THEラブ人間『邂逅ツアーファイナル「THEラブ人間の単独演奏会~はじめてのラブレター~」』

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2011.07.29

THEラブ人間
『邂逅ツアーファイナル「THEラブ人間の単独演奏会~はじめてのラブレター~」』
@渋谷クラブクアトロ
2011.7.15

THEラブ人間の歌は、深夜に書くラブレターに似ている。
 深夜に書くラブレターは、自分一人を丸ごと愛しながら書く故、多大に心が露わになり、赤裸々に綴ったり、吐き出したりしがちだ。夜が深まれば深まるほど、明け方が近づけば近づくほど、高揚していく想い。書いていけば書いていくほど、次から次へと思い浮かんでくる、”今伝えなくちゃ!!”の切迫感。それを無整理のまま、勢いと憤りと共に書き綴り、書き殴っている自分。そこには書いていくうちに加わっていく、ほど良い自己陶酔と、書いても書いても湧いて出てくる感情や愛情優先の想いも手伝い、見苦しいほどの偽りなき気持ちでいっぱいだ。しかも、その時は”完璧だ!”と想って眠りにつくも、大概は、次の日に目覚め、その文面を冷静に見返し、赤面。ついついリライトしてしまう自分がいたりして(笑)。
 その整理し切れない気持ちや想いも含め、”まず、感情在りき”で描かれるTHEラブ人間の歌の数々は、やはり夜に書かれたラブレター以外何ものでもない。ただ違うところがあるとすれば、本来ならきちんと推考され、清書され、ポストに入れられるべきところを、彼らは深夜のままの文体や内容で、しかもポストになどには入れず、我々に直に手渡してくるところか。

 この日は、『邂逅ツアーファイナル「THEラブ人間の単独演奏会~はじめてのラブレター~」』とタイトルされた、THEラブ人間の初のワンマンライブ。ダブルアンコールも含め、彼らが現在出来る曲の全てを出し切った全18曲がプレイされた。それはさながら、その都度、色々なタイプの深夜に書かれたラブレターが、満員の渋谷クアトロにて、様々な手渡し方をされたかのようにも感受した。

ラッカと彼らとの付き合いは親密だ。昨年秋、ラッカも全面的にサポートした下北沢のライヴハウスサーキットイベント「shimokita round up 3」での対面をキッカケに、スタッフの多くがぞっこん。以後、ライヴにも頻繁にお誘いいただける仲になった。そして、5/11発売のシングル「砂男・東京」のリリースの際には、「THE LOVE NINGEN Tシャツ」「パスケース」等が、メンバー本人たちとMD(マーチャンダイザー)kAtoの手によって輩出。販売もLUCK’A PLANETにて行われ、そこでしか購入できない限定カラーTシャツも展開中だ。

会場が真っ暗になり、ステージに目をやるもメンバーは現れず。かわりに会場壁面のスクリーンに、戦前のトーキー映画風の映像が流れ始める。<THEラブ人間><邂逅>の言葉をキーワードに、彷徨い歩き、探しまわる学生主人公。その彼が次々現れる断片やヒントを頼りに、渋谷クアトロまでたどり着くという内容だ。
その映像が途切れると同時に、お馴染みのSEが流れ出し、ステージが発光する。鍵盤の森澤、ドラムの服部、ベースの岡本、バイオリンの谷崎、ボーカル&ギターの金田が順番にステージに現れ、おもいおもいに来てくれたことへの感謝を会場へ表わす。裸足の金田が客席に向け、”行くゾ!!”とひと煽りする。フロントの4人が横一列に並びスタンバイ。金田による「邂逅というのは、思いがけない出会いのこと。ようこそ渋谷。やっと会えたね」の言葉の後、1曲目「東京」の谷崎によるバイオリンのイントロがダイナミックに、ゆったりと現れる。歌が広がっていく中、2番では岡本の柔らかいコーラスも入り、その後の女の子の吐露が聴く者に自分を重ね合わさせる。森澤はまことに幸せそうに鍵盤を弾き、服部がブレイク後の重たいフロアタムの一打を放てば、まるで東京が昔からの自分の街のような気分になっていく。1曲目から会場中も大合唱。激しくも優しい気持ちが会場を包む。ノンストップで8/23発売のメジャーデビューEPのタイトル曲「これはもう青春じゃないか」に突入。軽快なビートに会場も色づいていく。セカンドラインのリズムを楽しげに叩く服部。谷崎のバイオリンもこの曲ではフィドルの役割を果たし、森澤の鍵盤もハネる。ブレイク部では会場も大合唱。リリース前とは言え、既にみんなの歌になっている確信を得た。続いて、岡本の「君が好きだよ」の歌い出しから、そこに金田も歌を重ね、「りんごに火をつけて(Light my apple)」へ。開放的な8ビートに青春の甘酸っぱさと”好きだ!!”とのストレートな気持ちが会場に広がっていく。この曲に、そこはかとない永遠性を感じたのは私だけではないだろう。

