a flood of circle「Tour ZOOMANITY~天晴全国百鬼夜行~」

Filed under: LIVE REPORT — タグ: — LUCK'A @ 2010.12.07

a flood of circle
「Tour ZOOMANITY~天晴全国百鬼夜行~」
@赤坂BLITZ
2010.11.27(Sat)

 「抗う(あらがう)」。ものの辞書によると「逆らう」「抵抗する」の意味を持つこの言葉。今回のライブのMC中にボーカル&ギターの佐々木が何度か口にし、彼らの来し方を端的に表しているようにも響く言葉だ。とは言え、この場合の「抗い」は、やたらめったら何でも良いからの反抗や逆うというものとはかなり異なる。彼ら言うところの「抗い」とは、変えることの出来ない多くのものごとに対する精一杯の問いかけや自己回答。大ざっぱに例えると、運命に流されることのジレンマや繰り返される自問自答の末、自分のアイデンティティを保持するためにいたしかたなく取る術のことだ。そして、彼らの音楽はすべからくその成分が高く、時にそれらは痛々しさを伴って聴く者の胸に突き刺さる。
 そして今回のワンマンライブはまさしく、その彼らのこれまでの抗い、そしてこれからも抗い続ける、改めてのアイデンティティと方向性の明確化のようにも映った。
 
 前回のレポートは7/26の渋谷DUOの際。彼らの3rdアルバム『ZOOMANITY』のリリース前であった。そのライブでは、同アルバムの発表までまだ1ヶ月半ありながらも、惜し気もなく何曲か先行で披露。その際にも感じられた、新作からの楽曲の手触りや心証は、その約1ヶ月半後に改めて完パケた作品を聴いても変わっていなかった。各楽曲が、よりダイレクトになったというか、深層まで至るものになったというか…。いわゆる体は激しく躍動的に衝動反応するのだが、頭は様々な事象に、時には抗い、時には疑い、時には自問自答したり、あるか分からない答えや真実や真理を探求させる楽曲ばかりであった。そして、そのアルバムを引っ提げての全17ヶ所にも及ぶ今回の全国ツアーは、代表曲を交えながらもニューアルバムからの楽曲を中心にプレイ。それらは、よりライブならではの臨場感&肉迫感をもって迫りくるものであったと各所から伝え聞いていた。しかも、今回はワンマン。より一層アルバムからの曲も聴け、前回は断片であったライヴに於けるアルバムの全体像も、今回は丸ごと体感できるのだ。

 今回のツアーでも我がラッカは「ZOOMANITY パーカー」「秋限定カラーロゴTシャツ」等のグッズを作らせてもらった。
 

 開演予定を10分近く過ぎた辺り、それまで場内に流れていたモダン・ブルーズのBGMが会場の暗転と共にピタリと止む。と、同時に彼らの登場SEとして、大量音にてニューアルバムの冒頭を飾っていたインストナンバー「Open The Gate -session#4-」が流れ出し、赤いライトで浮かび上がったステージに、メンバーがワラワラと登場してくる。高々と最近の愛器「ブラックファルコン」を掲げ、”戻ってきたぜ!””これから行くゼ!”とでも言いたげなポーズをとるボーカル&ギターの佐々木。その後、サポートギターの曽根、ベースの石井、そして佐々木が、ドラムの渡邊に向かい、グルリと円を描くようなフォーメーションにてスタンバイ。SEの終わりと共に、渡邊の掛け声とフロアタムを交えた力強いビートが会場にライブ開始の合図を告げる。1曲目は「最後の晩餐」だ。パーッと散るようにいつもの定位置にて各自の音を鳴らす4人。ミッドテンポでどっしり感のある曲に合わせ会場も大きくうねる。フロアからも無数のコブシが上がり、曽根のギターもブルース・フレージングを泳ぎ回らせる。曲の終わりに向かうに連れ、強く発光していく白いバックライトが彼らを映す。うーん、神々しい。続いて間髪置かず、ドライヴィング感溢れる「フェルディナン・グリフォン・サーカス」に勢いよく突っ込む。裏打ちのダンサブルなスカビートとスリリングさが相まった曲の出現に、会場の熱狂度もグッと上がる。間に入る渡邊によるウェスタン調のビートが会場に躍動感をもたらす。その光景はさながら荒野の如く。「サーカスは何度も繰り返され、続いていく」と歌いながらも、”このライブはこれからガッツリ進んで行くから、振り落とされないようにしっかりしがみついてろよ!”と言わんばかりだ。そして、ノンストップでスリリングなナンバー「Silent Noise=Avante-gard Punk」に突入。立て続けにニューアルバムからの3連発だ。ダンサブルさとスリリングさを叩き分ける渡邊のドラムと、ピッキングの多い歪んだ石井のベースが、楽曲の深部をグリグリとえぐる。この楽曲では緊迫感があるぶん、それを振り払うようにサビでは起爆を生んでいた。
 

