ハンバートハンバート『さすらい記』発売記念コンサート “ふたりぼっちのさすらい記”

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2011.02.25

ハンバートハンバート
『さすらい記』発売記念コンサート
“ふたりぼっちのさすらい記”
@東京 渋谷C.C.Lemonホール
2011.2.10(THU)

 なんというのかな~?フワッとしているんだけど、フワフワしていない。ポヨンとしているんだけど、ピリッとしたところもある。ポワンとしているんだけど、ときどきチクンとする。なんだ?ハンバートハンバートの音楽性を僕なりに称すると、出てくるのは、擬音ともまた違った抽象的な印象表現ばかりじゃないか(笑)。
 いや、もう少し伝わりやすく表わそう。牧歌的で童謡的で、それでいてキチンと時々毒を隠し持っている。ホゲホゲしていると思ったら、急にやってくる緊張感。微かなコミカルさとほのかな至福感、そして、最後にやってくる安堵感と文字通りのステージ客席を交えての大団円…。ライヴが終わると、何か”見終えた!!”って感じを残し、自然とスタンディングオペ―ションで無心に拍手を送っていたりする。そう、ハンバートハンバートのライヴは、いつも僕に<演劇>を観終わった後の、あの<観劇後感>を残してくれる。

 昨年11月に発売された2年ぶりのニューアルバム『さすらい記』。その発売を記念して、大阪、名古屋と回ってきた彼らが、そのツアーのファイナルで、東京はC.C.Lemonホールにてライヴを行った。定かではないが、今回のこの場所は、彼らの中でも単独のコンサートでは最も大きなステージやキャパシティの場所だったのではないだろうか。
 実は彼らのライヴをホールで観たのは今回が初だったのだが、正直言って似合う。そして、いつものライヴでのフロアに並べられたパイプ椅子と違い、ホールならではの雰囲気と座り心地の良いゆったり感のある、そのシートも手伝い、いつもよりもより優雅な心持ちで観ることが出来た(笑)。



 かく言う我がラッカは彼らのグッズをかれこれ3年前から作らさせてもらっている。今だにリピーターも多いロングセラーアイテムだ。そんなこんなで、かくいう僕らも久しぶりに彼らのライヴ足を運んだ。



 スーッと場内の電気が消え、闇が会場全体を支配する。ステージに佐野と佐藤の2人がスタスタと現れ、中央に立ち、場内がシーンとなり最初の歌声や一音を待つ中、佐藤の弾くフィドルと、佐野があの澄んだ、ピュアで通る声を場内に響き渡らせる。1曲目はニューアルバムに収録の「さようならの君の街」だ。うーん、最初からさよならとは…(笑)。「少しずつ変わっていく、少しずつうすれていく 街も僕の記憶も」のフレーズが聴く者の心を刺し、誰もが遠い目をしながら聴き入っている。と急転。佐野の歌声も、より力強く、伸びやかに変わっていく。胸に両手を当て、鼓動や動悸を感じながら歌っているかのような佐野。ラストは佐藤がピチカートで同曲の主旋律を弾く。
 「ありがとう。こんばんは。ハンバートハンバートです。ようこそ」と佐野。続けて、「連休前の時間をハンバートハンバートとラグジュアリーな時間をリラックスして過ごせたら嬉しいです。素敵な時間をお過ごしください」と告げ、フィドルをベースに持ち替えていた佐藤が、朴訥な歌声と共に「虎」を歌い出す。2人に加え、ドラムの坂田、マンドリンの井上、ペダルスティールの安宅のバックのバンドが加わり、彼らの楽曲に更なる色を加える。安宅のスティールギターのソロも会場に響き、佐野がバリエーション豊かなコーラスを楽曲に加えていく。続いて、会場がパーッと明るくなっていくような「バビロン」では、中央マイクスタンド前で直立的に歌っていた佐野にも徐々に動きが加わっていく。「ほかの言葉じゃ置き換えられない僕と君との言葉遊び」と歌われ、連想ゲームのよう言葉のリレーが場内に広がっていく。佐野の投げるような言葉と、それをやさしく一つ一つ再びトスする佐藤の言葉。次から次へと形を変える言葉が、テンポ良くキャッチボールされていく。ラストに向け、2人の歌声が有機的に絡み合い、言いようのない広さと空間性を生む。そして、テンポアップし、リズミックなナンバー「からたちの木」にインすると、佐野もフレーズの語尾に合わせてアクションを交える。ちょっとした躍動感が会場全体に生命力を授ける。続いて、ファットなベースラインと裏打ちのダウンビートが印象的な「波羅蜜」に突入。同曲では、ここまでに見られなかったクールさとスリリングさが会場を支配していく。井上による長尺のマンドリンソロとドラム、そして、グル―ヴィーなベースラインが言いようのない高揚感を場内に与える。