続いて、金田がギターをお馴染みの岡キャスター(岡本太郎のコラージュが貼られまくったテレキャスター)から、チェリーサンバーストのYAMAHA-SGに持ち替える。「ツアーでの22回の戦いを勝ち抜き、負け抜き、ここまで来た。今日は長丁場。くれぐれも集中力を切らすなよ。今日は切れたヤツから置いて行くからな!」と、容赦のない、だけど、愛情たっぷりの果たし状が突きつけられる。岡本の不穏なベースラインに乗せ、「今日は自分の目で見、頭で考え、選んで、自分で作っていくライヴなんだよ」とアジる金田。そのまま「(THE)ラブ人間から君へ」の、アヴァンギャルドでサイケデリックなワールドへと会場を巻き込む。金田が<We Are ラブ人間>的内容のラップを放てば、リズム隊のループ感のあるビートの上、谷崎のバイオリンと森澤の鍵盤が自由に泳ぎ回る。曲の進行と共にスピードもどんどん上がり、高揚しっぱなしの会場。特にラストに向けてのモータードライヴ全開は鳥肌ものであった。そのままカットインで「黒いドロドロ」に入ると、閉鎖された空間から開放的な空間へと世界がパッと変わる。森澤の鍵盤も美しく踊り、会場がその心のドロドロを歌と一緒に吐き出す。一変してノスタルジックな世界へと誘うように「8月生まれの君の結婚式」にイン。森澤のオルガンの音色が会場を包み、服部がシャッフル気味の4ビートを交える。うーん、これこそ現代版「サルビアの花」だ。歌われる「さよなら」が、ことさらサヨナラ感を増長し、「良かったね」と裏腹な寂しさや後悔が場内を巡る。

金田が岡キャスに持ち直す。ここで3拍子ナンバーの「パニック・ルーム」が登場する。同曲の聴きどころは、優しく柔らかく会場のノスタルジーを掻き立てる森澤のキーボードソロだろう。「何で僕は歌っているんだろう?」のフレーズが聴く者に問い、ラストに向けての盛り上がりに谷崎のバイオリンがダイナミズムを加える。
ここで金田のMC。My SpaceやYou Tubeや、ライヴやCDショップの店頭を通して、自分たちのことを知ってくれ、この日にこんなに集まってくれたことへの感謝を伝え、「これが邂逅です。出会ったんです」と締める。
ライヴでは、会場に春を呼び込むが如く「わたしは小鳥」が始まる。森澤もステージ逆サイドまで出向き、嬉しそうに挨拶。「君は僕の宗教」部では会場も楽しそうに大合唱だ。そして、聴きなれないイントロに、歌い出しが始まるまで同曲だと気づかなかった「京王線」にイン。原曲より更に重みも増し、しんみり度も上がる。男の強がりと、背を向けてでも今の道を行く決意に会場もグッとなる。「岡本太郎の言葉」の歌詞部では、テレキャスの岡本太郎を指し歌う金田。ラストは、「ヘイ・ジュード」ばりに大団円し、会場もハミングの大合唱で周りに愛が溢れる。

ここでMC。「我々の音楽は、たまりにたまった灰皿のような。火曜日に捨て忘れたゴミ箱のような。きたないルーズリーフに書きなぐった、出したくても出せなかったラブレターのよう」と自らの音楽を称し、「若さはいつも残酷に~」と叫び絞り出しながら、「若者たちの夕暮れ」を歌い始める。悲痛に満ちた、まるで心の叫びのような歌声が、静かに激しく会場に放たれる。失われたとてつもなく大切なものを一心不乱に探しまわるが如く、時にマイクにしがみつき、床に寝っ転がり、のたうち回りながら、感情を全てさらけ出し、吐き出し尽くし歌う金田。会場中が、その放たれる歌に魅入る。服部が軽く繋ぐ中、金崎のバイオリンがそこに乗り、「愛ってかなしいね」が始まる。岡本とのツインボーカルが楽曲にふくよかさを生み、「一緒に愛に迷子になりましょう」と優しく歌う金田の誘いに会場も嬉しそうにうなづく。ラストに向け、楽曲がダイナミックに、誇らしげにグングン広がっていく。そして、森澤の鍵盤音が会場に流れると、会場中が”待ってました!!”の嬌声を上げる。ライヴハウスの空間を、井の頭通りを経由し、景色の良い海岸線へと誘う「大人と子供~初夏のテーマ~」がここで飛び出す。「いわないで、いわないで」のキャッチーなフレーズが会場に柔和を生み、ラストに向けてのドライヴ感と景色感、解放感が会場に満ちる。