 ここでMC。佐々木が「ようこそZOOMANITY TOURに。僕らは好きにやるのがポリシー。ノッても、踊っても、腕を組んで観てもらっても、好きに観てもらってかまわない」「楽しむ準備は万端ですか?」とのフロアへの煽りを引き金に「Chameleon Baby」をプレイ。渡邊の2ビートが炸裂し、曽根のギターもヒステリックなフレーズを泳ぎまわらせる。それに合わせ、会場も更に熱狂の渦へ。性急なところからポップに急変するところでもしっかりと会場全体がついていき、ブリッジ部では、会場も歌に合わせクラップで呼応する。そして同曲の終わりを待たず、メドレー式に「Thunderbolt」に突入。渡邊が更に力強いビートを会場に叩き込む。間のフロアタムの連打が荒野に砂塵を吹き荒らし、佐々木のしゃがれたブルージーな歌声が会場に響き渡る。実に男気溢れるナンバーに会場も大興奮だ。流れはそのまま。続いては昔馴染みのギターフレーズが会場に鳴り響く。それを感受したフロアからはそれ以上の驚喜が返る。続いては「ロシナンテ」だ。”それでも行かなくちゃ!感が場内に満ち、”俺もついていくゼ!”との呼応のようなコブシが無数に上がる。フロア中央にはモッシュピットまで出現。先程の佐々木のMCではないが、各人各々の楽しみ方をしているんだね。しかし、回りに迷惑だけはかけるなよ(笑)。
 

 チューニングタイムが訪れ、先程までの喧噪がウソのように場内がシーンと静まり返る。と思いきや、それを突き破るように、石井に「ベレー帽可愛い」との声援が。これを機に石井がイジメの如くイジりに合う(笑)。
 会場の雰囲気を再び引き戻すように「今回のツアーで17箇所回って、会場の大小に関わらず、目を見てしゃべるから」と佐々木がMC。次の言葉を続けようとしたタイミングで、フロアからさっきの騒乱で紛失した靴の捜索願いが。無事、靴も見つかり、佐々木が続ける。「先日、住んでいる役所の人に冷たい対応をされ、それに対し、これまでツアーに回った箇所箇所で、地元の役場の対応について聞いてきた」。そして出た結論は<結局、佐々木が悪かった>とのジャッジ。そしてその冷たかった役所の反応について1曲作ったという「Black Music Fun Club」が始まる。実際、さっきのMCと関係あんのかよ(笑)。石井のグル―ヴ感のあるベースと、曽根の高いフレットでのカッティングが艶めかしくいかがわしいパーティへと会場全体を誘う。そして、曽根の70’sロック的フレーズから入った「百鬼夜行」。ギターソロもエキセントリックに炸裂し、男気のある石井のファットなベースがグイグイと曲を引っ張る。そして、「少し古いブルースを演ります」と佐々木。続いて「Red Dirt Boogie」が始まる。オリジナルよりも抜き差しと艶めかしさを加え、ワイドさとダイナミックさもアップ。良い意味でブルージーさと歌謡性が上手く融合した最新型に変貌していた。ビートが腹と腰にズッシリとき、悲痛さの混じった佐々木の歌声も会場中に刺さるように響く。

