キリンジ「KIRINJI TOUR 2010/11」
キリンジ
「KIRINJI TOUR 2010/11」
2011.1.8(Sat)
@渋谷C.C.Lemonホール
一般的に持たれている自身のイメージを裏切ることなく、そこにキチンと目新しい要素も作品毎に織り交ぜてきたキリンジ。外観は変わらねど、密かなアップトゥデイトを繰り返し、過去からの愛好者のみならず、新しいファンにも満足のいく、<新しいキリンジ>らしさを、彼らは作品毎に提供してきた。その趣きはまるで高級腕時計の如し。逸品として永く大切に聴き続けられている作品をこれまで幾つも世に送り出してきた。
そして、今回8枚目となるニューアルバム『BUOYANCY』も、スプラッシュポップなキラキラ感満載の「夏の光」、エレレゲエの「Rain」、「セレーネのセレナーデ」でのスティールパン、「台風一過」でのラ―ガ感とオルタナ的ギターサウンド、レイト70’sニューウェービーな「都市鉱山」、スリリングにアレンジされたレゲエタッチの「Round and Round」と、”おっ!?”と思わせる切り口と。かと思えば、「空飛ぶ深海魚」「秘密」のような、多くの人が描く<キリンジらしさ>もキチンとそこには同居していたりする。
前回の渋谷 DUO music exchangeでのライヴから約2ヵ月。全国各地でのオールスタンディングによるライヴハウスツアーを経て、この渋谷C.C.Lemonホールに帰ってきた彼ら。昨年9月発売のニューアルバム『BUOYANCY』からの曲を全曲演りつつ、”おっ!?”や”おおっ!!”といった選曲も織り交ぜ、終始この日の会場を魅了していた。
前回のDUOで見た際は、ツアーの序盤だったこともあり、そこから2ヵ月の、このメンバーならではの一体感や会得度、ニューアルバムの楽曲の更なる成熟ぶりや洗練さ、加えてニューアルバムでの2人の歌声やハーモニーも、実際のライヴに於いて充分に堪能できたステージであった。
今回のラッカは、新作のTシャツ2 種、ティータンブラー、フェイスタオル、キーホルダーのデザインとグッズ制作を行った。
場内が暗転し、まずはサポートメンバーが、そして、それより少し遅れ、一際大きな拍手に出迎えられ、泰行、高樹の2人が現れる。楠によるジャンベやパーカッションに、伊藤のアコーディオンを中心とした土着的で不穏なイントロが場内に生命力たっぷりに響き渡る。1曲目は「台風一過」だ。スケールの大きなア―シ―なサウンドと、田村のスティールギター、そして高樹のディスト―ションの効いたギターが、この日のライブの幕開けを告げる。兄弟のツインボーカルに、ベースの千ヶ崎も加わった重厚なハーモニーと、これから始まる冒険へと踏み出していくが如く勇者感溢れる歌と演奏。暗から明へと移り変わる心情や光景を感じさせるナンバーに、場内もワクワクしながら、これから始まる冒険や旅に夢を馳せていく。続いて、季節を一気に夏に引戻すかのように「夏の光」にイン。生命力や謳歌性たっぷりな同曲の登場に更に会場が湧く。キラキラしている楽曲にピッタリなまばゆく行き交うライトもベストマッチ。ズンズンと進んで行くような楠のフロアタムと深いスネアが、会場に言いようのない力強さと生命力を生む。加え、同曲では作品には見られなかった美しいアウトロも印象的であった。軽いMCを挟み、泰行がアコギに、田村もバンジョーに、そしてキーボードの伊藤も鍵盤からアコーディオンに持ち替え、「ホライゾン!ホライゾン!」がプレイされる。爽快感と牧歌性を溢れさせながらも、間には二ュ―オリンズ風味を加えるところが、作品同様、彼らの音楽性の造詣の深さを物語る。続いては会場を温泉街へと誘う。「温泉街のエトランジェ」だ。抒情感たっぷりながらも、間にキチンとウィットを染み込ませているのがいかにも彼ららしい(笑)。ここでは兄弟でのボーカルのリレーションも楽しませてくれた。そして、裏打ちのダウンビートも気持ち良い「Rain」では、会場も優しく柔らかく、温かい雨に包まれる。続いて、紫色のライトの中、バンドによる演奏+口笛のイントロから始まった「セレーネのセレナーデ」では、キッスの逃れられない魔法にかかったかのように場内をうっとりと聴き入らせる。泰行のスティールパンのソロを挟み、再びテーマに戻り、後半はハミングとハーモニーが会場を優しく包んでいく。
