージョンを巻き起こす。
345の歌い出しから始まった「秋の気配のアルペジオ」では、黄色を基調にした暖色系のライティングもこれからやってくる秋を想起させ、そこに想いを馳せるように会場にセンチメントを加えていく。345がボーカルをリードしつつも、途中よりTKがボーカルを引き継いでいく。彼らの中でもとりわけ郷愁性の高い曲に、会場も乗りながら胸をキュンとさせる。

ここからは若干のチューニングタイム。緊張感を持って、次の曲が現れるのを会場中が待っている。
そして、ミディアムなテンポをピエールが叩き出し、345の歌声がドリーミングさを誘うように次の「illusion is mine」に入る。ステージ後方から照らされる白色のライトが楽曲に漂っていた神秘性を更に引き立て、イリュージョン的な幻想に会場を誘引していく。非常にうたかた感に満ちた同曲に場内も聴き入るように浸っている。

チューニングを挟み、しばしのインターバル。その後、「Can you kill a secret?」が飛び出す。ここでは、ギター、ベース、ドラムのショートノートなソロのリレーションが会場を魅せ、345のベースもウネリを上げる。それに呼応するように、TKのギターもよりフランジャーが深くなり、それが生み出すカタストロフィーが会場に荒涼な景色を広げていく。残響音が会場に残っている中、ギターを持ち替えるTK。ノイズのデモンストレーションと、そこから発狂度を上げるように「Telecastic fake show」に突入。同曲の登場に場内の狂気もまた一段と上がる。同曲の中間部にて345の張りのあるコーラスが絡むと、それを呼び声に場内からは無数のコブシが。TKのテレキャスターも発狂カッティングで場内の温度を引き上げつつも、ところどころ静部を作り出し、そのコントラストに場内も振り回されっぱなし。TKのピーキ―なギターが場内の興奮度をガンガンに引き上げ、会場がどんどん狂気の宴へと案内される。
 TKの暴走/発狂ギターと、リズムキープをしながらも激しく魅せるピエールのドラム。そこから、目まぐるしさを帯びながらも、美しさを有している「感覚UFO」のイントロにインすると場内も騒然。カウンター的に345とTKのボーカルのみになるところでは場内もはっと息を飲む。美しささえ感じる後半部。そこから再び楽曲は激しく移っていき、それに伴い345のアクションもアクティブになっていく。その後、マイクスタンドにかじりつくようなポーカリゼ―ション、そして、その後の狂気のギターカッティングが場内の狂騒に火を点ける。フロアのこのような光景はまさに先日の国際フォーラムとは対照的。ステージからの白色ライトの発光も徐々にアップしていき、眩しさを増していく。ますます激しくなっていくステージアクションに比例するように、まるで陽が昇るかのような明るさがフロアに訪れる。

「楽しいですね」とTKが一言。すぐに345にMCを引き継ぐ。ここでは、共演者のCharaへ感謝を述べると共に、以前ファッション誌で、Charaの悩み相談ページの対談相手にピエールが指名され、同雑誌が好きだった彼女も同行したことを告白。続く物販の宣伝では「Tシャツを作ったので、帰りに着て帰って下さい」と締め、更に明後日から始まる全国ライヴハウスツアー「TOUR 2011 “αβ+1″」への告知へと繋げる。
言い終えると同時に、場内が再び暗くなり、TKが不穏な音を放ち出す。その後に美しくも悲しげなアルペジオ、345のベースとピエールのブラシを交えたドラミングの上、TKがトボトボとラストの「傍観」を歌い出す。哀しさに場内が包まれ、そこから夜明けのようなダイナミズムを湛えたドラマティックな流れが美しい。TK、345、2人の歌声が歌い進めるうちに、悲しみを重ね合わせるように悲痛さを増していく。ピエールのドラミングがダイナミックになり、願いから祈りへと様相を変えていく。なすすべもなく、その放たれる思いを共有するしかない場内。1人発狂ソロを弾きまくるTKと、345も珍しく終盤ではこれまでに見たことのない荒々しさを見せ、最後はベースを放り出す。TKを残し、ステージを去る345とピエール。それでもまだ残り、TKが一心不乱にノイズを会場に刻みつける。そんな彼も去ると、会場にはフィードバックノイズ音のみが残される。エンディングのSEが流れ出し、みながハッと我に帰るように、自我を取り戻していく。取り残された自身の身体と共に、”この日のライヴは、終わったのだ”と改めて実感する。

 現在はちょうどライヴハウスツアー「TOUR2011αβ+1」の前半戦に挑んでいる時雨。今回はかなりの密着戦。至近距離から放たれる彼らの音楽は、今回、どのような感受を我々に与えてくれるのだろう? 私もこのツアー中、私もどこかの会場でそれを体感してみたいと思っている。

Report : 池田スカオ和宏


【SET LIST】

1.a symmetry
2.テレキャスターの真実
3.COOL J
4.I was music
5.DISCO FLIGHT
6.秋の気配のアルペジオ
7.illusion is mine
8.Can you kill a secret?
9.Telecastic fake show
10.感覚UFO
11.傍観


【MEMBER】

VOCAL&GUITAR: TK
VOCAL&BASS: 345
DRUMS: ピエール中野


【Profile】

2002年埼玉にて結成。その後、メンバーチェンジを経て現メンバー編成となる。
2004年3月初の全国ツアーを経て、DEMO音源を2000枚以上売り上げる。
2005年11月 自身のレーベル「中野Records」を立ち上げ、待望の1st album 「#4」(ナンバーフォー)を始め、2枚のアルバム、1枚のミニアルバム、1枚のシングルをリリース。
2008年12月、1曲16分+フォトブック仕様の 2ndシングル「moment A rhythm」をSony Music Associated Recordsよりリリース。
2009年5月、3rdアルバム『just A moment』をリリース。5月には”last A moment”ツアーを、11月からは全国ZEPPツアー“Tornado Z”を敢行。各所大成功を収める。
2010年1月からは全国ライブハウスツアー”I was music”を行い、そのスーパーファイナル公演として、彼らの単独ライヴでは最大規模のライヴをあえて彼らの地元・さいたまスーパーアリーナにて4月17日に行う。同年9月22日、4thアルバム『still a Sigure virgin?』を発売。同作品はオリコン・アルバムチャート第一位を獲得。快挙を成し遂げる。10月21日より全国ツアー“VIRGIN KILLER”スタート。各所大成功を収める。
2011年4月28日からは、全国7箇所を回る初の全国ホールツアー「VIRGIN KILLER SUICIDE」を敢行。最終日は7月6日の東京国際フォーラムAでのライヴも成功に収める。
9/19には、東名阪で対バンを迎え 「時ニ雨♯13」を、9/27からは、全国ライブハウスツアー 「TOUR 2011 “αβ+1″」を行う。


【Package Item】

4th FULL ALBUM
『still a Sigure virgin?』
AICL-2174
¥2,800(tax-in)
NOW ON SALE

1. I was music
2. シークレットG
3. シャンディ
4. this is is this?
5. a symmetry
6. eF
7. Can you kill a secret?
8. replica
9. illusion is mine


【Artist Homepage】

http://sigure.jp

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