 佐々木がMC。「1年半でアルバム3枚を発表してきたのは、これまでのドタバタの中、それに抗ってきたが故」「これからもずっと抗っていきたい」「曲にしても歌にしても、消えない、しみったれた自分を歌にすることが今回のアルバムでは出来た」と続け、そんな曲ですとの紹介後、佐々木のギターのつまびきと共に「コインランドリー・ブルース」が歌い出される。そこに骨太でどっしりとしたミッドなバンドサウンドがガッチリ絡み、想い起したくなくても、想い起してしまうよしなしごとを、”忘れなくちゃ”と振り払うように歌う佐々木。「ツアーでこの曲を演ると僕の辛気臭さが出ちゃう」とは、この曲を演り終えた直後の彼の弁。
 この後、グッズの告知と、石井がかなりイジられるMCを挟み、佐々木がMC。「ロックンロールは、<岩をを転がす>の意味だけど、くっついたり、はがれたりしながら自分たちはここまで来た。なので自分たちのロールっぷりにはかなり自信がある」と語り。「ここからは後半戦。やり切りたいだけだ!」とラストスパートへの狼煙を上げる。

 

 佐々木のカウントダウンからフロアに解けそうにない永遠のクイズが出題される。次は「Quiz Show」だ。会場からもカウントダウンの際の呼応が合わせて起こる。佐々木の放つ歌に乗せられた最後のチャンスにすがるように、ステージ前方へとオーディエンスが押し寄せる。「この世で壊れないものは何でしょう?」の最後の出題に、フロアがそれぞれの答えを心の中でステージに向けて放つ。ノンストップで石井のサンバホイッスルが場内に響き渡り、ラテンの土着ビートが会場に躍動感を生む。続いては「Human License」だ。渡邊の前のめりなビートに合わせ、会場が土煙と雄たけびを上げる。情熱的なラテンビートが場内に阿鼻叫喚の熱狂を生み、渡邊のドラムと石井のサンバホイッスルのみになる箇所では場内も大興奮。それ以上に興奮した石井が、そのままフロアにダイブ。曽根も舞台最前までせり出しギターを弾いている。そのまま、さらにフロアの火に油を注ぐべく、初期からの代表曲「泥水のメロディー」が現れる。フロアは騒乱と狂乱。昔からのナンバーは続く。渡邊のカウントから入った次なるナンバーは「プシケ」だ。ブルージーでありながらもサビのストレートさがとてつもなく気持ち良い。そして、間にはお馴染みの<俺の大事なメンバーの紹介>が。確かにさっきの佐々木のMCのとおり、この歌の頃から彼らは、何か得体のしれないカルマや自身の運命という大きなものに抗い続けてきた。だけど結局、それは明日も、そしてこれからもずっと続いていき、背負っていかなくちゃならない。だからこそ精一杯抗うんだと。そんなことに改めて気づかされた。そして、フロアの温かいクラップの中、本編のラストに送られたのは、これも昔からのナンバー「象のブルース」。間には佐々木と曽根が向き合いユニゾンでギターソロを弾く。魅せるね~。「くよくよしている」と自嘲しているわりには、「風に吹かれて忘れちまいなよ」なんて楽天的に歌われる同曲。いや、これもきっと自分に言い聞かせていてのことだろう。
 

 ここからはアンコール。今回のツアーにて、対バンライヴ時には出来なかった曲たちがプレイされる。まずは、佐々木のギターと歌い出しからいきなりのイグニッションに入った、裏打ちのビートが気持ち良い「ロストワールド・エレジー」。そのまま性急的な渡邊のドラムの4つ打ちとそれに合わせ、フロアからのクラップに乗り、佐々木が馴染みのあるギターフレーズを放ち、それを認識した会場が絶叫する。続いては「シーガル」だ。サビの部分では会場に幾つものクラウドサーフが起こり、ラストは石井もステージ前方にせり出しベースをプレイ。フロア前方はかなり高い密度になる。前曲の余韻を残し、フィナーレのようにインストナンバー「(Don’t)Close The Gate -session #5-」に入る。ニューアルバムでもラストを締めてくれた同曲。佐々木のギターソロが雄弁に響き渡り、渡邊と石井のリズム隊がどっしり、ガッツリと土台を支える。そこから曽根へとギターソロをバトンタッチ。ワウを効かせたクライベイビーなギターソロが会場を沸かせる。
 