ここでMC。森澤がステージ最前まで赴き、会場に深々と頭を下げ、2009年の結成以来、ようやくここまで来れたこと、これまで多くの人に支えられてきたこと、そして、ここまで二人三脚でずっと一緒に歩んできた彼らのディレクター渡邊氏への感謝が照れくさそうに告げられる。
続く「抱きしめて」が始まると、優しさと愛と慈しみが会場に満ち、歌に現れる密やかな決意に、会場もギュッと拳を握る。ここで一人ひとりのメンバーが先述の渡邊氏も交え会場に紹介される。森澤の電子オルガンに乗せ、金田の歌い出しから始まった新曲「レイプミー」(6/22限定発売の金田ソロ作品に収録)では、曲の激しさと共に、その歌の感情が乗り移ったがごとく、谷崎のバイオリンが激しく動き回る。いやー、このバンドは、各メンバーの役割分担のバランスも良い。鬼気迫るボーカル、溢れんばかりの幸せ顔で会場に温かさをもたらすキーボード、歌の感情を代弁するが如く時に激しく、時に抒情性たっぷりに鳴るバイオリン、ひょうひょうさと可憐さを醸し出すベース、場面によってはグイグイにひっぱる、安心感溢れるドラムといった具合だ。まっ、無意識だろうけど(笑)。

ここでMC。金田が、CDを色々な人に聴いて欲しくて22箇所でライヴを行ったことを語り、「自分たちはやはりライヴ至上主義。一回ライヴを観てもらい、分かってもらえれば、極端な話、もう会えなくても良い。きっとずっと心に残り続けてくれることだろうから。俺たちを見つけてくれてありがとう。俺たちをここに立たせてくれて、奮い立たせてくれてありがとう」と繋ぎ、「別れの言葉はいつも短く、いつもごめんね、いつもありがとね」と締め、あのギターカッティングが誇らしげに会場に鳴り響き、バイオリンが物語を広げていく。そう、本編最後は大合唱アンセム「砂男」だ。森澤も喜びを隠し切れず、ステージ前方の各所で感謝の挨拶を繰り返す。もちろんサビは大合唱。不器用な「ありがとう」が会場各所から溢れ出る。ずっと耐えてきた谷崎のバイオリンの弓も、とうとうここにきていつものごとく切れる。会場はのどが張り裂けんばかりの大合唱。特にラストの「なりたくな~い!!」部では、心からの交歓が成される。

ここからはアンコール。メンバー全員が、THEラブ人間Tシャツに着替え登場。嬉しい!!岡本ははしゃぎながらカメラで会場をパシャリ。
ここで金田から、8/23にピクターよりメジャー発売される1stEPのタイトルが「これはもう青春じゃないか」だと正式に告げられ、「例えメジャーに行けど、俺たちはめちゃくちゃいいバンドで居続け、素晴らしい歌を届け続ける!!」ことを力強く約束。会場もそれに力強く呼応する。
森澤のオルガンの音色に乗せ、金田の歌い出しから「おとなになんかならなくていいのに」に。子供の頃の光景がブワーッと広がり、そこに今の自分の生活が投影される。Everything Gonna Be Alrightのフレーズでごまかさなくちゃならない、自分の日常への嫌悪と憐れみ、だけど、変えなくちゃいけないとの強い意志が会場に満ちる。アウトロ部はとてつもない怒涛感。金田もギターの弦を切らしながら性急に弾きまくる。会場からの手拍子に乗り、「西武鉄道999」が放たれると、柔らかく優しい森澤の鍵盤も手伝い、スイートホーム感が会場に溢れる。サビではとてつもない解放感と上昇感、景色が広がっていく。この曲も、今後の彼らの重要な曲になっていきそうだ。