 ここでMC。佐野がいつものホワッとした温かい声で「外は雪が降るらしいけど、この中はホットにいきたい。みんなホットな気持ちになって帰って欲しい」と告げ、佐藤もアコギに、井上もショートスケールのアコギに持ち替える。次は佐藤のアナザーグループ「グッバイマイラブ」の村井と作った「おべんとう」だ。郷愁感あふれる同曲は、冷めてもおいしいお弁当を、遠足先でおいしそうに食べている光景を会場に浮かばせる。
 バンドのメンバーが去り、再び佐野、佐藤の2人だけがステージの中央に。ストロークのバリエーションで聴かせる「夜明け」だ。”あなたとめぐりあった幸せ”に場内も一緒に包まれる。ここで佐藤がギター、佐野もブルースハープを用い「慚愧」にイン。ギターは、ほぼ2コードの繰り返しなのだが、歌声やハープと有機的に融合し、この上なく聴く者の胸に染みていく。続けてアコギとブルースハープ、男女の会話のような歌によるリレーションも印象的な「おなじ話」が始まり、会場ほっこりさせる。

 ここで2人は一時ステージを去り、恒例の15分の休憩が入る。場内のBGMは、この3月に上野水上公園音楽堂で共演する、エディ・リーダーがかつて在籍していたグループ、フェアグラウンド・アトラクションのナンバーが流れている。

 休憩も終了。再び場内が暗転し、今度は2人とバンドが一緒にステージに現れる。歌に入る前にまずは佐野のトークだ。ここでは、佐野の家の庭に集まってくる鳥の話が語られる。そして、ミュートしたマンドリンの音色に乗せ、シャッフル気味のドラムと、白玉の多いベースの「邂逅」が始まる。間の安宅のスティールギターのソロが場内に広がりと楽曲に込められた密かなエモ―ショナルさを引き出す。そして、佐藤のアコギと佐野の歌い出しから始まった「待ちあわせ」では、そこにバンドサウンドが加わることで会場全体により奥深さと広がりが生み出される。後半は佐藤がボーカルを引き継ぎ、70年代中期の細野晴臣や久保田真琴を思い起こさせる、その歌声の良い味の出し加減に、場内が酔いしれる。そして、なんとここで早くも新曲「転石苔むさず」をプレイ。弾んだ感じの裏打ちのビートが、場内に微かなハッピー感を届ける。ハンドマイクで歌い出す佐野。その姿や表情は実に楽しそうだ。マンドリンとスティールギターの掛け合いのソロのアウトロがたまらない。続く、「てまりうた」では、より場内に<明るさ>が持ち込まれる。どんどんずんずん進んで行くかのような歌に、間奏では佐野も楽しそうに踊り、それに合わせて場内も心を踊らせる。そして、「もう一曲新曲を演ります」と告げられ、「桶屋」を始める。裏打ちの弾んだ雰囲気が場内に広がっていく。「お金がなくなると…」なんて歌いながらも、いかにも楽しそうに、”なんとかなるさ”的な心境や心持ちを交えて歌われ、それらが聴く側にもきちんと伝わってくる。そして、「国語」での、変則なセカンドラインや二ュ―オリンズのスワンプなリズミカルでダンサブルなビートには、場内も揺れ出す。間にはテンポアップし、各人のソロを交えたメンバー紹介も行われ、会場の手拍子もそこにブレンド、この日一番の盛り上がりを見せる。

 「とうとうやってしまったよ、C.C.Lemonホール・ワンマン」の軽いMCの後、ここからラストに向けては、ステージ、客席を交えての盛り上がりナンバーが連続で放たれる。まずは、ニューアルバム収録の盛り上がりナンバー「罪の味」で、より会場の熱を上げ、高揚感を上昇させる。「今日は仕事帰りありがとう。おこずかいを切り詰めて観に来てくれた人とか色々といるけど、ありがとう。大きなC.C.Lemon丸に一緒に乗り込み、海へと、エイヤッと乗り出していきたいと思います」の佐野のMCを挟み、彼らの代表曲とも言える「おいらの船」を始める。会場も引き込み歌われた同曲。「おいらの船は大きくて強い、他の誰よりも」と歌われ、一体感と一緒感、ほのかな幸せ感に会場が包まれる。ラストは再び佐藤がフィドルに持ち替え、アイリッシュトラッド調のバスキング感たっぷりの「アセロラ体操のうた」にイン。ここまでくると場内もオールスタンディング状態。手拍子と共に踊り、このフィナーレを大団円で飾る。

 ここからはアンコール。「みんなからパワーをもらって、ここC.C.Lemonホールは、高速船みたいだ」と佐野。続けて、次のライヴの告知が告げられる。
アンコール1曲目は「メッセージ」。佐藤がメインボーカルを取るちょっとファストな4ビートナンバーだ。会場内も曲に合わせて楽しそうに手拍子を取る。「好きだ」っていう気持ちも込められ、しっかり思いも、歌も、ここまで届いたよ。
 「最後は下校のような音楽をやって終わりにしま~す」と佐藤。ラストに会場に届けられたのは、ニューアルバムに収録していたダイナミックなナンバー「百八つ」だ。フロアタムを中心とした、どっしりとしたビートの上、雄大で、ホーミ-っぽくて、夕暮れが似合う曲に、会場全体が安堵感に包まれる。気づけばやはり<観劇後感>たっぷりに、ステージに向かって、スタンディングオペ―ションで拍手を送る自分がいた。

