毛皮のマリーズ「TOUR 2011 “MARIES MANIA”」アルバム『ティン・パン・アレイ』完全再現ライブ
毛皮のマリーズ
「TOUR 2011 “MARIES MANIA”」
アルバム『ティン・パン・アレイ』完全再現ライブ
2011.4.23(Sat)
@渋谷 C.C.Lemonホール
「僕は毛皮のマリーズというバンドが大好きであると同時に、大嫌いでもあるんです。だから、今回のアルバム『ティン・パン・アレイ』で一度、自分ひとりのための毛皮マリーズをとことん追求してみたくて。なので、逆に次の作品は、<ロックバンド・毛皮のマリーズ>のための作品にしたいと思ってるんです」
これは2月の下旬、ボーカルでありソングライティングを務める志磨が、自身の音楽遍歴を過去の彼の貴重音源と共に巡った、題して「公開自殺GIG」というトークイベント終えた際、そこに遊びに行っていた僕に語ってくれた言葉だ。
『ティン・パン・アレイ』…このアルバムは、毛皮のマリーズ名義ではありながらも、これまでのバンドで再現できる範囲内を軽く飛び越えた作品内容であった。ポップの名の下、各曲のバラエティさや目まぐるしさもさることながら、各曲自身以外にも必要楽器がふんだんに起用され、志磨の頭の中に鳴っていた音楽が、そのままの形で具現/作品化されていた。
「TOUR 2011 “MARIES MANIA”」と銘打ち、全国各地でツアーを行ってきた彼らだが、今回のこのC.C.Lemonホールはエクストラ。なぜならこの日は、その『ティン・パン・アレイ』が完全再現されると公言されていたからだ。彼らにとっては初の単独ホール公演でもあったこの日。満員の会場の中、高らかに披露されたそれらは、集まった多くのファンを多幸で甘美、そしてエターナルな時間へと誘ってくれた。
我がラッカは今回のマリーズのライヴに際し、ニューグッズとして、某ロックバンドの名盤ベストアルバムのジャケを彷彿させる「マリーズマニアTシャツ」、ブックカバー、トートバッグと、どれも実用性溢れるニューグッズを提案/制作した。
50’sポップスやフレンチポップス類がBGMとして次々と流れる中、さすがはホール、開演を間近に伝える内ベルが場内に響き渡る。
しばらくすると、弦楽バージョンにアレンジされたSEが流れ出し、ゆっくりと場内が暗転。ディスト―ションギターが高らかに鳴らされる中、ゆっくりとステージの幕が上がっていく。マリーズの4人に、通例のサポートキーボーディストの奥野、そして、新たにドラムとパーカッションを加えた7人編成のメンバーがプレイをしている姿が徐々に明白になっていく。そしてセンターには、スポットライトの当たったボーカル志磨とベースの栗本の姿が。2人でアルバムの1曲目を飾っていた「序曲 (冬の朝)」を歌っている。途中からは栗本も自身の定位置に戻りベースをプレイ。志磨も歌詞をアドリブ交じりで、ウェルカムなリリックに変更して歌う。まるで朝日がゆっくりと昇っていくようなオープニングだ。
「ようこそ、『ティン・パン・アレイ』完全再現ライブに。今宵はごゆるりとお楽しみください」と、アコギを肩にかけながら志磨がしゃべる。ギターの越川もエレキからアコギに持ち替え、ゲストのBLACK BOTTOM BRASS BANDのサックス、トランペット、トロンボーンの3管が呼び込まれ、「恋するロデオ」が始まる。作品のポップさに、作品以上のドリーミーさやゴージャスさも加わった同曲。オリジナルより音圧も迫力もアップしており、ドラムの富士山とサポートドラムによるツインドラムがユニゾンによるウネリを生み出す。今、気がついたが、本日の栗本はスカート姿ではないか!かっ、かわいい!!