ここでMC。「アルバム『BUOYANCY』をお年玉で買ってくれたでしょうか?」と泰行。続けて、会場にまだお年玉をもらっているか?を訪ねながらも、高樹が恥ずかしそうに自分はまだもらっていることが自己申告される。「お年玉をもらうのも親孝行だ」と、高樹が正当性を主張(笑)。そこから、実家から送られる荷物について、気持ちはありがたいが、2人にとってはあまり実用性のないものが送られたりすることに苦笑いしつつ、どことなく親への感謝が伝わってくるトークに会場はほっこりとした気持ちになる。
「ここまではアルバム『BUOYANCY』からの曲だったが、ここからは昔の曲も織り交ぜて演っていきます」と泰行。ベストアルバム『KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration』のラストに収録されていた「星座を睫毛に引っかけて」を始める。これから色々なものを見、知るであろう人へと歌われる同曲。長い長いアウトロと、そこに乗せられた高樹のギターソロが会場中に広がっていく。そして、再びニューアルバムから、多少のスリリングさと不穏さの入り混じった、「秘密」にイン。中間部では泰行のハーモニカソロも入る。
スリリングなナンバーは続く。次は千ヶ崎のファットなベースラインも印象的、レゲエのリディムに乗り「Round and Round」が登場だ。ここでは泰行がギターソロを聴かせ、その上を高樹もフリーキーなギターを泳ぎ回らせ、カッコ良くもダイナミックなソロを交えた長いアウトロが続いていく。そう、今回のライヴは、どことなくどの曲もアウトロが長く、そこで楽曲を思い返し、ひいてはそこに自分を当てはめさせ、自身なりの物語を繰り広げさせるように映った。
ノンストップで高樹の軽快でファンキーなギターカッティングから「嫉妬」に突入。躍動感のあるビートが会場を魅惑の世界へとグイグイと惹き込む。ステージ上のライトも色々な色を放ち出し、華やかな「都市鉱山」のイントロが始まると、”待ってました!!”と会場の歓声も一際高まる。加え、高樹の歌が始まると更に歓声が。ニューウェービーでダンス性のあるナンバーに会場中が踊る。高樹も派手にギターソロを魅せ、後半では泰行がギターソロを聴かせる。うって変わって、伊藤によるピアノのイントロと高樹の歌い出しから「空飛ぶ深海魚」に入り、ステージも会場も一緒にエデンを探しに行く旅に出る。間には泰行もタンバリンでシャッフルのリズムをとり、田村のスティールギターのソロが、まるで”流れ星やエデンによろしく”とばかりに会場いっぱいに想いを広げていく。
ここでMC。今回のツアーを回っているバンドのメンバーを紹介。そして、最近出した著作の紹介。ツアーでのエピソード等が語られる。
会場の空気もすっかりと和んだところで、ここからは後半戦。軽快でポップ、それでいて牧歌的な、カントリーテイスト溢れる「もしもの時は」を始め、「もしもの時は言ってよ」との頼もしいフレーズが会場中に力を生んでいく。そして、どっしりとア―シ―に広がっていった「ブルーバード」のラストではコーラスが波紋のように美しく重なり、広がっていき、会場中を自身の幸せの青い鳥を探す旅に向かわせる。そのまま不穏なベースラインから魅惑のダンスナンバー「ムラサキ☆サンセット」に突入すると、ステージ後方にも色とりどりのライトが現れる。この曲ではまるでマジックアワーのようなカラフルな照明の中、会場中も更なる楽しそうな笑顔を見せる。ラストのテンポアップ部では会場も大興奮。更に会場を惹き込むように「十四時過ぎのカゲロウ」にイン。間奏の高樹のソロも短いながらもカッコイイ。ノリの良い盛り上がりナンバーは続く。次の「あの世で罰を受けるほど」では、力強くダイナミックに進みゆくアウトロがガシガシいきつつ、グイグイ広がっていくさまが実にかっこいい。そして、ウクレレも加わり、エレガントにワイドに広がっていった「小さなおとなたち」では、ラストのテンポアップが会場の高揚感を煽る。そして、アップライトベース、スティールパンを交えて、まるで深海にいるような静かにたゆたうよう歌い、プレイされた「アンモナイトの歌」では、不思議な浮遊感と沈殿感に会場が包まれていった。
ここからは一度目のアンコール。メンバーはラッカのデザイン&作成したTシャツを着てステージに再登場する。