 やはりこの日も振り返ると、フワッだったり、チクンだったり、ポヨンだったり、ピリッだったり、フワリだったりといった、印象的な表現が真っ先に浮かんできた彼らのライヴ。いや、この日はしっかりそこに、フフフといった感情表現やスーッといった心情表現が加わっていたかな。個人的には、今後も是非、ホールで演って欲しいな…なんて思いながら、帰路についたのであった。

Report : 池田スカオ和宏


「マジ!スカえもん」です!!トレードマークは「MAJI印用品」特製の黄色いパーカーにリュック。どーぞ、よろしくです。

ライブ終了後の楽屋やステージ裏側からの光景を、僕の視点でお伝えしていく第3回目。
今回はハンバートハンバートの2011年2月10日のC.C.Lemonホールに来ています。いやー、良かったです。なんかほんわかしていて、温かい気持ちになれて、しかも、なんかしっかり元気や活力までもらっちゃったし。椅子にすわってゆっくり、じっくり堪能しちゃいました。

では、では、早速恒例のライブ直後の生の声や感想や光景を、お伝えしていきましょう。

ライブ終了後の楽屋口ロビーに、沢山の関係者の方々がいますね…。外国人の方もいます。2人の音楽性から、なんとなく分ります。あっ、あそこに佐藤さん、佐野さんの2人がいるゾ。

スカえもん「今日のライヴはいかがでした?」
佐藤「楽しかったですよ」
スカえもん「今度、4月にはエディ・リーダーと共演するんですね。先程、中休み中に会場BGMに、彼女の所属していた、フェアーグラウンド・アトラクションの曲もかかってましたもんね」
佐野「宣伝しときました(笑)。でも、昔から好きで、憧れの方でしたからね。共演出来るなんて感激です。場所も上野水上公園音楽堂ですからね。私たち初の水上ライヴになります(笑)。どうなんだろうね、水上で演るって?」
佐藤「いやいや。水上公園って名前だけど、別に水の上にステージを組んでいるんじゃないので…」
佐野「な~んだ、違うの(笑)? でも、一度は水上の上でも演ってみたいですよね」
佐藤「その際はきっとかなりなことになりそうで…(笑)」

以上、スカえもんが、お伝えしました。


【SETLIST】

[第一部]
M-1.さようなら君の街
M-2.虎
M-3.バビロン
M-4.からたちの木
M-5.波羅蜜
M-6.おべんとう
M-7.夜明け
M-8.慚愧
M-9.おなじ話

[第二部]
M-10.邂逅
M-11.待ち合わせ
M-12.転石苔むさず
M-13.てまりうた
M-14.桶屋
M-15.国語
M-16.罪の味
M-17.おいらの船
M-18.アセロラ体操のうた
【Encore】
En-1.メッセージ
En-2.百八つ


【MEMBER】

ボーカル/ギター/ベース/フィドル(バイオリン) 佐藤 良成(さとう・りょうせい)
ボーカル/ハーモニカ 他 佐野 遊穂(さの・ゆうほ)
That Evening Support
マンドリン、ギター他 井上太郎
ペダルスティール 他 安宅浩司 
ドラム 坂田学


【PROFILE】

佐藤良成と佐野遊穂による男女デュオ。1998年結成。2001年 アルバム『for hundreds of children』にてCDデビュー。2005年にはシングル『おなじ話』が各地のFM局でパワープレイとなったのをきっかけに、東京を拠点としていた活動を全国に広げ、年間100本近いライブを行う。フジロックフェスティバル、サマーソニックなど大型イベントへの出演を経て、テレビ番組・映画・舞台・CMなどの音楽も数多く手がけ、現在はニチレイアセロラシリーズのCMソング『アセロラ体操のうた』が話題に。2010年11月、最新アルバム「さすらい記」をリリース。


【NEW ITEM】

7th ALBUM
『さすらい記』
UPCH-1807
¥2,800(Tax in)
NOW ON SALE
【UNIVERSAL J】

M-1.待ちあわせ ゆめうつつバージョン
M-2.慚愧
M-3.さようなら君の街
M-4.虎
M-5.おべんとう
M-6.逃避行
M-7.百八つ
M-8.罪の味 なんじゃらほいバージョン
M-9.引っ越しの準備
M-10.くたびれ詩人
M-11.妙なる調べ
M-12.邂逅
Bonus Track. アセロラ体操のうた ハンバート・ランゲージバージョン


【LIVE SCHEDULE】

http://www.humberthumbert.net/live/


【ARIST HOMEPAGE】

http://www.humberthumbert.net/

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