鳥の鳴き声のSEと、奥野による鍵盤の繋ぎから、サーカスライクでどこか物憂げな「さよならベイビー・ブルー」に。志磨も再び立ちボーカルに戻り、ムーディ&ダンディなアクションを交え歌う。ここでは先程の3管に代わり、クラリネットとアコーディオンが加わり、哀愁さを際立たせる。
ゲストドラムがフロアタムで土着的なリズムを打ち出し、富士山もそれに乗るようにバスドラを打ち、ハイハットを刻む。そして、新たなゲストのペダルスティールが呼び込まれ「おっさん On The Corner」がスタート。ニューオリンズでセカンドラインなリズムの上、ペダルスティールがカントリーっぽさを加える。志磨もハンドマイクに持ち替え、ステージを右に左に動き回りながら、コミカルにおっさんの描写を歌う。ラストではテンポもアップ。それが会場に高揚感を生んでいく。そして、ロマンティックなイントロから志磨が歌い出し、フレンチポップス然な「Mary Lou」に入る。会場からの手拍子の中、ツインドラム+パーカッションが、ポップさに躍動感と生命力を加え、オリジナルに比べ、より前のめりでブレイブ感を加える。栗本もそこに甘いコーラスを交え、場内にスイートさを広げる。ラストに向かうに連れての3段階の大転調には、場内も一段づつグッと込みあげるものが。そして、栗本のセリフから「C列車でいこう」に入ると、ラウドなモータウンとでも称せそうなサウンドが、会場に中央線への乗車を促す。作品同様、オールディーズナンバー「ロコモーション」の1フレーズも交え、歌われる。
「すごくみなさんの熱い想いが伝わってきて、ステージの僕らも同じ気持ちです」と志磨。ここでアナログ盤だったらA面ラスト曲「おおハレルヤ」に突入する。再び3管も呼び込まれ、スイートソウルさが会場を包み、その雰囲気の中、志磨もソウルフルに歌う。ここで活きるのは、ゲストのパーカッションだ。
まるでアナログ盤をA面からB面へとひっくり返すように、セットチェンジの少しの間、越川が腰かけ、その場をつなぐようにアコギを爪弾く。バイオリンが呼び込まれ、ギターの爪弾きとバイオリンのピチカートの上、「星の王子さま (バイオリンのための)」を歌い始める。シャンソン然とした歌い方の中、バイオリンが悲しさと優雅さを更に広げ、場内も楽曲や演奏に聴き浸る。間奏時には志磨も社交ダンスとフラメンコとジルバが交じった独特のダンスを披露してくれる。
志磨がステージ上手前方にセッティングされたソファに座り、にっこり小声でそっと「早いな」とささやく。ホントだ。いつの間にか、もう後半戦だ。ここでバイオリン×2、ヴィオラ、チェロの弦楽四重奏が呼び込まれ、奥野のピアノのラグタイムなイントロから「愛のテーマ」に。博愛でハッピーな気持ちが会場いっぱいに溢れる。中盤には、子供4人によるコーラス隊「ひまわりキッズ」も登場。天井からは紙吹雪が舞い降り、この上ない幸せと大団円感が場内に満ちる。会場内は愛や至福感でいっぱいだ。
そして、愛あるナンバーは続く。次の「欲望」でも、夢から覚めない夢を会場全体に見せてくれた彼ら。ひまわりキッズのピュアで無垢なハミングやコーラスが、会場の大合唱と一緒にこの上ない幸せで包んでくれた。そう、この曲のリリックにあるように、「何も捨てず、何も諦めず、僕らは歳をとるのだ」。
「うーん、贅沢だろう?だってここは東京だもん。贅沢な街、東京だもん」と志磨。「アルバム『ティン・パン・アレイ』は東京を歌にしたこと」「東京の美しい季節を歌に出来たこと」そして、「地震に勝つには、地震があったことさえ思いっきり忘れてやることだ」と続け、「東京に再び朝が来るように」との祈りを込めてラストの「弦楽四重奏曲第9番ホ長調「東京」」を始める。まるでそれぞれの朝や人生が何事もなかったかのように再び始まっていくが如く、美しく壮大に昇華されていく同曲。まさにこの曲から<朝がやってきた感>を受けたのは、けっして僕だけではないだろう。ホント、荘厳さと永遠性に満ちていて、感動して涙が出そうになった。素晴らしい!素晴らしすぎるライヴだ!!