イントロで場内がザワめく。アンコールの1曲目は「愛のCoda」だ。メローでシティポップ性溢れる同曲では、ステージ上にセットされたミラーボールも回り出し、スティールパンの音色とファルセットを交えたソフィストケイトされた泰行の歌声に会場中がムーディーな雰囲気に包まれる。アンコール2曲目は「Drifter」。スティールギターも印象的。徐々にゆっくりと広がっていくサウンドの上、摂理や決意を感じさせる、ささやかだけど大切なナンバーに会場中が聴き入る。「初期の頃の曲で、このバンドになってのアレンジで蘇った」とは泰行。その言葉の後、バンジョー、アップライトベース、ピアニカを交え、「さよならデイジーチェイン」が会場に放たれる。会場中の手拍子と共に作り上げていった牧歌的なアレンジに生まれ変わった同曲。会場中が笑顔と一体感に包まれる。最後にもう一度メンバーが紹介され、「今年もよろしくお願いします」の兄弟の言葉と共に、メンバーがステージを降りる。
ここからはダブルアンコール。人気の高い「エイリアンズ」がここで歌われる。しっとりと、この星でたった2人だけ感が会場いっぱいに広がり、会場全体が、”たまらない…”的な表情で聴き入る。そして、正真正銘のラストは「悪玉」。軽快でポップ、それでいてウィットに富んだナンバーの登場に会場中が盛り上がる。泰行、高樹のボーカルのリレーションとコーラスハーモニーが会場全体に響き渡っていく。
先程の高級腕時計の例えに話を戻そう。みなさんは、それら腕時計の中の、いわゆる<定番>を見た時に、”ずっと変わらないスタイルだなぁ…”や”一貫して手巻き式なんだなぁ…”と感心したことはないだろうか?実は、これらいつまでも変わらない外観や質感、そして使った時の実用性等々を保つためには、あえて少しづつ今の時代に合うように微妙なカスタマイズを繰り返していたりいる。そして、それを経たが故に、”いつ見ても、いつはめても変わらない”と感じさせることができたりする。いや、これは腕時計だけではない、ミニクーパー然り、バービー人形然り、アニメのサザエさん然り、マクドナルドのハンバーガー然り。いつまでも以前のままでは決して<変わらぬ、らしさ>は醸し出せないのだ。
少しづつ色々なものを加えるが故に表わすことができる<変わらぬキリンジらしさ>。この日のライヴを見終えて、キリンジにはいつまでも微妙な変化を加えながら、”常に定番でいて欲しい!!”と強く思った。
Report : 池田スカオ和宏
「マジ!スカえもん」です!!トレードマークは「MAJI印用品」特製の黄色いパーカーにリュック。どーぞ、よろしくです。
ライブ終了後の楽屋やステージ裏側からの光景を、僕の視点でお伝えしていく第2回目。
今回はキリンジの2011年1月8日のC.C.Lemonホールに来ています。昨日に引き続き、この会場でライヴを行ったお2人。いやー、良かったです。ニューアルバム『BUOYANCY』を中心に、バラエティに富んだセットリストで。特にダブルアンコールで演った「エイリアンズ」は嬉しかったな。この曲は、確か2ヵ月前の渋谷DUOでも演ってくれてましたね。
では、では、早速恒例のライブ直後の生の声や感想や光景を、お伝えしていきましょう。
ライブ終了後の2階のロビーに、沢山の関係者の方々に交じって…。あっ、いたいたキリンジの2人だ。よし、今日の感想を聞いてみよう。おっと、その前に、お約束の「マジ!スカえもん」シール&名刺を渡さなくちゃ。
高樹「何ですか、これ(笑)」
スカえもん「(恥ずかしそうに)僕シールです…」
高樹「…(失笑)」
スカえもん「今日のライヴを振り返っていかがでした?」
高樹「昨日もここ(C.C.Lemonホール)で演ったんだけど、これまでツアーを全国回ってきたこともあって、どんどん演奏が一体感を増してきた感じはしますね。楽しんでもらえたらうれしいんですけど、どうだったかな。」
泰行「そうですねー。何よりどの会場でも、お客さんが盛り上がってくれるのがありがたいなと。」
高樹「これからまだ(ファイナルの)沖縄まで数本あるし、頑張っていきますよ。シールありがとうございます(笑)」
以上、スカえもんが、お伝えしました。
【SETLIST】
01.台風一過
02.夏の光
03.ホライゾン!ホライゾン!