 ダブルアンコールにも答えてくれた彼ら。プレイの前に佐々木がMC。「大切な人が亡くなり、心がかなりグラついた。だけど、こうしてステージに立てたのは、観てくれる人や支えてくれるメンバーや回りの人たちがいたからこそ。その人たちに感謝している」、そして、「2006年の結成当初から、未来のロックのことや未来のことばかり考えていた。未来を考えることは、今を一生懸命に生きること。未来、未来と歌い続けてきて、ライヴを演ること、今を一生懸命生きることに気づいた」「最後は未来の曲を演ります」と「ブラックバード」を始める。「未来、未来」と暗闇の中、連呼されていた黒い鳥が朝を待っているかのような同曲。ダイナミズムと大きなスケール感にして、その先の確かさが自信へと繋がっている彼らの雄姿が浮かぶ。サビの部分では会場中も大合唱。一人ひとりが暗闇のような未来の中、一条の光を求め、一緒に歌う。向かい歌われる先は、実際は未来ではないのかもしれないが、希望や夢という光は確かにありそうだ。そんな余韻を会場に残し、彼らはステージを後にしたのだった。
 
 
Repoer : 池田スカオ和宏


【SET LIST】

1.最後の晩餐
2.フェルディナン・グリフォン・サーカス
3.Silent Noise=Avante-gard Punk
4.Chameleon Baby
5.Thunderbolt
6.ロシナンテ
7.Black Music Fun Club
8.百鬼夜行
9.Red Dirt Boogie
10.コインランドリー・ブルース
11.Quiz Show
12.Human License
13.泥水のメロディー
14.プシケ
15.象のブルース

Encore
En-1.ロストワールド・エレジー
En-2.シーガル
En-3.(Don’t)Close The Gate -session #5-
Double Encore
WEn-1.ブラックバード


【MEMBER】

Vocal & Guitar 佐々木 亮介
Bass 石井 康崇
Drums 渡邊 一丘
That Evening Support Guitar 曽根巧(from talk to me)


【PROFILE】

2006年結成。ライヴ活動を開始。2007年7月、1stミニアルバム『a flood of circle』を発表。当時弱冠20歳とは思えないその音楽観と卓越したライブパフォーマンスに注目が集まり「FUJI ROCK FESTIVAL’07」に出演。
2008年5月、2ndミニアルバム『泥水のメロディー』を、さらに3ヶ月連続でライブ音源をリリース。同年末には「COUNTDOWN JAPAN 08/09」に出演を果たす。
2009年1月、初のワンマンライブを新宿ロフトで開催(ソールドアウト)。3月、インディーズラストシングル「Buffalo Dance / Thunderbolt」発売。同年4月、1stフルアルバム『BUFFALO SOUL』をメジャーよりリリース。全国ツアーを各地で満杯にする。同年7月、代官山UNITでのツアーファイナル自主企画直前にギタリストが失踪。バンドは入魂のパフォーマンスを披露し乗り切る。夏には「FUJI ROCK FESTIVAL’09」「ROCK IN JAPAN FES. 2009」にも出演。大絶賛を受ける。10月、失踪したメンバーの脱退を正式発表し、新たなスタートを切る。11月、メジャー2ndフルアルバム『PARADOX PARADE』発表。
2010年2月~同アルバムを引っ提げ、東名阪のワンマンライヴを含む全国7箇所のツアーを行い、大成功に納める。
2010年7月初のシングル「Human License」を発売。大型夏フェスにも出演。同年9月15日3rdアルバム『ZOOMANITY』リリース。発売後、10月15日~は6箇所のワンマンを含む全国17箇所にも及ぶツアー『Tour ZOOMANITY~天晴全国百鬼夜行~』を敢行。全箇所大成功を収める。


【NEW ITEM】

3rd ALBUM
『ZOOMANITY』
VICL-63657
¥2,800(Tax in)
【Speedstar Records】
NOW ON SALE

M-1.Open The Gate -session #4-
M-2.百鬼夜行
M-3.フェルディナン・グリフォン・サーカス
M-4.Silent Noise=Avante-gard Punk
M-5.Black Magic Fun Club
M-6.Chameleon Baby
M-7.Human License
M-8.ロストワールド・エレジー
M-9.コインランドリー・ブルース
M-10.最後の晩餐
M-11.(Don’t)Close The Gate -session #5-


【LIVE SCHEDULE】

http://afloodofcircle.com/live.html


【ARIST HOME PAGE】

http://afloodofcircle.com/

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