同曲を終え、一旦ステージを去るメンバーたち。残されたステージ中央に当たるスポットライトには、テーブルの上にセットされた大型の目覚まし時計が。その時計と共に、我々も彼らの再登場を待つことに。
目覚ましのベルが鳴り、再度登場した彼ら。会場の電気が全てついている中、アルバムのシークレットトラック曲「彼女を起こす10の方法」を始める。ソファに寝っ転がり歌う志磨。南洋でトロピカルな雰囲気が場内を包む。最後は奥野も「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」のエンディングのフレーズも交えライヴはエンド。大団円で幸せな気持ちが、残り香のようにライヴが終わった会場にいつまでも残っていた。
アルバム完全再現ライヴの名目通り、シークレットトラックも含め、収録曲を全てその曲順通りにプレイされたこの日。ライヴがスタートして終わるまで、長くても1時間半。まさに夢から覚めない夢をずっと見ているような素敵な時間であった。
このような形での『ティン・パン・アレイ』の再現は、たぶんこれが最初で最後だろう。このアルバムからの楽曲が次にプレイされる際にはきっと、<ロックバンド・毛皮のマリーズ>として再現されていく気がする。あのアルバムに詰め込まれていた作品性が供養されたかのような、この日のライヴを改めて振り返りながら、冒頭の志磨が言っていた「次の作品は逆に<ロックバンド・毛皮のマリーズ>のための作品になるんじゃないかな…」のセリフ思い返し、その言葉に色々と思いを巡らせていた。さぁ、志磨よ、次はどんなマリーズを見せてくれるんだい?また、僕らを驚かしてくれよ!!
池田スカオ和宏
【SET LIST】
M-1.序曲 (冬の朝)
M-2.恋するロデオ
M-3.さよならベイビー・ブルー
M-4.おっさん On The Corner
M-5.Mary Lou
M-6.C列車でいこう
M-7.おおハレルヤ
M-8.星の王子さま (バイオリンのための)
M-9.愛のテーマ
M-10.欲望
M-11.弦楽四重奏曲第9番ホ長調「東京」
Encore
En-1.彼女を起こす10の方法
【MEMBER】
Vo. 志磨 遼平
G. 越川 和磨
B. 栗本 ヒロコ
Dr. 富士山 富士夫
That Evening Support
Key. 奥野 真哉(ソウル・フラワー・ユニオン)
Dr. 菅 大智
Per.高田 洋平
Aco.カッツエ
Tp. KOO (BLACK BOTTOM BRASS BAND)
Sax IGGY (BLACK BOTTOM BRASS BAND)
Tb. YASSY (BLACK BOTTOM BRASS BAND)
クラリネット 竹野 昌邦
ペダルスチール高田 蓮
Vn. 竹内 純
Vn. 相磯 優子
ヴィオラ 細川 亜維子
チェロ 前田 善彦
コーラス ひまわりキッズx4
【PROFILE】
2006年9月、1stアルバム『戦争をしよう』リリース。
2007年12月、2ndアルバム『マイ・ネーム・イズ・ロマンス』リリース。
2008 年5月、ミニアルバム『Faust C.D.』リリース。夏から秋には「AOMORI ROCK FES 08」「ロッケンローサミット(渋谷AX)」「MINAMI WHEEL 08」などにも出演し、観客の度肝を抜く。2008年12月、3曲入り両A面シングル「ビューティフル /愛する or die」リリース。
2009年4月、3rd ALBUM『Gloomy』リリース。オリコン アルバム総合チャートでは初登場51位を記録。
2010年4月、メジャーデビューアルバム『毛皮のマリーズ』リリース。それを引っ提げた『Restoration Tour 2010』を5月の下北沢SHELTERを皮切りに敢行。最終日の恵比寿リキッドルームでのワンマンのまで、全国大成功を収める。同年夏には、各地夏フェスに出演。10月には、メジャー1stシングル「Mary Lou」を発表。初回限定の絵本つきコロちゃんパック仕様と共に話題となる。11月からは「コミカル・ミステリー・ツアー」を敢行。最終日の渋谷AXのワンマンライヴをソールドアウトの大成功に収める。
2011年1月19日には2ndアルバム『ティン・パン・アレイ』を発表。同年春には全国ツアー「MARIES MANIA」を敢行。ファイナルとして4月23日には、初の単独ホール公演を行う。
【NEW ITEM】
2nd ALBUM
『ティン・パン・アレイ』
COCP-36618
¥2,800(tax in)
【コロムビアミュージックエンタテインメント】
NOW ON SALE
M-1. 序曲(冬の朝)
M-2. 恋するロデオ
M-3. さよならベイビー・ブルー
M-4. おっさん On The Corner
M-5. Mary Lou
M-6. C列車でいこう
M-7. おおハレルヤ
M-8. 星の王子さま(バイオリンのための)
M-9. 愛のテーマ
M-10. 欲望
M-11.弦楽四重奏曲第9番ホ長調「東京」
【LIVE SCHEDULE】
http://www.kegawanomaries.jp/hell/gig/index.html