04.温泉街のエトランジェ
05.Rain
06.セレーネのセレナーデ
07.星座を睫毛に引っかけて
08.秘密
09.Round and Round
10.嫉妬
11.都市鉱山
12.空飛ぶ深海魚
13.もしもの時は
14.ブルーバード
15.ムラサキ☆サンセット
16.十四時過ぎのカゲロウ
17.あの世で罰を受けるほど
18.小さなおとなたち
19.アンモナイトの歌
Encore
En-19.愛のCoda
En-20.Drifter
En-21.さよならデイジーチェイン
Double Encore
WEn-22.エイリアンズ
WEn-23.悪玉
【MEMBER】
Vocal、Guitar:堀込泰行
Guitar、Vocal:堀込高樹
[Suport Member]
Pedalsteel、Steelpan:田村玄一
Bass:千ヶ崎学
Keyborads:伊藤隆博
Drums:楠均
【PROFILE】
1996年10月、堀込泰行(VOCAL/GUITAR)、堀込高樹(GUITAR/VOCAL)の2人(兄弟)でキリンジ結成。多くのアーティストからリスペクトが絶えない確立されたシンガーソングライターとしてのスタイル、スウィートに練り上げられるメロディー、イマジネーション豊かな詞世界、そして、兄弟ならではのハーモニーと洗練されたサウンドプロダクションで奏でる”キリンジ・ワールド”を現在までに展開。著名/一般に限らず幅広い支持を受けている。現在までにパッケージシングル17枚、配信シングル11曲、オリジナルアルバム8枚をリリース。また、その楽曲性に熱愛者も多く、現在までに数多くのアーティテストへの楽曲提供を行っている。
2008年にはメジャーデビュー10周年を迎え、ベストアルバム「KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration」をリリース。2009は弟・堀込泰行がソロ・プロジェクト“馬の骨”で2ndアルバム『River』を、兄・堀込高樹は“ザ・グラノーラ・ボーイズ”のメンバーとしてフェスなど活動も積極的に展開。ソロを経験して音楽的な振り幅や自由度が高まり、2010年夏には17枚目のシングル「夏の光」、8枚目のアルバム『BUOYANCY』を発表。その後、2010年10月30日より『KIRINJI TOUR 2010/11』と題し、全国24箇所25公演のツアーを行い、各所大成功を収める。
【NEW ITEM】
8th ALBUM
『BUOYANCY』
COCP-35901
¥3,150(Tax in)
NOW ON SALE
【日本コロムビア】
M-1.夏の光
M-2.温泉街のエトランジェ
M-3.ホライゾン! ホライゾン!
M-4.Rain
M-5.セレーネのセレナーデ
M-6.台風一過
M-7.空飛ぶ深海魚
M-8.都市鉱山
M-9.Round and Round
M-10.秘密
M-11.アンモナイトの歌
M-12.小さなおとなたち
【LIVE SCHEDULE】
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