ダブルアンコールにも応え、会場をホームグラウンド下北沢にエクスポートさせるべく、「shimokitazawa-nite」をプレイする彼ら。軽やかな8ビートに会場もハッピー顔。後半は金田もギターを置き、客席最前まで出向き歌う。岡本の弾んだベースと、服部もハネたリズムを生み出す。ラストは最上のロックンロールで決めてくれ、会場丸ごと幸せな気分に浸らせてくれた。

冒頭に流れたトーキー映像じゃないが、何かをキッカケで彼らを知り、その断片を拾い集め、あの渋谷クアトロに辿り着いた者達が、”やはり間違いじゃなかった!””信じて辿ってきて良かった”と、心から思えるライブが展開された、この日。アンコールも含め、18編の色々なタイプのラブレターを様々な手渡し方をされたみんなは、それを読み、どんな読後観を持ったのだろう? きっと彼らへの愛しさや想い、愛情が無整理のまま、頭の中にブワッと広がっていったのではないだろうか。そう、その返信を是非、彼らの次のライヴで身体ごと伝え返して欲しい。

Report : 池田スカオ和宏

今回もTHEラブ人間の物販ブースの看板娘のMIKIちゃんをパシャリ!
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【SET LIST】

M-1.東京
M-2.これはもう青春じゃないか
M-3.りんごに火をつけて(Light my apple)
M-4.(THE)ラブ人間から君へ
M-5.黒いドロドロ
M-6.8月生まれの君の結婚式
M-7.パニック・ルーム
M-8.わたしは小鳥
M-9.京王線
M-10.若者たちの夕暮れ
M-11.愛ってかなしいね
M-12.大人と子供~初夏のテーマ~
M-13.抱きしめて
M-14.レイプミー
M-15.砂男
Encore
En-1.おとなになんかならなくていいのに
En-2.西武鉄道999
Double Encore
W-En. shimokitazawa-nite


【MEMBER】


バイオリン: 谷崎航大
ベース: おかもとえみ
歌手: 金田康平
ドラムス: 服部ケンジ
キーボード: ツネ・モリサワ


【BIOGRAPHY】

「恋愛至上主義」を掲げ、今日も他人と解り合うことを願って血まみれの恋愛と青春の焦げ臭さを高らかに歌う音楽集団。
2009年1月、金田康平を中心に下北沢にてバンド結成。4月 1st EP「恋街のすたるじい」発売。
2010年1月、2nd EP「大人と子供-17才と22才-」発売。5月 THEラブ人間×ひらくドア スプリットEP「自分勝手 e.p」300枚限定でディスクユニオンにて発売。8月 サマーソニック出演(出れんの!?サマソニ!?ステージ)。夏ツアーを敢行。初日、遠藤賢司/おとぎ話との3マン・ライブ、9月のツアーファイナルには下北沢ライブハウス3会場(Cave Be / Daisy Bar /BASEMENTBAR)を貸し切り、THEラブ人間決起集会「下北沢にて」を開催。11月、MINAMI WHEELに出演。12月、タワーレコード新宿店にて「大人と子供-17才と22才-」を特別に限定200枚販売。1日半で完売。
2011年、1月 VILLAGE/VANGUARD初のライブ企画「V.V. Rocks」に出演。2月 USTREAMとYouTubeを連動させ「THEラブ人間、邂逅 2011春」の番組を7週に渡り配信する。
5月11日、1stシングル「砂男・東京」を発売。5/11~「THEラブ人間<邂逅>2011春 砂男・東京リリースツアー」を敢行。7/15にはツアーファイナルとして渋谷クラブクアトロにてワンマンライヴを超満員の成功に収める。
8月23日には、ビクターフライングスターレコーズより、メジャー1stEP「これはもう青春じゃないか」をリリース。


【NEW ITEM】


MAJOR DEBUT EP
「これはもう青春じゃないか」
VICB-60077
¥1500(Tax in)
【ビクターフライングスターレコーズ】
2011.8.24 ON SALE

M-1. これはもう青春じゃないか
M-2. 抱きしめて
M-3. 若者たちの夕暮れ
M-4. 西武鉄道999
M-5. どうせ、慰時代


FIRST SINGLE
「砂男・東京」
PTA-0001
¥500(Tax in)
【SOLID BOND/PTA】
2011.5.11 ON SALE

M-1. 砂男
M-2. 東京


【LIVE SCHEDULE】

http://www.loveningen.com/live/


【ARIST HOME PAGE】

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